第15話 魔法にかけられて(脚本)
〇オフィスビル前の道
マリーを追いかけ俺は全力で走った。
アン=マリー「巧妙に隠されていますが、この方向に魔力が続いています!」
テツヤ「いやでも、なんの目的があって魔法であの編集者を操るんだよ!」
アン=マリー「誰かがソルーナ様のデビューを妨害しようとしているのかもしれません!」
テツヤ「んなバカな話あるか!」
アン=マリー「いいえ! その可能性は否定できません!!」
〇街中の公園
アン=マリー「ここに術者がいるはずです」
???「あっれー、案外早くバレちゃった♪」
テツヤ(ソ、ソルーナ・・・!?)
どうしてここにと思ったが、顔が瓜二つと言うだけで服装も雰囲気もまったく違っている。
アン=マリー「やはり犯人はあなたでしたか。ルナーレ様」
テツヤ「ルナーレ・・・?」
アン=マリー「このお方は、ソルーナ様の双子の妹なのです」
それを聞いて顔が瓜二つであることに合点は行くが、今の問題はそこじゃない。
テツヤ(さっきマリーが言ってたことが正しいとすれば──)
テツヤ「こいつは編集者を操って、ソルーナの書籍化の話を潰そうとしてたってことになるよな・・・」
アン=マリー「はい、恐らくは」
アン=マリー「ソルーナ様は電話越しにやりとりをしていたせいで、あの編集者が魔法で操られていることに気付けなかったのでしょう」
テツヤ「でも、なんでそんなことを」
アン=マリー「全てはソルーナ様を家に連れ戻すために・・・そうですね?」
ルナーレ「せいかーい。父様と母様がうるさいのよねー。早くあいつを連れ戻せってね」
ルナーレは悪びれることなくそう言ってのけた。
ルナーレ「てかお姉もわざわざこっちの世界来て、小説書くのに夢中ってヤバいよね? 本気で引く」
テツヤ「だからって、こんなやり方することはないだろ! 自分が何をしたのかわかってるのか!?」
ルナーレ「は? 赤の他人に口出しされたくないんだけど」
ルナーレ「サルミネン家の者は、一族繁栄のため全てを差し出す」
ルナーレ「あの家に生まれた以上、それは受け入れるべき運命なわけ」
ルナーレ「そこから1人だけ逃げ出すなんて、許せるわけないでしょ」
突然、目の前で光が弾ける。何が起こったかはわからないが、溢れ出る魔力が周囲を包んでいることは俺にも理解できた。
ルナーレ「お姉が直接編集に会いに来なかったのは想定外だったけど」
ルナーレ「ま、あんたたちを上手く使えばそこはなんとでもなるしね」
アン=マリー「まさか・・・!」
ルナーレ「あたしを追い詰めたつもりだったらしいけど、残念♪」
ルナーレ「あんたたちをおびき出すためにわざと魔力の痕跡を残したのよ」
光の球のようなものがマリーの体を直撃する。
それを受けた彼女は短くうめき声を上げ、その場に倒れ込んでしまった。
テツヤ「お前・・・!」
怒りを込めて睨もうと、ルナーレは一向にひるまない。
それどころか、俺の方へと近づいてきて。
ルナーレ「あんたには『最後の仕上げ』、やってもらうから♪」
浮遊感のようなものが体を包んだ瞬間、俺の意識はふっと途切れた。
〇アパートの前
テツヤ「あれ・・・?」
気がつくと、俺はアパートの前に立っていた。
テツヤ「えーっと、俺なにしてたんだっけ? たしか今日はマリーと編集部に行って、そこで編集者と話をして、それから──」
テツヤ「っ・・・!」
記憶を辿っていると突然頭痛に襲われる。まるでそれ以上何も思い出すなと言われているかのようだった。
テツヤ(とにかく、ソルーナに会わないと)
理由はわからないが、そんな使命感が俺を突き動かす。
〇オタクの部屋
テツヤ「ソルーナ、戻ったぞ」
ソルーナ「ご苦労だった。話し合いのほうはどうだった?」
まだうっすらと痛む頭をさすりながら、俺は必死に言葉を探す。すると──
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