Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

デウス・エクス・マキナ(脚本)

Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

今すぐ読む

Riverside Baron ~蓬莱番外地~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ボロい倉庫
天粕「これより叛徒美しきけもの、の一斉検挙を行う」
天粕「首魁オオスギアマネ参謀アラハタサンソンサカイトシアキを捕縛せよ」
天粕「ただし決して手にかけてはならない」
天粕「彼らもまたミカドの臣民である。矯正教育こそが第一と心得たまえ」
一兵卒(さすがは天粕大尉)
一兵卒(来栖川や大泉とは器が違う)
天粕「では始める」
「はっ!」

〇教会の中
トラ「・・・うう・・・ううう」
デンキ「トラ!しっかりして!」
ヒナ「トラ!」
義孝「大仰な真似はよせ。かすり傷であろう」
義孝「この剣とてただの木切れの玩具ではないか」
ヒナ「てめえ・・・」
義孝「気付いていたのだろう?俺がバロン吉宗ではないと」
義孝「気付きながらも目を背け続けていた」
義孝「お互いに目の前の現実から逃げて、空しく戯れていた。その報いを受けるときが来たのだ」
ヒナ「どこ?」
義孝「・・・」
ヒナ「バロンはどこ?」
義孝「死んだ。あの芸能博の爆発で俺の身代わりとなって」
ヒナ「・・・」
義孝「お前には詫びても詫びきれぬ」
義孝「命をかけて償ってもいい」
義孝「・・・そう思っていた。今の今まで」
義孝「だが思い直す」
義孝「死ぬわけにはいかなくなった」
義孝「この様は何だ、桜子!」
桜子「・・・」
義孝「俺は生きているぞ」
義孝「何が自由か・・・何が団結か・・・その日暮らしの有象無象が自らの這う泥濘に善良なる臣民を引きずり込もうとするか」
義孝「許さぬ。断じて許さぬ」
義孝「この街の様な汚らわしい場所を帝都から、いやこの国から全て浄化するまで、根絶やしにするまで、俺は死なん!」
義孝「蓬莱街に集う帝都臣民よ!乞食の世迷言に惑わされるな!我が言葉を聞け!」
義孝「この国は未だ列強に脅かされる小国、世界から見れば蛮族である!」
義孝「遊び呆けるいとまなどはない!自由を謳歌する権利などはない!」
義孝「今こそ、古の民が持っていた清廉なる精神に倣い、その忠義忠節全てを国家の為に捧げ奉り・・・」
桜子「・・・」
義孝「・・・」
義孝「国に害なすデモクラシイを仇と定め・・・」

〇川沿いの原っぱ
義孝「憎き自由を・・・」

〇教会の中
義孝「その自由を・・・」
ヒナ「・・・」
義孝「自由を・・・」
「・・・」
「・・・」
義孝「・・・」
  『バロン・・・』
ヒナ「バロン・・・バロン・・・」
ヒナ「父ちゃん・・・」
義孝「・・・」
デンキ「ヒナ・・・」
トラ「・・・ナンセンス」
トラ「ナンセンス!」
デンキ「自由・・・平等・・・団結・・・解放!」
「自由!平等!団結!解放!」
「自由!平等!団結!解放!」
  『ナンセンス!ナンセンス!ナンセンス!ナンセンス!』
  『引っ込め!官憲の犬!』
  『大衆を不幸にしてるのは手前らじゃねえか!』
  『この街から出ていけ!この国から出ていけ!』
  『軍人なんていらねえぞ!浄化されるのはお前らだ!』
根室「蓬莱街万歳!デモクラシイ万歳!」
  『蓬莱街万歳!デモクラシイ万歳!』
桜子「・・・」
義孝「・・・桜子」
桜子「我が父、来栖川義孝は既に亡くなっております」
義孝「・・・」
義孝「な、何を言っている?桜子・・・」
桜子「男爵来栖川義孝は死去しております」
桜子「よって貴方は、世を律する憲兵司令でもなければ世を楽しませる道化でもない」
桜子「善良な臣民を歪んだ思想で扇動する詐欺師です」
義孝「・・・お前は」
義孝「お前は自分が何を言ってるか分かっているのか!」
桜子「品性下劣なる詐術師よ!来栖川家はその方を当主とは認めません!」
桜子「どこへなりとも消え去りなさい!」
義孝「誰に口をきいている!桜子!」
ゴロツキ「な、何だこの音は?」
リバーサイドクイーン「・・・地震?」
ヒナ「・・・!?」

〇黒
  最終話 デウス・エクス・マキナ

〇教会の中

〇廃倉庫
鹿沼「瓦礫に近づくな!広いとこに逃げろ!」
猪頭「おいコラ!ガキを突き飛ばすんじゃねえ!」
お蝶親分「固まるな!走れ!走れ!」
リバーサイドクイーン「お蝶!」
お蝶親分「ヒナの姿が見えねえ!トラも、デンキも!」
リバーサイドクイーン「まだ教会劇場の中よ!」
お蝶親分「畜生!改装だ何だと素人が変にいじくりやがって、崩れちまうかも知れねえだろ!」
リバーサイドクイーン「あたしに言うな!」
お蝶親分「ここを頼むよ!」
鹿沼「親分!いけません!」
お蝶親分「ヒナまで亡くしてたまるか!」
猪頭「親分!」

〇教会の中
最上「おい貴様ら!早く逃げんか!」
トラ「こいつの足が瓦礫の下敷きになってんだ!」
デンキ「ヒナ!すぐ助けるから!」
トラ「うわっ!やべえ!」
デンキ「教会、崩れちゃうかも!」
最上「貴様らは先に逃げろ!」
トラ「馬鹿いうな!」
最上「臣民を守るは我らの仕事だ!」
トラ「官憲の犬なんざに守られたかないぜ!」
  『ならば四人で助けるぞ』
義孝「最上、こんな所で遊び呆けていたとはな」
最上「せ、潜入捜査であります」
最上「遊んでおられたのは閣下でしょう」
義孝「ほう。言うようになったものだ」
義孝「あとで不敬罪として会議にかけてやる」
最上「御無事で何よりでございます来栖川司令!」
義孝「お前達は右から、我らは左から瓦礫を持ち上げる」
デンキ「分かったよ!」
トラ「・・・」
義孝「・・・すまぬ。些か我を忘れてしまった」
トラ「謝ってる場合じゃねえし謝っても許さねからな!」
デンキ「持ち上げるよ!せーの!」
デンキ「やああああああああ!」
最上「ぬうううううううう!」
トラ「くっそおおおおおお!」
義孝「うおおおおおおおお!」
「はあ、はあ、はあ・・・」
最上「駄目だ。びくともしない」
トラ「もう一度だ!」
  『おーい』
  『なんでえなんでえ。モヤシ男ども』
ヒナ「足いてーんだ。とっとと助けろや」
トラ「てめえこのやろう!それが助けてもらってる人間の態度か!」
ヒナ「おうおう!どうせ無理なら逃げやがれ!」
ヒナ「こちとら肚括ってんだ。それにここが崩れるとは限らねえじゃねえか」
ヒナ「役立たずのヒョウロクども。早く外に出て腕っぷしのいい色男達を呼んでこい」
トラ「てめえ!憎まれ口もいい加減に・・・」
義孝「いや、ヒナの言う通りだ」
トラ「は?」
義孝「お前達は逃げろ。ヒナは俺がついている」
ヒナ「・・・!?」
義孝「桜子、お前もだ」
桜子「・・・」
義孝「何をしている。早くここを離れろ」
桜子「・・・」
義孝「帰ったら説教だぞ。首を洗って待っておれ」
桜子「来栖川家の敷居はまたがせません」
桜子「話は・・・庭先で伺います」
桜子「この街であなたに何があったのか」
桜子「だから、生きてきちんと話して下さい!」
トラ「ヒナ・・・」
ヒナ「平気だって。勝手に殺してんじゃねえよ」
トラ「縁起でもねえこと言うな!」
義孝「外で待っていろ。お前達が巻き込まれたら悲しむのはヒナだ」
デンキ「今はバロンに・・・親父さんに任せよう」
トラ「・・・」
ヒナ「あとでな、トラ」
トラ「・・・すぐ助けを連れて来る!」
デンキ「大丈夫、ここは教会。きっと神様が守ってくれるよ!」
義孝「早く行け最上。命令だ」
最上「私が残ります」
義孝「くどい」
最上「なぜこんな真似をしているんですか!」
最上「行方をくらまし道化を騙り今度は偽善者の真似事ですか!」
義孝「身を呈して未来あふれる子供を守るは当然であろう」
最上「閣下らしくありません!本当に頭でも打ったのでは?」
義孝「よし。不敬罪は確定だ」
義孝「命令不服従も加えて十年くらいブチこんでやるわ!」
最上「何と仰られようと残ります!」
義孝「貴様・・・」
義孝「ええい!俺がここにいたいのだ!」
最上「え?」
義孝「・・・ここにいたいのだ」
義孝「今は、この娘の傍に・・・」
最上「・・・」
最上「左様ですか!ではご自由に!」
義孝「最上め。全く何様のつもりだ」
義孝「・・・自由などと」
義孝「おおっ!」
義孝「今の揺れは大きかったな・・・」
ヒナ「もういい」
義孝「なに?」
ヒナ「行けよ」
ヒナ「見たくないんだ。お前の顔なんて」
義孝「・・・」
ヒナ「傍にいたくない。いてほしくない」
ヒナ「だから出てって」
義孝「・・・」
ヒナ「崩れりゃしねえさ」
義孝「その時は俺が庇う」
ヒナ「嫌だ」
ヒナ「最後はバロンと一緒がいい」
義孝「・・・」
ヒナ「目を閉じれば父ちゃんがいる」
ヒナ「だから邪魔なんだよ」
ヒナ「出てって」
義孝「・・・」
義孝「・・・済まない」
義孝「せめてどうか・・・謝らせてくれ」
義孝「済まなかった」
ヒナ「・・・」
ヒナ「父ちゃん、どうやって死んだんだ?」
義孝「俺が殺したのだ」
ヒナ「どんな風に?」
義孝「この身を庇って爆発に巻き込まれた」
義孝「済まない・・・済まない・・・」
ヒナ「・・・」
ヒナ「殺してねえじゃん」
義孝「なに?」
ヒナ「そういうヤツだよバロンは」
ヒナ「いつも体が勝手に動いちまう」
ヒナ「自由に動けるのが楽しいんだってさ」
義孝「自由・・・」
ヒナ「そっか。そういうことか」
ヒナ「最後までバカ親父だったんだな」
ヒナ「ありがとよ」
義孝「え?」
ヒナ「話してくれて」
ヒナ「じゃあな」
義孝「・・・ああ。分かった」
義孝「俺にはお前を救う資格など無かったのだな」
ヒナ「・・・」
義孝「待っていろ。すぐに助けを呼んでくる」
義孝「俺は憲兵司令だぞ!腕っぷしのいい兵隊の10人や20人すぐによこしてやる!」
ヒナ「そんなにいらねえよ」
義孝「ははは・・・」
義孝「もう会うこともあるまい」
義孝「さらばだ」
ヒナ「・・・」
ヒナ「あばよ。男爵サン」
ヒナ「あばよ・・・」

〇黒
ヒナ「・・・バロン」
ヒナ「・・・父ちゃん」
ヒナ「嫌だ・・・死にたくない・・・助けて」
  『ヒナ!』
ヒナ「父ちゃん!」

〇白

〇黒
  『機械仕掛けの神様が全部ゼロにしてしまった』
  『それはあの男にとっては罰だったのか?それとも救済だったのか?』

〇川沿いの原っぱ
  『のちに帝都大震災と呼ばれる、未曽有の災害』
  『幾多の死傷者を出し数多の人々の運命を狂わせた大地震の果てに、われらの国は新たな時代を迎えることになるのだが』
  『そこに至る旧時代の最後の1ページを、これから私は書き記さねばならない』
  『あまりにも長い、最後の一頁を』
猪苗代「ですので、しばらくお待ちください」
猪苗代「以上。山の手先生がお送りいたしました」
  Riverside Baron
  ~蓬莱番外地~
  
  (終)

〇荒廃した教会
  Liberte guidant le peuple

〇廃倉庫
  the warrior

〇古民家の居間
  the guardian

〇荒廃した街
  Les Trois Mousquetaires

〇廃墟の倉庫
  brown rat

〇荒廃した遊園地
  Walpurgisnacht

〇荒廃した国会議事堂
  black curtain

〇荒廃した国会議事堂の広間
  ???

〇廃倉庫
  phoenix

〇おんぼろの民宿(看板無し)
  and
  RiversideBaron

〇川沿いの原っぱ
  『最終章』へ続く

次のエピソード:INTERMISSION

成分キーワード

ページTOPへ