異世界アパート

金村リロ

第19話 隠された気持ち(脚本)

異世界アパート

金村リロ

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〇川に架かる橋
テツヤ「ふぁあぁあああ~・・・」
リリム「でっかいあくびねぇ」
テツヤ「仕方ないだろ。朝まで掃除してたんだから」
  数時間だけ仮眠を取って、今はリリムと一緒に買い出しに向かっている。
リリム「ほんと必死ね。アパートがなくなったら住むところと仕事がなくなるから?」
リリム「それとも、シロと離ればなれになるのが嫌だから?」
  リリムはニヤニヤと意地の悪い笑みをこちらに向けて来た。
テツヤ「お前の想像通りだよ。 俺はシロさんと離れるのが嫌だ。 だからこんな必死になってんだよ」
テツヤ(でも頑張る理由はそれだけじゃない)
テツヤ「それに、あのアパートはお前らと暮らした大事な場所だしな」
テツヤ「そこを守りたいって思うのは当然のことだろ」
リリム「・・・クサすぎ」
  なんて言いながらも、リリムはどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
リリム「ま、とりあえずあたしも頑張るわ。ミアの上司の好物たくさん教えてもらったから、ひたすらそれを作るわよ」
テツヤ「おう。最高に美味いやつ頼むぞ」
リリム「ただ、ミアのこと本当に信用していいかどうか、ちょっと微妙なのよね」
テツヤ(ミアは査察官という身分を伏せ、アパートの内情を調査していた)
テツヤ(疑わしく思ってしまう気持ち自体は理解できる)
リリム「なんで「委員会」側の存在が率先してアパートのことを守ろうとするの?」
リリム「疑いたくはないけど、何か目的があるのかしら」
テツヤ「俺はミアのこと信じたいけど──」
テツヤ(実際の所はわからない。それこそ本人にでも確かめない限り)
テツヤ(ミアの上司が来る前に、ちゃんと話すべきなんだろうな)

〇謎の植物の生えた庭
ミア「いよいよ明日ね」
テツヤ「やれることは全部やったつもりだけど、やっぱ不安だな」
ミア「そうね。結果がどうなるかは、誰にもわからないから」
テツヤ(ミアがなぜこのアパートを守ろうとするのか。 その理由を聞くなら今しかないだろう)
テツヤ「なあ、ミア。よかったら教えて欲しいんだ。どうしてお前は──」
ミア「こんなに必死になってアパートを存続させようとするのか、かしら?」
テツヤ「・・・!」
ミア「ふふ、当然気になるわよね。何か狙いがあるんじゃないかって疑いたくなる気持ちも分かるわ」
テツヤ「いや、そういうつもりじゃ──」
テツヤ(否定しようとしたが、疑う気持ちがゼロというわけじゃない)
テツヤ「悪い。正直なところ、かなり疑問には思ってた」
ミア「謝らなくてもいいのよ。私、疑われることには慣れてるから」
テツヤ「え?」
ミア「査察官の主な仕事はね、内部に不正がないか調査すること」
  そう語るミアの横顔には、寂しげな笑みが浮かんでいる。
ミア「私はこの仕事に誇りを持ってるわ。でも、査察官として仕事に赴いた場では当然警戒され避けられる」
テツヤ「それは・・・そうだよな」
テツヤ(俺だってもし最初にミアが査察官だって聞いてたら、絶対に避けなかったとは言い切れない)
ミア「正体を隠して潜入してる時はみんな私を警戒しないし、優しくしてくれるわ」
ミア「でも私のほうに嘘をついてるって罪悪感があるから、上手く人と関わることができなくて・・・」
  何かをこらえるように、ミアはぎゅっと下唇を噛む。
ミア「私の仕事は物事を調べてその秘密を暴くこと」
ミア「だから親しい友達ができなくても仕方ないってずっと思ってた」
ミア「でもね、ここに来てその考えが変わったの」
テツヤ「ここにって、このアパートにか?」
ミア「ええ。ここではみんな自分の肩書きや種族を気にせず、好きなように交流して絆を深めて行っていたでしょう?」
テツヤ「そうだな。リリムなんて最初あれだけ俺のこと嫌ってたのに、今はちゃんと受け入れてくれてる」

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