エピソード4(脚本)
〇車内
三倉聡子「なんだか切ない話ですね」
有島孝雄「・・・・・・」
三倉聡子「文江さんの旦那さんが亡くなり、一人になった文江さんが不安だからって結婚までして、アイドルを辞めるなんて」
有島孝雄「・・・・・・」
三倉聡子「他にご家族の方は・・・」
有島孝雄「美奈さんのご両親は、美奈さんが小さい頃に事故で亡くなっている。 あの人が美奈さんの親代わりなんだよ」
三倉聡子「さすが、よく調べてありますね」
有島孝雄「・・・ま、まあな」
三倉聡子「アイドルって色々背負ってるんですね。 私はもっとこう、どこか恵まれている人がアイドルになるのかと思ってました」
有島孝雄「彼女の場合は、特別なのかもしれない。 現役時代から、不幸な境遇がフォーカスされていた」
有島孝雄「それなのに、彼女はいつも笑顔で、疲れた顔一つ見せなかった」
三倉聡子「そういえば、有島さんは美奈さんと同級生でしたっけ?」
有島孝雄「あ、ああ」
三倉聡子「どうりで詳しいんですね」
有島孝雄「俺の世代では彼女を知らない人はいないよ。 伝説のアイドルだ」
三倉聡子「もしかして有島さんも若いときはアイドルとか追っかけちゃったタイプですか?」
有島孝雄「バカいうな!」
有島孝雄「・・・ただずっと疑問だったんだが」
三倉聡子「?」
有島孝雄「なぜ美奈さんは、山木さんとの離婚をすぐに承諾しなかったのだろう」
三倉聡子「それは、美奈さんが山木さんをまだ愛しているからで・・・」
有島孝雄「三倉。 お前だったら、あの山木さんを何十年も愛せるか?」
三倉聡子「ないですね、それは」
有島孝雄「そうだよな。 依頼人には失礼だが、人間として、そんなに魅力を感じるとは、どうして思えない」
有島孝雄「ましてやアイドルだったような女の子が好きになるなんて」
三倉聡子「・・・だとしたら、お金ですか?」
黙って頷く有島。
三倉聡子「でも、少なくとも週刊誌のことが発覚せず、きちんと離婚に進んでいたら、美奈さんには慰謝料が入るんじゃ」
有島孝雄「それだと美奈さん一人が生活する力はあっても、文江さんの分が足りないんじゃないかな」
三倉聡子「?」
有島孝雄「部屋に、場違いな老人ホームのパンフレットが置いてあった。あれは、美奈さんが持ち込んだものだろうな」
三倉聡子「・・・だとしたら、文江さんを老人ホームに入れる費用のために、美奈さんは離婚を渋り、今の夫婦生活を続けようとしているってことですか?」
有島孝雄「・・・・・・」
〇立ち飲み屋
香田武志「だいたいねえ〜、ミーナが浮気なんてするはずないんですよ!」
有島孝雄「だが、火のないところに煙は立たない」
香田武志「・・・・・・」
有島孝雄「それに実際、写真も撮られている」
香田武志「それは、まあ・・・」
有島孝雄「なんてな。 安心しろ、ミーナは浮気なんてしてないよ」
香田武志「え? どういうことすか?」
有島孝雄「探偵に調べさせたんだ。 週刊誌に載っていた男は、誰かに金を渡されて、ホテルの前に待たされていたらしいんだ」
有島孝雄「それで、ミーナが来たら、ホテルに連れていくように頼まれたんだと」
香田武志「え!? ミーナは嵌められたってことですか!? え、もしかして、旦那に!?」
有島孝雄「・・・調書によればミーナはその日、体調が悪くてふらついていたそうだ」
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