エピソード7.決戦前夜(脚本)
〇アパレルショップ
野上 叶香「えっと、替えの下着に、靴下に・・・・・・」
朝平 真実「ねぇ、野上さん。 その、節那さんは旅行には参加しないの?」
野上 叶香「私が黙って出て行ったから、 怒っちゃったみたい」
朝平 真実「当然ね」
朝平 真実「でも節那さんが居れば心強かったから、 ちょっと残念かも」
野上 叶香(やっぱり、朝平さんは、 節那の事が、好きなんだね)
野上 叶香「なんとか、一緒に旅行へ行けないかな」
〇マンションの共用廊下
野上 叶香「節那、やっぱりいない」
〇中規模マンション
野上 叶香「節那、どこに行っちゃったんだろう?」
十六夜 節那「あっ」
野上 叶香「あっ」
十六夜 節那「・・・・・・」
野上 叶香「ちょ、ちょっと待って!!」
十六夜 節那「その前になんか言う事あるだろ?」
野上 叶香「えっ、えっと、黙って出ていってごめんね」
十六夜 節那「まぁ、この俺を半日もの間トイレに閉じ込めておく事が出来たのだけは褒めてやるよ」
十六夜 節那「なんか用事があって来たんだろ? 何でもいいなよ。何でも聞いてやるからさ」
野上 叶香「ありがとう!節那!」
〇タワーマンション
野上 叶香「ここが伊集院君の家!?」
朝平 真実「噂では上から3階分が、 伊集院君の家だって聞いたことあるけど」
伊集院 累「誰だい、そんな嘘を流したのは?」
朝平 真実「あくまで噂よ でも不快な思いをしたのなら謝るわ」
伊集院 累「10階分が僕の家で、3階分が僕の部屋だ。 噂を流すのなら真実を流して欲しいな」
野上 叶香「お金持ちって無自覚に人を傷つけるよね」
十六夜 節那「同感だ」
〇高層マンションの一室
伊集院 累「さぁ、自分の家だと思って、 ゆっくりくつろいでくれたまえ!!」
野上 叶香「ここに来るまでに何回ロック解除したんだろ」
十六夜 節那「流石セレブだな」
朝平 真実「伊集院くん、私達女子は何処の部屋を使えばいいのかしら?」
伊集院 累「リビングを出て右側の部屋を使ってくれ」
朝平 真実「ありがとう。 さぁ、行くわよ、野上さん」
野上 叶香「えっ、なんで?」
朝平 真実「呆れた。 いつまで制服でいるつもり?」
野上 叶香「あっ、そっか。あれからずっと制服のままで過ごしてたんだった」
朝平 真実「全く・・・・・・ ほら、着替えに行くわよ」
〇豪華なベッドルーム
野上 叶香「はぁ、さっぱりしたぁ」
朝平 真実「ある程度お洋服を買い揃えておいて良かったわね。明日は久しぶりにお婆様に会いに行くんだから、しっかりと身なりを整えないとね」
野上 叶香「お婆ちゃん、気付いてくれるかな?」
朝平 真実「何言ってるのよ。お孫さんの顔を忘れるお婆様なんてそうそう居ないわよ?」
野上 叶香「そうなんだけど、最後にあったのは、私が小学校に上がる前なんだよね」
朝平 真実「えっ、それはちょっとおかしくない?」
野上 叶香「そうなの?」
朝平 真実「仕事が忙しくて2、3年は帰らないならまだしも、10年以上お会いしていないのは変よ」
朝平 真実「電話や手紙のやりとりはしていないの?」
野上 叶香「してないよ。一回も来た事がない」
朝平 真実「じゃあ何で魔法のクッキーの事や、レシピ本のノートが家にあったの?」
野上 叶香「忘れられない思い出だったから?」
朝平 真実「・・・・・・」
〇高層マンションの一室
十六夜 節那「あぁ、住所は変わってねぇよ こいつの婆ちゃんの家、確か一軒家だった筈だから」
野上 叶香「ねっ!!だから絶対大丈夫!!」
朝平 真実「こんなに信用の無い大丈夫も無いわね」
伊集院 累「ふーむ・・・・・・」
野上 叶香「大丈夫だよ!!私覚えてるから!!」
伊集院 累「まぁ、たまにはぶらり途中下○の旅も悪くないかもね!!」
朝平 真実「全く、ポジティブもそこまで行くと、尊敬に値するわね」
〇露天風呂
野上 叶香「わぁ、温泉♪」
朝平 真実「屋上が露天風呂だなんて、 驚きの連続で慣れる事を許してくれないわね」
野上 叶香「朝平さん一緒に入ろ♪」
朝平 真実「良いわね。着替えてからいきましょうか」
〇銭湯の脱衣所
野上 叶香「そういえば、どうしてお泊まり会をする事になったんだっけ?」
朝平 真実「貴女がこれ以上勝手な事をしない様に監視をする為よ」
野上 叶香「もっとマイルドな言い方があるでしょ〜?」
朝平 真実「事実よ」
朝平 真実「でも、どうせ明日皆で旅行へ行くのなら、 前日から一つの場所に固まって過ごす方が楽しいでしょ?」
野上 叶香「うん!!お泊まりなんて何ヶ月ぶりだろ?」
朝平 真実「魔法のクッキーのせいで休学になっちゃったから、修学旅行も実施するか怪しくなってきたものね」
野上 叶香「うぅ、ごめんなさい・・・・・・」
朝平 真実「別に良いのよ。内申点目当てにクラスを纏めるなんて、したくなかったもの」
朝平 真実「それに、旅行へ行くなら好きな人と一緒に行きたいもの」
野上 叶香「そ、そうだね・・・・・・」
野上 叶香(今回の旅行の目的は、 おばあちゃんに会いに行く事なんだけど、)
野上 叶香(朝平さんの恋も応援したい)
野上 叶香(でも、私は・・・・・・)
〇豪華なベッドルーム
数時間後
朝平 真実「すぅ、すぅ、むにゃむにゃ」
野上 叶香「うぅん、喉乾いちゃった」
〇廊下の曲がり角
野上 叶香「あれ、キッチンの方電気がついてる 誰かいるのかな?」
〇システムキッチン
伊集院 累「やぁ、ハニー。 こんな夜更けにどうしたんだい?」
野上 叶香「ちょっと喉が乾いちゃって・・・・・・」
伊集院 累「それならハーブティーがあるよ ちょっと待ってて、用意するから」
野上 叶香(なんか癒される・・・・・・ でもちょっと漢方っぽい独特の香りも混じっているような?)
伊集院 累「さぁ、どうぞ。ハニー」
野上 叶香「うっ、うん。いただきます!」
伊集院 累「折角だから少し場所を変えてようか」
〇植物園の中
野上 叶香「わぁ〜、凄〜い!!」
伊集院 累「温泉の奥に森があっただろう? あそこが植物園のエリアになっているんだよ」
野上 叶香「温泉に植物園に、 伊集院君の家には何でもあるんだね!」
伊集院 累「確かに物やお金に困った事は無いかな」
伊集院 累「欲しい物は一通り買えてしまうから、 お金では買えない物に執着するようにはなったかな」
伊集院 累「例えばここの植物達は、全員僕が育てたんだ 君に振る舞ったハーブティーも僕が作ったんだよ」
野上 叶香「えっ、凄っ・・・・・・ 伊集院君って何でも出来るんだね」
伊集院 累「何でもは出来ないよ 何でも出来たら、君の事だって・・・・・・」
野上 叶香「・・・・・・」
野上 叶香「あのね、伊集院君に 大切な事を伝えなきゃいけないの!!」
伊集院 累「なんだい?」
野上 叶香「あのね・・・・・・」
〇植物園の中
伊集院 累「・・・・・・」
野上 叶香「本当にごめんなさい。 全部、私のせいなの」
伊集院 累「・・・・・・やはり君は覚えていないわけか」
野上 叶香「えっ?」
伊集院 累「取り敢えず、君目線の話をしてくれてありがとうとだけは伝えておくよ」
伊集院 累「伝えるのは勇気が言っただろう? よく話してくれたね」
伊集院 累「彼女との件は、僕の方でケリをつけるよ 恐らく今回の旅にも来るとは思うからね」
野上 叶香「伊集院君、本当にごめんね」
伊集院 累「・・・・・・いいよ」
伊集院 累「僕達の一件は君には何も非は無いのだからね」
伊集院 累「さぁ、つまらない話はここまでにして、 冷めない内に飲もうか」
野上 叶香「・・・・・・うん、いただきます」
野上 叶香「!? とっても美味しい!!」
伊集院 累「それは良かった。 君の事を考えながら淹れたんだ」
伊集院 累「僕は何か悩みがあった時は、ここに来るんだ」
伊集院 累「ここに来ると落ち着くのは、きっと植物達が癒してくれてるからかもしれないね」
野上 叶香「伊集院君。 元気をお裾分けしてくれてありがとう♪」
伊集院 累「構わないよ」
伊集院 累「効果が出れば良かったが、やはり良薬に即効性を求めるのは間違いだったか」
野上 叶香「えっ?」
伊集院 累「いや、こちらの話さ」
伊集院 累「これを飲み終わったら戻ろう 明日は早いから寝坊しないようにね」
野上 叶香「うん!!」
〇タワーマンション
野上 叶香「すいません。寝坊しました」
朝平 真実「ごめんなさい。久し振りの旅行で羽目を外し過ぎて、野上さんを巻き込んでしまったわ」
伊集院 累「いや、構わないよ パパの身支度の方が長いから、この位余裕さ」
十六夜 節那「流石、眠り姫だな」
野上 叶香「あれ、節那が普段着だなんて珍しいね」
十六夜 節那「折角の旅行だからな」
十六夜 節那「忘れられない旅行にしようぜ」
野上 叶香「・・・・・・」
野上 叶香「うん!!」
朝平 真実「・・・・・・」
〇車内
立木 望「チッ・・・・・・ アイツら、このままで済むと思うなヨ」
ウェイター「感情的な奴は、何かを演じなければ平常心を保っていられない。お前は典型的な、まさにそのパターンの人間だな」
立木 望「五月蝿イ!! お前は黙って俺に従ってイればいいんダ!!」
ウェイター「まぁ、お前みたいな奴とは、あの人との約束が無ければ、他人同然でいたいからな」
如月 早苗「・・・・・・」
ウェイター「このガキも一緒に連れて行くのか?」
立木 望「当たり前ダ。ソイツはもうこちら側の人間ダ」
ウェイター「未成年者の連れ回しで逮捕されない事を祈るのみだな」
ウェイター「野上 叶香」
ウェイター「生きていてくれて良かった」
伊集院くんのお金持ち具合は反則的ですね。何から何まであって圧倒的です。そして久々の登場の早苗さん。役者が揃ったという感じですね!