異世界アパート

金村リロ

第17話 沈む夕日と彼女の想い(脚本)

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〇古いアパートの居間
  ソルーナの騒動が一段落し、アパートは再び平穏を取り戻した・・・はずだったのだが。
リリム「テツヤ、明日の12時にアパートの前集合。そのままデートに行くから気合い入れて準備しなさいよ」
テツヤ「は? デート? 俺とお前が?」
リリム「そんなわけないでしょ! 相手はシロよ」
テツヤ「は、はぁ!? そりゃどういうことだ!?」
リリム「あんたがいつまで経っても動かないから、あたしが一肌脱いでやろうと思ってね」
テツヤ「おまっ・・・なに勝手なこと・・・!」
リリム「とにかくそういうことだから。ま、精々頑張りなさい」

〇アパートの前
  デートの準備に思ったより時間がかかったこと、それと緊張もあって昨日はあまりよく眠れなかった。
  フラフラとした足取りでアパートの玄関へと向かうと──
シロ「おはようございます、テツヤ殿!」
  これからデートに行くのだと思うと、シロさんの笑顔がいつもより何倍も眩しく見えた。
シロ「今日はどこへ行くんですか?」
テツヤ「とりあえず俺に付いてきてくれ」

〇華やかな広場
シロ「おお・・・! こんなに大きな公園があったのですね!」
テツヤ(定番は映画とか遊園地とからしいけど、シロさん大きい音苦手だろうし)
シロ「こんなに自由に走り回るのは久しぶりです!」
シロ「テツヤ殿も一緒にどうですか? 気持ちいいですよ!!」
  シロさんがこちらに駆け寄ってきたその時、ぐぅと小さな音があたりに響く。
シロ「聞こえましたか・・・?」
テツヤ「ははは、もう昼過ぎだもんな。メシにするか」
シロ「しかし近くにお店はなさそうですが」
テツヤ「弁当作ってき来たから大丈夫だ」
シロ「お、お弁当ですか!?」
テツヤ(こちらの食べ物に慣れてきたとはいえシロさんは匂いに敏感だ)
テツヤ(外で弁当を食べる方が負担も少ないだろう)
シロ「では、いただきます!」
テツヤ「最近バイトのほうはどうなんだ?」
シロ「子供たちとも仲良くなって、プールが終わったあとは校庭で一緒に遊んだりしてますよ!」
テツヤ「そりゃよかった」
シロ「ただ・・・学校のプールの授業はもう少しで終了してしまうそうなんです」
テツヤ「そっか。なんだかんだ言って、夏ももう終わりだもんな」
  何か励ましの言葉をかけられれば。そんなことを考えていると──
シロ「ですが、代わりにとスイミングスクールの監視員のバイトを紹介していただけることになったんです!」
テツヤ「それは・・・すごいなあ、シロさんは」
テツヤ(きっとこの人はもう俺に頼らなくても、立派にこっちの世界で暮らしていけるだろう)
  それに安心感とちょっとした寂しさを覚えてしまう。
シロ「ふう。ごちそうさまでした、テツヤ殿! 大変美味しかったです!!」
  ぼんやり物思いにふけりながら食事をしていたら、弁当箱が空になっていた。
シロ「これからどうしますか?」
テツヤ「あっちの方に花畑とか色々あるらしいから、見に行かないか?」
シロ「是非とも!」

〇華やかな広場
テツヤ「もうこんな時間か」
  そろそろ帰路についていい頃なのだが、俺は中々帰ろうと言い出せないでいた。
  そんな中、隣に立つシロさんの様子をチラリとうかがう。
シロ「私、守(もり)になれてよかったです」
テツヤ「え・・・?」
シロ「この役職に任命されたときは、自分は役立たずだと言われてしまった気がして・・・すごく悲しかったです」
シロ「でも」
  シロさんはぱっと顔を上げ、沈んでいく太陽を眩しそうに見つめる。
シロ「この世界に来て、たくさんの居場所が見つかりました。 アパートだったり、アルバイト先だったり」
シロ「ささやかだけれど、とても暖かい・・・私を必要としてくれる人たちがいる、最高の場所です」
  大きな目が俺を真っ直ぐ射貫く。
シロ「それを見つけられたのは、テツヤ殿おかげです」
テツヤ「いや、俺は別に何も」
シロ「いいえ、あなたがいたからです」

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