タイムトラベラーウラシマ(脚本)
〇教室
ナツ「雨、止まねーな」
トシ「テスト勉強がはかどるな!」
ナツ「もう7時だぜ? いい加減やんでくれねーとびしょ濡れだよ」
ナツ「勉強も飽きてきたしなぁ・・・」
トシ「ちょうどいい機会だ。 予習まで済ませちまおうぜ?」
トシ「こんな機会、めったにないぞ?」
ナツ「・・・それもそうだな」
ナツ「よっし! やるぞー!」
トシ「ナツ! マンガ描いたから読んでくれ!」
ナツ「飽きてんじゃねーか」
〇研究所の中枢
タイムトラベラーウラシマ
シーケンス移行します。
最終シーケンス完了まで──3、2、1
個体番号0015SS、射出します。
シーケンス終了します。
0015SS(イチゴ)「個体番号0015SS、初期設定開始します。 生体情報アップデート──完了。 現在地取得──完了」
0015SS(イチゴ)「準備完了まで──100%」
0015SS(イチゴ)「起動します」
0015SS(イチゴ)「データベース参照申請──承認。 個体情報アップデート」
0015SS(イチゴ)「排除対象──ウラシマタロウ」
0015SS(イチゴ)「ミッション──スタート」
〇海辺
少年A「しねー!」
少年B「バーカ!バーカ!」
タロウ「うわーん! 何もしてないのにー!」
0015SS(イチゴ)「少年よ」
少年A「な、なんだよオマエ!?」
少年B「や、やる気・・・!?」
0015SS(イチゴ)「もっと徹底的にやりなさい。 ウラシマタロウを殺すのです」
少年A「こ、ころす・・・?」
少年B「こ、この人おかしいよ!」
少年B「髪の色おかしいし、目の色赤いし、 服装もヘンだし、なんか偉そうだし!」
少年A「もう行こうぜ!」
0015SS(イチゴ)「理解不能 理解不能」
タロウ「あの、助けていただいて ありがとうございます」
タロウ「お礼に竜宮城へとご案内します」
0015SS(イチゴ)「排除します」
タロウ「ぎゃああああああ!!」
0015SS(イチゴ)「ミッションコンプリート」
こうして、0015SSの初任務は幕を閉じた。
0015SS(イチゴ)「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
〇教室
トシ「おしまい♪」
ナツ「させない♪」
トシ「おいおい、解放してくれよ〜」
ナツ「ちゃんと最後まで描けよ〜?」
トシ「うわぁ、こわ〜い! 目が笑ってな〜い!」
ナツ「・・・・・・」
トシ「笑ってぇ〜!」
〇海辺
タイムトラベラーウラシマ 2nd Season
タロウ「助けていただき、ありがとうございます。 このカメもお礼をしたいそうです」
リュウグウジョウ、ツレテイク。
ウラシマ、ルスバン。
タロウ「わかった! 行ってらっしゃーい!」
〇水中
0015SS(イチゴ)「排除対象を見失いました。 エラー エラー エラー」
0015SS(イチゴ)「地上に戻りなさい」
ワカリマシタ。
〇海辺
少年A「ウラシマなら潜ってどっか行ったぞ」
0015SS(イチゴ)「排除対象を見失いました。 エラー エラー エラー」
0015SS(イチゴ)「竜宮城へ向かいなさい」
ワカリマシタ
〇謁見の間
オトヒメ「ウラシマタロウは地上へ戻りました」
0015SS(イチゴ)「排除対象を見失いました エラー エラー エラー」
0015SS(イチゴ)「地上へ戻りなさい」
ワカリマシタ
〇海辺
タロウ「こ、これは・・・!?」
0015SS(イチゴ)「ウラシマタロウ、発見 排除します」
タロウ「のわぁぁぁああああああ!!」
0015SS(イチゴ)「ミッションコンプリート」
0015SS(イチゴ)「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
〇教室
トシ「おしまい♪」
ナツ「同じじゃねぇか」
ナツ「ウラシマが不憫過ぎる」
ナツ「意味がありそうで意味のない あのアンドロイド?は何?」
トシ「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
トシ「ご一緒に! さん、ハイ!」
ナツ「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
ナツ「・・・・・・」
ナツ「ごまかされねぇよ!?」
〇謁見の間
タイムトラベラーウラシマ 3rd Season
0015SS(イチゴ)「ウラシマタロウ、発見 排除します」
オトヒメ「させません!」
オトヒメ「滅びるのはアナタです!」
0015SS(イチゴ)「戦闘モードへ移行します」
0015SS(イチゴ)「滅殺」
オトヒメ「きゃああああああ!!」
タロウ「あわ、あわわわわ・・・」
タロウ「・・・・・・」
タロウ「カメを助けただけなのに・・・」
0015SS(イチゴ)「ミッションコンプリート」
0015SS(イチゴ)「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
〇教室
ナツ「善行積んだだけなのに・・・!」
ナツ「あんな人生、あんまりだって・・・!」
トシ「0015SSがタロウを狙うのには理由がある」
トシ「・・・と思う」
ナツ「思いつきでウラシマを不幸にしたな!?」
ナツ「ゼッタイに許さないからな!」
トシ「怒られたぁ~!」
トシ「親にも怒られたことないのに~!」
ナツ「お坊ちゃんめ!!」
ナツ「オレをパパと思え!」
トシ「パ・・・パパ?」
ナツ「・・・・・・」
ナツ「・・・・・・」
ナツ((・・・悪くない))
〇研究所の中枢
タイムトラベラーウラシマ 4th Saeson
0015SS(イチゴ)「ウラシマタロウ、ロスト。 ターゲットをアップデートします」
0015SS(イチゴ)「完了しました。 ターゲット──時空干渉装置『玉手箱』」
オトヒメ「これは絶対に渡しません!」
0015SS(イチゴ)「ターゲット、捕捉しました。 殲滅行動を許可します」
0015SS(イチゴ)「オペレーション・ジェノサイド ──開始します」
オトヒメ「やめなさい! そんなことすればアナタも・・・!」
オトヒメ「アナタも時空のチリと化すのですよ!?」
0015SS(イチゴ)「ミッションを最優先します」
オトヒメ「あ・・・!」
オトヒメ「『玉手箱』が・・・! 水の民が築き上げた文明の粋が・・・!」
時空の歪みを検知しました。
座標『リュウグウ』
復旧ポイントをアップデートします。
オトヒメ「あぁ、なんてことを・・・!」
0015SS(イチゴ)「ミッションコンプリート」
0015SS(イチゴ)「音声の接続が検知されました。 つなぎます」
0015SS(イチゴ)「『あっははは!! 残念だったねぇ!! これでもう、キミたちは歴史に介入 できない!!』」
0015SS(イチゴ)「『この世界は──未来は、ボクのものだ!』」
0015SS(イチゴ)「通信、切断されました」
0015SS(イチゴ)「個体番号0015SSは30秒後にロストします 直ちに退避してください」
0015SS(イチゴ)「繰り返します──」
オトヒメ「もう、おしまいですね・・・」
オトヒメ「この世界は・・・月の民のもの」
0015SS(イチゴ)「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
〇教室
ナツ「・・・・・・」
トシ「空いた口が塞がらないみたいだな!」
ナツ「『ゼロゼロイチゴー』のくだり、必要?」
トシ「いるだろ!!」
トシ「あのセリフを通して、 人間の気持ちを理解していくんだよ!」
ナツ「むしろ煽ってんじゃん」
ナツ「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆ ──ボンッ!!」
ナツ「・・・ってひどくね?」
トシ「楽しそうだな!」
ナツ「排除するぞ?」
〇時計台の中
タイムトラベラーウラシマ Final Season
091082(タコチュー)「何故だ!? 何故キミがいる!?」
091082(タコチュー)「キミはイチゴに抹殺され、 『玉手箱』を手に入れられなかったはず!」
091082(タコチュー)「時空転移できるはずがない!! なのに何故!?」
091082(タコチュー)「答えろ──ウラシマタロウッ!!」
タロウ「『玉手箱』を開けてから、老体になる までの間、ボクには『時間』があった」
タロウ「キミらが繰り返し竜宮城を 襲撃していたように ボクも繰り返しそれを阻止していた」
タロウ「・・・あくまでも『過程』だけ、ね」
0015SS(イチゴ)「・・・・・・」
091082(タコチュー)「ならば何故、月の民は地球を 支配できないんだ!?」
091082(タコチュー)「キミたちはもう 時空を転移できないはずなのに!!」
タロウ「ボクはもう、タイムマシンを完成させたよ ・・・キミたちが知らない未来で」
091082(タコチュー)「何ぃ!?」
タロウ「歴史は分岐している。 そのたったひとつにでも 『玉手箱』を開けたボクがいれば・・・」
タロウ「ボクはタイムマシンを・・・ 水の民の文明を未来につなげられる」
091082(タコチュー)「ク、クッソーッ!! こうなったら、キミたち人類の歴史ごと 消し去ってやる!!」
0015SS(イチゴ)「・・・それは不可能です。 我らのデータベースには有史以前の チェックポイントがありません」
0015SS(イチゴ)「過程は変えることができても、 1を0にすることはできません」
091082(タコチュー)「オ、オマエまでボクのジャマを するのか!?」
091082(タコチュー)「アンドロイドの分際で生意気なんだよ!!」
0015SS(イチゴ)「・・・タコチュー。 ジャマしているのは月の民のほうです」
0015SS(イチゴ)「我らには月という住処があるはずです。 資源に目がくらみ、侵略するのは 愚の骨頂・・・」
0015SS(イチゴ)「──ですよね? ドッペル」
000000(ドッペル)「月の民の総意は『和睦』 そして『共存』です」
000000(ドッペル)「タコチュー、帰りましょう。 アナタが月の民を愛する気持ち、 それは痛いほどわかります」
091082(タコチュー)「・・・・・・」
091082(タコチュー)「そうだ! 1度地球をぶっ壊せばいいんだ!」
091082(タコチュー)「過程が変えられるなら、 結果だって1つに集約できるはず!」
000000(ドッペル)「タコチュー、待ちなさい! イチゴ! タコチューを!」
0015SS(イチゴ)「必ず連れ戻します!」
〇教室
ナツ「き、急に話がよくわからなくなった・・・」
ナツ「それっぽい言葉を並べてるだけじゃねーの?」
トシ「ちゃんと考えてるぞ!」
トシ「タロウの服が変わったのは タロウが流行に敏感な若者だからだ!」
トシ「未来のトレンドを先取りしたってことさ!」
ナツ「そっか、ちゃんと考えてるんだな」
ナツ「・・・・・・」
ナツ((・・・どうでもいい))
〇魔界
0015SS(イチゴ)「やああああああ!!」
091082(タコチュー)「時空の果てにチリと化せ!!」
0015SS(イチゴ)「ぐっ・・・! 月の引力には、逆らえない・・・!」
091082(タコチュー)「あっはははは!! ジャマ者は消えた!!」
091082(タコチュー)「これでセカイは月の民のものだぁ!!」
???「誰のものにもならないよ」
091082(タコチュー)「な、何っ・・・!?」
タロウ「月の引力には引かれない。 ボクは──人の子だから」
091082(タコチュー)「オ、オマエェェェエエエ!!」
091082(タコチュー)「これで終わりだぁぁぁあああ!!」
091082(タコチュー)「き、消えた・・・!?」
091082(タコチュー)「い、いつの間に・・・!?」
タロウ「一緒にお話ししよう? ボクは、キミのことが知りたいから」
091082(タコチュー)「やめろぉっ!! ボクは・・・月の・・・!!」
0015SS(イチゴ)「タコチュー・・・」
タロウ「ボクも、もう行かなきゃ・・・」
タロウ「ひとつの命を時の狭間に閉じ込めたんだ」
タロウ「ボクも、罰を受けないと」
0015SS(イチゴ)「待ってください!」
0015SS(イチゴ)「ワタシは・・・アナタを排除 したくありません」
タロウ「・・・時空に干渉するということは、 時の流れに乗れないということ」
タロウ「ボクが生きている限り、 時の流れは分散してしまう」
タロウ「未来が視えてしまう。 それは・・・業だよ」
タロウ「水の民が水底に閉じ込められたように ボクも時の狭間に閉じ込められなきゃ」
タロウ「それにタコチューの話し相手にならないと」
0015SS(イチゴ)「イヤッ! イヤ、イヤ、イヤァ!!」
0015SS(イチゴ)「アナタがいたから、ワタシは 『ワタシ』を認識できました」
0015SS(イチゴ)「アナタのおかげなのですよ・・・?」
タロウ「・・・・・・」
0015SS(イチゴ)「アナタを排除したワタシは・・・ 一体、誰が罰してくれるのですか?」
000000(ドッペル)「イチゴ、月の民の総意は、 アナタが生きることを望んでいます」
0015SS(イチゴ)「ドッペル・・・」
000000(ドッペル)「アナタは新たな命の可能性 我々にも人の子の気持ちがわかることの、 通じ合えることの証明なのです」
0015SS(イチゴ)「・・・・・・」
0015SS(イチゴ)「ワタシ──生きます。 月の民と水の民、そして人の子の 橋渡しとなります」
0015SS(イチゴ)「そして、彼らの業を清算し、 必ずアナタを──迎えに行きます」
0015SS(イチゴ)「・・・また、会いましょう。 ウラシマタロウ」
タロウ「バイバイ、イチゴちゃん」
〇海辺
タロウ「こ、これは・・・!?」
0015SS(イチゴ)「ウラシマタロウ、発見 排除します」
タロウ「のわぁぁぁああああああ!!」
0015SS(イチゴ)「ミッションコンプリート」
0015SS(イチゴ)「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
0015SS(イチゴ)((・・・・・・))
0015SS(イチゴ)((・・・愛しています))
0015SS(イチゴ)((──人の子よ))
〇教室
トシ「お、雨がやんだな! 帰ろうぜ!」
ナツ「ごめん」
トシ「え?」
ナツ「オマエなりにちゃんと 話考えてたんだな」
ナツ「やっぱすげーよ、トシは」
トシ「・・・・・・」
トシ((思いつきだなんて言えない・・・))
ナツ「よーし! トシ先生の次回作に期待しちゃおーかな!」
トシ((やっべ、ハードル上がっちまった・・・))
トシ((どうしよう・・・ガッカリさせるのは 悪いしな))
トシ((・・・・・・))
ナツ「どうした? トシ」
トシ「──という、実体験でした♪」
トシ「ゼロゼロイチゴー サクセッション☆」
ナツ「まさかオマエが、イチゴちゃん・・・!?」
トシ「うん♪」
ナツ「知らなかった〜!」
ナツ「──なワケあるかい!!」
トシ「思いつきで言ってみた」
ナツ「冗談言ってねーで帰るぞ!」
トシ「うん♪」
トシ「ちなみにさっきのマンガも思いつきで描いた」
ナツ「・・・・・・」
ナツ「・・・天才かよ」
トシ「天才だよ〜ん☆」
ナツ「・・・・・・」
トシ「無言で肩パンしないでぇ〜!」
「玉手箱」が時空干渉装置というオーパーツだったなんて、眼から鱗です。final seasonから急にスケールが大きくなって頭がついていかなくなったけど面白かったです。ナツのツッコミまで全部含めてトシの作品なんですよね。トシもそれが嬉しくて仕方ないみたい。
浦島太郎の題材でここまで話を広げられるのですから、本当に天才なのかもしれませんね笑
毎回爆破される浦島太郎が不遇でなりませんが笑
さすがトシ先生、中盤からどんどん奥行きのある話に加速していきました。タロウの思いやり、いちごちゃんがAIロボットでありながらタロウに気持ちを委ねたところもよかったです。【排除します!】このフレーズ、使えそう!