罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード20 Special(脚本)

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望月麻衣

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〇空
  ご愛読感謝御礼掌編
  
  
  Special
  
  
  甘々な二人の番外編です

〇シックなカフェ
  久弥と再会してから、
  3時間が経過していた。
  人の少なくなったカフェで、すっかり冷めてしまったコーヒーを見下ろす。
梓「・・・はぁ」
  何度も出るのは、熱い溜息。
  窓の外には、夜空に向かってそびえたつような高宮グループのオフィスビル。
  そう、あのビルの支社長室で久弥と会えたんだ。
  ――なんだか、今も夢を見ているみたいだ。

〇シックなカフェ
  『今夜、一緒に食事できるかな?
  これから会議があるから、3時間後くらいになるかもしれないけど』
  あの時、
  
  頬に手を触れながらそう言う久弥に、私は目眩を感じながら頷いた。
  大慌てで家に帰って、シャワーを浴びて、着替えて、再びこのビルの前。
  『3時間』は意外と、アッという間かもしれないな。
  そんな風に思っていたのに、カフェに入って、こうして待っている時間はとても長く感じた。
  ついつい、時計ばかり確認してしまうし、
  
  
  何度も窓の外を眺めてしまう。

〇シックなカフェ
  胸がドキドキとうるさくて、
  コーヒーですら、喉を通って行かない。
  久弥と食事ができる。
  なんだか、現実のこととは思えなくて。
  
  
  とにかく気持ちが落ち着かない。
  そっとビルの出入口に目を向ける。
  ここからでは、出入する人たちが小さくしか見えないけれど、
  久弥の姿を見逃さない自信はある。
  まだ、かな。
  
  
  ドキドキする。
  瞬きも惜しい気持ちで、窓の外に集中していると、
久弥「――梓」
  と、いきなり久弥が現われて、面白いくらいに体がびくんと跳ねた。
  店内にいたわずかな客たちが、
  
  ちょっとカッコイイね、と囁き合っている。

〇シックなカフェ
久弥「そんなに驚かなくても」
  久弥は、クスクスと楽しげに笑っている。
梓「だって、 ここからビルの入口を見てたから」
  思わず本当のことを言ってしまった私に、久弥はぱちりと目を開いた。
  しまった。
  
  
  
  出て来るのをジッと見て待っていたなんて、引かれちゃったかな。
  ばつの悪さを感じて肩をすくめていると、久弥はにこりと目を細める。
久弥「今日は裏口から出て来たから」
  そうだったんだ・・・
  
  
  と、なんだか力が抜ける気がした。
久弥「裏口から出て来て良かった」
  えっ?
  
  と訊き返す。
久弥「梓の驚く顔を見るのが好きだから」
  サラリとそんなことを言うものだから、またドキドキと鼓動が強くなる。
久弥「とりあえず、出ようか」
  そう続けた久弥に、私は頷いて立ち上がった。

〇商業ビル
  すっかり暗くなった夜の街を歩く。
  並んで歩いて気付いた。
  久弥は、背が伸びたんだ。
  元々スラリと背が高い人だったけど。
  17歳のあの頃より、体つきもしっかりしていて、
  スーツがとてもよく似合っていて・・・
  なんていうか
  
  
  洗練されたと思う。

〇商業ビル
  美しくて気まぐれな野良猫のような雰囲気を持っていた久弥。
  今は気品みたいなものも備わっていて、そういう意味では別人のようだ。
  そりゃあそうだ。
  
  
  今の彼は、高宮グループの御曹司なんだから。
  本当に、何も知らなかったとはいえ、
  この彼を『救いたい』だなんて思っていた自分が、少し恥ずかしく感じる。
  思わず俯くと、
久弥「梓は、何を食べたい?」
  と優しい声で問いかける。
  実のところ
  
  
  何も食べられる気がしない。
  ドキドキが込み上がって、喉まで来ている。
梓「久弥は何を食べたいの?」
  こうなったら、久弥の食べたいものでいい。
  すると、
  
  
  不意にギュッと手を握られた。
久弥「梓──」
  夜の街の喧騒の中、
  
  
  久弥は私の顔を覗きながら、握った手に力を込めた。

〇商業ビル
梓「えっ?」
  一瞬、なぜ、ここで名前を呼ばれたのか分からなかった。
  戸惑いながら見詰め返すと、
  
  
  久弥は熱っぽい眼差しを向けていた。
  あ、そういうことか!
  
  急に理解して、頬が熱くなる。
  何も言えずにいると、久弥はほんの少し頬を赤らめて、目をそらした。

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