誰が為の愛

米子

四話 中途半端な部屋(脚本)

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米子

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〇豪華なリビングダイニング
「はぁっ・・・」
「あのっ、聞こえます!?」
「どうしよう、もうっ・・・あ!」
「えいっ」

〇豪華なリビングダイニング
サヤカ「大丈夫ですか!?」
一般人「誰っ・・・」
サヤカ「今救急車呼びますから!!」
一般人「・・・んで」
サヤカ「はい!?」
一般人「なんで、ないんだ」
一般人「はーっ、ヒューッ」
サヤカ「な、何してるんです!?」
一般人「ちゅう、しゃ・・・」
サヤカ「え?」
「いてて」
ミタカ「はぁ〜っ、やっと登れた」
ミタカ「サヤカさぁ」
ミタカ「ベランダと木をつたって壁登るとか 正気じゃないよ」
サヤカ「それどころじゃないの!」
ミタカ「あぁ、無事です?」
ミタカ「何? 喘息とか?」
一般人「はやくっ、ちゅうしゃ、ハァッ」
ミタカ「・・・注射?」
一般人「あー、んど、あれぅ」
ミタカ「あーうんど、あれる?」
ミタカ「・・・もしかして」
ミタカ「アドレナリン注射を探してる?」
サヤカ「どういうこと!?」
ミタカ「この人、アーモンドアレルギーかも」
サヤカ「え」
サヤカ「アナフィラキシーショックって事!?」
ミタカ「とにかく救急車が先だね」
サヤカ「分かった!」
サヤカ「部屋の番号確認して電話してくる!」
一般人「ぜー、ぜー」
ミタカ「今救急車呼ぶから」
ミタカ「安静にしてたら?」
一般人「──ちゃんと、あった」
ミタカ「え?」
一般人「は、ずッ、なのに」
一般人「ちゅうしゃもっ、すまほっも、なっ」
一般人「い・・・・・・」
ミタカ「あーあー」
ミタカ「無理に話すから」
ミタカ「・・・でも、確かに」
ミタカ「注射もスマホもないってのは」
ミタカ「──おかしいよね」

〇豪華なリビングダイニング
サヤカ「今呼んだから!」
サヤカ「あと、お水。飲めそうであれば・・・」
サヤカ「ひぃっ」
サヤカ「死んでる!?」
ミタカ「生きてるよ」
ミタカ「気絶してるだけ」
サヤカ「びっくりした・・・」
サヤカ「そうだ。ねえ、これ」
ミタカ「この人のスマホかな?」
ミタカ「どこにあったの?」
サヤカ「ガスコンロ横の調味料の所」
サヤカ「水取りにいったら、ちょうど見つけて」
ミタカ「なんでそんな所に?」
サヤカ「分かんない」
サヤカ「ただ、キッチン周りがすごく汚くて」
サヤカ「洗ってない鍋とか食器が溢れてる」
サヤカ「スマホを置き忘れたまま 気づかなかったのかも」
サヤカ「だから助けも呼べなかったんだ・・・」
サヤカ「大丈夫かな、この人」
ミタカ「どうだろうね」
ミタカ「まぁ発見早かったし、たぶん平気でしょ」
ミタカ「それより」
ミタカ「見てよ、机の上」
ミタカ「これを食べたから、って事だよね」
ミタカ「危機感なさすぎじゃない?」
サヤカ「・・・ううん」
ミタカ「え?」
サヤカ「缶の裏のラベル見て」
サヤカ「原材料にアーモンドは含まれてない」
サヤカ「それに、コンタミの表記も、ない」
ミタカ「コンタミ?」
サヤカ「”コンタミネーション”」
サヤカ「アレルギーのある原料は」
サヤカ「原材料として使用されていなくても」
サヤカ「製造過程でわずかでも混入する 可能性がある場合」
サヤカ「注意喚起が推奨されてるの」
サヤカ「あくまで”推奨”だけど」
ミタカ「へー」
ミタカ「さすが食品部門の営業担当」
サヤカ「人の会社の名刺情報 暗記してんじゃないわよ」
サヤカ「とにかく!」
サヤカ「そんな表記も一切ない中で」
サヤカ「アレルギーを起こす程の量が 混入したんだとしたら」
サヤカ「製造元、大問題よ」
ミタカ「なるほど・・・」
ミタカ「本来は入ってないはずなんだとすると」
ミタカ「これ、事故じゃないかもね」
サヤカ「どういう意味」
サヤカ「・・・誰かが」
サヤカ「わざと入れたって事?」
ミタカ「断定はできないけど」
ミタカ「本来アーモンドなしのクッキーに」
ミタカ「”偶然”アレルゲンが混ざってて」
ミタカ「常備してるはずの注射が”偶然”なくて」
ミタカ「”偶然”スマホを置き忘れるって」
ミタカ「これはもう、偶然じゃないよね」
サヤカ「でも、アーモンド混ぜるにしても」
サヤカ「このクッキー、手作りって感じじゃないけど」
ミタカ「あ!」
ミタカ「こんな方法があるよ」

〇古い本
ミタカ「犯人は」
ミタカ「普段この人が食べている物と、同じ形の」
ミタカ「”アーモンド入り”のクッキーを用意した」
ミタカ「同形状品なんて 探せばけっこうあると思うんだ」
ミタカ「そして」
ミタカ「中身だけを入れ替えて、渡す」
ミタカ「見慣れたクッキーなら、きっと疑わない」
ミタカ「あとは勝手に食べてくれるのを 待つだけ」
ミタカ「スマホと注射も隠す事を考えると」
ミタカ「家族か友人か」
ミタカ「身近な所が犯人って感じかな」

〇豪華なリビングダイニング
サヤカ「どうしてそうすぐ物騒な考えに なるのよ」
サヤカ「・・・注射は」
サヤカ「部屋が汚いから見つからなかった だけかもしれないし」
サヤカ「スマホだって」
サヤカ「隠してある、って感じゃなかったわよ」
サヤカ「それに、そもそも」
サヤカ「アレルギーの事故に見せかける つもりだったのなら」
サヤカ「大事な部分を間違えてるわよ」
ミタカ「どういうこと?」
サヤカ「いい?」

〇古い本
サヤカ「仮に犯人がいたとして」
サヤカ「わざわざアレルギーを装うってことは」
サヤカ「なるべく自然に見せたいって事でしょ?」
サヤカ「それなら」
サヤカ「現場に残すのは ”アーモンドなし”じゃなくて」
サヤカ「”アーモンドあり”の表記の 缶を残すと思う」
サヤカ「それこそ、コンタミ表記の物とかね」
サヤカ「こっちが残ったほうが」
サヤカ「本人が勘違いして食べた って事でスムーズに話が進まない?」
サヤカ「今みたいに”アーモンドなし”を残したら」
サヤカ「製造元の事故とか 誰かが混ぜたとか、話が大きくなる」
サヤカ「私が犯人ならそれは避けたいけど」
ミタカ「たしかに、サヤカにしては一理ある」
サヤカ「でしょ?」
サヤカ「・・・って」

〇豪華なリビングダイニング
サヤカ「縁起でもない話は終わり」
サヤカ「事件にするには中途半端なのよ この部屋」
サヤカ「だから、これは事故」
ミタカ「・・・うーん」
サヤカ「何?」
ミタカ「いや」
ミタカ「限られた空間はボロがでやすいな って再認識したところ」
サヤカ「どういう意味?」
ミタカ「中途半端──ってことは」
ミタカ「見てる・・・?」
ミタカ「ベランダか」
サヤカ「はぁ?」

〇豪華なリビングダイニング
サヤカ「救急車そろそろかな」
サヤカ「息、してるよね」
サヤカ「一人暮らしじゃなさそうだけど」
サヤカ「家族、どこにいるんだろ」
サヤカ「ちょっとは返事しなさいよ」
「え、何!?」
ミタカ「焦る気持ちは分かるけど」
ミタカ「少しは落ち着きなよ」
サヤカ「そうだけど」
サヤカ「あんた、外で何見てたの?」
サヤカ「救急車来そう?」
サヤカ「あ」
サヤカ「”有坂”か」
サヤカ「やばい、すっかり忘れてた」
ミタカ「さすがに、今日は諦めるよ」
ミタカ「ただ」
ミタカ「違うものは見つかったけどね」
サヤカ「何よ?」
ミタカ「こっちの話」
ミタカ「そういう訳で、僕ちょっと行ってくるから」
サヤカ「はぁ!?」
サヤカ「あんた、逃げる気?」
ミタカ「違うって、また戻ってくるよ」
ミタカ「落ち着いたら、始めの場所に集合ね」
サヤカ「待って、私も行く」
ミタカ「サヤカはいた方がいいに決まってるでしょ?」
ミタカ「人の家のガラス割って侵入してるんだし」
ミタカ「これ不法侵入と器物破損だからね」
ミタカ「間違いなく警察くるよ?」
サヤカ「うそ・・・」
サヤカ「だって」
サヤカ「オートロックマンションで 普通に入れなかったし」
サヤカ「部屋番号も分からなかったし」
サヤカ「早く助けなきゃって思って・・・」
サヤカ「どうしよう」
ミタカ「だから」
ミタカ「それを言う為に残っとけってこと」
ミタカ「じゃあ、またあとで」

〇マンション前の大通り
救急隊員「車出ます、下がって!」
サヤカ「よろしくお願いします」
サヤカ「はぁ」
サヤカ「ひとまず、よかった」
「はい、あなたはこっち来てねー」
警察官「助かりましたよ」
警察官「救急車呼んでくださって」
サヤカ「あ、はい」
警察官「ここからは」
警察官「詳しい話を聞かせてもらおうかな」
サヤカ「・・・はい」
サヤカ(私、大丈夫かな)

〇空

〇川に架かる橋
  お電話ありがとうございます
  お客様サポートセンターです
ミタカ「製品について教えてください」
ミタカ「缶入りの、そう、クッキーです」
ミタカ「”こんたみねーしょん”」
ミタカ「の、可能性についてなんですけど」

〇マンションのエントランス
警察官「じゃあ、あなたが 野鳥観察用の双眼鏡で見て」
サヤカ「はい」
警察官「それで2階まで登って?」
サヤカ「む、無我夢中で」
警察官「なーんか、変な話だけど・・・」
警察官「本当に野鳥観察だったの?」
サヤカ(完全に疑われてる)
サヤカ「そうだ!」
サヤカ「観察のノートがあります!」
サヤカ「絵を描いてたんです! それを見てもらえれば、分かって頂けると」
警察官「ノート? どれ?」
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ(待って、ノートどこに行った?)
サヤカ「あ、植え込みのあたりに 置き忘れたかも」
警察官「いや、そのあたりは見たけど」
警察官「ノートなんてなかったよ」
警察官「・・・・・・」
サヤカ「いや、あるはずです! ほんとに!!」
「──あの」
警察官「見て分かんない? 取り込み中だよ」
通行人「すみません、ですが」
通行人「”ノート”と聞こえたので」
通行人「先程、歩道の隅でこれを拾いましたよ」
警察官「・・・ノート?」
サヤカ「これです!」
警察官「あぁ、確かに」
警察官「へぇ、色々な場所の鳥描いてんだね」
サヤカ「はい、趣味で」
サヤカ(最初のページ以外は あいつが事前に描いてきたやつだけど)
警察官「巡査部長」
警察官「ん?」
警察官「今、病院の方と連絡がとれて」
警察官「・・・ちょっと待っててくださいね」
通行人「・・・・・・」
サヤカ「あの」
サヤカ「ノート、ありがとうございます」
サヤカ「すみません、巻き込んでしまって」
通行人「いえいえ」
通行人「お役に立てたなら何よりですよ」
サヤカ(えぇぇ)
サヤカ(この人、天使!!)
通行人「警察って事は、何か事件ですか?」
サヤカ「いえ、食物アレルギーをおこした方がいて」
サヤカ「私が通報したんですけど」
サヤカ「その時、慌てて窓を割ってしまって」
通行人「窓を?」
サヤカ「ええ、あそこの2階の部屋です」
通行人「あれ・・・?」
通行人「うちの隣だ」
サヤカ「え」
通行人「といっても、ほぼ交流はないんですけどね」
通行人「運ばれたのは男性ですか?」
サヤカ「ええ」
通行人「旦那さんか、大丈夫かな・・・」
サヤカ(まって、あの部屋の隣ってことは)
サヤカ(この人が)
サヤカ(有坂憲剛・・・!?)
警察官「はい、お待たせしました」
警察官「今、病院と連絡とれて」
警察官「容体問題ないって」
サヤカ「よ、よかったぁ」
警察官「ご本人とも話せて、君の話と差異なし」
警察官「窓ガラスも気にしなくて良いって」
警察官「感謝してたよ」
通行人「よかったですね」
通行人「では、これで失礼します」
サヤカ「はいっ、ありがとうございます」
警察官「悪かったね、もう帰って大丈夫だから」
サヤカ「はい」

〇マンションの非常階段

〇低層ビルの屋上
ミタカ「見つけた」

次のエピソード:五話 救いの対象

コメント

  • すごく読み入ってしまう回ですね!
    ターゲットの男性、その隣人の事故(事件?)、そしてミタカさんの正体、これらがどう結びつくのか気になって仕方ないです!
    あと、2人の推理モードのシーンがとっても可愛いです。特にミタカさんは、普段のミステリアスな感じとは対照的でw

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