世界最後の日に、ぼくはきみに恋をした

喜多南

#2 終末のスクールライフ(脚本)

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喜多南

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〇荒廃した街
  早足で先を歩くエイジに、キョウがちょこまかとついてきている。
キョウ「エイジさん、どこに向かってるのかな?」
エイジ「・・・学校。ここを真っすぐいけば、ぼくが通っていた中学があるはず」
エイジ「学校なら、何か楽器が残ってるかもしれないだろ」
キョウ「なるほど! さすがエイジさん!」
エイジ「さすがって・・・いちいち尊敬するのやめてほしいんだけど」
  ため息を吐くエイジにキョウは気づかず、 周囲に視線を巡らせている。
  隕石や暴徒たちの影響で、建物の多くは倒壊しているか、焼け落ちてしまっていた。人の姿も見当たらない。
キョウ「エイジさんはこのあたりに住んでたんだね」
エイジ「・・・ああ」
キョウ「私はこの一年で流れに流れて、かなり地元から離れちゃったな」
キョウ「大規模な避難施設とか、大型シェルターがどこかにあるとか、宇宙に逃げ出す術があるとか・・・」
キョウ「噂を信じて、色んな場所に行ったんだよ」
エイジ「・・・多くの奴らが、そうやって何かにすがってどこかに消えていったのは知ってる」
エイジ「ぼくには関係ない話だ」
キョウ「そっかぁ・・・」
キョウ「あ、見てエイジさん! カラオケボックスがある!」
  キョウが声を弾ませて指さす方に、カラオケボックスの看板が傾いていた。
  ガラス戸は割られ、中は荒れ果てている。
キョウ「あ~カラオケしたいな~」
キョウ「高校に通ってた時は、友達とよく行ってたなあ」
エイジ「どう見てもカラオケできる状態じゃ・・・」
エイジ「って、おいなんで入っていくんだよ・・・!」
キョウ「だって音楽を探す旅だし! カラオケだって音楽! 行こ!」
エイジ「ああもう・・・!」

〇カラオケボックス(マイク等無し)
キョウ「機械壊れちゃってるね・・・」
エイジ「動いたところで電気がもう死んでる」
キョウ「あっ、でもほら、マイクあるし。私歌いまーす!」
エイジ「勝手にしろよ・・・」
キョウ「~♪ ~~♪」
エイジ「・・・・・・」
エイジ(へえ・・・良い歌声だな。ストリートライブで食いつないできただけはある)
エイジ(何より・・・こんな終末世界で笑って歌えるのがすごいというか、呆れるというか・・・)
キョウ「・・・ふぅ。スッキリしたぁ」
キョウ「えっへへ。でもエイジさんに聴いてもらうのはちょっと緊張しちゃったな」
キョウ「じゃあ次はエイジさんの番ね! はいマイク!」
エイジ「は? 僕は歌わない」
キョウ「えーずるい! 私は歌ったのに!」
エイジ「そっちが勝手に歌っただけだろ。僕は・・・二度と音楽はやらないって決めたんだ」
キョウ「・・・そっか。じゃあカラオケはおしまい! 次の場所に行ってみよー」
エイジ「あっさり引き下がったな・・・」
キョウ「いいのいいの。まだ私たち知り合ったばっかりだし、もっと親しくならないとカラオケは歌えないよね」
エイジ「そういう問題じゃないんだけど・・・」
エイジ「それに、あと四日で隕石が落ちて世界が終わるのに、今更誰かと親しくなれるわけない」
キョウ「あと四日もあるんだし、なれるよきっと」
キョウ「そしたら、私のために歌ってね?」
エイジ「音楽はやめたんだ・・・絶対に歌わない」
エイジ「きみの満足する楽器を見つけたら、こんな旅はおしまいにする」
キョウ「エイジさん、ほら行こ!」
エイジ「はぁ・・・聞いちゃいないし」

〇廃墟と化した学校
  エイジの案内で学校にたどりついた頃に は、辺りはすっかり薄暗くなっていた。
  廊下を歩くキョウは、やたらとはしゃいでいる。
キョウ「エイジさんの中学校、ちゃんと残ってて良かったね!」
エイジ「さっさと用事を済ませよう」
エイジ「中もそんなに荒らされてないみたいだ。これなら音楽室にでも行けば、楽器はすぐに見つかると思う」
エイジ「さすがにギターはないだろうけど、代わりになるものがあれば・・・」
キョウ「うん、そうだね」
キョウ「それにしても・・・ここにエイジさんが通って曲を作ってたと思うと、感慨深いなぁ」
エイジ「・・・いい思い出なんてひとつもない」
キョウ「そうなんだ・・・学校嫌いだった?」
エイジ「どいつもこいつもくだらない奴らばっかりで、全部ぶっ壊してやりたいと思ってたよ」
キョウ「なるほど・・・じゃあぶっ壊そうか」
エイジ「は?」
  キョウは転がった椅子を拾い上げ、窓に向けて勢いよく投げつけた。
  ガシャーンッ
  ガラスが割れて大きな音を立てる。
エイジ「お、おい! なんてことを・・・」
キョウ「あははっ、すごい音したね!」
キョウ「気持ちいいよ! 超ストレス解消になる! よーし、徹底的に壊すぞー!」

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