瑠璃の鎖

椎名つぼみ

第1話:るり『私だけのジェムストーン』(脚本)

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〇海岸の岩場
九条 るり「いや、熱い!        助けて、あまね!!」
九条 るり「あまね・・・」

〇黒
  あの夏──
  あなたはどうして裏切ったの?
  ねえ、あまね。

〇大広間
  2022年12月 都内某所
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
九条 るり「どいて」
九条 るり「ご婚約、おめでとうございます。 お2人とも」
「・・・」
桂 桃華(ももか)「ありがとう、るりちゃん。 今日は来てくれて、とっても嬉しい♥️」
桂 桃華(ももか)「でも何かわざわざ悪いわぁ。 そんな足で・・・」
九条 るり「・・・」
九条 るり「ご心配なく。 少しなら歩けるのよ」
九条 るり「ほら、見て────」
藤原 周(あまね)「るり、大丈夫か!?」
九条 るり「・・・」
九条 るり「少し疲れたわ。 静かなところで休みたい」
九条 るり「抱き上げて、連れていって。 あまね」
藤原 周(あまね)「・・・」
藤原 周(あまね)「腕をこっちへ・・・ そう、しっかり掴まれ」
桂 桃華(ももか)「ちょっ・・・! どこ行くのよ! 周さんは私の婚約者よ!!」
九条 るり「・・・でも、それ以前に」
九条 るり「彼は私のモノでしょう?」
九条 るり「行くわよ。 もう1秒も、こんな所にいたくないわ」
藤原 周(あまね)「・・・少し、失礼する」
桂 桃華(ももか)「せっかく・・・ 苦労して手に入れたのに」

〇教会の控室
  周は私に逆らえない。
  逆らうなんて許さない。
九条 るり「ねえ、そのカフスってルビー? 桃華さんからのプレゼントかしら」
藤原 周(あまね)「ああ。でもコレは、 今日だけ付けるように渡されて──」
九条 るり「今すぐ外して。目障りなの! ジュエリーは私がデザインした物だけって、約束したでしょ!?」
藤原 周(あまね)「・・・分かった」
九条 るり「その代わり、これをあげるわ」
藤原 周(あまね)「ラピスラズリ?」
九条 るり「ええ、新作よ。 あまねには瑠璃色がよく似合うもの」
藤原 周(あまね)「るり・・・」
藤原 周(あまね)「まるで手錠だな。 どうしたら、許してくれるんだ?」
九条 るり「今すぐここで、甘いキスをしてくれたら 今日のことは許してあげる」
藤原 周(あまね)「俺は父親になるんだ。 そういう事は、もうしたくない」
九条 るり「何よ、偽善者ぶって! 安心しなさいよ」
九条 るり「キスくらいじゃ私まで『オメデタ』 なんてことには、ならないわ」
九条 るり「はい、してみて♥️」
藤原 周(あまね)「だから、俺は──」
九条 るり「早くしなさい! 足が痛むの」
藤原 周(あまね)「・・・」
  彫刻みたいに整ったカオを、わずかに歪ませて
  周はゆっくりと私に唇を重ねた。
  桃華への後ろめたさからか、遠慮がちに動く舌先。
  焦れた私は、彼の頭を乱暴に押さえつけ、
  より深く、口内に吐息を送りこませる。
「ふぅ・・・あまね・・・」
  動きが激しくなり、ますます湿り気を帯びる唇。
  嬉しくて。気持ちよくて。
  甘い声が思わずこぼれてしまう。
九条 るり(やだ・・・)
九条 るり(これじゃあ私の方が「好き」って 伝えてるみたいじゃない)
九条 るり(でも、あまねの躰だって反応して)
藤原 周(あまね)「るり、駄目だ。 こんな場所で・・・手を離せ」
九条 るり「何で? ちょっと興奮しない?」
藤原 周(あまね)「・・・」
藤原 周(あまね)「お前はそんな女じゃない。 九条家令嬢の名に、傷がつくぞ」
九条 るり「もうとっくに傷だらけよ。 そんなこと気にするなら、あまねが私を貰えばいいじゃない」
藤原 周(あまね)「・・・すまない」
藤原 周(あまね)「あの日のことは何をしてでも償う。 俺が一生、お前の足になる」
九条 るり「だったら、私と──」
藤原 周(あまね)「でも結婚は、桃華とする」
九条 るり「何でよ。うち・・・九条よりも、 桂グループがそんなに魅力なの?」
九条 るり(そうだと、言って。 財力が欲しいだけなんだって・・・)
藤原 周(あまね)「違う!」
藤原 周(あまね)「・・・彼女を愛してるんだ」
九条 るり(聞きたくない。そんな言葉)

〇黒
  逃げるなんて許さない。
  絶対に取り戻す。
  私の、あまね────
  他の女との幸せを望むなら、その羽をもぎ取ってあげる。
  そして私が一生、あなたを飼い殺すのよ。

〇大学の広場
  2017年10月 
  
  東京秀麗大学 芸術学部
  周に出会ったのは、5年前。
  大学2年の秋。
  初めて手がけるブランドのことで、私の頭がいっぱいの時だった。

〇美術室
九条 るり(素敵なデザイン・・・)
九条 るり(あの細かい透かしといい、繊細なミル打ちといい。 いい仕事してるわ)
九条 るり「ねえ、この酒器って誰が作ったの?」
藤原 周(あまね)「ああ、それ。俺のだけど」
九条 るり(キレイな男の人)
九条 るり「・・・あの」
九条 るり「この作品、エングレーヴィングしてるのね。 磨きも丁寧だし。 太陽光ですごく輝きそう」
藤原 周(あまね)「気に入ったのか?」
九条 るり「ええ、とても! 二十歳になったらこの盃で、乾杯したいって思うくらい」
藤原 周(あまね)「じゃあ、それやるよ」
九条 るり「え!?」
藤原 周(あまね)「お祝いに」
九条 るり「ありがとう。えっと」
藤原 周(あまね)「藤原 周だ。造形科3年の」
九条 るり「先輩なのね。私はデザイン科2年の──」
藤原 周(あまね)「九条 るり、だろ? 知ってる。 旧財閥のご令嬢って、ここでは有名だ」
九条 るり「・・・」
九条 るり「ご存じなら、話が早いわ。 これ見て」
藤原 周(あまね)「デザイン画?」
九条 るり「あなた私と一緒に、ジュエリーを制作してみない?」
藤原 周(あまね)「え!?」
九条 るり「うちが宝石商なの知ってるでしょ? 今度ね、若者向けのブランドを新規で立ち上げることになったの」
九条 るり「『もっと気軽にジュエリーを』がコンセプトで、デザインは私が担当するんだけど」
九条 るり「あなたにはそれを形にするための、原型師になって欲しいの」
藤原 周(あまね)「スカウトか? 何で俺なんかを」
藤原 周(あまね)「コンテストの受賞者だって、この大学にはけっこういるだろ?」
九条 るり「関係ないわ。あなたがいい! この作品と、その長い指に一目惚れしたの」
九条 るり「やってくれるわよね。藤原 あまね。 あなたの才能と時間を、私にちょうだい」
藤原 周(あまね)「・・・」
藤原 周(あまね)「すごい告白だな」
藤原 周(あまね)「いいよ、手伝う。面白そうだ」
九条 るり「ありがとう」

〇大学の広場
九条 るり(今日はあまねと、石膏型を作ろう)
桂 桃華(ももか)「る~りちゃん♥️ 今夜のパーティー、うちの車に乗ってかない?」
九条 るり(うわ、桃華さん!)
九条 るり「すみません。パーティーはお断りで・・・」
桂 桃華(ももか)「ダメよ! 西園寺家の次男に、 あなたをどうしても連れて来いって、言われてるの」
九条 るり「だからそれも、困ってて・・・」
九条 るり「あ、そう言えば!」
九条 るり「先月、桂グループ主催の 『造形作品コンテスト』がありましたよね?」
桂 桃華(ももか)「ああ、私が審査に入った。あれ?」
九条 るり「金の酒器が、最終に残ってたと思うんですけど」
九条 るり「あの作品、何で受賞を逃したか覚えてます?」

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コメント

  • すっっっごい没入感でした👏
    背景とかキャラとかのリアリティーがすさまじいです!
    キラキラな世界がカラーコミックと相性良さそうだし、これ、実写ドラマとかでも見てみたいな…。
    続きもじっくり追いますね☺️

  • タネや仕掛けがわからない手品を見た感じの今です。あ、次回、見に行ってきます。

  • 面白かったー😆るりの愛があまねを縛り付ける場面も、濃厚なキスシーンも胸に残る流石な描写でした。
    爽やかな学生時代は初々しい二人でしたが、なぜこんなことになってしまったのか……
    るりの愛するが故の執着、そして逆らえないあまねとの微妙な関係性も今後のキーになりそうですね!
    続きも時間見つけて読ませていただきます!!

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