第四話 最悪なオトモダチ(脚本)
〇歯車
エラトの魂跡をクロノアに授け、当時のグラディルク城主は寿命を全うした。
グラディルク城の地下深くでクロノアは考える。
クロノア「・・・さびしい?」
クロノア「わからない・・・」
〇城門の下(ログスポットあり)
月日は流れ、クロノアが”さびしい”という感情を忘れそうになったある日──
城下で、街人の願いをささやかながら叶えてくれる義賊が現れると噂が流れていた。
義賊の名前は”ベルスフィア”。
街の城門広場にある光の泉へ手紙を置くと・・・願いを叶えてくれるらしい。
クロノア「『・・・さみしい・・・。 僕のお友達になってください』」
噂を知ったクロノアは、気まぐれに・・・
そう手紙に書いて指定の場所へ置いてみた。
オルガ「『私でよければ、お友達になりましょう!』」
その日を境に・・・クロノアの心に花が咲く。
クロノア「・・・ハハッ!・・・嬉しいな♪」
オルガ「『・・・』」
クロノア「・・・それは・・・悲しいな・・・」
オルガ「『・・・』」
クロノア「・・・それは・・・どういう事なんだ!!」
オルガ「『・・・』」
クロノア「ハハッ!・・・面白いな!」
手紙を交わす度に、クロノアの知らない感情が心に芽生えた。
クロノア「『ベルスフィア・・・。 僕は・・・ゴーレム・・・なんだ。』」
クロノア(なんて・・・返事が返ってくるかな? もしかしたら・・・これを境に・・・ 返事が返って来ないかも・・・?)
返事は、いつもより遅く・・・
クロノア(・・・変な奴だと・・・ 嫌われたかな・・・?)
返事がなく、不安な日々を送るクロノア。
ある日、いつもの場所に小さな包みと手紙を使用人が見つけ、城に持ち帰ると──
オルガ「『返事が遅くなってごめんなさい!!』」
オルガ「『秘密を打ち明けてくれて、ありがとう!! 寂しがり屋なゴーレム君がさびしくならないように・・・。』」
そんな手紙と共に添えられた、手作りの人形。
オルガ「『ゴーレム君を思い描きながら作ってみたよ! 良ければ、この子もゴーレム君の新しいお友達にしてあげてください!』」
その優しさにクロノアは涙する。
クロノア「・・・!!」
クロノア「・・・ベルスフィアに・・・ 逢いたい・・・」
欲のなかった土人形(ゴーレム)は、初めての欲に戸惑った。
〇貴族の部屋
クロノア「──それから僕は、君に逢う為に・・・ 嘘の情報を流して・・・ グラディルク城へ君を誘い込んだ・・・」
クロノア「・・・逃したくない・・・と、思ったら・・・その首飾りをつけてた・・・」
クロノア「君の了承もなく無理矢理つけた事は、謝るよ。 ごめん」
クロノア「でも、つけた事に責任は取るよ」
クロノア「僕の花嫁になって欲しい・・・!」
オルガは、驚きながらも話を聞いていた。
そして──
オルガ「貴方がゴーレム君だっていう事はわかったわ!」
オルガ「私の中で・・・ゴーレム君は、もっと幼いイメージだったんだけど・・・」
オルガ「短刀直入に言うわ!」
オルガ「貴方の花嫁にはなれない! お断りします!!」
クロノア「・・・!!」
クロノア「すっ、少しも見込みはないのかい!?」
オルガ「・・・うーん・・・ 今の時点では・・・かな?」
クロノア「今の時点!?」
オルガ「・・・私にとって・・・ゴーレム君は、 ”大切なお友達”なの!」
オルガ「そんなに急に恋愛対象に見れないかな? ごめんなさい・・・」
クロノア「・・・」
オルガ(・・・だ、黙っちゃった・・・)
オルガ(だって仕方ないじゃない! いくら手紙のやりとりをしてたからって・・・!)
オルガ(・・・手紙のゴーレム君は悪い子じゃなかったけど・・・目の前のこの人・・・ ちょっと怖いし・・・)
オルガ「あ、あのねっ? それに、私、好きな人がいるの!!」
クロノア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰だい?」
オルガ「・・・──えっと──・・・え──・・・ 大泥棒ゾアコトル・・・かな・・・」
クロノア「大泥棒・・・ゾアコトル・・・!!!!!!」
クロノア「フフフ・・・!フハハハッ──・・・!!!!!!」
クロノア「今はまだ恋愛対象じゃない・・・ 大泥棒ゾアコトルがライバル・・・」
クロノア「じゃあ、僕がゾアコトルから君の心を盗めたら・・・少しは花嫁になってもいいかな?って思ってくれる?」
オルガ「え・・・えーと・・・」
クロノア「僕は、君を諦めるつもりなんてない!! 絶対に、花嫁として迎え入れてみせる!!」
クロノア「首飾りは・・・──」
オルガ「・・・取れないの?」
クロノア「・・・無理矢理抱いても・・・いいのかい?」
オルガ「・・・!!!?」
クロノア「・・・嫌だろう? ・・・僕も、君の心を傷付けるのは・・・ 嫌だからね」
クロノア「君には、悪いけど・・・ しばらくは・・・君は僕のものって証は付けていてもらうしかない・・・」
オルガ「・・・他に外す方法は!?」
クロノア「・・・僕の息の根を止めてみたら・・・ 案外、外れたりしてね?」
クロノア「・・・試してみるかい?」
オルガ「そっ、そんな事はしないわっ! 義賊ベルスフィアは、無駄な殺生はしないの!」
オルガ「・・・それに・・・ お友達のゴーレム君を手にかけるなんて・・・! 出来るわけないじゃない!!」
クロノア「・・・君は本当に・・・優しいね」
オルガ(ソディトは、この首飾りについて知っていた・・・。 ならば、探せば別の方法もあるかもだし・・・!!)
オルガ「──首飾りは、別の方法で取ってみせるわ!!」
クロノア「・・・そうか・・・」
オルガ「・・・話はおしまいね!! じゃあ、私も帰るわ!」
クロノア「・・・外は、もう暗いよ? 泊まって・・・──」
オルガ「大丈夫よっ! 義賊ベルスフィアをなめないで!」
閃光弾が光ったと思ったら──次の瞬間にはもうオルガの姿は消えていた。
クロノア「・・・オルガ・・・」
クロノア「・・・捕まえたと思ったら・・・すぐに離れて行く・・・」
クロノア「どうしたら・・・君を逃さずにいられるんだろうか?」
クロノア(・・・それにしても・・・ゾアコトルか・・・)
クロノア(ゾアコトル・・・ゾアコトル・・・ゾアコトル・・・ゾアコトル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・消すか・・・)
クロノア様、見事に玉砕、、、と思いきや、必死に食らいついていますねw この偏執っぷりはお見事だと感心しました。怒りの対象がおかしな方に向き出しましたけど、、