《エデン》

草加奈呼

エピソード30【最終回】それから。後編(脚本)

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〇島の家
  モステアの復興が落ち着き、
  セ=シルの子孫たちは────
  レイノスとレストは、モステア領内の
  小さな町で、治療院を始めた。
レイノス「レスト、本当にいいの?」
レスト「うん。わたし、わかった」
レスト「あの時、 カートの子、助けて、うれしかった」
レスト「ティサ、助けられなくて、とても、 残念だった・・・」
レスト「わたし、もっと人、助けたい!」
レイノス「そっか・・・」
レイノス(レスト、よく喋るようになったなぁ・・・)
レイノス(それに、よく笑うようになった)
レイノス(レグルス様に出会えて・・・ アイ=リーンの子孫たちと共闘したおかげかな・・・)

〇西洋風の部屋
  ジンとエクストは、カートの子を
  引き取り、しばらくモステアにいたが──
  子どもが大丈夫そうだとわかると故郷に
  戻り、子育てに奮闘していた
エクスト「ミルクよ、ジン!」
ジン「お、おう!」
ジン「次はオムツだ!」
エクスト「ええ、まかせて!」
「育児はバトルだ・・・!!」
エクスト「・・・やっと寝たわね・・・」
ジン「子どもを育てるって、大変なんだな・・・」
エクスト「あら、今頃わかったの?」
ジン「返す言葉もねーよ」
ジン「なあ、そろそろ 俺たちの子どもも考えないか・・・?」
エクスト「やだ、ジンったら・・・」
エクスト「しょうがないわね・・・」
エクスト「あーーん、どうしてぇーー!?」
ジン「俺が泣きたいわ!!」
  2人の子どもは、まだまだ先の事のようで
  ある────

〇謁見の間
  メイは神獣の力を手に入れてしまったと、
  誤った認識が城の者に広まり────
  監視下に置くべきであると家臣が反発。
  風華はそれを完全に止めることができず────
  メイは、モステアの城下町で暮らすことと
  なった。
風華「ごめんなさい、メイ。 私たちの力が及ばず・・・・・・」
メイ「いいよいいよ! あたし、元々行くとこないし!」
メイ「レグルス様にも置いて行かれちゃったし、 どこに住んでもいいんだ!」
メイ「それに・・・ 本当はもっと厳しい意見だったんでしょ?」
風華「それは・・・・・・」
メイ「風華はすごいよ。 あたしと同い年で国をまとめてて」
メイ「でも、息抜きしたくなったら、 いつでも遊びに来てね」
風華「メイ・・・・・・」
風華「ありがとう」
風華「それで、監視官のことなんだけど・・・」
メイ「あー・・・ モステアのお偉いさんとか?」
ジェルバーン「俺だよ、メイ」
メイ「ええっ!? な、なんで・・・!」
風華「ジェルバーンには、正式にモステアの 参謀となっていただきました」
風華「ちょっと反則かもしれないけど・・・ 彼は今、モステアの人間よ」
風華「・・・というか、メイの監視の話が 出てから、ほぼ無理矢理・・・」
ジェルバーン「はっはっは、風華様! それは言わない約束で!」
メイ「・・・・・・・・・・・・」
メイ「もしかして、あたしのために?」
ジェルバーン「さあ・・・ それはどうだろうねぇ・・・」
風華「あっ、でも、ちゃんと女性監視官も いるから、安心してね!」
メイ「風華、ジェルバーン・・・」
メイ「ありがと・・・」

〇草原の道
  そして、レグルスは────
レグルス(ふむ・・・)
レグルス(人間、行く当てがないと故郷へと 足を向けるようだ・・・)
レグルス(何年ぶりだろうか・・・)
レグルス(せっかくだし、寄ってみるか・・・)
レグルス「一旦、あの木陰で休憩しよう・・・」

〇木の上
レグルス「ふう・・・」
レグルス「のどかな天気だ・・・」
???「っ!! きゃあっ!!」
レグルス「な・・・・・・っ!?」
レグルス「・・・うぐっ!!」
???「い・・・たたたた・・・」
  なんと、木の上から人が降ってきて、
  レグルスの上に落ちてしまった。

〇草原の道
???「す、すみません・・・大丈夫ですか?」
レグルス「・・・・・・・・・・・・」
レグルス「・・・ウィル!?」
???「えっ?」
???「・・・どうして、私の名前を?」
レグルス「・・・君は、本当にウィルなのか!?」
???「正確に言うと、ウィルは愛称で・・・」
ウィリアーナ「私は、ウィリアーナと言います」
レグルス「ウィリアーナ・・・」
ウィリアーナ「あっ、でもみんな『ウィル』と呼ぶので、 『ウィル』で結構ですよ」
ウィリアーナ「すみません、この子を助けに木に 登ったら、足を滑らせてしまって・・・」
猫「にゃーん」
  『子孫を作ろうとしなくても、何かしらの
  運命が働いてできちゃう』
  『カートとティサのようにね』
レグルス「ふ・・・ふふっ・・・」
ウィリアーナ「ど、どうかしたんですか?」
レグルス「いや、なんでもない」
レグルス(こんな運命があっていいのだろうか・・・)
レグルス「・・・・・・っ!」
  レグルスは、熱くなった目頭を押さえた。
ウィリアーナ「あの・・・どこか痛むんですか?」
レグルス「いや・・・大丈夫だ・・・」
ウィリアーナ「もしかして、 さっきのでお怪我をされたんじゃ・・・?」
ウィリアーナ「私の家、近くなので行きましょう! 手当てします!」
レグルス「え、あ・・・」
  レグルスは、半ば無理矢理ウィリアーナに連れて行かれた・・・

〇屋敷の書斎
  カートが遺した研究資料を見つけた風華。
  そこには、風華が知らなかったカートの
  想いが記されていた────
  魔術についての研究
  魔術の封印の力が弱まってきている。
  魔術の封印には、子孫の能力開花、
  8つの神具、8つの宝玉が必要となる。
  この体制は、非常に危うい上、
  効率が悪い。
  私は、アイ=リーンの子孫の能力開花を
  待つよりも、
  宝玉を研究して封印の力が弱まらない
  ようにすべきだと考える。
  その方が、後世に効率の良い方法を
  伝えられる────
  それを読んだ瞬間────
  風華は唇をわなわなと振るわせ、嗚咽を上げた。
風華「うっ・・・あ・・・あ・・・」
風華「カート・・・!」
風華(あなたは、アイ=リーンの子孫たちの 未来を・・・考えて・・・)

〇城の回廊
若き日のカート「ふぅ、ふぅ・・・」
若き日のカート「参ったよ、風華」
幼き日の風華「もう、ちっとも 剣の練習にならないじゃない!」
若き日のカート「勘弁してくれ。 俺は剣術は苦手なんだ・・・」
幼き日の風華「せめて、私を守れるくらいには 強くなってもらわないと困るわ!」
若き日のカート「俺は、学問で風華を守るよ」
幼き日の風華「んもう、カートったら!」

〇屋敷の書斎
  『俺は、学問で風華を守るよ──』
風華(私は、なんて浅はかだったの・・・!)
風華「うああああ・・・あああああっっ!!」
  風華は、人知れず大声を上げて泣いた。
  泣いて泣いて、涙が枯れてしまうのではないかというくらい泣いて────
  落ち着きを取り戻した。
風華(カートは、アイ=リーンの子孫のため)
風華(レグルスは、セ=シルの子孫のため)
風華(未来を見据えていた・・・)
風華(私たちは、その想いを受け継いで いかなくてはならない・・・)
風華「今すぐ仲間たちに連絡を取って、 緊急会議を開きましょう!」
  風華は、かつての仲間たちに連絡を取り、
  魔術の研究資料を皆に見せた。
  この研究は、その後アイ=リーンの子孫
  たちで秘密裏に行われたが、
  実際に研究の成果が出るのは、何世代か
  後の話となる────

〇白

〇草原の道
  むかしむかし、この星のあるところに、
  3人の神が舞い降りました。
  後に、
  平和の女神と言われるアイ=リーンと、
  その伴侶となる、ヨシ=ノイチ
  そして、アイ=リーンの妹のセ=シル。
  3人は、
  生命を作りこの星を豊かにしました。
  しかし、セ=シルはこの星に元々住んで
  いた神獣の怒りを買ってしまい────
  その身を神獣に捧げることに
  なってしまいました。
  やがて、セ=シルと神獣の間に子どもが
  生まれました。
  その子どもは、
  神獣と同じ姿をしていました。
  セ=シルは怖くなって、その子どもから
  逃げてしまいました────

〇貴族の応接間
「これが、昔セ=シルの子孫が悪く 言われていた所以なの・・・」
「ええー・・・」
身なりのいい少女「セ=シルのしそん、かわいそう・・・」
身なりのいい少年「だよなー」
「でもね、 このお話には、実は続きがあるの」
身なりのいい少女「えっ? そうなの!?」
身なりのいい少年「本にかかれてないのに!?」
「そう・・・。 神獣の子どもは、何万年もの間、ずっと ひとりぼっちで生きてきたけど・・・」
「ついに、母親であるセ=シルに出会えたの」
「セ=シルも、子どもから逃げてしまった 事を後悔していて・・・」
「セ=シルは子どもに謝って、ふたり仲良く お空の上で暮らしているのよ」
身なりのいい少女「わあ、良かったねぇ」
身なりのいい少年「でもなんか、 都合のいいテンカイだな・・・」
身なりのいい少女「お兄さまは、すぐそういうことを言う! 夢があっていいじゃない!」
「ふふふ、 都合の良いことかもしれないけど、」
「でも、実際にあったことですからね」
身なりのいい少年「そうなのか・・・」
身なりのいい少女「ねえ、おばあさま。 もっとお話聞かせて?」
風華「ええ、いいわよ」
  語り継いでいく────
  アイ=リーンと、セ=シルと、
  神獣の物語を────
  ──Fin──

次のエピソード:エピソード31 番外編 ヴァルのモテ期

コメント

  • ここまで、壮大なストーリーを一つ書き上げたと言うこと自体が、本当にすごいと思いました!!

    ファンタジー要素が満載で、興味深く読めましたし、人物が魅力的なので、もっと一人一人の人物の背景や、その時に何を考えていたのかも、もっと細かく知りたくなるほどでした!!

    完結まで書き上げたこと凄いです!!ありがとうございました!!

  • 完結おめでとうございます❤ (何年がかり!?)

    面白かったです😆 ファンタジーとRPG好きには、うんうんそうよね〜、と何度も頷ける、どこか慣れ親しんだ様な懐かしいお話でした。厳格な物語ではなく、お惣菜みたいな、いつまで経っても飽きない味。(普遍的、と言った方が良いのか)そうでなければ長年温めておく事もなかったでしょう。たぶん、時々読み返すと思います。

    お疲れ様でした。って番外編が!?❤

  • お疲れ様でした!
    選択肢や戦闘モードがなくても、RPGをクリアした気持ちになれました(^^

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