18.過去と今に向き合う時間。②(脚本)
〇黒
そして時雨はぽつぽつと語り始めた。
〇寂れた村
かつては人間に興味を持っていたこと。
けれど神故に遠ざけられてしまったこと。
〇湖畔
その中で、時雨を人間と勘違いした1人の女の子と友達になり、「時雨」という名を貰ったこと。
そして──
〇寂れた村
村人1「ここのところ作物の育ちが悪く、この前植えた苗もすべて枯れてしまって・・・」
村人2「このままでは食料がとれず、皆飢え死んでしまいます!」
村人2「蛇神様!どうして私達を守ってくれないのですか!?」
蛇神「ごめん、僕にはどうしようもないんだ。僕は雨を降らすことしかできなくて・・・」
村人3「そんなはずはありません!あなたは神という尊い存在なのですから!」
村人3「まさか・・・ 本当に私達を見捨てられたのです!?」
村人1「そんな!! 蛇神様に見捨てられたら、俺達は・・・!」
村人2「何か怒らせるような事をしてしまったのか?どうすれば機嫌を戻してくれるんだ?」
蛇神「見捨ててないし、怒ってもないよ! 本当に僕は・・・!」
巫女「静まれい!」
巫女「皆、宴の準備をするのじゃ。蛇神様は以前開いた宴をたいそうお喜びになられていたからの」
巫女「皆で蛇神様に感謝を伝え、改めて我々を救ってくださるようお願いするのじゃ。そうすればきっと願いを聞き入れてくださる」
村人1「さすが長老、それがいい!」
村人3「なら捧げ物もとびきりのものを用意して、盛大に開くぞ!だれか、若い娘を・・・」
蛇神「ねえ、待って。僕の話を聞いてよ・・・」
〇寂れた村
蛇神「・・・・・・」
少女「あは」
少女「神様って、時雨だったんだ。私、勘違いしちゃってたなぁ」
村人1「さあ、どうぞ!あなたのために選りすぐった生娘です!」
村人2「こちらを生け贄として捧げましょう!」
蛇神「やめてよ! こんなことしても意味なんてない!」
蛇神「キミもどうして拒否しないの!? このままだと殺されちゃうんだよ!」
少女「・・・選ばれたから仕方ありません」
少女「それに、あなたに捧げられて村を助けられるなら、私も役立たずじゃなくなるから」
蛇神「そんな事言わないで!」
蛇神「僕たち友達でしょう? 僕、友達が殺されるのを見るのなんて嫌だよ!」
少女「・・・・・・」
少女「──いいえ。それは忘れてください。 神様とお友達なんて恐れ多い」
蛇神「──!!」
「さあ、では──」
少女「神様、私の身を捧げます。 なのでどうか、村をお救いください」
蛇神「あ。あああ・・・」
蛇神「あああああああああ────!!!!!!」
〇旅館の和室
時雨「それが、最初の1人だったんだ」
時雨「その後も、生け贄は続いて・・・ そして7人目がきた後にスサノオが僕のところにやってきた」
時雨「殺されるんだって思ったんだけど、何故かあいつはそうしなかった」
時雨「代わりに神としての力を封印され、地中深くに閉じ込められたんだ」
時雨「それからは用があるときだけ呼び出されて、終わったら地中に戻されて。 その繰り返しだよ」
玲奈「・・・」
玲奈(それが、時雨の過去・・・)
玲奈「じゃあ神に戻るのに失敗したって言うのは、人間を守るために戦いたくないから?」
時雨「ううん、それはもう割り切れてる。人間を嫌う気持ちのせいで大事なものを守れないのは嫌だし」
時雨「・・・でも大事なものができた所為で、怖くなっちゃった」
時雨「僕が神に戻ったら、大事なものが遠くに行っちゃうような気がして」
時雨「あの子みたいに・・・」
玲奈「そう・・・」
玲奈(思った以上に、深刻な問題だったのね)
玲奈(私に言えることは・・・)
玲奈(──あ)
玲奈「時雨。はい、これ」
時雨「これは・・・お菓子?」
玲奈「そう。温泉の帰りに売店で見かけたの」
玲奈「この辺りで結構人気のお土産らしいわ。食べてみて」
時雨「あんまり気分じゃないんだけど・・・ まあ、玲奈ちゃんがそう言うなら」
時雨「もぐもぐ・・・」
時雨「──ん!」
時雨「ふわふわで美味しい! それに、ちょっとシュークリームの味に似てる!」
玲奈「ふふ、そのお菓子、中にカスタードが入ってるのよ」
玲奈「・・・ねえ時雨。あなたのそのシュークリーム好きは、神様に戻っても変わらないの?」
時雨「え?」
時雨「うん。力が元に戻るだけで、それ以外は今と同じだけど・・・」
玲奈「だったら、少なくとも私から見た時雨は変わらないわ」
玲奈「神だろうと怪異だろうと、私にとって、あなたはシュークリーム好きで生活能力皆無で最近料理を頑張ろうとしてるただの時雨よ」
時雨「・・・なんだか、ちょっと悪口言われたような」
玲奈「ふふっ、そんなことないわよ」
玲奈「・・・だから、大丈夫。今回は、あなたが神と分かっても態度を変えない人間がいるから」
時雨「・・・」
時雨「・・・そっか。そうだったんだ」
時雨「ありがとう、玲奈ちゃん。すぐには難しいかもしれないけど、キミのお陰でなんとか乗り越えられる気がするよ」
玲奈「そう、よかったわ」
玲奈「さあ、それじゃあそろそろ寝ましょうか。明日朝一で転送陣を使って本部に戻らなくちゃいけないし」
〇黒
玲奈「お休み、時雨」
時雨「うん。お休み、玲奈ちゃん」
時雨「・・・・・・」
時雨「──ありがとう。絶対にキミのことは守って見せるよ」
水神として近くで見ていながら、なぜ起こる出来事を止められなかったのでしょう。
要らないって言えなかったのかなってのが気になりました。
悲しい過去ですね。