異世界アパート

金村リロ

第16話 姉妹の行方(脚本)

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〇謎の植物の生えた庭
ルナーレ「あー、ようやく部屋から出てきた。久しぶりだね、お姉♪」
ソルーナ「ルナーレ・・・」
ルナーレ「本当はそっちの人間でお姉の心、バッキバキに折って扱いやすい状態にしてから連れ戻すつもりだったんだけど作戦変更」
ルナーレ「ちょっと強引に行かせてもらうから」
ソルーナ「そのつもりなら、こちらが手加減はせぬぞ」
ルナーレ「誰があんたと戦うって言った?」
  ルナーレの目が俺に向けられる。こちらに向かって伸ばされた掌から、炎が放たれ──
ソルーナ「テツヤ!」
ルナーレ「はは。人間をかばうなんて、ほんとお姉って馬鹿」
ソルーナ「くっ・・・」
ルナーレ「傷を負った状態で、その人間守りながら戦って、あたしに勝てるかなあ? いくら優秀なお姉でも無理じゃない?」
  再びルナーレの掌がこちらに向けられたその時。
アン=マリー「そこまでだ」
  突然現れたマリーが、後ろからルナーレの喉元にナイフを突きつけた。
ルナーレ「あんた、なんでここに! あれだけ念入りに拘束して閉じ込めたはずなのに!」
アン=マリー「主の危機とあらば駆けつけるのが従者の務め。そして、主の敵を排除するのも・・・」
ソルーナ「やめろ、アン=マリー!!」
アン=マリー「しかし、ソルーナ様・・・!」
ソルーナ「ナイフを下ろせ。ルナーレから離れるんだ」
  ソルーナの命令に逆らうことはできないのか、マリーはゆっくりと刃物を下ろした。
テツヤ「ソルーナ。事情があるのはわかるが、妹には一度向こうの世界に帰ってもらおう。 今の状態で話し合うのは危険すぎる」
アン=マリー「テツヤ様の言うとおりです」
ルナーレ「は? あんたたちは関係ないでしょ」
アン=マリー「そんなことはありません! 私はソルーナ様の従者として──」
ソルーナ「いや、ルナーレをここまで追い詰めたのは、我自身。全て身から出た錆だ」
ソルーナ「家を強引に出たことは後悔していない。しかし連れ戻そうと説得しに来た者たちを全て拒絶したことは後悔している」
ソルーナ「そなたも何度か、ここを尋ねてきてくれていたのだろう?」
ルナーレ「別に・・・父様と母様に頼まれて仕方なくだし」
ソルーナ「そうであろう。そなたは昔から、我のことを嫌悪していたからな」
ルナーレ「それは・・・」
ソルーナ「隠さずともよい。昔から気付いておった。周囲が我らを比べることもあり、自然と競い合うようになってしまっ」
ルナーレ「そうだね。父様と母様はいつもあたしたちに言った」
ルナーレ「競い合え、勝ち抜け、姉妹であっても情けをかけるな」
ルナーレ「あたしたちの関係は徐々にいびつになって・・・気付いたら、大きな壁が出来てた」
ソルーナ「我が家を出たことで、そなたにもさぞかし負担をかけただろう」
ソルーナ「今回のような形で我に復讐しようと思うのも当然のことだ」
ルナーレ「・・・・・・」
ソルーナ「そなたの感じた苦しみには遠く及ばぬかもしれぬが、我は十二分に傷ついた」
ソルーナ「実の妹をここまで追い込んでしまった、自分の不甲斐なさに気付かされてな・・・すまなかったルナーレ」
  頭を下げた彼女を見て、ルナーレは深く溜息をついた。
ルナーレ「・・・ほんと、お姉って馬鹿だよね」
ソルーナ「む?」
ルナーレ「マジのマジの大馬鹿! 最年少の宮廷魔術師で希代の天才とか言われてたけど、やっぱ馬鹿!」
ルナーレ「ほんっとーになんもわかってない!!」
ルナーレ「確かにお姉のことを恨む気持ちはあるよ! あんな家に1人だけあたしを置いていって最低って思った!」
ルナーレ「でもそれは嫌いだからじゃない!!」
ルナーレ「あたしはずっと、お姉のことが好きだった!」
ルナーレ「なんでもできるお姉は、ずっとあたしの憧れだった!!」
ルナーレ「でもお姉が守(もり)になったあと・・・」

〇王宮の広間
獣人の衛兵「まさかあのソルーナが進んで守になるとはね」
エルフの神官「王宮薬師にまで上り詰めたのに、全てを捨てるなんて馬鹿だよな」
エルフの神官「落ちた天才・・・これからはそう言われるだろうさ」
ルナーレ「・・・・・・」

〇謎の植物の生えた庭
ルナーレ「お姉は誰にも負けない才能を持ってるのに、守になっただけで王宮中で笑い物になった。あたしはそれが許せなかった」
ルナーレ「お姉は誰よりも凄いのに」
ルナーレ「だからもう二度とこの世界に来ようなんて思わないよう、徹底的に傷つけてから連れ戻そうと思ったの」
ソルーナ「ではルナーレ、そなたは我を想って・・・」
ルナーレ「そうだよ! あたしはお姉が好きだから・・・誰よりも好きだから、傷つけようとしたの!!」

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