僕はお嬢様

憑五郎

第1話『入れ替わりの提案』(脚本)

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〇住宅街
  僕の名前は牧野 星汰(しょうた)
  平凡な高校生だ。
  父は住宅メーカーの営業、母はスーパーでパートをしている主婦。
  僕は勉強も運動も普通で、昔から通知表も5段階評価で3が並んでいた。
  これといった苦手も無ければ得意もない、極めて平凡な人生を送っていた。
  今日もいつものように起き、学校に向かう。なんの変哲もない、いつもの朝。

〇ハイテクな学校
  校門の前に黒塗りの高級車が滑り込んで、誰かが降りてきた。
  同じクラスの薬師寺 千桜(ちお)さんだ。
  なんでも親が全国有数の大病院の院長で、相当なお金持ちらしい。
  噂ではこの学園の経営にも関わってるとか・・・
  千桜さんが振り返ってきれいなお辞儀をすると、高級車は走り去って行った。
  うん、やっぱり良いとこのお嬢様だ。僕ら庶民とは、たたずまいが違う。
  いいなぁ。きっと豪邸に住んで、毎日美味しい物食べてるんだろうなぁ
  おまけに美人で、間違いなくうちの学園の男子の人気ナンバー1だが、高嶺の花すぎて誰も近づけないというのが現実だった。
  それに、あのくらいの大金持ちのお嬢様なら許嫁がいても不思議じゃない。

〇教室の教壇
牧野 星汰「おはよー」
  教室に入ると、悪友の鎌谷 誠吾が窓の外を眺めていた。
  黙っていればイケメンなのに、クラス1のスケベとして有名な男である。
牧野 星汰「何してるの?」
鎌谷 誠吾「オッス!実はよ、さっきまでチア部がそこで朝練しててさ。見ちゃったんだよ♪」
牧野 星汰「見たって・・・何を?」
鎌谷 誠吾「チアガールのお・へ・そ♪」
牧野 星汰「はぁ・・・」
鎌谷 誠吾「ジャンプした時に偶然見えてさぁ いやぁ、すっげぇセクシーだったよ」
鎌谷 誠吾「惜しいなぁ。お前もあと3分早く来てたら見れたのに♪」
委員長「ちょっと聞こえてるわよ!」
鎌谷 誠吾「げっ!委員長・・・」
  泣く子も黙るうちのクラスの学級委員長だ。曲がったことやスケベなことが嫌いで、男子から恐れられている。
  僕のことは誠吾と一緒にいるだけでスケベ仲間だと勘違いされている。完全にとばっちりだ~
委員長「まったく・・・ほんと男子ってしょうもないんだから」
「アハハ・・・」
委員長「ねぇ、薬師寺さん」
薬師寺 千桜「えっ、そ、そうね うふふ・・・」
  話を振られた薬師寺さんは口元を押さえながら苦笑いしていた。
  そういえば、薬師寺さんと委員長は授業で組を作る時なんかにいつも一緒だ。
  きっと真面目で友達が少ない者同士、都合がいいのだろう。
鎌谷 誠吾「ったく、委員長も性格良ければ結構かわいいんだけどなぁ」
委員長「なんか言った!?」
鎌谷 誠吾「い、いいえ、なんでも・・・」
担任「ほら、朝のホームルーム始めるぞー みんな席につけー」

〇学校の廊下
  朝のホームルームが終わり、トイレを済ませ、教室に戻ろうとしていると、突然薬師寺さんに話し掛けられた。
薬師寺 千桜「あの、今お時間よろしいでしょうか?」
牧野 星汰「えっ、あ、はい・・・」

〇体育館の裏
  僕は薬師寺さんに呼び出されて、校舎裏に連れてこられた。
  ん、校舎裏・・・?
  ってことは、ま、まさか告白!?
  もし告白だったら、大金星どころじゃないぞ。スッポンが月に満塁ホームランだ!
薬師寺 千桜「あの・・・実は折り入ってお願いがあるのです♡」
牧野 星汰「は、はい、僕でよければ・・・」
薬師寺 千桜「今日一日、入れ替わって欲しいのです♪」
牧野 星汰「へっ!?入れ替わる!? 入れ替わるってどういうこと!?」
薬師寺 千桜「実は最近、父の会社で開発した試作品がありまして・・・」
  そう言うと薬師寺さんは鞄から謎の機械を取り出した。見た目はVRゴーグルっぽい。
薬師寺 千桜「これを二人で着けてボタンを押すと、互いの脳のシナプスを送り合って記憶を交換することができるのです♪」
牧野 星汰「つ、つまり、漫画やアニメのように中身を入れ替えることができるってこと!?」
薬師寺 千桜「はい♪」
牧野 星汰「で、でも、そんな大事な物・・・ 勝手に持ち出したら・・・」
薬師寺 千桜「大丈夫です♪ 父は今、海外に行っており、明日まで日本に戻ってきませんから♪」
牧野 星汰「で、でも、ちょっと待って! どうして僕なの!?」
薬師寺 千桜「誠に勝手ながら、当校の生徒を調べたところ、成績、身長、体重、平均年収、すべてにおいて牧野さんが平均だったからです♪」
  うぅ・・・たしかに前から自分でも平均的だと思ってたけど・・・そう真正面から言われると複雑な気分だ・・・
薬師寺 千桜「わたくし、幼い頃から常に人から注目されて来たので、一度誰にも気にされない平凡な生活を送ってみたかったのです♪」
牧野 星汰「で、でもさ、それなら女子の平均の人と入れ替わった方がいいんじゃない?」
薬師寺 千桜「こういうことは同性だとかえって頼みづらいんです・・・」
  うっ・・・たしかに。僕ももし男に「入れ替わってくれ」と頼まれたら即刻拒否していただろう。
薬師寺 千桜「それに、同性になるより異性になった方が面白そうじゃないですか♪」
  たしかにそうかもしれないけど、異性と入れ替わるという意味をちゃんと理解しているのだろうか・・・
牧野 星汰「その、あの、異性に勝手に体を使われるのって嫌じゃない? トイレとか・・・」
薬師寺 千桜「そういうことは全然気にしてないので、ご自由にお使いください♪」
牧野 星汰「えぇっ!? い、いいの!?」
薬師寺 千桜「はい、その代わり、わたくしも自由にやらせてもらいますから♪」
  う~ん・・・。
  突然の提案に頭を抱えた。
  一度女子になってみたい、と思ったことがないかというと嘘になる。しかも美人の薬師寺さんになれるってのは最高に魅力的だ。
  でも、僕に薬師寺さんが演じきれるだろうか・・・
  正直、自信がない・・・
薬師寺 千桜「わたくしになるのは嫌ですか?」
牧野 星汰「あ、いや、そうじゃなくって!」
薬師寺 千桜「無理されないでください。 別の方にお願いしますから・・・」
  別の方!? もし誠吾のような男と入れ替わったら大変なことになる!!
牧野 星汰「や、やります!!」
薬師寺 千桜「本当ですか? うれしい♪ それではこれを装着してください☆」
  僕は手渡されたゴーグルを被った。薬師寺さんも同じゴーグルを被っていた。
薬師寺 千桜「行きますよ♪」
  頭にビリビリと電流が流れる感覚がした!
  そして意識が遠のくのを感じた──

〇体育館の裏
  うぅ・・・頭がズキズキする・・・・・・
  あれ? 急に体が小さくなったような・・・
  ち、違う、これは・・・
薬師寺 千桜「えぇっ!?」
  僕の髪は背中まで伸びていて、自分の体を見下ろすと、女子の制服を着ていた。
薬師寺 千桜「そ、そんな・・・ !!」
  声も急に高くてか弱い薬師寺さんの声に変わっていた。
  ほ、本当に僕は薬師寺さんになってしまったんだ・・・
  ってことは、僕になった薬師寺さんは!?
  辺りを見渡したが、いなかった。
  先に教室に戻ったのかな・・・?
薬師寺 千桜「うわぁ!?」
  チャイムが鳴った!
  とりあえず教室に戻ろう!!
  僕は足にまとわりつくスカートに戸惑いながら教室にダッシュした。

〇教室
薬師寺 千桜「ハァハァ・・・」
担任「ん? お前が遅れるとは珍しいな まぁいい、授業始めるぞ」
  僕は薬師寺さんの席を探して座った。
  ひゃっ!?
  おしりにひんやりとした感触がした。そ、そうか、今はスカート履いてるんだ・・・
  僕は慌ててスカートをお尻に敷いて座り直した。
  僕は自分の席を見た。
  背中しか見えないけど、そこには"僕"が座っていた。中身は薬師寺さんだろう。
  他人の体で自分の姿を見ると不思議な感じだ・・・
  げっ!誠吾と目が合った!
  ウインク飛ばして来た!
  き、きもっ・・・
  それにしても女子の体から見た教室は全然違う。今まで男子が同性で女子が異性だったのに、今は女子が同性で男子が異性だ。
  まるでオセロの白と黒が入れ替わった気分だ。それに女子の体から見ると男子って体が大きくてちょっと怖い・・・
担任「それじゃあ次の問題を・・・薬師寺!」
  ん? 先生が僕のことを見ている。
  どうしたんだろう?
  薬師寺、どうした?
  あ!そうか!薬師寺って僕のことか!!
薬師寺 千桜「は、はい!」
  立ち上がったのはいいものを、入れ替わったことで頭が一杯で、全然授業を聞いてなかった。ど、どうしよう・・・
  僕が戸惑っていると、隣の席の委員長がスッとノートを僕の方へ寄せ、答えを指さしていた。
薬師寺 千桜「答えはx=6です」
担任「ん、そうだな ここは定理を使って・・・」
  ふぅ、なんとか乗り切れた・・・
  椅子に座って隣を見ると、委員長が僕の方を見ながらニコッと笑った。
  委員長ってこんな表情もできるのか・・・
委員長「バカ!変態!ほんと男子ってサイテー!!」
  いつも怒ってる委員長しか見たことなかったので新鮮だった。
  それから当てられることはなく、なんとか授業を乗り切った。
  とりあえず薬師寺さんのところへ行こう!

〇教室の教壇
薬師寺 千桜「あ、あの、薬師・・・じゃなくて牧野君」
  自分で自分の名前を呼ぶというのも変な気分だ。
牧野 星汰「ん?どうしたの?」
  え、す、すごい、中身は薬師寺さんのはずなのに僕そっくりだ。
薬師寺 千桜「え、えっと、その・・・」
牧野 星汰「放課後、先ほどの場所に来ていただけますか♪」
  薬師寺さんが僕の耳元で囁いた。
  と、とりあえずよかった。中身は薬師寺さんのようだ。一瞬、ドッペルゲンガーだったらどうしようかと思った。
鎌谷 誠吾「おい、次は体育だから早く行こーぜ!」
牧野 星汰「うん、今行くよー」
  そう言って薬師寺さんは誠吾と共に教室を飛び出して行った。それにしてもすごい演技力だ。僕より僕らしい。
  そういえば次は体育って言ってたな・・・
  僕も移動しなきゃ・・・
  ・・・って体育!?

〇学校の廊下
  僕は今、女子更衣室の前に立っている。
  この先は禁断の花園──
  つづく

コメント

  • とても面白かったです!!性別が違うと見る世界も違いそうですよね!2人がどうなるのか今後の展開が楽しみです☺️

  • 入れ替わるパターンって、衝突などでの「偶発的・受動的」なのがお約束かと思っていたのですが、本作のような「意図的・能動的」な展開は新鮮ですね。それによる、新たな展開も見られそうで楽しみです。

  • 超常現象のようなもので男女の体が入れ替わったというお話は聞いたことがありますが、こういう新型機械で意図的に入れ替わりができてしまうというのは面白い発想だと思います。二人はこの経験からどんなものを得るのか楽しみです!

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