あにぱにサイドストーリー

らんらん

エピソード1(脚本)

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〇広い公園
??「こんにちは、嵐ちゃん」
  いつもの公園の前を通りがかった時。
  そう、いきなり声をかけられた。
  ・・・・・・・・・・・・
??「あ、あれ?無反応・・・?おーい、嵐ちゃーん」
  ・・・オレは、知らない女の人が、いきなり自分の名前を呼んできたことに恐怖を覚え、その場から、ばっと逃げ出していた。
??「え!ちょっ・・・!な、なんで逃げるのっ!!?」

〇ボロい家の玄関
  「っはぁはぁ・・・・・・」
  公園から、全速力で走ってきたから、息するのが苦しい。
  
  足も、心なしか、ガクガクしている。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
  ──オレは、生まれつき、体がそんなに強くない。
  その理由は、母親が元々、体が強くはなかったからだ。
  その弱い体に、「出産」という大きな負担をかけたせいで、オレの母さんは、オレを産んですぐに──
  
  死んだ。
  「・・・・・・・」
  そして、オレが3歳の時に、父ちゃんも・・・・・・。
  
  道路に飛び出したオレを助けようとして──
  
  死んだ。
  その代償といったら変だけど。
  オレの足は、その事故の時から、障害持ちになり、あんまり長くは動かせない。
  なので、医者からは、虚弱体質も相まって、激しい運動はしないようにと指示を受けている。
  ─まあ、言うとおりにしたことはないけど。。。。
  「はぁ、はぁ・・・・・・」
  それにしても。と、息を整えながら、さっきの出来事を思い返す。
  さっきの女の人は、一体何だったんだろう。
  
  オレのことを知ってたみたいだったけど──
  ??「嵐?」
  「!!!!!?」
じーちゃん「どうしたんじゃ。そんな所で、座り込んで」
  「・・・・・じ、じーちゃん・・・・・・。」
  この人は、オレのじーちゃん。
  オレの父ちゃんが死んでから、なぜか馬の被り物を被って、素顔を隠して生活している。
  だけど、変なのは見た目だけで、父ちゃんと母さんが死んでからは、じーちゃん一人でオレの面倒を見てくれている、
  とっても優しい、唯一の大切なオレの家族だ。
じーちゃん「大丈夫か。顔色が悪いし、息も大分上がってるじゃないか」
  「大丈夫。・・・ちょっと、ビックリしたことがあって・・・。へへっ。ビビって、全速力で走ってきちゃった。」
じーちゃん「なんと・・・。全速力で走ってくる程にか・・・」
じーちゃん「・・・・・・水を持ってきてやろう。今は、事情を聞くより、心身を落ち着かせるべきだ」
  「あ、ありがとう、じーちゃん。」
  ──数分後。
  「ふぅ・・・。」
じーちゃん「少しは落ち着いたか?」
  「うん、ありがとう。じーちゃん。」
じーちゃん「うむ。落ち着いたのなら、良かった。病院に検診に行ったのに、また病院に行かなくちゃいけなくなったら、洒落にならんもんな」
  「ははっ。全くだよ。」
じーちゃん「それで?一体、何があったんじゃ」
  「うん。実は、さっき公園でさ、知らない女の人に声をかけられたんだ。」
じーちゃん「ほう。・・・・・・まさかとは思うが、その女の人に、無理矢理どこかに連れてかれそうになったとか・・・・・・」
  「あ。いや、そんなんじゃない。
  ・・・・・・ただ、オレの名前を呼んで、こんにちはって挨拶されたんだ。」
  「だけど、全く知らない女の人だったからさ、オレ、怖くなっちゃって・・・・・・。走って逃げてきちゃった。」
じーちゃん「そうか。相手は、お前のこと知ってる風だったが、お前には見に覚えがない、と」
じーちゃん「ふむ。それは、確かに奇妙な話しじゃな」
  ──それから、じーちゃんは、何かあったらいけないからと、オレに防犯ブザーを買ってくれた。
  本当に、公園にいた、あの女の人は誰だったんだろう。

〇広い公園
  その翌日。
  「・・・・・・・」
  オレは、右手に買ってもらったばっかりの防犯ブザーを握りしめ、公園内をキョロキョロと用心深く見回していた。
  「・・・・・・今日は、いないみたい・・・・・・だな。」
  と。少し気を緩めた瞬間だった。
  ??「らーん、ちゃん♪」
  で、
  「出たぁあぁあぁあぁぁーーーーーーーー!!!!!」
??「きゃっ!び、びっくりしたぁ〜。急に大声出して、どうしたの?」
  「悪霊退散!」
  オレはすかさず、防犯ブザーを、水戸黄門の印籠のごとく、相手の目の前に出して、そう叫ぶ。
??「ちょ、ちょっと待って!嵐ちゃん!わ、私は、悪霊とかじゃないよ!?」
??「というか、防犯ブザーじゃあ、悪霊は退散できないと思うんだけど・・・・・・」
  「・・・じゃあ、あなたは何者だっていうんですか。」
??「私は、あなたの、お母さ・・・、」
??「じゃなくて・・!えっと、お、お母さんの、妹・・・・・・、的な?」
  「・・・へ?かあ、さんの・・・?妹、さん?」
叔母?「そ、そうなの!私、あなたのお母さんの、妹、つまり叔母です」
  「・・・・・・・・・・・・叔母がいるなんて、聞いたことないけど・・・・・・」
叔母?「え・・・・・・・・・」
  「と、いうより・・・・・・、母さんのこと、あんまり知らないんだ・・・・。オレを産んですぐに、死んじゃったから・・・。」
叔母?「らん、ちゃん・・・・・・」
  「・・・・・・じーちゃんに聞くのも、なんていうか・・・・・・聞きづらいっていうか・・・・、うん、聞くに、聞けない感じ?」
叔母?「うん。そうだよね。分かるよ、その気持ち。お祖父さんには聞きづらいよね・・・」
  「え?叔母さん、オレのじーちゃんのこと知ってるの?」
叔母?(はっ!しまった!)
叔母?「あ。え、えーっと、お祖父さんのこと、知ってるよ?・・・姉の、ほら!結婚式とかで会ったから!」
  「ふーん。」
叔母?「あ、あはは・・・・・・」
  「・・・・・・それで、叔母さんは何の用で来たの?」
叔母?「え?」
  「用があるから、来たんでしょ?あ!そっか!じーちゃんに用があるのか。じーちゃん、今、家にいるから、来る?」
叔母?「あ、え、えぇっーと、き、今日は、止めとこっかな。あの、手土産持ってくるの忘れちゃったし・・・・・・」
  「え?じーちゃん、そういうの気にしないと思うけど・・・。」
叔母?「わ、私が気にするから!お祖父さんに会うのは、また日を改めて、ね?」
叔母?「そ、そんなことより、こうして嵐ちゃんとお話しできる良い機会だから、もっと嵐ちゃんとお話ししてみたいな」
  「え、オレと?」
叔母?「そう!嵐ちゃんと!」
  「いいけど・・・・・・」
叔母?「ホント?ありがとう。嵐ちゃんは優しいね」
  「・・・・・・・・・・・・・・・」
叔母?「じゃあ、何の話ししよっか!学校の話し?それとも、いきなり恋バナとかしちゃうっ?」
  「・・・・・・なんか、すげー嬉しそうだね。叔母さん。」
叔母?「だって、嵐ちゃんと、こうやって、ずっとお話ししたかったんだもん」
叔母?「かずまさんばっかり、嵐ちゃんとお話ししてズルいなあ〜って、ずっと羨ましかったんだよ?」
  「・・・かずまさん?え、それって、オレの父ちゃんのこと?」
叔母?「ハッ・・・・・・!!!!!」
  「あの、叔母さん?大丈夫?」
叔母?「だ、大丈夫!・・・・・・えっと、それで、何の話しだっけ?嵐ちゃんは、学校ではどんな感じ?って話しだったけ?」
  「・・・全然違うよ。でも叔母さん、3歳以前のオレと会ってて、父ちゃんとも交流してたんだ。」
叔母?「えぇ〜と、そ、そうそう!嵐ちゃんが2歳か3歳の時に、会ったかな?」
  「・・そっか・・・。そうなんだね・・・・・・。」
叔母?「・・・・?」
  「・・じゃ、じゃあさ!じゃあさ!父ちゃんと、あと・・・・・・、母さんのこと教えてよ!」
叔母?「えっ・・・・・・」
  「・・・・実を言うと、二人についての記憶が、オレ、あんま無いんだ。
  母さんは勿論だけど、父ちゃんのことも・・。」
  「サッカー以外で好きなこととか、どういう風に笑ってたのか、怒ってたのか、どんな感じに話してたのか、とか。」
叔母?(嵐ちゃん・・・・・・)
  「変だよね。自分の両親なのに。全然わかんないとか。」
叔母?「ううん。ちっとも、変なんかじゃないよ」
叔母?「よしっ!じゃあ、私が僭越ながら、嵐ちゃんのご両親のこと、色々教えてあげるね!」
  「本当っ?ありがとう!」
叔母?「それで、どんな話が聞きたい?かずまさんのこと?それとも、お母さんのこと?」
叔母?「それとも、二人の馴れ初め。とか・・・?」
叔母?「きゃー!言っちゃったぁー!」
  「・・・・・・なんか、叔母さん、一人で盛り上がってるね。
  でも。そうだなあ。母さんのこと、教えてもらおうかな・・・・。」
叔母?「私のことね。了解!」
  「いや。叔母さんの話しじゃなくて、母さんの、」
叔母?「そう。私は、とある、そこそこお金持ちの家出身でね」
  「いや、あの、叔母さんの話しじゃなくて、母さんの、」
叔母?「こー見えて、実は私、いわばお嬢様だったんだよ♪」
  「聞いてるっ!!?」

〇おしゃれな居間
  ─私の父は、大手企業の社長というのもあって、厳格で、いつも怒ってるような人だった。
美羽の父「美羽(みう)。またお前はその体で、勝手に家を抜け出したそうだな」
美羽「お父様・・・・・・」
美羽の父「お前は、どうして、いつも私の言いつけを破る?そんなに私を困らせたいのか?」
美羽「違・・・、けど、私、いつも家の中ばかりで・・・。たまには、思いきり外に出て、」
美羽の父「ならん!」
美羽「・・・・・・」
美羽の父「美羽、いいか?お前は、普通の体じゃないんだ。虚弱なんだ。お前が体調を崩さない日はないという程にな」
美羽の父「それを自覚していないとしたら、頭の方も弱、」
美羽「さっきから聞いてればなにっ!?弱い弱いって!!バカにするのもいい加減にしてよッ!!」
美羽の父「本当のことだろう! お前は、普通の子より弱い!一人じゃ何にもできない、いわば欠陥品なんだお前は!!」
美羽「・・・っ、そこまで言わなくっても・・・!!」
美羽「・・・私は!他の同年代の子達と同じように、外に出て、普通に遊んだり、ショッピングとかしたりしてみたいんです!」
美羽「・・・ずっと、なんて言わない。せめて半日・・・、数時間だけでも・・・・・・」
美羽の父「ならん!!!!」
美羽「〜〜〜〜!!お父様の分からずや!頑固!石頭! もう、知らない!」
美羽の父「美羽!走ってはいかん! ・・・・・・全く。分からず屋はどっちだ」

〇城の客室
美羽「・・・もう、言いつけばっかり。お父様なんて嫌い」
美羽「・・・嫌い、なんだから・・・・・・」
美羽「・・・・・・」

〇広い公園
叔母?「・・・・・・と、いうような感じでね。私とお父様は、いつも喧嘩ばかりしていたの」
  「・・・・・・あの、オレ、叔母さんの話しじゃなくて、母さんの・・・」
叔母?「そして、むしゃくしゃして、私はついに!その日の夜、家出したの!」
  「ダメだこりゃ。聞いてねえ。」

〇立派な洋館
美羽「・・・・・・今までお世話になりました。さようなら」
美羽「・・・・・・」

〇厩舎
  飯沼家。馬厩舎。
ブルゾン「ブルル・・・」
和馬「おはよう、ブルゾン!今日も張り切ってやってこうな!」
ブルゾン「ブルル・・・・・・」
和馬「ん?どうした?なに、ソワソワしてんだ?」
ブルゾン「ヒン・・・・・・」
  ブルゾンが、少し遠慮がちに脇に退くと、そこにいたのは・・・
美羽「う〜ん・・・お父様・・・・・・の、分からずや・・・・・・」
和馬「!!!!!?お、女の、子・・・・・・!!? なんで、こんな所に・・・・・・」
和馬「・・・・・・と、とりあえず、起こさなきゃ。 ちょっと、君!起きて!」
美羽「んー?なぁに?朝ごはん・・・?」
和馬「朝ごはんじゃないよ。君、どこから来たの?名前は?なんで、こんな所で寝てるの?」
美羽「えっ・・・はっ?」
美羽「・・・・・・き、」
和馬「き?」
美羽「きゃあぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」
和馬「うわあぁぁーーーーーー!!!!!」
ブルゾン(何やってんだ、この二人は・・・)

〇広い公園
叔母?「・・・それが、私とかずまさんの出会いでした。きゃっ」
  「・・・あの、叔母さん。」
叔母?「ん?なあに?らんちゃん」
  「その話しって、叔母さんの話しだよね?オレの母さんの話しじゃないよね?」
叔母?「何言ってるの〜!私とかずまさ・・・・・・」
叔母?「ハッ・・・・・・!!!!!!」
叔母?(しまった!そうだ!私は今、嵐ちゃんの、"叔母"の立場だった!)
叔母?「そ、そうだった!そうだった!私じゃなくて、あのっ、お母さんの話しだったわね!」
叔母?「こ、これは、聞いた話し!そう!姉から聞いた話しだから!」
  「・・・あ、そうだったのか。ごめん、なさい。なんか、やけに叔母さん自身が体験してきたみたいな感じだったから・・・。」
叔母?「え?そ、そうだった?そんな感じした?いやだぁ〜、そんなに語り上手いなら、叔母さん、落語家にでもなれちゃうかな♪」
  「・・・まあ、いいや。それでそれで?その後、どうなったの?」
叔母?「うん。それでね・・・」

〇実家の居間
和馬「・・それで?君は、お父さんと喧嘩して、家出して、疲れ果てて、辿り着いたうちの厩舎で、眠りこけていたと?」
美羽「ご、ごめんなさい・・・。暖かい所を探し求めていたら、丁度良く暖房・・・、お馬さんが暖かくて・・・・・・」
美羽「あのお馬さん、優しいですね♪余所者の私を受け入れてくれて、しかも、ずっと一晩見守っててくれてました」
和馬「・・・ブルゾンの方は、相当困ってたみたいだったけどな」
和馬(きっと、一晩この子を踏み潰さないか、気が気じゃなくて、寝られなかっただろうな・・・。かわいそうに・・・)
美羽「・・それにしても、お馬さん飼ってるなんて、スゴいです。あなたも、有名な企業の社長の息子さん、とかなんですか?」
和馬「・・話を逸らさないでもらおうか。喧嘩もそうだけど、家出なんて、もっとよくない」
和馬「君には、家のこと話してもらって、ちゃんと自分の家に帰ってもらうからね?」
美羽「・・・嫌です!」
和馬「・・・あのさ、お父さんと喧嘩したって言ってたけど、そのお父さんも、きっと今頃心配してるよ?」
美羽「心配なんかしてません。きっと、今頃、お荷物が消えて、せいせいしてます」
和馬「・・・そんなこと、」
美羽「あなたは、実際にお父様を見たことがないから、そんなことが言えるんです! ・・・昔から、家族よりも仕事の方が大事・・・」
美羽「・・・うっ」
和馬「お嬢さん・・・?」
  一瞬。美羽の体がふらつき、思わず畳に手がついた。
和馬「だ、大丈夫かっ!?」
美羽「・・・だ、大丈夫、です・・・。少し、目眩がしただけで・・・、なんともありません・・・」
和馬(顔が異様に赤い・・・。もしかして、この子、熱あるんじゃ・・・)
和馬「・・・ちょ、ちょっと失礼。おでこ、触るよ?」
和馬「・・・・・・」
和馬(・・・うん、熱い。この子、やっぱり熱ある)
和馬「・・・仕方ない。今日は、もういいから、うちでゆっくり寝てなさい。話しは落ち着いてから、また聞く」
美羽「わ、私は、大丈夫ですよ!でも、帰りませんからね!」
和馬「・・・何に話し掛けてんだ。それ、うちの親父のおしるこだぞ」

〇風流な庭園
和馬「・・・ふぅ」
和真父「和真。客間で寝ているお嬢さんは、どこで引っかけてきたんじゃ?」
和馬「親父・・・。 俺が、見知らぬ女の人に声かけて、家まで招き入れる、勇気ある息子に見えるか?」
和真父「ほっほっほ!冗談じゃよ」
和真父「・・しかし、本当に、あのお嬢さんは、どこのお嬢さんじゃ?」
和馬「・・・分からない。聞こうとしたら、熱を出して、あの状態」
和馬「分かってるのは、お父さんと喧嘩したらしくて、それで家出して、疲れて辿り着いたのが、うちだったってことくらい」
和馬「・・・なあ、親父。 あの子をどうやって説得すればいいと思う?」
和馬「このままじゃ、俺、誘拐犯と誤解されて、逮捕されちまうかも・・・。見たところ、いいところのお嬢さんっぽいし」
和真父「・・・ふうむ。そうだな」
和真父「・・・なら、あの子の友達に、なってみたらどうじゃ?」
和馬「はっ!?俺がっ!?あの、家出お嬢さんのっ!?」
和真父「そうじゃ」
和馬「ちょ、ちょ、ちょ・・・、待って。なんで、俺が友達になるとかの話しになるんだよ?」
和馬「俺が聞きたいのは、あの子をどうやって説得するかであって、どうやって距離を縮めるかじゃないんだけど」
和真父「いや。まずは、あのお嬢さんと距離を縮めることじゃ」
和真父「和真よ。あのお嬢さんの立場になって、よく考えてみぃ」
和馬「え・・・?」
和真父「もし、わしと喧嘩して、家を飛び出して、そこで全く知らんやつから「家に帰れ」と言われて、お前は素直に帰るか?」
和馬「・・・・・・・・・帰らない、な・・・」
和真父「じゃろ?ならば、親しき友人から「家に帰った方がいい」と言われたらどうじゃ?全く聞こえが違くならないか?」
和馬「・・・」
和馬「・・・そう、だな。うん、分かった。うまく出来るかどうか分からないけど、やってみるか・・・」

〇実家の居間
  ─その翌日
和馬「おはよう。昨日はよく眠れたか?」
美羽「・・はい」
和馬「そうか!それは、よかった。顔色も少しよくなってるようだし、まずは一安心だな」
美羽「・・・あの、お洋服も、寝るところも与えて下さって、本当に感謝してます・・・・・・。 けど、私・・・、」
和馬「分かってる。もう、その件について話すのはよそう」
美羽「え!!」
和馬「・・俺も、焦ってて、君の気持ち、全然考えてなかった。頭ごなしに、ただ家に帰れなんて言われても、意固地になるだけだよな」
和馬「だから、さ」
  和真は、そして、真っ直ぐ美羽の方を向き、姿勢を正し、言った。
和馬「・・・俺と、友達になってくれませんか」
美羽「!!」

〇広い公園
叔母?「今思うと、あれは、かずまさんの告白だったんじゃないかなって」
叔母?「きゃー!いやだぁ〜!思い出したら、恥ずかしくなってきちゃったー!」
  「・・・・あ。オレ、用事あるの思い出した。じゃ、またね!叔母さん!」
  すると、ガシッ!と嵐の肩が掴まれた。
叔母?「ちょっと待ちなさい、嵐ちゃん。まだ話しは終わってないでしょ?」
  「ヒイッィ!!!!このオバサン、力強い!!!」

〇実家の居間
美羽「友・・・・・・達・・・・・・。あなたが、私の友達、に・・・?」
和馬「ああ、まあ、イヤなら、イヤで構わないんだけど・・・・・・」
美羽「・・・・・・」
和馬「・・・・・・・・・・・・」
美羽「・・嬉しい!嬉しいです!!!すごく!!友達!なってくれるんですか!?本当に!お友達に!!!!!!」
和馬「・・・お、おぅ。君がいいなら・・・」
美羽「はい!いいです!嬉しいです!!!! ・・・・・・・・・」
美羽「・・・えっと、名前・・・・・・」
和馬「あ。まだ、名前名乗ってなかったな。 和真だ。よろしく」
美羽「・・・和真さん。 和真さんが、最初の私の友達になってくれて!嬉しいです!」
和馬「何回嬉しいって言うんだよ」
和馬「でも、ま、良かった。 えぇっと・・・・・・、君の名前は・・・・・・」
美羽「あ!そっか!名前!お友達になるには、まず、名前からですよね!」
美羽「美しい羽と書いて、みう、といいます」
美羽「これから、よろしくお願いしますね!お友達の、和真さん!」
和馬「美羽・・・・・・。ああ、よろしく。美羽」
美羽「!!!!!!!!」
和馬「どうした?」
美羽「・・・い、いえ。何でも、ないです・・・・・・」
美羽「お父様以外の男の人に、初めて名前で呼ばれたぁ〜!!!! なにやら、恥ずかしいやら、こそばゆいやらで・・・」
美羽「・・・・・・複雑です!!!!」
和馬「えっ!」
和馬(複雑なの!!?)
  ─数分後
美羽「和真さん」
和馬「ん?なんだ、美羽」
美羽「はわっ・・・!!」
美羽「はわわわわわわわ・・・・・・」
和馬「・・・・・・」
和馬「美羽、お前、何やってんだ?そんな部屋の隅で・・・」
美羽「・・・お、お気になさらず」

〇ボロい家の玄関
美羽「・・か、和真さん、あの、どちらに行かれるのですか?」
和馬「ん?馬たちの朝飯をやりにな」
和馬「美羽も、やってみるか?」
美羽「はわっ・・・!!」
美羽「はわわわ・・・・・・・・・・・・」
和馬「・・・・・・」
和馬「・・・美羽、」
和馬「玄関でうずくまって、何やってるんだお前は」

〇厩舎
和馬「よぉーし、ブルゾン。今日もお疲れさんっ!」
ブルゾン「ブルル・・・!」
美羽「・・・あ、あの、」
和馬「ん?どうした?美羽」
美羽「はわっ・・・!」
美羽「はわわわわ・・・・・・」
和馬「・・・・・・美羽・・・・・・」
和馬「・・・ブルゾンの馬房にうずくまってたら、邪魔なんだが?」

〇実家の居間
美羽「・・・あ、あの、それでは、おやすみなさい。和真さん」
和馬「おう。おやすみ、美羽」
美羽「はわっ!!!!!」
美羽「はわわわわ・・・・・・・・・」
和馬「・・・・・・」
和馬「何なんだ?あれは」

〇和室
美羽「・・・はぁ〜、ダメです。今日はずっと、ドキドキが止まらなくて。まともに和真さんとお喋りできませんでした」
美羽「スゥーハー・・・」
美羽「・・でも、このままじゃ、ダメです。ダメダメです。 せっかくお友達が出来たのに、恥ずかしがってばっかりでは」
美羽「和真さんだって、こんな私に呆れて、やっぱり友達解消してほしいとか言い出すやもしれません」
美羽「そ、それだけは!それだけは避けなくてはいけません!せっかく出来たお友達なのに」
美羽「しかし、具体的に、何をすればお友達と呼べるのでしょうか・・・・・・?」
美羽「・・・・・・」
美羽「・・・皆目、見当がつきません」
美羽「・・・・・・」
美羽「そうだ!いいことを思いつきました!」
美羽「お友達のことは、お友達の和真さんに聞けばいいのです!」
「和真さーん!!!ちょっとお訊ねしたいことがー!」

〇実家の居間
美羽「和真さん!あの、」
和真父「おぅ!誰かと思ったら、家出中のお嬢さんか」
美羽「!!!!?」
和真父「和真に用かね?和真なら、今風呂に入っとるが・・・」
美羽「・・・・・・き、」
和真父「ん??」
美羽「きゃーーーーーーーー!!!!!!」
和真父「きゃーーーーー!!!!」
  「「きゃーーーーーーーー!!!!!!」」
和馬「なんだなんだ!!?なんの騒ぎだ!?どうした!?」
美羽「あ!和真さん!あの、」
美羽「・・・!?」
美羽「きゃーーーーーーーー!!!!!!」
  美羽は、和真の格好を見た瞬間、手で顔を隠し、その場にしゃがみこんでしまった。
和馬「な、なんだよっ?どうしたんだよっ!?」
和真父「お主がタオル一枚で、現れたからじゃろ。お嬢さんには刺激が強すぎるんじゃよ」
和馬「え、だって、きゃー!って叫び声が聞こえたから・・・・・・」
美羽「・・・す、すみません。あの、事情を説明する前に、お、お洋服を、お洋服を着て、きて、もらえないでしょうか・・・」
和馬「・・・そうだな。悪ぃ」
和馬「・・・それで?何で叫び声なんて、あげたんだ?」
美羽「そうです!大変です!和真さん! 泥棒さんです!見たこともない人がいます!」
和真父「はて?誰じゃろ?」
和馬「どう考えたって、親父のことだろうよ・・・」
和真父「え!わし!?なんでっ!?」
和馬「何でって、そりゃ、」
美羽「あなたは、一体、どこのどなたですかっ!?名を名乗りなさいっ!」
和馬「・・・何で不法侵入したお前の方が偉そうなんだよ」
和真父「ほっほっほ。これは失礼した。そういえば、起きてるお嬢さんに会うのは、これがはじめましてじゃったな」
和真父「はじめまして。家出中のお嬢さん。 わしは、ここの家主であり、和真の父です。以後、お見知りおきを」
美羽「え!和真さん、の、お父様・・・?」
  "本当なんですか?"と、横の和真に視線で訊ねると、和真は目を瞑り、肯定した。
美羽「・・・・・・」
和真父「しかし、驚いたのう。熱を出していたと最初聞いていたのじゃが・・・。ほっほっほ!元気そうで、何よりじゃ」
美羽「あ、あの・・・、すいません。私・・・・・・」
和真父「いいんじゃよ、いいんじゃよ。間違いは誰にだってある」
和真父「・・それより、何か和真に言いたいことがあったのでは?」
美羽「あ!そうでした!」
和馬「ん?俺に?・・・何?」
美羽「あ、あの、和真さん! 私達って、お友達なんですよね!?」
和馬「・・・ん?あ、ああ、まあ、そうだな」
美羽「で、では!お友達とは、具体的に、何をすればお友達と言えるんでしょうか!?」
和真父(こりゃまた突飛的な質問じゃな)
美羽「・・・あの、恥ずかしながら、私、"お友達"というのが、出来たことなくて・・・」
美羽「何をどうすればいいのやら、皆目見当がつかず・・・」
美羽「なので!ここは、お友達の和真さんに、意見を頂戴したく!」
和馬「そんなに意気勇んで、聞くことでもないような気がするが・・・」
和馬「でも、まあ、そうだな。 俺は、友達とは練習も兼ねて、好きなサッカーをして遊んだり、一緒に買い物とかしたりしてるかな」
美羽「では!明日から、それをやりましょう!」
和馬「・・・え。でも・・、大丈夫か?また熱出したり・・・」
美羽「大丈夫です!お任せください!」
美羽「そうと決まれば、明日のために、私、先におやすみさせてもらいますね!」
美羽「では!」
和馬「あ!ちょっと!おい!」
和馬「・・・行っちまった。ったく、しょうがねえやつだなあ」
和真父「よかったのう、和真」
和馬「は?何が?」
和真父「可愛いガールフレンドが出来て。しかも、デートにも誘うことができて。幸せ絶頂期じゃないか?」
和馬「んなっ・・・!!!」
和馬「な、何言ってんだよ!親父!!俺は、そんなつもりは・・・!」
和真父「いいんじゃないか?たまには。サッカー一筋のお前だって、恋の1つや2つしたって罰は当たらんよ」
和馬「・・・・・・っ」
和馬「あ、あり得ねえ!な、なに言ってんだか・・・!」
和馬「もう!俺も寝るからな!おやすみ!」
和真父「ほっほっほ!初(うぶ)よのう」

〇ボロい家の玄関
和馬「・・・はぁ。 昨日は、親父のせいで、全然眠れなかった」
和馬「ったく。俺があの子をまるでそそのかしてるみたいな言い方しやがって・・・」
和馬「大体、親父が、"友達になってみてはどうじゃ?"って言い出したんだろうが!」
和馬「俺にそんなやましい気持ちはない!そう!断じて!」
和馬「だから、今日はデートじゃなくて、"友達として"、遊びに出掛けるんだ。そう、デートじゃない」
和馬「だから、そんな緊張することなんてないぞ、和真。普通に、男友達と遊ぶ感覚で・・・」
「和真さーん!お待たせしましたー!」
和馬「!!!」
美羽「えへへ。どう、でしょうか?どこか、変なところ、ありますか?」
和馬「・・・・・・」
美羽「和真・・・・・・さん?」
美羽「はっ!!もしかして!どこか、おかしかったですか!?」
美羽「す、すみませんっ!友達とどこかお出掛けって、私、初めてで!この服じゃあ、駄目でしたかっ!!?変ですか!?」
和馬「ハッ!」
和馬(馬鹿!俺!何ボーッとしてんだ!しっかりしろ!)
美羽「あ、あのっ!今から、私、別の服にっ・・・!」
和馬「いや、待って!そのままで!そのままでいい!似合ってるから!変じゃないから!可愛いから!大丈夫!」
美羽「え・・・」
和馬(はっ!馬鹿!これじゃあ、口説いてるみてぇじゃねえか!)
美羽「え、えへへ。そうですか?ありがとうございます♪」
美羽「嬉しいです!」
和馬「・・・・・・」
和馬「ああ・・・」
美羽「それじゃあ、早速行きましょう!和真さん!」
和馬「・・・・・・」
和馬(俺、今日、なんか変だ・・・・・・)

〇ショッピングモールの一階
美羽「わー!スゴいです!人がいっぱいです!お店も、いっぱいあります!」
和馬「何か欲しい物とか、見たい物あるか?ここは、大抵の物は揃ってるから、何かあれば買えると思うぞ」
美羽「・・欲しいもの・・・、ですか」
美羽「あ!そうです!」
美羽「私、お友達が欲しいです!!!!」
和馬「・・・すまん。それは、売ってない」
和馬「あ。いや、でも待て・・・?人間以外だったら・・。もしかしたら、あそこが適任か?」
美羽「へ?」

〇ペットショップの店内
美羽「きゃー!スゴいです!スゴいです!犬さんと猫さんが、いっぱいいます!!!みんな可愛いです!!!!」
和馬「喜んでもらえたようで、何より」
美羽「あ!あっちには、ウサギさん!と・・・、スゴいです!鳥さんやら、お魚さん、亀さんまでいますよ!和真さん!」
和馬「そうだな。結構、でかいペットショップだから、色んなのがいるみたいだな」
ペットショップ店員さん「いらっしゃいませ。 もし気になる子とかいたら、抱っことかできますよ?してみますか?」
美羽「うぇ!!!!?だ、だ、だ、だ、だ、だ、だ、抱っこ・・・・・・・・・!!!?私が、ですか!!?」
和馬「・・・お前以外に、誰がいるんだ」
美羽「わ、私が、でも、そんなっ・・・!!私みたいな新参ものが、犬さん猫さんを、抱っこなんてして、よろしいのでしょうか?」
ペットショップ店員さん「・・・は、はい?」
美羽「私!こうして、長時間外出たことも初めてですし、お友達も最近出来たばっかりで、いわば世間的には、新参ものでして!」
和馬(あ。ヤバい。これは、止めた方がいいか)
和馬「・・美羽、ちょっと、」
美羽「そんな、生まれたてのヒヨッコな私が、ふわふわモフモフの犬さん猫さんを抱っこなどと!!!!恐れ多いのですが!!!」
美羽「ぜひ!!!!触って!!!」
美羽「頂きたい!!!所存です!!!!」
ペットショップ店員さん「・・・・・・」
和馬「・・・・・・」
ペットショップ店員さん「・・・は、はい。かしこまりました。 では、抱っこしてみたい子は、どの子ですか?」
美羽「全員で!!!!お願いします!!!」
ペットショップ店員さん「・・・え」
  耐えきれなくなった和真は、美羽の手を掴み、出入口の方へと引っ張って行った。
美羽「え?なんで、ちょ、和真さん!!!?」
和馬「すみません、失礼しました」
ペットショップ店員さん「あ、はい。 またのお越しを・・・・・・」

〇アパレルショップ
  ─と。ペットショップでは、やらかしたが、せっかく来たんだし、ということで、その後も色んな店を見て回る二人だった。
「お着替え、準備完了です! いきますよ!和真さん!」
和馬「ああ。いつでも、どうぞ」
美羽「じゃじゃーん!どうですか?」
和馬「へえ。良いんじゃねえか?大人っぽくて」
美羽「えへへ。和真さんがパーカーなので、それを参考に合わせてみましたが、変って言われなくて良かったです♪」
和馬「俺を参考にしたのかっ?」
服屋の店員「あら。よくお似合いですよ。お客様」
美羽「えへへ。ありがとうございます」
美羽「あのっ、他のお洋服も、試着してみていいですかっ?」
服屋の店員「はい。もちろんです。どうぞ」
美羽「ありがとうございます! 実は気になったのを見つけて。今から試着してきますね♪」
和馬「・・・すみません。なんか、引っ掻き回すみたいな感じになってしまって。あいつ、外に出たのが、たまらなく嬉しいみたいで・・・」
服屋の店員「いいえ。とんでもございません」
服屋の店員「ふふっ。それにしても、可愛らしい彼女さんですね。 彼女さんなら、どんなお洋服着ても似合いそうだから、羨ましい限りです」
和馬「あ!いやっ、彼女じゃ・・、」
「和真さーん!お待たせしましたー!」
美羽「これ、どうですか?」
服屋の店員「・・・あ、あの、お客様・・・・・・、それは・・・」
和馬「・・・美羽、それは喪服だ」

〇本屋
美羽「色々な本がありますねえ、和真さん」
和馬「ああ、そうだな」
和馬「美羽は、普段本とか読むのか?」
美羽「うんと・・・、はい。読む方だと思います。 外に出れない時は、いつも本を読んでましたから」
和馬「へえ、そうなのか。 どんなジャンルの本読んでたんだ?」
和馬「俺は、恥ずかしながら、漫画の類いしか読まないんだが・・・。 あとは、サッカー関連の本くらいだな」
美羽「ふふっ。どんな本にしろ、自分の好きな本を読むのが、一番いいことです!」
美羽「ちなみに、私はファンタジー小説とかが大半なんですが、たまに、こんなのも読みます!」
和馬「「猿でも出来る!友達できる術」・・・・・・」
和馬(・・・マジか)
美羽「あとは、こんなのとか」
和馬「ん?これは・・・?」
美羽「はい!ズバリ!「友達を作る方法論」です!」
美羽「実際、こういう類いの本を読んでいたおかげか、和真さんという素晴らしいお友達が出来ました!」
美羽「このままいけば、友達100人!いえ、500人は作れるやも!」
和馬「・・・・・・」
和馬(・・・なんか、悲しくなってきたから、今後、本についての話題は控えとこう)

〇映画館の座席
美羽「はわ、はわわ、わわわ・・・・・・」
美羽「ひっ!!!!!」
  ポップコーン「バラバラバラバラ・・・!」
美羽「あ!ポップコーンが落ちてしまいました!」
  映画「・・・まさか、あなたが・・・!?」
美羽「ぴぃっ・・・!!!」
和馬「・・・美羽、大丈夫か?さっきから、ポップコーンこぼしまくってるんだが・・・」
  映画「何の音・・・?お父さん・・・?」
美羽「あ、あぁ!!ダメです!!そちらの方に行っては・・・!!」
  映画「!!!!!」
美羽「・・・ひ、ヒィィッッ・・・!!!」
  たまらず、美羽は、横にいる和真の腕に抱きついた。
和馬「・・・なっ!おい、ちょ・・・!!?」
美羽「・・ああもう、ダメです・・・。生き残れません・・・・。あ〜あぁあ・・・・・・」
和馬(参ったなあ。こんなに震えてるのに、振り払うわけにもいかないし・・・・・・)
美羽「ひぃいっ!!また来ました!!」
  ぎゅうぅ〜・・・
和馬「・・・あの、美羽。ちょっと、くっつき過ぎだと思うんだが・・・」
美羽「ひぃいっ!!もう、ダメです!!見ていられません!心臓が止まりそうです!!」
和馬(心臓止まりそうなのは、俺の方だ・・・・・・)

〇映画館のロビー
  「「はぁ〜・・・・・・」」
和馬(・・・・・・疲れた・・・・・・なんだか・・・すごく・・疲れた・・・)
美羽「・・・フィクションだと、完全になめきっていました・・・・・・。まさか、あれほどの衝撃だったとは・・・・・・」
和馬「・・だから、チケット取る前に聞いただろ?このホラー映画、今一番怖いって評判の映画だけど、大丈夫か?って」
美羽「・・・はい。数時間前の自分の愚かさを、今恨めしく思います・・・・・・」
  「「・・・はぁ〜・・・・・・」」
美羽「・・あ、あの、和真さん。 今夜、お風呂とトイレと夜寝る時、一緒に居てもらってもいいですか?」
和馬「はっ!!!!?無理に決まってんだろッ!!!何言い出すんだお前!!」
美羽「だ、だって、今夜にでも、あの殺人鬼さんがやってくるやもしれないと思うと・・・・・・」
和馬「来ない来ない!!!来ないから大丈夫だ!あれはフィクションだから!作り物だから!」
美羽「そ、そうだと、頭では分かってはいるのですが・・・・・・」
美羽「・・・心の方が・・。・・ダメです。完全に、恐怖に支配されてしまって・・・・・・」
美羽「うぅ〜っ、かじゅましゃん・・・・・・」
和馬「・・・・・・・・・・・・」
美羽「・・・どうか、助けてください・・・・・・私を、見捨てないでくだしゃい〜・・・・・・」
通行人「あら。あのお嬢さん、大丈夫かしらねえ。泣いちゃってるわよ?」
通行人「あれ。本当だねえ。何かあったのかねえ」
和馬(うっ、ヤバい。なんか注目されてる・・・)
和馬「美羽、ちょっと!とりあえず泣くの止めようか。注目され始めてるから・・・!」
美羽「うっ、うっ・・・・・・。和真さん・・・・・・どうか、お助けを・・・・・・」
通行人「・・・?助けて、とか言ってるようだけど、大丈夫かねえ」
通行人「あらあら。 じゃあ、あの一緒にいるお兄さん、彼氏さんかしら。が、ふっちゃったのかしらねえ?」
和馬「え、ええぇ!?違・・・っ!彼氏じゃねえし!」
通行人「・・・うむ。修羅場、というやつか」
通行人「かわいそうになあ。あんなに泣きじゃくってるんだから、彼氏さんの方も、別れるのは少し待ってやってもいいものをなあ」
和馬「あ、あのっ!違いますから!彼女、映画見て、怖くなって泣いてるだけですから!」
和馬「ていうか、俺、彼氏じゃっ・・・・・・、」
和馬「・・・・・・・・・」
和馬「・・・・・・・・・」
通行人「ん?」
和馬「・・美羽、行くぞ」
  和真は、泣きじゃくる美羽の手をとると、勢いよく立ち上がり、足早に歩きだした。
美羽「へっ?あ、は、はい・・・」
美羽「・・・あ!和真さん!ちょっと待ってください!」
和馬「うん?なんだ?」
美羽「あの映画のパンフレット!買ってきても、よろしいでしょうか!?」
和馬「却下!!!!」
美羽「ふわっ!!!」

〇ショッピングモールのフードコート
和馬「・・・・・・」
美羽「これ、初めて食べましたが、すごく美味しいですね!和真さん!」
美羽「いくらでも食べられちゃいそうです!」
和馬「・・・ああ、そうだな」
和馬「・・・・・・・・・」
和馬「・・・なあ、美羽。 さっきの俺、変、だったよな・・・?」
美羽「ほえ?」
和馬「・・映画館のところでさ、通りすがりの老夫婦に、"彼氏じゃないのか?"みたいなこと、聞かれてただろ?俺」
和馬「そこで否定するべきところなのに、俺、なんか分かんないけど、"彼氏じゃない"って、否定できなかったんだ・・・・・・」
和馬「・・・いや。違うな。 否定、したくなかったんだ・・・」
和馬「・・・ごめん。 自分でも、なんでそんなことしたのか分からないんだけど、勝手に、お前の彼氏面しようとしてた」
和馬「・・・ほんとに、すまん」
美羽「・・・・・・・・・」
和馬(呆れて、声も出ないか。 そりゃそうだよな。昨日今日会ったばっかりの、なんとも思ってない奴に、彼氏面なんかされたら・・・)
和馬「・・・・・・」
美羽「・・・・・・」
和馬「・・・すまん。今、言ったことは忘れてくれ」
美羽「あ、あのっ、和真さ」
和馬「でさ!ごめんついでに悪いんだけど、俺、ちょっとトイレ行ってくるわ!」
美羽「え・・・」
和馬「映画館で冷えたっぽい。ごめんな!美羽は、その間ゆっくり食べてていいから!」
美羽「和真さん!あのっ!」
美羽「・・・・・・」

〇広い公園
叔母?「あの時のかずまさん、恋に初(うぶ)で、すごく可愛かったなあ・・・」
  「・・・あのさあ、叔母さん。二人が付き合う前からラブラブなのは、もう分かったよ・・・・。」
  「それで、めでたく二人はゴールインして、オレを産んだ、と。そういうことだよね?」
叔母?「・・・・・・そうね。結論から言っちゃうと、そうなるんだけど」
  「・・・・・・?」
叔母?「ほら、私、お父様に黙って、家出してきたわけじゃない?」
  『・・・いや、また叔母さんの話しになってるし・・・・・・』
叔母?「それでショッピングモールで、あんなにはしゃいだから、見てた人がいっぱいいたわけで・・・」
叔母?「すぐにお父様に、居場所割れちゃったの」
  「え。てことは・・・・・・、連れ戻されちゃったのっ?叔母さ・・・・・・じゃないや、母さん。」
叔母?「・・・うん。翌日、お父様がかずまさんの家に来てね、」

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