ep.10 二度目の約束(脚本)
〇草原の道
ラノ「僕、自分で早く帝国に行きたいって 言ったのに・・・ごめんね」
クレム「全然構わないですよ 俺も気になりますから・・・まさか──」
クレム「竜が地上にいるなんて・・・」
〇華やかな裏庭
ラノ「潜入作戦・・・ちょっと楽しみだな」
ラノ「あ──でも、ごめん 僕、先に行かなきゃいけないところが・・・」
クレム「なにか用事があるんですか?」
ラノ「・・・竜が、いたんだ 薬草を採りに行った廃街に」
クレム「竜が地上に?」
ラノ「うん──あの竜、苦しんでた 昔、魔法で何かされたみたいで・・・」
〇荒廃した街
〇華やかな裏庭
ラノ「僕のわがままだけど── あの竜を助けに行きたい」
クレム「・・・なにか方法はあるんですか?」
ラノ「・・・もしかしたら、あの薬草が・・・」
ティカ「なるほどな」
ラノ「い、いつからそこに?」
ティカ「さっきからだ ところでルディって誰だ?」
ラノ「えっと・・・僕の友だちで──」
ティカ「あー答えなくていい、興味ないからな で、薬草の話だが、多分大丈夫だ」
ラノ「な、何が?」
ティカ「竜が何かよくわからんが、生き物だろう? 魔法で苦しんでるならあの薬草は効くぞ」
ラノ「やっぱりそうだよね?」
ティカ「なんだその自信は」
ラノ「今まで誰にも見つからなかったくらい 身を潜めてた竜が、あの廃街に来た理由──」
ラノ「もしかしたら薬草を求めてたのかなって 思ってたんだ」
ラノ「でも、僕が竜を追い払っちゃった・・・」
ラノ「しかもあの薬草、なかなか生えてないから まだ見つけられてないかもしれない・・・」
ラノ「ねえティカ、薬草、余ってないかな?」
ティカ「あのな、お前が持って帰ってきたのなんか ほんの一握りだぞ」
ティカ「重症のクレムの治療に使って、 余ってると思うのか?」
ラノ「そうだよね・・・ また探すところから──」
ティカ「まあ、あるんだけどな」
ティカ「私の手にかかれば培養など容易いことだ」
クレム「さ、さすがティカさん・・・ 一夜にしてできるものなんですね」
ラノ「すごいよティカ! 本当にありがとう!」
ティカ「気にするな・・・私もお前の体は 散々調べさせてもらったからな、その礼だ」
ラノ「え・・・」
ティカ「記憶喪失で出身不明・・・ 非常に興味深いサンプルだった」
ティカ「まあ皮膚や血液、その他諸々からも 結局ルーツはわからずじまいだったけどな」
ラノ「僕が寝てる間にそんなことを・・・」
クレム「すみませんラノさん・・・ ティカさんを止められなくて・・・」
ラノ「で、でもとにかく、ティカのおかげで 本当に助かったんだ」
ラノ「クレム、先に竜のところへ行こう!」
クレム「──わかりました 俺も竜は気になりますしね」
クレム「帝国潜入作戦まで時間がありません すぐに出発しましょう!」
〇草原の道
ラノ「あの竜・・・またいるといいな」
クレム「・・・ラノさんはどうして 竜を怖がらないんですか?」
クレム「竜は生け贄を捧げるような存在・・・ 雲の国では竜を恐れたりはしないんですか?」
ラノ「みんなは恐れてるだろうね・・・きっと」
ラノ「でも、僕はルディがいたから・・・ ルディと同じなら怖くないよ」
ラノ「ルディはちょっと特別だったけど──」
ラノ「竜の声だ!」
ラノ「どうしたんだろう・・・急ごう!」
〇荒廃した街
ラノ「雨が降ってきちゃった・・・ 辺りの音が聞こえにくいな」
クレム「向こうに人の気配があります!」
ラノ「行こう!」
〇荒廃した街
賊「見ろ! こいつぁ最高の獲物だぜ!」
賊「しかしなんだってこんなバケモンが・・・ ひどく弱ってるし、ツイてたぜ」
賊「へへっ、どこに売り飛ばしましょうね」
賊「こんなモンなかなかお目にかかれねぇ だがその分、足がつきやすいからな」
賊「やっぱ、帝国の裏街だな あそこなら誰かしらが──」
「誰だ!」
〇荒廃した街
ラノ「その竜を解放して!」
クレム「あなたたち・・・ 近ごろ噂に聞く窃盗団の方ですね」
〇荒廃した街
賊「なんだぁ、てめぇら! 獲物は渡さねぇぞ!」
賊「今すぐ帰りな! でなけりゃ死ぬ覚悟はあるか!」
竜「人間・・・あの時の・・・」
ラノ「今度こそ・・・助けに来たよ」
〇荒廃した街
ラノ「覚悟はあるけど──死ぬつもりはない!」
クレム「そちらこそお帰り願いますが── 叶わなければ・・・仕方ないですね」
〇荒廃した街
賊「ハッ、細っせぇ体で綺麗な服着て、 てめぇらみたいなのがろくに戦えんのか?」
賊「でもお頭・・・女の剣はピカピカだし 男の武器は見たことねぇよ」
賊「ピカピカの剣に、珍しい武器! 最っ高の獲物じゃねぇか!」
賊「後悔しても知らねぇぞ!」
クレム「ラノさん、気をつけて!」
ラノ「大丈夫・・・僕はもう戦える!」
〇荒廃した街
賊「おらぁっ!」
賊「なっ、なんだ・・・その剣──!」
ラノ「僕の友だちだよ 逃げたくなった?」
賊「ハハッ、まさか!」
賊「・・・ますます欲しくなっちまった」
〇荒廃した街
賊「うおぉぉ!」
賊「ぅおらぁ!」
賊「クソッ、ちょこまかと逃げやがって・・・!」
クレム「悪いですけど 接近戦は得意じゃないんですよ」
クレム「何しろ武器がこういうもので──」
賊「ぐっ・・・足が・・・」
クレム「少し不便になりますけどごめんなさい・・・ 長引く怪我じゃないはずです」
クレム「さて、ラノさんは──」
〇荒廃した街
賊「嘘だろあいつ、やられやがった・・・」
ラノ「仲間の人はもう戦えなそうだけど 君は──」
賊「本当にすまなかった!」
ラノ「え・・・」
賊「もうこんなことはしない! あの竜は解放する! 許してくれ!」
ラノ「さっき、剣が欲しいとかなんとか・・・」
賊「そりゃあ、そう思ったさ! でも今は違う・・・」
賊「おまえたちの強さはよくわかった・・・ 降参する!」
ラノ「竜を放してくれるなら なんでもいいけどさ・・・」
賊「ありがとう! 和解の握手をしてくれ!」
ラノ「えぇー・・・ じゃあ──」
ラノ「手が──」
賊「正直モンは馬鹿を見る──ってなぁ! 剣はもらってくぜ!」
ラノ「そ、そんな・・・ダメだ!」
〇荒廃した街
クレム「ラノさん──」
「待ちなぁ!」
賊「動いたら、こいつがどうなるかな?」
チューニャ「クレム様ぁ~・・・」
クレム「チューニャ! どうしてここに?」
チューニャ「どうしても話したかったの・・・」
賊「この女を解放してほしけりゃ 何もしないことだな!」
賊「俺たちがバケモンと剣を持って ここを去るのをぼーっと見てな!」
クレム「・・・」
〇荒廃した街
ラノ(チューニャ・・・!)
ラノ(ダメだ、手の縄がほどけない・・・!)
賊「さぁて、大漁大漁!」
賊「そう怒るな! きっといい飼い主が見つかるぜ!」
ラノ(チューニャが人質、剣は奪われた・・・ どうする──!)