私が私と戦う理由(脚本)
〇綺麗なリビング
私の名前はトキメ。今年で39歳。子供はいないバツ一の女
結婚した事に後悔はないけど、相手を間違えたと思い返す事は度々ある
スーパーに行けば幸せそうな家族を見ることも多い。というより目がいってしまう
幸せそうな老夫婦を見た時には、少しだけ涙が出そうになることもある
悲しいかな、年が経つにつれて増していく再婚意欲、私は再び恋を求めている
厄介なのは、私がおばさんであること。周りの友達からは「変わらないじゃん」とか言われるけど、自分が一番よくわかっている
私は日に日に老けていっているのだ。髪も皮膚も体型も
〇シックなリビング
高校生の時にたまたま見たバラエティー番組。その時に出演していたボディービルダーが、私の人生の中で小さな何かを変えた
ボディービルダー「筋肉細胞は一つ一つが小さな生き物。意外とデリケートだから丁寧に育てなければいけない」
ボディービルダー「だけど筋肉という生き物はとてもピュアだから、しっかり育てれば、絶対に裏切らないんだ」
・・・アホだと思った。鍛えすぎて大きくなりすぎた筋肉。男らしいというより、化け物みたいに見えたから
私は絶対、この道には進みたくないと思った
あんな体じゃあオシャレな生活も楽しめない。下手したら変態だ。そんな事まで当時の私は考えていた
〇白い校舎
私は適度な運動は楽しめるものの、体に筋肉がつくような行為はなるべく避けるようにしていた
自転車で通学して、定期的に体育の授業もあり、それなりに楽しんでいた
ファミリーレストランでのアルバイトもわりと過酷で、体型はわりと痩せ型だった
〇小さい会議室
大学を卒業して、健康商品の企画を行う部署に入職した
美容食材やサプリメントの評価をして、インターネットを通じて情報を発信する仕事
美味しい食べ物を食べる日もあれば、サプリメントを主に一日を過ごすこともある
そのため、ある一定以上体型が変動するコトはなかった
〇綺麗なリビング
28歳で結婚。毎日が楽しかったのは最初の何ヶ月だろうか。楽しさは手品のショーのようだった
ときめいていた事が、うっとうしくなることもあった。ネタがバレた手品程つまらないものはない。次第に会話も減っていった
そして私達は約3年で、生活を共に過ごす事を諦めた
〇綺麗なリビング
我が家系は、割と老けにくい家系。実年齢よりも若く見られる事は多く、この遺伝子には感謝をしていた
39歳の秋、半年ぶりに衣替えを行った。たくさんの服の中、気に入っていたパンツを見つけた。半年ぶりの再会だ
さっそく履いてみたが、太ももの辺りから足がきつくなり、腰まで入ったものの、ファスナーを上げるのには苦戦した
薄々感じていたが確信した。私は太っていた事を
〇綺麗なリビング
他の服でも試してみた。秋冬物は重ね着をすることから、少し大き目の物を購入する傾向があったため、多くの服は着れそうだった
しかし問題はこのパンツ。お気に入りの上、少し値段も高かったから
トキメ「ダイエットだ」
私は決心した。食事、運動、何でもやってやる。何か痩せるサプリメントなんかもあったような。頭の中で作戦会議が始まった
〇赤(ライト)
トキメ「運動はいいけど、筋肉はかっこ悪いよ」
でも私のお腹はポヨポヨだ。足も太っちょになったと思うし
トキメ「食事は大事よ。でも私達は気をつけてたのに。何でだろう」
お酒か・・・でも若い頃も飲んでたし。若い頃と今の違いって
〇綺麗なリビング
そうだ。私はおばさんになっていたのだ。若い頃に比べれば、新陳代謝は下がっている
使っていない筋力は衰えるが、食事量が同じなら、体のどこかには何か色々と溜まっていくだろう
〇綺麗なリビング
トキメ「若い頃、マッチョが言っていた言葉」
ボディービルダー「筋肉という生き物はとてもピュアだから、しっかり育てれば、絶対に裏切らないんだ」
トキメ「アイツのことも信じてみない?」
・・・これまで否定していた筋肉作り。マッチョを目指すのではなく、スマートな筋肉をつける事を目指す
今日の作戦会議の結果はジョギングをすること。毎日じゃなくても、休日だけでも
〇アパレルショップ
まずは見た目から。とはいえ、どんな運動着が良いのか。一般的なのはジャージやウインドブレーカー
でも最近ジョギングしている人は、なんかパツパツしたのを着ている
でもおじいちゃんとかは、懸賞品のようなTシャツを着ている人もいる
パツパツ系は流行りのようだけど、私の体型ではチョット
懸賞品系のTシャツを着ているおじいちゃん達は似合っているけど、私はおじいちゃん達とは違う
シンプルに黒いジャージのパンツ。少しゆったり目のTシャツ。なんとなくそれ用の靴下。私の最初のアイテムだ
〇土手
少し衛生的には気になったけど、下着は自前だし、さっそくその日の夕方に走ってみた
走り出して早々、息が上がるよりも、足へかかる負担が気になった
実は家に少し古いスニーカーがあったから、靴は買っていなかった
足の負担を軽減するために、少しゆっくりめに。それでも走ると体は上下に揺れて、少し目も疲れそうだった
走り続けていくうちに目は慣れていき、景色に意識を持っていけそうだった。しかし今日は無理そうだ
やはり靴が合っていない。それに下着も変な感触。どれくらい走ったのだろう。そう考えても腕時計はしていない
結局私は途中から歩き出し、そのまま家に帰って行った
〇綺麗なリビング
靴に下着に腕時計。ただ走るだけなのに、そんなにお金がかかるなんて。なんか腑に落ちない気分になった
夕食の準備。何を作ろうか考えた。炭水化物抜きダイエット。あれは私には無理だ。白米、ラーメン、カレーパン。好きなものは多い
でも量を減らす事はできるかも。いつもの食事では0.5合のご飯を食べている。多分20歳頃からずっと
40前ならその半分か。でもラーメン屋に行って半分の量で残して帰ることは、私には出来ない
たくさん考えるのは一旦無し。その日の食事を再び考えた。夕食の白米に関しては0.25合にする事にした
ただし絶対お腹が空きそうだったから、豆腐も食べる事にした。後はいつも通りの肉と野菜
食事はそこから始める事にした。ただし仕事中にお腹が空く訳にはいかないので、とりあえず朝食、昼食はあまり変えずに
〇白いバスルーム
夕食後、お風呂に入りながら、その日のことを振り返った
下着が合っていなかったから、胸や股の辺が少しヒリヒリしていた。ふくらはぎもだるい。かかとも擦れて赤くなっていた
ダイエットなのに、私の体は何故こんなに傷んでいるのか
戦いだ。これは今まで体の事で怠けていた自分との戦いだ。だから傷だらけなんだ。私は戦士になる事を誓った
〇ソーダ
今週は仕事帰りに、靴と下着と安いスポーツウォッチを買う。そして来週の休日に再びジョギングをする
夕食の白米は0.25合。これも守り続ける
運動と食事によるダイエット。目指すは再婚、婚活だ。そのためのスタートラインは、あのパンツを再び履くこと
もう一度昔の体へ。否、新しい体と自分へだ
〇綺麗なリビング
翌日は体の色んなところがヒリヒリしていた。お通じの出もいつもと違った
2日後には筋肉痛も現れた。年をとると、筋肉痛は遅れて現れる
先人達に言われてはきたが。改めて自分の年齢と、体の衰えを実感した
体を作る。それはメイクと一緒かもしれない。これまでお手入れを怠っていた私の体は、初期のメンテナンスから行う必要があった
でも今の私には知識が足りない。独学でどこまでいけるのか。正直心細かった
しかし若い頃、ボディービルダーをアホみたいだと思った私が、ジム通いをひどく拒んだ
〇様々な蝶
それでも決めたダイエット計画。足りない物を購入しながら、 少しずつ行い始めた
もう一度、私という花を咲かせるために
蝉(セミ)のようなおじさんではなく、蝶(チョウ)のような年下の男性を引き寄せて、再び恋をするのだ
こんばんは!
ダイエットしては諦めしては諦めしているので主人公を応援したくなりました!
無理してウォーキングしたあとの体って痛くて次の日もだるくなっちゃうんですよね😭私はウォーキングをすると乾燥で足が痒くなるので運動する準備の大変さとても共感出来ました!
うわー、リアルな内容で胸に突き刺さります。。。代謝低下と筋力低下、これに尽きますよね。とある年齢で急激に体の変化って訪れますよね
私も本来やせ型体形だったのが、33歳あたりで一度太りやすいというかむくみ体質になって悩んだ時期がありました。食事スタイルを変えたり、ジョギング、ウオーキングなど試みたけど、結局独身だったあの時、色々な不安からか熟睡できず、そういうダイエットも大して効果がなかったです。私は恋愛が一番の効果を生みました。