エピソード1 スパイス3(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
あい「おはようございます」
頭がガンガンする。
昨夜は、どうやって帰ったのか、何時まで飲んでいたのか全く覚えていない。
気がつくと、自分のアパートの寝室にいた。
店長の行きつけのバーまで行った事は覚えているけれど、途中の記憶が曖昧で、現実か夢かわからなくなるくらいだった
なんとなく、店長に会うのが気まずくて、
今日はいつもより早くお店にきた
あい(良かった‥まだ誰もいないし、店長もまだみたい‥)
たいち「おはよう。相楽ちゃん 今日は一段と早いね」
あい「て‥店長!お早いですね」
たいち「元々ショートスリーパーだしね〜 昨日は飲ませすぎちゃったかな? まだ酔ってない?」
あい「昨日はありがとうございました。 それが途中から記憶がなくて・・・ 私、失礼な事しませんでしたか?」
たいち「いや〜ベッドの上の相楽ちゃんが、あんなに大胆とはね。 ギャップがあって良かったよ」
あい「・・・えっ・・・あの後、私店長と・・・」
たいち「そんなわけないでしょ。 酔いつぶれちゃった相楽ちゃんを、タクシーでご自宅までお届けしました」
本当は帰したくなかったけど、そんな事したら余計に彼女を傷つけてしまうしね・・・
たいち「玄関入るまでは見届けたけど、ちゃんと布団までたどり着けた?」
あい「そうだったんですか・・・ご迷惑おかけしちゃって・・・」
たいち「このお礼は、いつか体で払ってもらおうかな」
あい「えっ・・・またそんな冗談言わないでくださいよ」
たいち「あはは。相楽ちゃん見るとついね、からかいたくなっちゃうの。 まぁ、冗談ってわけでもないよ」
たいち「じゃあ今日も忙しくなりそうだね。 よろしく頼むよ」
あい「はい!よろしくお願いします!」
〇開けた交差点
あい(今日も忙しかったな。 あっという間にこんな時間なっちゃった・・・)
あい(きっとカズくん、今日も帰ってくるの遅くなるんだろうな・・・)
カズ「あい!お疲れ様 仕事の帰り?」
あい「カズくん!カズくんも?」
あんな「初めまして」
あい「・・・初めまして・・・」
綺麗な人・・・
そう思ったけど、なんとなく胸がざわつく
カズ「あ・・・えっと、こちら取引先の香川さん 家が近くてさ、よくこの辺でお会いすることも多いんだよね」
あい「・・・そうなんだ」
あんな「奥様ですよね。よくお話お聞きします。 凄く料理がお上手で、お綺麗な方だって・・・」
あい「・・・いえ、そんなことないですよ」
あい「あっ私ね、ちょっと牛乳切らしちゃってて・・・カズくん先に帰ってくれるかな。 スーパー寄って帰るね」
カズ「分かったよ。また後で」
あんな「失礼します」
なんで奥さんの私が遠慮してしまったんだろう。
悔しくて、悲しくて涙が出てきた。
〇スーパーの店内
あい「・・・えっと、牛乳と・・・ あとは・・・」
スーパーに着く頃に、涙が出てきた。
買って早めに休もう
たいち「あれ!相楽ちゃん! ・・・って泣いてる?」
あい「・・・店長・・・」
たいち「・・・って、どうしちゃったの?」
あい「・・・実は、今夫と道端で偶然あったんですけど、凄く綺麗な人と一緒に歩いていて・・・」
あい「・・・浮気相手と決まったわけじゃないのに、私いてもたってもいられなくて・・・」
たいち「・・・逃げてきちゃったんだ・・・」
あい「・・・はい・・・」
たいち「とりあえず、ここじゃなんだから、店でたら話聞くから・・・」
あい「・・・はい・・・ありがとうございます」
〇開けた交差点
たいち「どう?少しは落ち着いたかな」
あい「・・・はい。私いつも店長には恥ずかしいところしか見せてない・・・自分が情けないです・・・」
たいち「それだけ真剣に旦那さんとの事考えてるからでしょ。情けなくなんかないよ」
あい「・・・」
たいち「俺、1回失敗してるんだよね 結婚」
あい「えっ・・・そうだったんですか・・・」
たいち「だからなんていうか、自分も似たような事経験してるから、なんとなく相楽ちゃんの気持ちわかる気がする」
たいち「今は、自由気ままシングルライフを満喫中〜」
たいち「相楽ちゃんもさ、聞きづらい内容だけど旦那さんに自分が聞きたい事、勇気出して聞いてみたらいいんじゃないのって思うよ」
あい「・・・そうですね」
たいち「ほら、可愛い顔台無し。 相楽ちゃんは笑顔が魅力的なんだから」
たいち「意外と、自分で思ってるよりも違う答えが返ってくるかもしれないし・・・もし、最悪の答えが来たら・・・」
たいち「俺が朝まで添い寝してあげるから。 どーんと行っておいで」
あい「・・・はい。ありがとうございます」
〇アパートのダイニング
あい「ただいま・・・ カズくんいるかな?」
カズ「おかえり。先にシャワー使ったよ」
あい「・・・うん」
カズ「じゃあ、俺先に休むから」
あい「ちょっと時間いいかな 話したい事があるの」
カズ「・・・何?疲れてるんだけど・・・」
あい「・・・今日、ばったり会った取引先の女性、綺麗な人だったね・・・」
カズ「・・・それが何か?」
あい「私ね、前に見ちゃったんだ。女の人からまた会いたい、楽しかったって連絡がきてるの・・・」
カズ「・・・勝手に人の携帯見ないでくれるかな・・・そんな内容、覚えてないし・・・」
あい「今日、女の人に会って、ピンと来ちゃったんだ。もしかして、この人がその時の女の人かなって・・・」
カズ「・・・」
あい「・・・何とか言ってよ・・・」
カズ「・・・・・・・・・ごめん」
あい「・・・・・・え?」
カズ「いつ話を切り出そうかずっと悩んで、避けてた・・・・・・ ごめん」
あい「・・・・・・」
カズ「最初は本当に会社の取引先の相手だったんだ。何回か打ち合わせする度にお互いの興味のあるものや好きなものが一緒で意気投合して」
あい「・・・聞きたくない」
カズ「女性として惹かれるようになったんだ」
あい「・・・聞きたくないよ、カズくん」
カズ「正直にいうと、一緒に朝までいたこともある・・・」
その言葉に、カッとなって
着ていた服を目の前で脱いだ
あい「バカなことしてるって分かってる 私たちもうずっとしてないよ・・・」
カズ「・・・ちょっと、あい・・・ 落ち着いて・・・」
あい「落ち着いてる 怒ってるの 私が寂しい夜を過ごしていた時、 カズくんは他の女性と過ごしていたんだよね・・・」
カズ「・・・本当に、ごめん 謝って済む問題じゃないと分かってる・・・」
あい「私のこと、ちゃんと抱いてほしい・・・その人より大切だって・・・」
カズ「・・・悪かったと思ってる・・・ ただ、あいのことは、もう抱けない」
カッとなった
傷つけられた上に、恥ずかしい気持ちが一気にこみ上げてくる
涙が出てきた
あい「・・・苦しい・・・ 苦しいよ、カズくん・・・ ひどいよ・・・」
カズ「本当にごめん。勝手だけど、俺のことは忘れてほしい・・・」
服を抱えて、寒くて暗い部屋から飛び出した