破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

第一話 ニート武道家の就活(脚本)

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武智城太郎

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〇草原
  青馬文彦は、両腕で開手の構えをとったまま微動だにしない。
  その草色の道着には、流派の名が堂々と刺繍されていた。
青馬文彦「フゥ・・・」
  対峙しているのは、〝鉄人〟と呼ばれる精巧な武闘人形だ。
竹國無蔵「耐えろ、文彦・・・!」
青馬文彦(来た!!)
青馬文彦(動きは鈍重だが、攻撃は重くて威力がある・・!!)
青馬文彦「今だ!!」
  一瞬の隙をついて鉄人に組みつき、〝破邪河津掛け〟をしかける。
  そのまま〝破邪河津落とし〟で、自分もろとも仰向けにひっくりかえす。
  鉄人は起きあがろうとするも、ボディが重くて手足をバタつかせるだけ。
  ネジ巻きが最後まで巻き上がり、鉄人はピタッと動きを止める。
青馬文彦「やった・・・!!」
竹國無蔵「よくやった、文彦。見事であったぞ」
青馬文彦「ありがとうございます、師匠!」
竹國無蔵「ついに二八番目の〈鉄人の試練〉も突破したな。残り九つの試練も破邪魂で頑張れ」
青馬文彦「はい。粉骨砕身して死ぬ気で挑みます!」

〇団地

〇アパートのダイニング
青馬厚子「あら、ひさしぶりに欽ちゃんの番組やるみたいね」
  青馬厚子は、のんびりと新聞のテレビ欄を眺めている。
  文彦も同じテーブルで、ボソボソと朝食を取っていた。
青馬文彦(昨日の夕飯の残りものか・・・)
青馬厚子「石田さんとこの上の子、浪人して慶応に合格したんだってね」
青馬文彦「ふうん・・・」
青馬厚子「二丁目の森さんとこの子は、公務員の試験に合格したんだって。あの太ったちぢれっ毛の子」
青馬文彦「へえ・・・」
青馬厚子「偉いわね。よその子は、みんなしっかりしてるわ」
青馬文彦「おれだって破邪神拳十段だし、〈三七の試練〉を終えたら免許皆伝をもらえるし・・・」
青馬厚子「その資格をもってると就職に有利になるの?」
青馬文彦「いや、べつに就職とかには・・・」
青馬厚子「それじゃあ、意味ないじゃない」
青馬文彦「千年もの影の歴史を誇る天下無双の神技を受け継ぐという至上の名誉を──」
青馬厚子「あんた、そんな役に立たない運動ばっかりに熱中して、いったいいつになったら就職するの?」
青馬文彦「それはだから、もうちょっと待ってって言ってるだろ。試練もまだけっこう残ってるし・・・」
青馬厚子「ちょっと待っててって、ずっとそればっかりじゃない」
青馬厚子「いい年した息子が、いつまでも無職の扶養家族なんて、母さん恥ずかしいわ」
青馬厚子「ニート? パラサイトだっけ?」
青馬厚子「お父さんは毎日遅くまで残業してるのに、あんたは家に一銭も入れないんだから」
青馬厚子「あら、もう8時になるわ。『あまさん先生』見ないと」
  厚子は隣りの居間に入り、テレビをつける。
青馬文彦(ホッ・・・)
青馬文彦「そうだ、母さん。ピータンの餌代と、あとスニーカーに穴があいたから、お金がいるんだけど」
青馬文彦「一万円くらい」
青馬厚子「ダメよ。お父さんと相談して、お小遣いはもうあげないことにしたから」
青馬文彦「ああ、そう。じゃあいい」
青馬厚子「言っとくけど、お父さんのズボンの財布から、勝手にお金抜き取ってるの知ってるんだからね」
青馬厚子「もう財布は隠すことにしたから」
青馬文彦「・・・・・・」

〇屋敷の門
  竹國無蔵邸──

〇日本庭園

〇風流な庭園

〇神社の本殿

〇古風な道場
青馬文彦「稽古日でもないのに申しわけありません」
竹國無蔵「それで、わしに相談というのは?」
青馬文彦「幼き頃より、自分はわき目もふらずに修業に邁進してまいりました」
青馬文彦「破邪神拳を極め、天下に並ぶ者なき武術家になることだけが夢でした。それはいまも揺るぎありません」
青馬文彦「ですが両親の負担を考えれば、修行の道半ばながら、そろそろ自分で生計を立てることも考えるべきかと思い至りまして」
竹國無蔵「ふむ。それもしかたあるまい。仕事との二足の草鞋でも修業は続けられよう」
青馬文彦「今日、相談に伺ったのはそのことなんです」
竹國無蔵「ほう」
青馬文彦「なにか、破邪神拳のスキルを活かせるような仕事はないでしょうか?」
竹國無蔵「無茶をいうな。破邪神拳は暗殺術なんじゃぞ」
青馬文彦「はあ」
竹國無蔵「日本は法治国家じゃからな」
青馬文彦「やはりダメですか・・・」
竹國無蔵「若くして事業に成功した、わしの父であり師でもある吉蔵も、「今どき暗殺術とか使い道ないだろ」と言ってたらしいが──」
竹國無蔵「それでも「一子相伝で何代も続いてるのを自分の代でなくすのもなあ」と考えなおして、いちおう息子であるわしに継承させたのじゃ」
竹國無蔵「「面倒くさかったら、おまえの代でやめてもいいよ」ともいわれたが、趣味で近所の子供に教えてたら──」
竹國無蔵「たまたま、おまえがやる気をだしたから後継者にしたが・・・」
  無蔵はさらっと破邪神拳継承秘話を語る。
青馬文彦「はい、感謝しております」
竹國無蔵「それで、どうするんじゃ?」
青馬文彦「しかたありません。一般の仕事をさがすことにします」
竹國無蔵「そうか。それはそれで大変そうじゃな」
竹國無蔵「わしは家が金持ちなんで、一度も働いたことがないからよくわからんが」
竹國無蔵「まあ、破邪神拳魂で頑張れ」

〇曲がり角
青馬文彦「ふ~ん・・・」
青馬文彦「本屋に就職情報誌がないと思ったら、スマホで仕事を探せるのか」
青馬文彦「今どきは便利なものだな」
青馬文彦「クリックして、求人サイトの会員登録画面に、と」
  住所や学歴など、個人情報を入力する項目がズラッと並んでいる。
青馬文彦「・・・めんどくさ」
青馬文彦「べつに今日でなくてもいいか」
青馬文彦(殺気!!)
木下「青馬文彦! 覚悟ーっ!!」
木下「ウォーーッツ!!」
青馬文彦「お、おまえは!!」

〇黒
  つづく!
  次回予告
  
  第二話 天下一闘技会
  
        乞うご期待!!

次のエピソード:第二話 天下一闘技会

コメント

  • とぼけた師匠がいいキャラをしてますね。今後の展開が楽しみです。

  • 武道家なのにすこし心が荒んでいるような、潔くないような気がしましたが、今後の変化に期待です。会話が淡々とテンポよく最後まで楽しく読ませて頂きました。

  • 武道家がまさかのニート、と最初は驚いたのですが、確かに就職に繋がるスキルかと言われたら、、、バトルシーンとの落差に笑えてきます。

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