第1話 神社と願いごと(脚本)
〇部屋のベッド
和葉「・・・・・・」
和葉「・・・なんで」
和葉「・・・なんで・・・こんなことに・・・」
──遡ること、一日前──
〇住宅街の道
双葉「ちょっと、健!! 早くしないと遅刻しちゃうよ!!」
健「待てよ、双葉!! 元はと言えば、お前の支度が遅いからだろ!!」
こいつの名前は木ノ下双葉(きのもとふたば)。
俺、片山健(かたやまたける)の小さい頃からの幼馴染だ。
双葉「あーもー、うるさい!! 女の子の支度はいろいろあるんだからね!」
双葉「ほんと、健って女心が分かってないよね!!」
双葉「もう、先行くからね!!」
健「待てよ、双葉!!」
健「行っちまった・・・」
健「・・・ったく、人の気も知らないで」
俺は双葉のことが好きだった。
物心ついたときから、そばにいた彼女だが、
この気持ちを自覚し始めたのは最近だった。
健(この気持ちを伝えたいけど・・・)
健(・・・何かきっかけがあればな・・・・・)
〇田舎の学校
健「合宿?」
双葉「そう。 今夜から2泊3日の遠征合宿なの!」
部活の休憩時間。
隣の陸上部の双葉がそんなことを言いに来た。
双葉「・・・あれ? ひょっとして、私がいなくて寂しい?」
健「バ、バカッ! そんなわけねぇだろ!!」
双葉「あーっ、バカとは何よ、バカとは!!」
健「・・・お前知らないのか? 『バカ』とは漢字で『馬鹿』と書いてだな・・・」
双葉「そんなことを聞いてるんじゃなーい!!!」
〇通学路
──帰り道──
いつもなら双葉と帰るのだが、今日は合宿のミーティングがあるということで、俺は一人で帰っていた。
健「あれ?」
〇神社の石段
健「こんなとこに神社なんかあったか?」
健「・・・・・・」
健「・・・せっかくだし、寄ってみるか・・・」
〇古びた神社
健「うわっ、ずいぶんさびれた神社だな・・・」
そう思いつつ、俺は古びた賽銭箱に小銭を投げ入れ、手を合わせる。
健(俺は双葉のことをもっと知りたい)
健(・・・どうか双葉ともっと近づけますように・・・・・・)
和葉「あら?」
和葉「健くんじゃない。 こんなところで奇遇ね」
健「か、和葉さん!?」
この人は木ノ下和葉(きのもとかずは)さん。
双葉のお母さんだ。
健「どうしてこんなところに?」
和葉「お買い物に行こうとしたら、たまたまね」
和葉「こんなところに神社なんてあったかしら〜、なんて思ってね」
和葉さんも俺と大体同じ経緯でここに来たようだった。
和葉「それよりも、健くん。 何をお願いしてたの〜?」
健「お、俺は、その、サッカー部でレギュラーになれるようにって・・・」
和葉「え〜、ほんとに〜?」
健「ほ、本当ですよ!」
健「そ、それより和葉さんは何をお願いするんですか?」
健「わざわざ上まで登ってきたってことは、何かお願いをするんでしょう?」
和葉「うーん、そうねぇ・・・」
和葉「・・・強いて言うなら、双葉のことかしら?」
健「双葉の?」
和葉「えぇ」
和葉「あの子って頑張り過ぎちゃうところあるでしょう?」
和葉「今日も『合宿頑張るんだー』って張り切っていたわ」
和葉「それ自体はすごく良いことなんだけれど、あの子の場合、それで無理し過ぎちゃったことが何度もあるから・・・」
和葉「私が側で支えてあげなきゃいけないんだけれど・・・」
和葉「高校生にもなると、何でもかんでも話してくれるわけじゃなくて・・・」
和葉「こんなとき、健くんならあの子の気持ち、分かってあげられるのかな・・・?」
健「和葉さん・・・」
和葉「・・・ごめんね、私ったら余計なことをベラベラと・・・」
そう言って苦笑いをすると、和葉さんはお賽銭を入れてお祈りし始めた。
俺はそんな彼女の横顔を黙って見ていることしかできなかった。
〇男の子の一人部屋
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目覚めたら入れ替わっているパターンはいいですよね、好きです。しかも男女での入れ替わりパターンで、身体的特徴で戸惑うところなんかも!