異世界でハーレム作るつもりだったのにゴーレム作ることになった

maru_tnm

第7話:異世界サバイバル(脚本)

異世界でハーレム作るつもりだったのにゴーレム作ることになった

maru_tnm

今すぐ読む

異世界でハーレム作るつもりだったのにゴーレム作ることになった
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇山中の川
  スマホを開いてみる。
  当然、電波は来ていない。
  バスを降りて一瞬だけ電波が届いたように見えたのは、何だったんだろう。
  メッセージは、ナギちゃんから届いてた15:36のやつが最後だ。
  〈家着いたら連絡よろ~〉
  もう21時過ぎだ。
  最初に異変に気づくのは、お母さんか、ナギちゃんか。今ごろ警察に相談くらいしてるかもしれないな。
  念のため、ユウト先輩のラインも確認してみる。やはり既読はついてない。
  スマホのマップを開いてみたけど、思ったとおり、高校付近の地図が表示されたままだ。
カナ「そりゃ、使えるわけないか」
  電池の残りは63%。思い切ってスマホの電源をオフにした。
  少しずつ放電してしまうとしても、またいつどこで必要になるかわからない。できるだけ電池の残りを温存しとかなきゃ。
  ああ。人間って、何も食べないで何日くらい生きられるんだろう?
  異世界、けっこう過酷だな。
  すうっと、涼しい風が吹き抜ける。腰を下ろしていた草の上に、そのまま寝っころがってみた。
  今日はもうだいぶ歩いて疲れたから、そろそろ安心して身体を休められそうな場所を探さないといけない。
  見上げると、名前も知らない木の枝が伸び、そのすき間に青い空がのぞいている。
  そのままぼんやりしていたら、自然と家族や友人たちの顔が浮かんできた。
  お父さんとは、高校生になってからあまり話もしないけど、今朝は一言も交わさないで家を出てきちゃったな。
  誘拐か、家出か、はたまた自殺か・・・。真面目な人だから、きっと自分を責めるんだろう。
  普段は気むずかしく、口うるさい、お母さん。こんなときになるとオロオロしてそうだ。泣きわめいてそうだ。
  ナギちゃんとのマンガも、がんばって完成させたかったな。
  アニ同のみんなも手伝ってくれるって張り切ってたし、きっと去年よりもっといい作品が描けたと思う。
  ナギちゃんとはもっといろんな作品について語り合いたかった。
  けっして多くないけど、イラストのファンの人たちも、ずっと更新がなかったら心配してくれるんだろうか。
  何年か経っても、私の描いたペト様を見て、懐かしく思ってくれるんだろうか。
  そんなこと考えてたら、涙があふれてきた。ポロリと頬をつたって落ちる。
  ユウト先輩。変わった人だったけど、いつも私たちの話を聞いてくれたな。
  アニ同会員にはちょっと煙たがられてたにしても、一本か二本、ネジの外れてる感じ、嫌いじゃなかった。
  東京の大学に合格したら、私たちのことだってだんだん忘れていったかもしれない。
  それでも、私みたいな後輩がいたこと、ときどき思い出してくれるかな──
カナ「ダメダメダメ!」
  ハッと我に返る。
  いかん、いかん。うっかり総集編モードに入っちまった。
  自分で死亡フラグ立ててたら、世話ねえや!
  この世界に来てちょっとしか経ってないのに、諦めるのはまだ早い!
  そのとき、見上げている木の枝を何かが素早く動くのが見えた。
  動物? 二匹、いや、三匹いる。
  逆光になってて姿はよくわからないけど、枝をつたって駆けたり、別の枝に飛び移ったりしている。
  サルとかリスみたいな、樹上に生息する生き物らしい。
  ときどき、枝の先端についている塊をつかんで、ガシガシと動かしている様子が見える。
  木の実のようなものを食べているみたいだ。
  ちょうど一匹が、一番下のほうの枝まで降りてきた。よく見ると、下のほうの枝にも木の実らしきものがいくつもついている。
カナ「おお!?」
  思わず声をあげると、リスもどきの小動物は、警戒したのか動きを止めた。
  気のせいか、こっちを見てるような気がする。
カナ「いません、誰もいませんよー!」
  心の中で唱えていたが、小動物はクルリと向きを変えてまた上のほうの枝に帰っていき
  仲間たちと一緒に隣の木へと飛び移ってしまった。
カナ「あんな動物が食べてるなら、私だってだいじょうぶだよね?」
  ユウト先輩がこの場にいたら、引き留めたろうか。無謀だといって笑ったろうか。
  毒かもしれない。死ぬかもしれない。
  でも、運がよければ、お腹をこわすくらいで済む。ダメ元で、食べてみようじゃないの。
  未知の木の実らしき塊に視線をすえたまま、私はゆっくりと起き上がった。
  一番下の枝は、意外と低いところまで伸びていて、背伸びをすると私でも手が届く。木の実らしきものは、まだ青い。
カナ「ちっちゃ!」
  皮をとると、ピーナツほどの大きさの黄色い実が十三粒、残った。
  最後の晩餐にはちょうどいい数だ。
カナ「・・・」
  もしもこれが人生最後の食べ物なら、せめておいしいといいなぁ。
カナ「奥菜香南絵、行きま~す!」
  私は意を決して、一粒、そして続けてさらに二粒、口の中に放り込んだ。ゆっくり噛んでみる。
  ん。
  ちょっとエグみはあるけど、すっごく甘いぞ!
  味は栗に近いかも。アーモンドのような香ばしさと、バターのようなコクがある。
  うまい!
  今度は五粒を一気に頬ばった。食感もなかなかいい。ケーキに入れたらうまそうだなぁ。
  ゆっくり噛みしめて、飲み込んだ。しばらく待ってみるが、吐き気もないし、腹痛もない。
  ひとまず、セーフ?
  たったこれだけの食べ物だったけど、自分でも気持ちが大きくなるのがわかった。
  やっぱり食欲って偉大だよねぇ。
カナ「よし!」
  私はカバンの中からペットボトルを取り出し、すっかりぬるくなった水を一気に飲み干した。
  そして荷物をまとめると、川岸のほうへと降りていった。
  この星には、酸素だってあるんだ。水素なんてもっとありふれた元素でしょ。
  待ってなさい、H2O! 気の済むまで飲んでやる!

次のエピソード:第8話:召喚――ペト様!

ページTOPへ