好きバレしてたらよかったのか?

るか

7 ノックアウトは突然(脚本)

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〇教室
  雨の日は憂鬱だ──
力丸(結局、まだ鷹野に謝れていない・・・)
  そのせいか、ケガをした手も治りが遅い──
美紅「ちょっといい?」
力丸(どうしたんだ? 元気ない美紅なんて珍しい・・・)
美紅「資料室で待ってるから・・・」
力丸「ああ、今一緒に行く」

〇まっすぐの廊下
美紅「実はさ・・・」
美紅「あたし・・・力丸に言ってないことがあるの」
  歩きながら 美紅がポツリポツリと話し始めた
美紅「でも、何から話せばいいかわかんなくて・・」
力丸「大丈夫だ・・・」
力丸「美紅が話したいことから ゆっくり話せばいい」
美紅「そうなんだけど・・・」
美紅「たくさんありすぎて・・・」
美紅「それに、力丸がショックでまた倒れるかも」
力丸「その時は、その時だ」
力丸「あ!! また、鷹野を呼べばいい」
美紅「なんで、そんなこと言うの?」
力丸「この前、アイツのピアノがどうしても聴きたくて・・・」
力丸「お店に行ったんだ」
美紅「え? いつ?」
力丸「そういえば、美紅、いなかったな・・・」
美紅「聴きに行くならなんで、声かけてくれなかったの?」
力丸「店にいると思ってた・・・」
美紅「その、『鷹野』のことなんだけど・・・」

〇渡り廊下
美紅「わっ!! 雨吹き込んでる!!」
力丸「どこか、空いてる教室探すか?」
美紅「そうね・・・」

〇教室
美紅「ここなら、大丈夫そう?」
力丸「ああ・・・」
美紅「それでね・・・ ごめんなさい!!!!」
力丸「美紅?」
美紅「ずっと、言わなきゃと思ってたんだ」
美紅「でも、結局・・・今になってとか ホント 迷惑だと思う・・・」
力丸「美紅、何をそんなに謝るんだ?」
美紅「幼稚園の時のことよ!!」
力丸「幼稚園?」
美紅「これ、見て・・・」
  写真を渡された
力丸「ん? んん?」
力丸「なんだ? 美紅が2人?」
  そこには──
  おさげをした少女が2人写っていた
美紅「1人はあたしよ」
力丸「もう1人は?」
美紅「セナよ」
力丸「え? 鷹野!?」
美紅「あたしたち、兄妹なの・・・」
力丸「でも、苗字が・・・」
美紅「その写真の少し後、親が離婚して」
美紅「セナは母さん あたしは父の所に・・・」
力丸(鷹野が言ってた秘密って・・・ コレだったのか!?)
美紅「その頃あたしは病弱で・・・ 幼稚園に行っては すぐ入院の繰り返し」
力丸「そうだったのか・・・」
美紅「だからね、1人も友達なんていなくて・・・ 小学校で力丸が側に来た時 ビックリした」
力丸「!!!!」
美紅「だって・・・全然知らない子が来たから」
力丸「じゃあ、俺が幼稚園の時に一緒にいたヤツは」
美紅「セナよ」
美紅「ホントのこと話すと── 力丸が離れていくと思って」
美紅「今まで話せなかったの・・・」
美紅「長い間 だましてごめんなさい」
力丸「・・・・・・」
美紅「って、許してくれないよね? ずっとウソついてたんだから」
力丸「いや・・・」
美紅「それに、女装のことも・・・」
美紅「力丸が言うとおり 早くセナに謝ればよかった・・・」
美紅「正直に、セイラは力丸だったって・・・」
美紅「本当にごめんなさいっ!!!!」
力丸「いや なんでそこまで美紅が奮闘したのかわかるよ」
力丸「兄妹だからこそ 性格も知り尽くしてる」
力丸「その優しさだったんだろ?」
美紅「そんなんじゃないよ・・・」
美紅「周りにセナと兄妹だと知られたくないだけ」
美紅「一回バレそうになって あたし熱狂ファンに殴られたことあってさ・・・」
力丸「そんなことがあったのか・・・」
美紅「だから・・・セナとは話し合って お互い他人だからってことにしたんだ」
美紅「それに 今まで会えなかったのは 力丸が1番の友達だからだよ」
美紅「失うのは怖いよ・・・」
  美紅が泣き出した・・・
力丸「怖いのは俺もだよ・・・」
美紅「え?」
力丸「美紅に彼女ができただろ?」
力丸「今までずっと一緒だったから 美紅と離れるのが怖かった・・・」
美紅「そうなの?」
力丸「ああ・・・」
美紅「でも・・・あたしウソつきだから・・・」
力丸「そんなこと 気にするな!!」
力丸「小学校のときからかもしれないが・・・」
力丸「俺はずっと美紅を側で見てきた」
力丸「美紅は美紅じゃないか!!」
美紅「力丸・・・」
美紅「ありがと・・・ これからも友達でいてくれる?」
力丸「ああ、俺からもお願いする」
力丸「これからも友達でいてくれ」
美紅「力丸っ!!」
  美紅が抱きついてきた──
セナ「あっ!!」
  美紅が慌てて身をはがした
セナ「懲りないヤツだな、お前」
美紅「か、勘違いしないでよね!!」
美紅「あたしは、伊乃里一筋なんだから!!」
セナ「は? もうどうでもいいし」
セナ「第一、お前の顔なんて見たくねぇし」
美紅「あのさ、ついでにあんたにも謝っておくわ」
セナ「は?」
美紅「セイラのこと!!」
セナ「うるせぇよ!!」
美紅「あんたの大大大好きなセイラは 力丸よ!!」
セナ「バカ言うな!!」
力丸「ホントだ・・・ 悪かった・・・」
セナ「ハハッ 冗談キツイぜ」
力丸「本当のことだ」
セナ「嘘だ!! 嘘に決まってる!!」
美紅「あの服はあたしのだし メイクもあたしがしたの」

〇教室
セナ「絶対 信じねぇ!!!!」
美紅「ちょっと待ってて」
美紅「力丸!! 今メイクするから来て!!」
セナ「・・・・・・」
  ムッとしている鷹野を残して
  俺たちは教室を出た──

〇フェンスに囲われた屋上
美紅「あ!! 晴れてきた!!」
力丸「頼みがある」
美紅「何?」
力丸「いつもよりもっとキレイにして欲しい・・・」
美紅「当たり前じゃない」
美紅「アイツが驚くくらいにね」
  少し時間をかけて俺はセイラになった
美紅「行こう!!」
セイラ「行こう!!」

〇教室
セナ「遅っせーぞ!! 今帰るとこだった!!」
美紅「お待たせ── じゃ あたしはこれで」
美紅「ごゆっくり!!」
セイラ「ごめんなさい 今までウソついて・・・」
セナ「マジで力丸?」
セイラ「ああ・・・」
セイラ「ガッカリしただろ?」
セナ「いや・・・それが・・・・・・」
セナ「なあ・・・どっちで呼べばいい?」
セイラ「鷹野が好きな方でいいよ」
セナ「力丸・・・いや・・・」
セナ「ホントのホントに力丸?」
セイラ「まだセイラにしか見えない?」
セナ「・・・・・・そりゃ・・・まあ・・・」
  俺はブラウスのボタンを──
  外しはじめた
セナ「お、お、お、おい!! 何してんの!?」
セイラ「脱いだら 男だってわかるだろ?」
セナ「いや・・・色々とマズイって!!」
セイラ「どこが? 男同士だろ?」
セナ「ス、ス、ストーップ!!!!」
セイラ「うるさいぞ!!」
セナ「頼む!! ちゃんとボタンして!!」
セイラ「やっぱりセイラは女にしか見えないか?」
セイラ「ショックなのはよくわかる だけど・・・勘違いをしっかり受け入れて」
セイラ「失恋してくれ!!」
セナ「いや・・・ そういう問題じゃなくてさ・・・」
セナ「そのビジュアル的に・・・ ヤバいって!!」
セイラ「は?」
セナ「お前に言ってなくて悪いけど」
セナ「オレ、どっちもイケるから」
セイラ「どっちもとは?」
セナ「だから!! 察しろよ!! ニブチン!!!!」
セイラ「ニ、ニブチンだと!?」
  ニブチンと言われた俺は
  心底ムカついた!!
  ムカついたまま・・・
  つづく!!

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