実録・怖い話『消えた包丁』

はやまさくら

読切(脚本)

実録・怖い話『消えた包丁』

はやまさくら

今すぐ読む

実録・怖い話『消えた包丁』
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇システムキッチン
  これは、私が中学生だった時に
  遭遇した事件です。
祖母「テーブルに置いてあった料理がない・・・ 〇〇子、つまみ食いした?」
私「えっ、なんのこと? 私、そんな事してないよ」
祖母「ふむ。他の家族も知らないようだし、 ひょっとして野良猫の仕業かねぇ」
私「確かに何匹かいるよね」
祖母「家の中まで入り込んでくるなんて、 まったく油断も隙もない!」
  当時、我が家は
  庭でペットの犬を飼育していました。
  人懐こく穏やかな性格の子でしたが、
  時折、野良猫が餌を奪いに来るため、
  その時ばかりは必死で餌を
  死守しておりました。
  なので、野良猫がキッチンに入り込み、
  料理を平らげたと言われても、
  『あり得るなぁ』という感想しか
  抱けませんでした。
祖母「もしかして 勝手口が少し開いていたのかも。 気をつけないといけないね」

〇システムキッチン
  さらに数日後・・・
祖母「おや、ここに置いてあった包丁がない! 誰が持ち出したんだい!」
私「えっ、今度は包丁が!? それはさすがに野良猫の仕業じゃないよ。 警察に通報した方がいいんじゃない?」
祖母「うーん、この程度のことで 警察のお世話になるのは気が引けるよ」
祖母「包丁を置いたというのも、 私の記憶違いかもしれないし・・・」
  高齢の祖母は
  自分の記憶に自信がない様子でした。
私「だったら、もう少し心当たりが ある場所を探して、」
私「それでも見つからなかったら、 警察に通報しようよ」
祖母「そうしようかねぇ・・・」
  結局、包丁は見つかりませんでした。
  しかし、祖母は
  警察へは通報しませんでした。
  我が家は田舎にあったため、
  昼間は普段から玄関にも勝手口にも
  鍵を掛けておりません。
  ご近所さんが勝手に玄関へ入り、
  中に野菜を置いて帰ることも
  日常茶飯事でした。
  そんな大らかな土地柄だった事もあり、
  騒ぎを起こしたくなかったようです。

〇屋根の上
  そして、更に数日後・・・
私「うぅん・・・ なんか寝苦しいな」
  その日は過ごしやすい気候だったので、
  エアコンは使わず、窓も閉めていました。
  ですが、私は深夜に
  目を覚ましてしまいました。
私(換気して、気分を変えようか・・・)
  私は窓を開け、周囲を見回しました。
侵入者「・・・!?」
  すると、『屋根の上で見知らぬ男が
  四つん這いになっている』という、
  異常な光景が飛び込んできました。
  私の視線を感じたのか、
  侵入者は一目散に逃げ出します。
  屋根から足を滑らせたのか、
  盛大な落下音が聞こえてきました。
  温厚な性格の我が家のワンコも
  眠りを妨げられてお怒りの様子。
  ワンワンと侵入者を吠え立てます。
私「何? このカオスな状況・・・」
私「・・・夢、かな?」
私「とりあえず寝直そう・・・」

〇一軒家
  次の日の朝、
  軒下に置いてあった木箱等の荷物が
  一部崩れているのを母が発見しました。
母「一体どうしたのかしら? 何かが落下したような 形跡もあるんだけど・・・」
私「何かが・・・落下・・・?」
私(夢じゃなかった!? あの侵入者は本物だったんだ!)
私「・・・ねえ、お母さん。 昨日、何か物音を聞いたりした?」
母「えっ? ぐっすり眠っていたから、特には・・・」
私(・・・もしかして気づいたのは私だけ?)
  侵入者が逃走した後、
  我が家から物が消えることは
  なくなりました。
  ・・・ということは、
  包丁を盗んだのは、
  おそらく屋根にいた
  侵入者だったのでしょう。
  あの時、何となく窓を開けたことで、
  脅威を未然に防ぐことが
  できたのかもしれません。
私(それにしても・・・)
私(何で私、あの後、平気な顔して 寝直すことができたんだ・・・?)
私「神経図太すぎだろう!?」
  侵入者はもちろん恐ろしいですが、
  正常性バイアスに支配された
  寝ぼけた人間も別の意味で恐ろしい・・・
  というお話でした。
  正常性バイアスは、
  異常なことが起こった時に
  「大したことじゃない」と
  落ち着こうとする
  心の安定機能のようなもの。
  日常生活では、
  不安や心配を減らす役割があります。
  しかし、緊急事態では逃げ遅れなど、
  危険に巻き込まれる原因にもなります。
  皆様もお気をつけください・・・

コメント

  • 物語のポイントが「侵入者」ではなく「正常性バイアス」というところが新鮮でした。普段から異常事態を想像して、その時の自分の動作をシミュレーションしておくといいらしいですが、なかなか難しいですよね。事前に包丁がなくなっていたから真っ先にワンコを心配したけど、無事でよかった〜。

  • 物語も、人間の性質にも恐ろしさを抱きました...。全然他人事ではないですね。私も気をつけよう...😰

  • 消えたお料理は侵入者が食べたのでしょうけど、消えた包丁の用途は。。。作中で触れられていない分、後からじわじわと恐ろしくなってきますね

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ