魔法少女に殺されたい

マヤマ山本

『魔法少女に殺されたい』(脚本)

魔法少女に殺されたい

マヤマ山本

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魔法少女に殺されたい
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〇荒廃したセンター街
  俺の名前は、怪人M
  不束者だが、よろしくお願いしたい
  この世界では今、各地で怪人とヒーローの不毛な争いが・・・
???「そこまでだ、怪人!」
  おっと
  不要不急な説明は後回しにするとしよう
「我ら、異端戦隊・・・!」
イヌイ「ぴぎゃっ!?」
ナツナ「イヌイ!?」
ミカミ「貴様・・・名乗る前に攻撃するとは、卑怯だぞ!」
  そんな不文律など、俺には通用しない
ミカミ「だったら、俺が相手だ! この、この、この!」
ミカミ「くそ・・・これでもか、これでもか!」
  不意打ちであろうとなかろうと、俺は負けん
ミカミ「がっ・・・」
ナツナ「ミカミまで!?」
  どうやら、今日も不作だったようだ
ナツナ「止めて、来ないで・・・許して・・・」

〇山奥の研究所
???「よくやったぞ、美馬主水──」

〇魔法陣のある研究室
魔造博士「いや、怪人Mよ」
魔造博士「さすがは、儂の最高傑作じゃ」
  この不遜な男は、魔造博士
  何の取り柄もない俺に、不相応な怪人の力を与えてくれた恩人だ
魔造博士「地球防衛軍を壊滅させ、鬼ヶ島で桃太郎を撃退し」
魔造博士「そしてついに、この国最強のヒーローである異端戦隊をも圧倒するとは──」
魔造博士「儂の才能、恐るべしじゃな」
魔造博士「これで、もはや他のヒーローはお前に手を出すことも憚れるじゃろう」
魔造博士「居るとしたらよほどの恐い者知らずか、世界最強クラスのヒーローくらいのものじゃろう」
  不戦勝は困る
  俺はある1組の、いや──
  ある1人のヒーローと戦うために、この身を怪人と化した親不孝者なのだから・・・
魔造博士「とにかく、もう儂の立場も安泰で・・・」
魔造博士「なっ、ななななな何者じゃ~!?」
USA「ユー達が、怪人Mとそのお仲間ネ」
魔造博士「違う! 魔造博士様とその作品じゃ!」
魔造博士「・・・って、貴様はっ!?」
USA「ミーの名前はUSA(ウルトラ・スーパー・アメリカン)ネ」
魔造博士「USA・・・世界最強のヒーローが、何故ここに!?」
  聞いた事がある
  アメリカが生んだ、不世出のスーパーヒーロー・USA
  ただ──
USA「そんなの、決まっているだろウ?」
USA「ジャスティスのためネ!」
  不法侵入だけどな!
USA「隙あり、ウルトラスーパーパンチ!」
  しまった、不覚をとっ・・・た・・・
魔造博士「美馬主水、いや怪人M!?」

〇ビルの屋上
美馬 主水「ん・・・・・・!?」
  不可解だった
  俺の体が、改造前の人間の姿に戻っていたのだから・・・
美馬 主水「しかも、この場所は・・・」
  そうか、コレは走馬灯というヤツか
  確かに、怪人の俺も不死身の肉体という訳ではない
怪人A「人間は、敵だ!」
  やはり、そうだ
  不平不満を言いながら、不眠不休で働き
  それでも不景気により不採算部門扱いされ、リストラ
  長年の不摂生がたたり、腎不全を患い
  俺には不釣り合いなほどの美人妻は、不倫に走り
  不動産投資に失敗し、親不知が痛みだす
  こんな不公平な世界に嫌気がさし
  不惑を前に自ら命を絶とうとした、あの日
  俺は出会った、あのヒーローに──
ナツナ「そこまでよ、怪人!」
ハルナ「魔法少女・ハルナ!」
ナツナ「魔法少女・ナツナ!」
アキナ「魔法少女・アキナ!」
ユキナ「魔法少女・ユキナ!」
ハルナ「4人揃って・・・せーのっ」
「魔法少女隊!」
怪人A「人間は、敵だ」
怪人A「人間の味方をする奴も、敵だ!」
ハルナ「花の舞!」
怪人A「がごっ!?」
ナツナ「鳥のさえずり!」
怪人A「ごぼっ!?」
アキナ「風の悪戯!」
ユキナ「月の光!」
怪人A「ぼふっ!? ふぬっ!?」
ハルナ「とどめよ、合体魔法──」
「花鳥風月!」
怪人A「ぬがっ!?」
怪人A「おのれ、魔法少女隊め・・・」
ナツナ「やった、勝った~」
ユキナ「まぁ、当然でしょう」
美馬 主水「・・・・・・」
  この日、俺の不遇の時代は終わりを告げたんだ──

〇山奥の研究所
「──という理由で、怪人になりたいんです」

〇魔法陣のある研究室
美馬 主水「不躾なお願いだとは思うのですが・・・」
魔造博士「いいじゃろう」
魔造博士「ただし、改造手術にはリスクもつきものじゃ」
魔造博士「最悪、死に至ることも・・・」
美馬 主水「不慮の事故は、覚悟の上です」
魔造博士「それに、後戻りも出来んぞ?」
美馬 主水「遠慮は不要です!」

〇山奥の研究所
  改造手術は、不測の事態が多々発生したらしい
「ふむ、変じゃのぅ?」
  危機の不具合や、パーツの不良
「む・・・コレはどこに繋げば・・・?」
  博士自身の不注意や不手際
「う~ん・・・まぁ、コレでいっか」
  そんな不穏な空気の中、手術を終えた俺は──

〇魔法陣のある研究室
魔造博士「美馬主水、いや被験体Mよ」
魔造博士「お前はもう10ノアーツも眠っておる」
魔造博士「もはや、世界は・・・む?」
  俺の不勉強か、『10ノアーツ』という言葉の意味はわからなかったが・・・
魔造博士「お、おぉ・・・」

〇魔法陣のある研究室
魔造博士「目覚めたか美馬主水、いや怪人Mよ」
  不屈の闘志で、俺は目覚めた
USA「まだまだネ、ウルトラスーパーキック!」
  この男、確かに強い
  しかし、不運だったな
USA「耐えるなんて、そんな馬鹿ナ!?」
  俺の不敗神話は、お前に止められるほど安くない

〇ビルの屋上
ナツナ「どうだ、ざまぁみろ!」
  あの時、魔法少女隊に倒された怪人を見て
  不謹慎にもこう思ったんだ──
  『羨ましい!』と

〇魔法陣のある研究室
  だから、俺は何度でも立ち上がる
  魔法少女に、ナツナちゃんに倒されるその日まで
  不純な動機、と言えば言え
  不退転の決意を持った俺は、難攻不落だ!

〇黒
  『魔法少女に殺されたい』
  - 完 -

コメント

  • 戦い続ける怪人の主人公、そのトンデモな理由に驚きです!
    そして、ラストのこのオチは、鋭く、かつ何とも残酷なモノですね……

  • 魔法少女にやられることが生きがいだなんて、怪人Mは本末転倒というか究極のドMですね。おまけにナツナが魔法少女から異端戦隊になったことも気づかずに殺しちゃってたなんて、作者さんも人が悪いなあ。怪人Mにとって最強最悪の敵はノアーツだったんだなあ。

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