エピソード4 お前はどっちだ?(脚本)
〇和室
冴子 少女期「ねえ、ねえ、ママ~」
冴子 母「なーに、サエちゃん?」
冴子 少女期「ママのそのノートにはなにが書いてあるの?」
冴子 母「このノートにはねーママの夢が書いてあるのよ」
冴子 少女期「ママの夢ってなーに?」
冴子 母「それはね・・・」
〇総合病院
ざわざわ・・・
マスコミ「あやめ病院ロビーです。今回こちらの森村理事から、マスコミ各社にFAXが届きました」
マスコミ「今後について大切なお知らせあるのとのことでした」
マスコミ「森村理事がでてきました!」
カシャカシャ!!
森村冴子「報道各社の皆様。本日は、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます」
森村冴子「今回発表させていただくのは、新病院の開設についてです」
森村冴子「このあやめ病院は、父と母が小さな診療所から始めました」
森村冴子「開院以来皆様がたに支えられ、近隣地域だけでなく全国から通院していただけるようになりました」
森村冴子「ですが、父と母の夢は、それだけではありません。2人は、日本だけでなく世界中の方にお役にたてる病院を目指していたのです」
マスコミ「世界中・・・ですか?」
マイケル・ベックマン「やあ、いつかのお嬢さん!!」
マスコミ「マイケル・ベックマン!!」
森村冴子「世界には、満足に治療を受けることができない人がたくさんいらっしゃいます」
森村冴子「新病院のコンセプトは、「世界中の人達に平等な医療を」です」
マスコミ「スゴイ壮大な話ですけど、具体的にはどうするんですか?」
森村冴子「まず、世界の人達に知ってもらうことから始めます」
森村冴子「SNSを活用し、同時に各国大使館や国境なき医師団、ユニセフなどと連携をとって、困っている人達を探します」
マスコミ「来るのを待っているのではなく、「探す」ってことですね?」
マイケル・ベックマン「ソウだヨ!お嬢さん、グッジョブ!」
マスコミ「しかし、見つけたとしてもなかなか来ることができない人もいるんじゃ」
森村冴子「そういった患者様は、こちらから迎えにあがらせていただきます」
森村冴子「交通費はこちら負担で」
マスコミ「でも、治療にお金がかかるんじゃ・・・」
森村冴子「お金は一切いただきません」
マスコミ「え!?」
森村冴子「保険で補います」
マスコミ「薬代もですか?」
森村冴子「はい。薬代もこちらが負担します」
マスコミ「しかし、保険が効かない最先端医療が必要な方はどうするんですか?」
マイケル・ベックマン「Oh~よく勉強してきたね!」
マスコミ「それに・・・」
マスコミ「世界には、保険入ってない人がたくさんいると思いますけど、その場合はどうするんですか?」
森村冴子「クラウドファンデイングを使います。我々の考えに賛同していただける方はたくさんおりますので」
マスコミ「この病院に来るより、他の病院に行くほうが直る可能性が高い場合はどうするんですか?」
森村冴子「ドクターの腕次第では、交通費をかけてもそちらに行ったほうがよいということ?」
マスコミ「まあ、そうです」
森村冴子「もちろん、どこの病院で治療を受けるかは個人の自由です」
森村冴子「他の病院に適切なドクターがいることもあるかもしれません」
森村冴子「そのことについても、対応は考えてます」
マスコミ「それは一体・・・」
森村冴子「患者様が希望するドクターのいる病院とネット回線で繋いで、手術専用のロボットでそのドクターのオペレーションを再現します」
マスコミ「そんなこと可能なんですか?」
森村冴子「すでに実用段階です」
マスコミ「スゴイ」
森村冴子「これまで、多くの困難がありました」
森村冴子「開設者の父、森村重三の死、母親もそのショックから病院を辞めてしまいました」
森村冴子「あとを継ぐ予定だった私の夫照彦の失踪・・・」
〇個別オフィス
一カ月前
西村鈴子「照彦さん!照彦さん!」
マイケル・ベックマン「そんな・・・」
西村鈴子「目を開けて、お願い!照彦さん!」
西村鈴子「一体なんてことを・・・!!」
マイケル・ベックマン「そんなつもりじゃ・・・」
ガチャッ
森村冴子「なにをしているの?」
マイケル・ベックマン「サエコ~」
西村鈴子「この人が、照彦さんを殺してしまったんです!」
森村冴子「なんですって?」
マイケル・ベックマン「そんなつもりじゃ」
西村鈴子「私が、この部屋に来た時は、この人が照彦さんに殴りかかっていていました」
西村鈴子「それで、気づいたときにはもう・・・」
マイケル・ベックマン「テルヒコのことが許せなくてそれで」
森村冴子「ダメね」
森村冴子「諦めましょう。これが彼の運命なのよ」
西村鈴子「そんな!」
西村鈴子「これは立派な殺人です。私警察に言います!」
森村冴子「立派な殺人てどういう意味?それにあなたここで何してるの?」
西村鈴子「それは・・・」
森村冴子「答えられない理由でもあるの?」
森村冴子「1人の看護師が、院長室に弁当を持って入ってくる。そういうことでしょ?」
西村鈴子「私が院長室に来ちゃいけないんですか!?」
森村冴子「なに開き直ってるんだ、お前?」
西村鈴子「え?」
西村鈴子「あ・・・」
森村冴子「言い逃れできるか?」
西村鈴子「ううっ」
森村冴子「マイケル!!」
マイケル・ベックマン「サ、サエコ」
森村冴子「マイケルには、院長に就任してもらう」
マイケル・ベックマン「テルヒコのことは・・・」
森村冴子「彼は、院長の重責に耐え切れず失踪した。ノイローゼの診断書の作成、できるな?」
マイケル・ベックマン「わ、わかった」
西村鈴子「ちょっとなに言ってるんですか?人が死んでるんですよ!」
森村冴子「お前も看護師なら、多くに「死」に接してきただろう。それが、一つ増えただけだ」
西村鈴子「そんな言い方って。それに旦那さんなのに」
森村冴子「感傷的になるな。それとも愛する人は特別か?」
西村鈴子「隠ぺいするのはよくないです!私許せません!」
森村冴子「よくない?許せない?フフフ」
西村鈴子「なにが可笑しいんですか!?」
森村冴子「お前、東北の出身らしいな」
西村鈴子「そうですけど」
森村冴子「東日本大震災で働く医療関係者の姿に感動し、看護師を目指した」
西村鈴子「いけませんか?」
森村冴子「将来は自分の生まれ育った町に診療所を建てたい」
森村冴子「誰でも気軽に立ち寄れる診療所。町のオアシスのような診療所」
西村鈴子「いけないんですか!?いま関係ないじゃないですか!!」
森村冴子「地元のご家族もさぞ、心待ちにしているだろうな」
西村鈴子「家族は関係ない!」
森村冴子「このことを公表してみろ。大病院のお家騒動としてマスコミの餌食になるぞ」
森村冴子「大病院の院長が、看護師と不倫。その看護師が、逢引きをしようと院長室に入ってきたらのその院長が死んでいた」
森村冴子「診療所どころか、お前自身が、牢屋に入る可能性だってあるんだぞ」
西村鈴子「でも、照彦さんの遺体が・・・」
森村冴子「うちは、総合病院だ。年間何人の人間が死ぬと思ってるんだ。1つぐらい増えたところで、大した問題ではない」
西村鈴子「でも・・・」
森村冴子「まだ分からないか。じゃあ、お前に新病院の看護師長の席をやろう」
西村鈴子「え!?」
森村冴子「将来、診療所を開くときは資金も援助する。医師の手配も含めて全面的にバックアップする。これでどうだ?」
西村鈴子「いや、でも・・・なんか・・・」
森村冴子「まだ、分からないのか!!!!」
西村鈴子「ヒッ!!」
森村冴子「たった一カ月そこいら関係をもった男と、貴様の夢、どっちをとるんだ!?」
森村冴子「男は、もうお前に微笑むことも抱きしめることもできない!」
森村冴子「しばらく時間をやる。お前が答えをだせ」
西村鈴子「は、はい」
森村冴子「西村鈴子」
西村鈴子「はい」
森村冴子「トロッコ問題って検索してみろ。お前の進むべき道が分かるはずだ」
西村鈴子「はい・・・」
森村冴子「マイケル、早急にこの男の処理を」
マイケル・ベックマン「サエコ、君って・・・」
〇総合病院
森村冴子「多くの困難に見舞われました。私自身も何度も・・・」
マイケル・ベックマン「サエコ、大丈夫?」
森村冴子「ええ、大丈夫。ありがとうマイケル」
森村冴子「しかし、その度に父と母のことを思い出し奮起してきました」
マスコミ「大変だったんですね。ごめんさい。イジワルな質問をしてしまって・・・」
森村冴子「気にしないで」
森村冴子「私は父と母の夢を引継ぎ、ここに「アイリス・ジェネラルホスピタル」の開院を宣言いたします!」
パチパチパチパチ
マスコミ「ご両親の夢を実現させるなんてとっても素敵だわ。私たちにもぜひ協力させてください!」
森村冴子「ありがとう。ここで、新しいスタッフを紹介させていただきます」
森村冴子「まず、院長のマイケル・ベックマン。彼には、理事も兼務してもらい経営面での相談にも乗ってもらいます」
マイケル・ベックマン「医療にレボリューションを起こすよ!!」
森村冴子「続いて看護師長の西村鈴子」
第2病棟看護主任「ええーーー!!」
第3病棟主任「なんで?どうなってんの!?」
マスコミ「西村師長は、だいぶお若いみたいですが。新病院の師長に抜擢された理由はなんですか?」
森村冴子「彼女の患者様に寄り添うやさしさ、適格な判断力、将来的なビジョンが新病院とマッチしたので看護師長をお願いしました」
西村鈴子「期待に応えられるよう、精一杯頑張ります!」
森村冴子「そして、理事改めCEOに私森村冴子が就任致します。力不足は、重々承知しております」
森村冴子「父と母の夢の医療実現のため、皆様のお力が必要です、よろしくお願いいたします!」
パチパチパチ!頑張れー!応援してるぞ!
〇空港の外観
マスコミ「たったいまエマニエル君が入国しました!」
マスコミ「世界中のドクターから見放された彼を森村CEOは救うことができるのでしょうか?」
エピソード5に続く