第六話 本当の家族(脚本)
〇車内
栄田 駿(さて、と)
栄田 駿(さっきから後ろにいるあの車 恐らく僕の尾行だな)
栄田 駿(バレないようにつけているつもりかな?)
〇高速道路
栄田 駿(やや中古の年式に ト○タ製のよくあるセダン・・・)
栄田 駿(教科書に出てきそうなほど 典型的な尾行車だ)
〇車内
栄田 駿(普段なら会社までスルーしてるところだが)
栄田 駿(あいにく今日の僕は機嫌が悪いんだよ)
栄田 駿「スパイダーより伝令 白いセダン、ナンバーXX-XX」
栄田 駿「怪我をさせない程度に遊んでやれ」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「黒塗りのB○Wかよ! いーよな、金持ちはよ」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ! 追い越し車線に移りやがった!」
初刷 論(はつずり さとし)「勘弁してくれよ」
初刷 論(はつずり さとし)「あんまりスピード出したくないんだよな」
初刷 論(はつずり さとし)「傷でもついちまったら 所長に車取り上げられちまう」
〇応接スペース
堀田 晴臣「車が使いたい? んー。駄目とは言わないが」
初刷 論(はつずり さとし)「バイクでもいいんスけど」
堀田 晴臣「いや、バイクは警戒されやすい 社用車を購入するとしよう」
初刷 論(はつずり さとし)「マジすか! 流石所長ッス!」
堀田 晴臣「ただし!」
堀田 晴臣「尾行に使うのはNG。 あくまでも移動用として使うのが条件だ」
初刷 論(はつずり さとし)「え? なんでです? 自分B級ライセンスも持ってるのに」
堀田 晴臣「運転が上手いというのと、 車で尾行できるスキルは全く違う」
堀田 晴臣「もし尾行することになったら タクシーを使うんだ」
初刷 論(はつずり さとし)「はあ、了解っス」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)(所長にはああ言ったけど 実際尾行は車の方がやりやすい)
初刷 論(はつずり さとし)(今までだって何の問題もなかった 所長は慎重すぎるんだよ)
初刷 論(はつずり さとし)「おわっ!? な、何だ!」
〇開けた高速道路
初刷 論(何だよ、あのワゴン車! 雑な運転しやがって)
初刷 論「うわあっ!」
初刷 論「トラック!? 何で急に!!」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「はっ、どうよ! この距離で避けれるのは俺くらいだぜ!」
初刷 論(はつずり さとし)「つーか、 なんで運転の荒い奴ばかりなんだ」
初刷 論(はつずり さとし)「ちいっ! また別のトラック!」
初刷 論(はつずり さとし)「なんのっ!」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「やれやれ、危ないところだった」
初刷 論(はつずり さとし)「って、あれ?」
初刷 論(はつずり さとし)「・・・・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「・・・囲まれてる」
初刷 論(はつずり さとし)「おい、嘘だろ! なんで減速するんだよ!」
初刷 論(はつずり さとし)「後ろにもトラック居るんだっつーの!」
〇応接スペース
堀田 晴臣「何故かって?」
堀田 晴臣「素人相手なら大丈夫かもしれんがね」
堀田 晴臣「もし運悪く相手が手練れだった場合──」
〇黒
堀田 晴臣「命を落とすことになるからさ」
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「マズいマズいマズい! うああああああーーーーー!!」
〇空
〇アーケード商店街
金沢──近江市場商店街
堀田 晴臣「堀田だ。ああ、ハーマイオリー どうした?」
堀田 晴臣「泣いてちゃわからん。 落ち着いて話してくれ」
堀田 晴臣「うん・・・うん。 じゃあ、大きな怪我はしてないんだね?」
堀田 晴臣「わかった。すぐ戻る」
堀田 晴臣「いや、大丈夫だ。 彼の側についててやってくれ」
〇黒
堀田 晴臣「・・・・・・・・・」
堀田 晴臣(・・・僕が甘かった)
堀田 晴臣(10年間、人を欺ける男が普通なわけがない)
堀田 晴臣(部下に任せるべきじゃなかったんだ)
〇アーケード商店街
堀田 晴臣(依頼料三千円か。 大赤字の予感しかないな)
子供A「あれ?」
子供の母親「どうしたの、みのり?」
子供A「おじさん、消えちゃった」
子供の母親「おじさん? どんな?」
子供A「えとねー、髪の毛がツンツンしててー えーと、えーと・・・」
子供の母親「そんな人いたかしら?」
子供A「いたよ! それで急に居なくなったの!」
子供の母親「ええっ!?」
子供の母親(この子ったら霊でも見えるのかしら?)
〇商業ビル
〇オフィスのフロア
栄田 駿「はい、栄田。ああ、君か」
栄田 駿「それで、何かわかったかい?」
〇諜報機関
栄田の部下「ご指示通り、ドラレコから画像を抽出」
栄田の部下「街頭カメラのデータベースにアクセスして 奴の写真を検索しました」
栄田の部下「都内あちこちに足を運んでますが ○▲市の市街地に最もよく見かけられますね」
栄田の部下「引き続き、奴の個人情報も集めておきます」
栄田 駿「わかった、ありがとう」
〇オフィスのフロア
栄田 駿(○▲市に位置する探偵事務所・・・ 間違いない)
栄田 駿(僕を調査してるのは堀田探偵事務所!)
〇モヤモヤ
栄田 駿(堀田探偵事務所──)
栄田 駿(スタッフ数は多くないが 所長の堀田は『魔法使い』の異名がある)
栄田 駿(奴が直接介入してきたら 間違いなく面倒にはなるだろう)
〇オフィスのフロア
栄田 駿「警戒するに越したことはない、か」
栄田の部下「取締役。三番に外線です!」
栄田 駿「ありがとう。すぐに出るよ」
〇空
〇児童養護施設
栄田 駿「すみません、栄田です 遅くなりました」
学童の先生「んっ、これは栄田のお父上! おーい、智くん、美雪ちゃん」
栄田 駿「いつも遅くまでありがとうございます」
学童の先生「んっ、なんてことはないですぞ」
学童の先生「二人とも・・・んっ、いい子ですからね!」
栄田 智「あっ! お父さんだっ!」
栄田 智「お父さん! お帰りなさい!」
栄田 駿「ただいま、智。遅くなってごめん 美雪は?」
栄田 美雪「いるよー! 帰ろっ、お父さん!」
栄田 駿「じゃあ、二人とも用意が出来たら 車に乗って」
栄田 美雪「はーい!」
栄田 智「あ! 美雪! 助手席ズルいぞ!」
栄田 美雪「早い者勝ちだよー!」
学童の先生「んっ、二人とも、忘れ物せんようにな!」
栄田 駿「ありがとうございました」
学童の先生「んっ、それでは、また」
栄田 駿「ええ、またーー明後日。お世話になります」
栄田 駿「・・・・・・・・・」
〇黒
栄田 駿(見られている。確実に・・・)
〇児童養護施設
栄田 駿「梶、いるか?」
梶 翔人「取締役!? ピンマイクでコールなんて」
梶 翔人「どこかに捕まってたりします?」
栄田 駿「いや、そうじゃない。 今、僕の周囲に怪しい人影はいないか?」
梶 翔人「────見当たりません。 下校途中の学生と住民程度です」
栄田 駿「わかった、ありがとう」
〇車内
栄田 駿(勘違いじゃない。あれは”視線”だ)
栄田 駿(恐らく堀田の仕業に違いない)
〇高速道路
栄田 駿(そろそろ”潮時”なのかもしれないな)
〇空
それから数日後
「ハッピーバースデートゥーユー」
〇おしゃれなリビングダイニング
「ハッピーバースデーディア さとしー ハッピーバースデートゥーユー!」
「9歳の誕生日、おめでとうー!」
栄田 智「わー! ありがとう! ふうーーーっ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
栄田 美雪「お兄ちゃん、おめでとうー!」
???「智! 9歳おめでとう!」
栄田 智「あ、おじいちゃん、おばあちゃん」
〇狭い畳部屋
栄田 泰志「智! 元気にしとるか?」
栄田 美保「大きくなってまあ」
栄田 泰志「プレゼント送ったけん、受け取ってな」
〇おしゃれなリビングダイニング
栄田 智「プレゼント!? 何なの?」
栄田 泰志「中身は開けてのお楽しみだよ」
栄田 智「気になるー!」
栄田 駿「父さん! 年金暮らしなんだから プレゼントなんていいのに」
栄田 泰志「何言っとーか、駿。 可愛い孫の誕生日やぞ?」
栄田 駿「まあ、気持ちはわかるけどさ」
〇おしゃれなリビングダイニング
栄田 栞里「はあ・・・」
栄田 栞里(あれ、全部演技なのよね)
栄田 栞里(なんて────薄っぺらい)
〇狭い畳部屋
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駿の正体は一体!?一気にスパイファミリーっぽくなりましたね!終着点の予測がつかないです。
駿にアドバンテージを取られるのは、堀田のアドバイスを無視したから……というあたりもうまいですね。堀田の実力のほどに興味がかきたてられます。そしてその堀田を落としていいようにする七菜ちゃん、どんだけ強キャラなんだ……w
謎が解けた感を出していますが、前半が前半なので「いや、それだけじゃないよね!? スパイダーって何!?」と、ますます疑惑が深まっています(^^;
え、旦那さん、何者!?
秘密の一端が明らかになったのに、ますます謎が深まるという、面白かったです。
引き続き楽しみに読みます。