第18話 わずかな希望(脚本)
〇古いアパートの居間
シロ「このアパートが閉鎖されるって、いったいどういうことですか・・・!?」
急いでシロさんをリビングに呼び寄せ閉鎖のことを伝えると、彼女も俺たちと同じように動揺を見せた。
ミア「このアパートはもう「不要」と判断されたの・・・私のせいでね」
リリム「私のせい? それそういう意味?」
ミア「このアパートは本当に有用な物なのか長らく疑問視されてきた」
ミア「だから実体を調査するために、私という査察官がここに送り込まれたの」
アン=マリー「査察官? つまりあなたは「委員会」に所属する存在と言うことですか?」
アン=マリーの視線が、警戒するようなものに変わる。
テツヤ「お、おいおい。待てよ。その査察官とか委員会とかってなんなんだ?」
ソルーナ「委員会というのはこちらの世界における警察のようなものだ」
ソルーナ「査察官はその構成員。時に身分を隠し、内部監査に従事することもある」
ミア「そう・・・私はスパイとしてここへ来たの」
ミア「そしてあなたたちの生活やここで起こったことを事細かに記録し、それを上へと伝えた」
テツヤ「その結果、ここが閉鎖されることになったってことか・・・」
ソルーナ「ここでの生活も終わりか。平穏な日常がもう少し続くと思っていたのだがな」
アン=マリー「仕方ありませんね・・・上の決定は絶対。我々が閉鎖に反対すれど、それが覆ることはないでしょうから」
いつもの俺なら「また職探ししないといけないのか」なんて溜息をつくだけだろう。
テツヤ(でも今は違う。このアパートのことだけは諦めきれない)
テツヤ(ここには大切な仲間がたくさんいる。シロさんだって・・・!)
テツヤ(諦めるのは最後まで足掻いてからでも遅くない)
テツヤ「みんな──」
ミア「諦めるのはまだ早いわ」
そう言ってリビングの空気を変えたのは、意外にもミアだった。
シロ「それは閉鎖を中止させる方法があるということでしょうか!?」
ミア「そうよ。儀礼として、私の上司に当たる者が査察官としてここを訪れるわ」
ミア「その人にこのアパートの価値を証明できれば存続への道が開けるかもしれない」
リリム「その査察官ってのはいつ来るの?」
ミア「2日後ね」
ソルーナ「ふむ、かなり近いな」
ミア「可能性は薄いけれど、賭けてみない? これを逃せばもう、挽回のチャンスはないわ」
テツヤ「──やろう」
リリム「テツヤ・・・」
テツヤ「俺は可能性があるなら最後まで諦めたくない」
シロ「わ、私もです! 今の私にとって、ここは大切な場所なんです!」
部屋の中に満ちていた諦めのムード。
それはシロさんやミアの言葉で徐々に変化し、希望へと変わっていく。
リリム「いいわ、あたしも乗ってあげる。ただ指をくわえて見てるっていうのも性に合わないし」
ソルーナ「そうだな。可能性があるなら賭けない手はない」
アン=マリー「すべてソルーナ様のお心のままに・・・」
テツヤ「けど、アパートの価値を証明するってどうやるんだ?」
リリム「まずは見た目を整えるとか? 隅から隅まで掃除をして、修繕が必要なところがあれば直すの」
ミア「ええ。それから調査報告資料を作成して、委員会に気に入ってもらえそうなこちらの世界の情報や技術を片っ端から乗せるわ」
テツヤ「よし。それじゃ2日後の査察に向けて、力を合わせて頑張るぞ!」
シロ「はい!!」
ミア「リリムちゃんたちにはお掃除をお願いするわね」
テツヤ「それじゃ俺がありったけの掃除道具を出してくる」
ミア「ソルーナちゃんは私と一緒に、資料を作ってくれない?」
ソルーナ「了解した」
シロ「それでは、さっそく行動開始ですね!」
〇謎の植物の生えた庭
テツヤ(あ~肩も腰もバキバキだ・・・)
ひたすら掃除を続け、気付けば時刻は深夜になっていた。
テツヤ「よし、これで綺麗になった」
シロ「お疲れ様です、テツヤ殿」
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