第七話 追跡者(脚本)
〇大学病院
大東京大学病院
〇病室
???「失礼するよ」
堀田 晴臣「初刷くん。具合はどうだい?」
浜 伊織「しょ、所長──!?」
浜 伊織「金沢から東京まで 一時間でどうやって!?」
堀田 晴臣「ははっ、まあ色々伝手を使ってね」
浜 伊織「いや、伝手とかそういう問題じゃ・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「し、所長!」
〇病室
初刷 論(はつずり さとし)(ヤバい!)
初刷 論(はつずり さとし)(尾行に車を使ったあげく 事故を起こしたなんて!)
初刷 論(はつずり さとし)(怒られるどころか最悪クビ──!?)
初刷 論(はつずり さとし)「────っ」
〇病室
堀田 晴臣「・・・初刷くん」
堀田 晴臣「すまなかった!」
堀田 晴臣「今回のことは全面的に僕の責任だ 本当に申し訳ない!」
初刷 論(はつずり さとし)「ちょ、ちょ、頭を上げてください!」
堀田 晴臣「職員に怪我をさせるなんて所長失格だ なんとお詫びをしたらいいか」
初刷 論(はつずり さとし)「いや、俺怪我してないです」
堀田 晴臣「えっ」
浜 伊織「急ブレーキでエアバッグにアッパーされて 脳震盪で運ばれただけですよ」
堀田 晴臣「じゃあ、浜くんは何故泣いてたんだ?」
浜 伊織「休憩時間に読んでた漫画が熱すぎて・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
堀田 晴臣「初刷くん 車の修理代は給料から引いとくから」
初刷 論(はつずり さとし)「り、了解です」
堀田 晴臣「冗談だ。無事で何よりだよ。それより」
堀田 晴臣「僕がここへ来たのは、二人に大事なことを 伝えるためでもあるんだ」
浜 伊織「大事なこと・・・ですか?」
堀田 晴臣「ああ、それは・・・」
堀田 晴臣「現時点をもって、 堀田探偵事務所は本調査から手を引く!」
「ええ────!!」
初刷 論(はつずり さとし)「まさか俺が相手にやられたせいですか?」
堀田 晴臣「もちろんそれも、理由の一部ではある」
堀田 晴臣「でも一番の理由は、 彼らが同業者だったってことだ」
浜 伊織「同・・・業者? あの夫、探偵だったのですか!?」
堀田 晴臣「いや、違う。 同業者というのは広い意味で、だよ」
〇商店街
堀田 晴臣「ときに初刷くん。 探偵事務所の業務はわかるかい?」
初刷 論(はつずり さとし)「依頼をされて誰かの調査をしたり 何かを探したりする仕事・・・ですよね?」
堀田 晴臣「そうだ。 我々は顧客に依頼を受け調査を行う」
〇荒廃した国会議事堂
堀田 晴臣「しかし調査を頼みたい人間は 一般人とは限らない」
堀田 晴臣「例えばそれが総理大臣なら?」
浜 伊織「──内閣調査室!」
堀田 晴臣「浜くん、ご名答」
〇高層ビル群
堀田 晴臣「他にも、外資系保険会社、 企業コンサル、消費者金融など」
堀田 晴臣「自身の調査機関を内部に抱える会社は いくつもある。公表はされてないがね」
初刷 論(はつずり さとし)「じゃあ、俺に嫌がらせをしてきた連中は!」
〇黒
堀田 晴臣「栄田は新進気鋭の企業コンサル、 その代表取締役だ」
堀田 晴臣「一部上場も済ませ、その勢いは 飛ぶ鳥を落とす勢いだと言われている」
堀田 晴臣「まず間違いなくいるだろうな お抱えの調査機関・・・そして」
堀田 晴臣「もっと荒事までやらせる 私設兵隊のようなものがな」
〇病室
堀田 晴臣「だから手を引く。 さすがに相手が悪すぎる」
堀田 晴臣「七菜ちゃんとお友達には申し訳ないが 無理でしたと謝っておくよ」
初刷 論(はつずり さとし)「そ、そうですか・・・」
堀田 晴臣「まあそういうわけだから 次の仕事までしばらく休んでていいぞ」
堀田 晴臣「僕は例の議員の不倫調査の残りでも やっておくことにするよ」
堀田 晴臣「じゃあ、お大事に」
浜 伊織「・・・・・・」
〇大きい病院の廊下
堀田 晴臣「・・・」
???「所長!」
堀田 晴臣「浜くん、どうした? 何か忘れ物かい?」
浜 伊織「──嘘ですよね」
堀田 晴臣「嘘とは? 栄田駿の会社のことかい? 確かに僕の推察が多少は入って・・・」
浜 伊織「違います!」
浜 伊織「調査から手を引くと言ったことです」
浜 伊織「所長、自分一人でやるつもりですね? 私たちを危険に晒さないために」
堀田 晴臣「・・・ふふ」
堀田 晴臣「スタッフが優秀というのも困ったもんだな」
浜 伊織「やっぱり! どうしてそんな無茶を?」
堀田 晴臣「君らはまだ僕から見ればアマチュアだ。 プロと戦うには圧倒的に経験が足りない」
堀田 晴臣「一緒に動けば、最悪共倒れだ」
〇車内
堀田 晴臣「初刷くんのことは栄田の警告だと僕は思う」
堀田 晴臣「次は怪我をするだけじゃすまないだろう」
〇大きい病院の廊下
浜 伊織「それは所長も同じです! 三千円で命を捨てる気ですか!」
堀田 晴臣「なあに。僕は君らと違って やりたいことをやってるだけさ」
堀田 晴臣「『誰かの秘密を暴きたい』 それが堀田晴臣の本性なのだからね」
堀田 晴臣「調査中に殉職するなら本望」
浜 伊織「馬鹿なこと言わないで下さい!」
堀田 晴臣「はは、大丈夫。 もちろん死ぬつもりなんてないさ」
堀田 晴臣「それにそうそう簡単にやられはしないよ。 なんたって僕は──」
堀田 晴臣「『魔法使い』だからね」
浜 伊織「・・・・・・」
浜 伊織「かっこつけてんじゃないわよ」
浜 伊織「・・・バカ所長」
〇空
〇空
〇空港の滑走路
〇地下鉄のホーム
栄田 栞里「ふう。お仕事終わりっと」
栄田 栞里「新千歳から札幌って ちょっと距離あるのよね」
栄田 栞里「あ、ちょうど来た! エアポート快特!」
???「・・・・・・」
〇開けた交差点
〇商店街の飲食店
栄田 栞里「良かったー、まだやってた!」
栄田 栞里「ここのスープカレー絶品なのよね」
栄田 栞里「今日はどれにしようかなー♪」
???「・・・・・・」
栄田 栞里(店内がいっぱいでテラス席になっちゃった)
栄田 栞里(女子一人飯、テラス席・・・)
きゅるるるる
栄田 栞里(駿のことが気にならなくなったら 途端に沸いてくるこの食欲が憎いわ・・・)
〇空
〇商店街の飲食店
栄田 栞里「あー、美味しかった! ごちそうさまでしたー」
栄田 栞里「あー、駿にもこれ食べさせてあげたいなぁ」
ツンツン
栄田 栞里「えっ? 何?」
知らない子供「お姉さん、これ落とさなかった?」
栄田 栞里「え? 私が?」
栄田 栞里「うーん、人違いだと思うけど あら? メモ?」
栄田 栞里「・・・ありがとう。 これ、私のだったわ」
知らない子供「へへ、良かったー。じゃあね、お姉さん」
栄田 栞里「うん、ありがとう」
栄田 栞里「さて、ホテルに戻る前にお手洗いにでも 行っておこうかな」
栄田 栞里「すみませーん。ちょっとお手洗いを・・・」
???「・・・・・・」
カレー屋の客「────」
カレー屋の客「────」
???「・・・・・・」
カレー屋の客「────」
???「・・・・・・?」
カレー屋の店員「よいしょっと」
──ランチタイム終了──
駿の部下「すみません、お店の中にまだ連れが いると思うんですが──」
カレー屋の店員「お連れさん? ・・・はて。 もう店内には誰もおりませんが」
駿の部下「あれ? 本当に? 行き違っちゃったかなー?」
駿の部下「どうもありがとうございます」
〇商店街の飲食店
駿の部下(クソッ! してやられた! 素人だと思って甘く見てた)
駿の部下(落ち着け、思い出せ・・・)
〇黒
駿の部下(いくら外見を取り繕っても 動きまでは誤魔化せないはずだ)
???(あの歩幅、重心移動・・・)
???(どいつだ・・・?)
???(・・・!)
???(──────こいつだ)
〇商店街の飲食店
駿の部下「あの女は確かホテル通りに向かったな まだそう遠くは行ってないはず」
〇開けた交差点
「はあ、はあ」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
今一気読みさせていただいてますー!!!!!最初は真実を知るのが怖かったのに、今はどうしてなのか気になって仕方がないですー!!!このように作れるのが本当に凄いです!!!!!すごく面白いです!!!!!
もう、彼らの頭脳戦にワクワクしてしまって、不穏を怖がる気持ちがどこかにいってしまいました。
どちらの陣営もすごい!
おおお、初刷くん無事でよかった!!
そしてホッター所長、かっこいい!(≧∇≦)
変装からの逃走、緊迫感あってめっちゃ良かったです♪