甦る潜画芸術家と新しい天使たち

バニバニ王子

アンリ・マティス(脚本)

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〇テレビスタジオ
アナウンサー「今日未明、 ピカソの絵画が何者かに持ち去られ コピーされたホログラムに 変えられていました」
アナウンサー「防犯カメラには黒い影が写っていましたが、人間ではないということです」
アナウンサー「ピカソの絵画に黒い署名がされているのを美術館の職員が発見しました」
アナウンサー「署名はエンジェルスレイヤーとのことです」
アナウンサー「ツイッターでは お絵描きAIの暴走による事件では? と 噂されています」

〇教室
  芸術青が丘高校
  美術科の朝
けい「ねえ、りお 今日のニュース見た?」
りお「みたみた! エンジェルスレイヤーって 不気味だよね」
けい「私の作品も狙われたらどうしよう! 巨匠の仲間入り!?」
りお「やだー 作品をホログラムにされたら、 提出できないじゃん!」
りお「エンジェルスレイヤーに 単位盗られるなんて笑」
けい「やだー!」
先生「皆さんおはようございます」
  『『おはようございますー!』』
先生「今日は2限後に マティスの展覧会を観るため、 みんなで市立美術館に行きます」
先生「あとで感想レポートを提出 してもらうので しっかり観るように」
  『『はーい』』

〇英国風の図書館
けい「私、マティスすき ピカソとかと比べてじめじめしてないから」
りお「マティスって誰? ピカソしかしらない」
けい「え 美術専攻なのに?」
りお「他人の絵には興味なくて」
けい「じゃあ説明しよう」
けい「アンリ・マティスはフランスの画家。フォーヴィスム(野獣派)の リーダー的存在」
けい「あ、フォーヴィスムっていうのは、 目に映る色彩ではなく、 心が感じる色彩を表現する 芸術運動のこと」
けい「野獣派の活動が 短期間で終わった後も 20世紀を代表する芸術家の一人として活動を続けた」
けい「自然をこよなく愛し 「色彩の魔術師」と謳われ、 緑あふれる世界を描き続けた画家であった。 彫刻および版画も手がけている」
りお「へえ 詳しいのね」
けい「wiki読んだだけよ」
りお「なんだ けいも知らないんじゃん」
けい「私は作品にしか興味なくて」
けい「特にマティスさんだと、切り絵にしか興味わかない」
けい「中学のとき美術館で見た、 『ピエロの埋葬』という切り絵に グッと来て、ファンになっちゃった」
  『『きゃーっ!!』』
けい「なんの騒ぎ??」
りお「わっ あれ  ピカソを狙った黒い影に似てる!」
けい「ええっ  こっちくるー!?!」
りお「けい! あぶなーっ」
けい「きゃーーーーーっ」
  『ガブーーーっ』

〇不気味
  かなしいおんがくがきこえる
  めのまえがフニャフニャして
  あるけない
  どこがあたまか どこがあしかも
  わからない 
  ばら
  ばら
  どんどんどんどん作品のカタチが
  秩序をなくしていく
  ふ あ・
  ーーー・・・・・・
  『せんせーっ けいがばけものにたべられたー!!』
  だれかの声がす

〇英国風の図書館
特務学芸員「みなさんは 美術館から避難してください」
特務学芸員「けいさんは私たちが必ず救出します」
りお「けい・・・  私の友だちをどうか よろしくお願いします・・・! まだ貸した漫画返してもらってないんです!」
特務学芸員「美術館にいた人はみな外に避難しました」
マティス「現れた影はピカソを食べたやつと同じですね?」
特務学芸員「ええ、ムッシュ・マティス」
マティス(彼を取り戻さねば・・・)
特務学芸員「私たちも 加勢できたらいいのですが・・・」
マティス「いいえ 生身の人間には危険です」
マティス「私の絵と共に 食べられた学生さんが危ない」
マティス「急ぎます」
  潜画開始

〇暗い洞窟
  雷と陽光と嵐と凪がいっしょくたになった洗濯機にいるみたいだ
  交互に心地よいリズムを奏でている
  このまま溶けてねむれたら
  さいこうかも・・・
  『し・・・もし』
  『聞こえますか?』
マティス「もしもし、青が丘の学生さんですね」
けい「ハッ あなたは」
マティス「私はマティスをもとに作られた 潜画芸術家です」
マティス「今すぐここから出ましょう  私に付いて来てください」
けい「マッ・・・??!!!」
マティス「立てますか?  お手をどうぞ」
けい「アッ ハイ!」
  ドロドロドロ
けい「?!」
マティス「私の後ろに 下がっていてください」
マティス「始末します」
けい「あ〜 あの軽快なハサミさばきは マティスさんだわ  光の裁断師だわ」
マティス「さあ 出口へ」
けい「ひええ」
マティス「私一人では数が多すぎる」
マティス「今日は退くしかないか・・・ しかし、ピカソが」
けい「あっ 私も手伝います! 巨匠の卵なので!」
マティス「いや、今回は退却します 生身の人間が長居していい場所ではない! 走りますよ!」
マティス「しっかり捕まってください」
けい「ワーッッ!」

〇病室のベッド
けい「ハッッ ここは・・・?? 全部、夢だったのかな マティスさんに会った気がするんだけど」
けい「また話したいな〜〜」
  コンコン
けい「はい」
マティス「体調はどうですか」
けい「わっ また会えた!」
マティス「2日間眠ってましたよ」
けい「そんなばなな」
マティス「ここは武装美術館の回復棟です AIウイルス除染のため、 あなたは隔離されています」
けい「えっっ いつ外に出れますか」
マティス「明日には 出れるでしょう」
けい「よかった」
マティス「美術館で起こったことは忘れて 学業に励んでくださいね」
けい「忘れられるかなー」
けい「あの影はどうなったんですか? 先生の作品は無事ですか?」
マティス「危険ですから、深入りしないことです それと周りの人には、 忘れた、と話してください」
けい「私は嘘つくの苦手なんですよね」
マティス「・・・遅かれ早かれみなすぐに忘れます」
マティス「エンジェルスレイヤーに食べられたものは・・・」
けい「・・・どういうことですか?」
マティス「今は回復に集中してくださいね それでは」
けい「ああ〜 もっと聞きたいことがあったのに」
けい「眠い・・・・・・」

〇病室のベッド
けい「夜中に目が覚めてしまった」
けい「さーてスマホチェックだ こんなときもスマホ依存症だ〜」
けい「んん? おかしいな あんな事件起こったのに ニュースにもなってないよ」
  ・・・遅かれ早かれみなすぐに忘れます
  エンジェルスレイヤーに食べられたものは・・・
けい「マティスで画像検索しても なにか別の画家じゃない おじさんばかり出てくる マティスの絵が全くみあたらない おかしい・・・」
けい「何が起きてしまったんだろう?」
けい「そうだ! ぴか・・・ ぴ? 誰だっけ?」
けい「マティスのライバルの、 有名な・・・ あれ? なんて名前の画家を 検索しようとしてたっけ・・・?」
けい「・・・?」
けい「思い出そうとすると頭がぼうっとする なんだこれは? こわい・・・・・・」
けい「そうだライン・・・みんなは無事かな? ん? ラインのアプリがおかしい」
けい「トーク画面ひらかないし 文字化けしてるし・・・」
けい「えーと わたしは けい わたしは、、 あ・・・?  名字が出てこない」
けい「まさか 私もエンジェルスレイヤーに のみこまれた・・・・・・から」
  ・・・・・・ぬぼー
けい「わたしってなんだっけ」
けい「・・・・・・」

〇病院の廊下
特務学芸員「あの様子では もうあの子は現実世界には 戻れないのでは・・・ 戻ったとしても廃人同然・・・」
マティス「はやく エンジェルスレイヤーを倒さねば・・・」
特務学芸員「ムッシュ・マティス・・・ 今は回復に専念してください」
特務学芸員「あと少しで 投入可能な潜画芸術家が完成します」
マティス「わかりました 体制を立て直してから ピカソ奪還に向かいましょう」

次のエピソード:エンジェルスレイヤー(前日譚です。読まなくても話は繋がります)

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