異世界で牢屋に入れられましたが、異世界から来て牢屋に入れられた人がいました

空木切

12.困ったなあ(脚本)

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空木切

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〇研究施設の廊下
梨夢(りむ)(やっと家に帰れる)
梨夢(りむ)(大好きなイクラも肉も食べられる)
梨夢(りむ)(・・・のに)
梨夢(りむ)(変だな・・・)
梨夢(りむ)「・・・」
ヴェロニカ「どうしました?」
ヴェロニカ「その魔法陣の近くに立つだけですわよ。後はネイトが全てやってくれます」
梨夢(りむ)「・・・も、もし帰ったら・・・」
梨夢(りむ)「・・・」
梨夢(りむ)「ええと」
梨夢(りむ)「その」
ネイト「どうした、大丈夫か?」
梨夢(りむ)「・・・」
梨夢(りむ)「うう・・・」
梨夢(りむ)「うわ~・・・」
「うわーーーー!?!!?」
ヴェロニカ「急に泣く人がありますか!?もう、ちょっと!!落ち着きなさいっ!?」
ネイト「君の方が落ち着け!!とりあえず、ほら、あれだ、ほらあれを見ろあれを!!」
侍丸「えっ、ええと、ええと、ほら、手裏剣でござるよ~!!!ここが刃になってるでござる~!!!」
パスカル「全員落ち着け。慌てても何にもならない」
パスカル「梨夢、俺が昔話をしてやろう。そのまま聞くといい。・・・昔々あるところに、人間と人間がいた。人間が二人だ」
ヴェロニカ「めちゃくちゃすぎて逆に落ち着いてきましたわ・・・」
ヴェロニカ「全く、わけの分からない子ですわね。よしよし。私が頭を撫でるなんて、そうそうない名誉ですわよ?」
梨夢(りむ)「うー・・・」
梨夢(りむ)「すっきりした」
ヴェロニカ「切り替えが早いですわね・・・」
パスカル「人間は愚かな生き物であって・・・何度悲劇を繰り返そうと学ばないんだ。その王国でも再び内戦が」
ヴェロニカ「昔話もまだ続いていたんですのね・・・誰向けのお話ですの、それは」
梨夢(りむ)「途中の、ペテルギウスとヒバロンの一騎打ちのシーンはなかなか面白かった」
パスカル「そうだろう。人気の高いシーンだ」
ヴェロニカ「ツッコミきれませんわ・・・」

〇牢獄
梨夢(りむ)「帰りたいけど帰りたくない。困った」
ヴェロニカ「帰ろうと思えばいつでも帰れますし、いずれ決断すればいいのではなくって?」
梨夢(りむ)「でも、イクラと肉の賞味期限があるから・・・悩んでいる暇はない」
パスカル「俺たちも帰るなら早い方がいいだろうな」
侍丸「むう・・・それは確かにそうでござるな」
梨夢(りむ)「困ったなあ・・・」
梨夢(りむ)「ここでの生活・・・意外と楽しかった」
梨夢(りむ)「とにかく帰ることしか考えてなかったけど。帰ったら、みんなともう会えないんだなって」
梨夢(りむ)「みんな同じ場所に帰れたらいいのに。イクラも食べて欲しいし」
侍丸「梨夢殿の世界に行く前提でござるか・・・」
梨夢(りむ)「ううーん。悩むなあ・・・でもいずれは帰らないといけないし」
梨夢(りむ)「侍丸殿の忍術を見るのも、パスカルの護衛っぷりを見るのも、ベニちゃんと漫才するのも楽しかったからなあ」
ヴェロニカ「私だけ変じゃありませんか?」
梨夢(りむ)「ネイトも最終的には面白い人だったし。長居すると余計に帰りにくくなりそう」
ネイト「・・・」
ヴェロニカ「・・・あの、梨夢さん」
ヴェロニカ「さっ、先ほどは・・・変なことを言ったりしてごめんなさい」
ヴェロニカ「貴方のこと、誤解していました」
梨夢(りむ)「ベニちゃん・・・正直、何を言われたのかあんまり覚えてないんだけど」
ヴェロニカ「貴方はそういう人でしたわね・・・」
梨夢(りむ)「でも私も、自分の欲求以外どうでもよかったのは本当だよ」
梨夢(りむ)「昔からそうなの。誰かに言われないと気付けなくて」
梨夢(りむ)「ベニちゃんに言ってもらえてよかった。そうじゃないと、帰ってからきっと後悔しただろうから」
ヴェロニカ「あ、う、うぅ・・・そうですか」
ヴェロニカ「ま、まあ、私はそういう、いわゆる立派な人間ですからね。貴方の考えることも大体分かるんです」
ヴェロニカ「別に普通ですわ。嬉しくもありませんし」
ヴェロニカ「・・・ぐすっ」
ヴェロニカ「かっ、帰るなら早い方がよろしいんじゃなくて!?」
ヴェロニカ「こちらを見ずに!!早く!!帰るといいですわ!!せいぜいお元気で!!」
梨夢(りむ)「ベニちゃん・・・」
ネイト「・・・」
ネイト「なあ」
ネイト「言って良いか?この空気で」
梨夢(りむ)「何を?」
ネイト「名残惜しいなら、一旦家に帰ってまた来ればいいだろう」
ネイト「僕もそのつもりでいたんだが・・・」
ヴェロニカ「・・・どういうことですの?」
ネイト「帰った後、僕がまた召喚すれば済む話だ」
ネイト「そうだろう?」
ネイト「牢屋で一緒に寝泊まりしている間に、君たちのデータは取ってある。同じように召喚することも可能だと思うが」
ヴェロニカ「それ、本当ですか?」
ヴェロニカ「貴方の母親は召喚できなかったのでしょう?」
ネイト「ああ・・・だが現に、異世界から人を召喚できている。父の研究のお陰で」
ネイト「母さんは召喚されて来たわけじゃないからな。いきなり現れて、いきなり消えたんだ」
ネイト「・・・つまり、以前とは状況が違う。君たちを狙って召喚することも可能なはずだ。データは十分にある」
梨夢(りむ)「・・・それじゃあ」
ネイト「元から僕は、君たちが帰った後にまた召喚するつもりだったんだ」
ネイト「た、楽しかったし・・・また一人になるのは耐えられないと思ったんだ」
ネイト「短い時間だが、すごく満たされていた」
ネイト「上手くいく保証はないが・・・僕は、父とは違うんだ。何とかしてみせる」
ネイト「君たちにも帰るべき理由があるのは分かっている。だから、もし良ければ、また・・・」
梨夢(りむ)「・・・」
梨夢(りむ)「また呼んで欲しい。いつでもいいから」
ヴェロニカ「私も構いませんわ。異なる世界を知っておくというのも貴族の嗜みです」
パスカル「俺もここにいる間は気を休めていられる。俺がいない間は他の連中に頑張ってもらうとしよう」
侍丸「拙者も、色んな人の話が聞けて楽しかったでござるよ。他の生き方もあるんだと勉強になったでござる」
ネイト「・・・そうか」
ネイト「それなら、遠慮せずまた召喚させてもらおう」
ネイト「・・・」
ネイト「この異世界生物研究所の所長として。君たち所員に帰還の許可を出す。ご苦労だった」
梨夢(りむ)「所員になったつもりはない」
ヴェロニカ「貴方の下だなんて冗談でしょう?」
ネイト「・・・」
ネイト「ええい!!解散だ解散!!!」

次のエピソード:13.さあ時が来た

コメント

  • この「変人5人」が「変だけど気のいい仲間5人」に変貌しての掛け合い、楽しくもあり心にも染みますね!変人コメディという様相から、ヒューマンドラマ要素が大きくなってきていますねw

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