エピソード1 スパイス4(脚本)
〇開けた交差点
あい(もう夜中・・・ 行くアテなんかないけど・・・ ホテルでも行こうかな・・・)
あい(良かった・・・雪も降ってなくて、 でも、寒いや・・・)
たいち「あれ、相楽ちゃん、どうしちゃったの、こんな夜中に・・・」
あい「店長・・・店長こそ・・・」
たいち「明日から大雪警報だから、今のうちに走っておこうと思って・・・ 珍しく眠れなかったし・・・」
たいち「旦那さんとは、話せた?」
あい「店長〜」
たいち「ちょっと、余計に泣いちゃって・・・」
あい「終わったんです・・・私達」
たいち「・・・とにかく、寒いから家においで」
〇散らかった部屋
たいち「散らかってて申し訳ないけど・・・寒い中待たせるのもかわいそうだからさ・・・」
たいち「良かったら、入って」
あい「はい。すみません・・・ 夜中に・・・」
たいち「今、暖かい飲み物でも出すから、ストーブの前で体温めていてよ」
あい「はい、・・・何から何まで・・・」
暖かいコーヒーを1口飲んだら落ち着いてきた
夫と、話した事、夫の気持ちを聞いた事、
終わった事、店長は黙って聞いてくれた
たいち「・・・それで、あいちゃんはそれでいいの?」
あい「・・・え?」
たいち「あいちゃんの気持ちは残ってないの?」
あい「聞いた時、やっぱりって思ったんです。疑う気持ちの方が大きくなっていって、多分私も夫に対して気持ちも離れていってました」
あい「・・・だから、ずるいんですけど、正直こうなって良かったって思う自分もいて・・・悲しいけど・・・」
たいち「・・・そっか・・・」
あい「・・・バカな事言ってるって分かってますけど、今日一緒に寝てくれませんか・・・寂しくて・・・」
たいち「・・・」
あい「・・・自分でもおかしい事言ってるの分かってます・・・」
そう言う間も無く、あいを自分の腕の中に引き寄せ抱きしめた
たいち「・・・汗臭かったら、ごめんだけど・・・」
泣きながらも、クスリと笑ってしまった
たいち「俺もちゃんと話すから聞いてね」
あい「・・・はい」
たいち「俺は、あいちゃんのことが可愛くて可愛くて仕方ないの。旦那がいるって分かってるけど・・・」
あい「・・・」
たいち「正直、どうでもいい子なんて、こんな時間に家にあげないし、こんな風に抱きしめない」
店長の体が暖かく、鼓動が速くなるのが分かる
たいち「正直、抱きたくて仕方ないよ」
あい「・・・」
たいち「でもさ、終わったかもしれないけど、まだ結婚してるのに、そんなことしちゃったらさ、あいちゃんの旦那と同じことしちゃうよね」
あい「・・・・・・」
たいち「俺は、そんなことしたくない」
たいち「好きな子にはいつも笑っていて欲しいし、苦しめたくない」
あい「・・・・・・」
そう言うと、おでこに軽いキスをした
たいち「だから、今日はこれでおしまい」
たいち「あいちゃんに、堂々と触れていい立場になったら、好きなだけ触るから」
あい「・・・店長・・・」
たいち「そんな涙目で見ないでよ!襲いたくなるの我慢してるんだから」
たいち「狼は、シャワーでも浴びて、目を冷ましてくるから、コーヒーでもお菓子でも食べて好きに過ごしてて」
あい「・・・はい」
〇アパートのダイニング
目を覚ますと、暖かいベッドの上だった
テーブルの上に置き手紙があり、
先に出るから、今日はゆっくり休んで
そう書かれたメモが残されていた
申し訳ない気持ちと、感謝の気持ち
深呼吸してから、カズにメールを送った
住む場所が見つかるまで、アパートを
借りたいと言う事と、出る際には、
離婚届を置いて出て行くから
短い文章だけど、何度も見返してから
送信した。
返事はすぐに来た。
ごめんという言葉と、了解という言葉だった
あと ありがとう
返事は返さなかった。
〇ファミリーレストランの店内
あい「いらっしゃいませ。 お席ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
季節は春になっていた。
あれからすぐ新しいアパートも見つかり、
カズともお別れした。
新しい住まいにも慣れて、仕事も変わらず
忙しく、充実していた。
髪の毛も切り、新しい自分になったかのように感じていた
店員A「なんかあいちゃん、雰囲気変わったよね いい事あった?」
あい「そうですか? 変わらないですよ」
店員A「うん、なんかいい感じ。 大人の女性って感じ」
あい「何ですか。それ。 笑っちゃう」
店員A「だね。ごめんごめん。 仕事しよ」
以前よりも、店内のスタッフとの会話も
増えて、すごくスムーズに仕事もできるようになってきた
仕事が楽しい
あい(よし 午後も頑張ろう)
そう気合を入れてホールに向かった