週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

第十話(大団円)(脚本)

週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

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〇エレベーターの中
子供は風の子「こんにちは、風の子です」
子供は風の子「恋人に会いたい!」
子供は風の子「会えるなら、犯罪さえ厭わない」
子供は風の子「でも、結局、恋人には会えず」
子供は風の子「詐欺の片棒を担いだ、詩衣ちゃん」
子供は風の子「美井さんは、護摩行で、詩衣ちゃんの」
子供は風の子「人生のやり直しを念じます」
子供は風の子「でも、詩衣ちゃんの新しい彼氏は、妻子持ち」
子供は風の子「行き詰まった詩衣ちゃんは」
子供は風の子「幻覚世界から抜け出せず」
子供は風の子「この世の人では、なくなります」
子供は風の子「苦しむ美井さん、固まる頑じぃ」
子供は風の子「そこに、はっちゃん登場!」
子供は風の子「土壇場を、うっちゃれるのか?」

〇祭祀場
はっちゃん「とりあえず、灯をつけてと」
はっちゃん「大丈夫、二人でだめなら三人よ!」
はっちゃん「美井さん、もう一度!」
美井(びい)さん「もっと悪くなったら、取り返しが・・・」
はっちゃん「大丈夫、下りきったら、登るしかない」
美井(びい)さん「・・・」
はっちゃん「頑ちゃんも、固まってる場合じゃないのよ」
頑じぃ「吾輩が頑じぃである」
「吾輩が頑じぃである」
「吾輩が頑じぃである」
はっちゃん「立ち直りが鬼早ね!」
美井(びい)さん「護摩木に何て書こう?」
はっちゃん「そうね『詩衣ちゃんのことだけが」
はっちゃん「大好きな人と、出会いますように』」
「うん」
はっちゃん「『詩衣ちゃんにだけ、誠実な人と出会えますように』」
「うんうん」
はっちゃん「じゃあ、頑ちゃん、お願い!」
頑じぃ「まず、三人で手を結んで」
頑じぃ「『結界を作ります』」
はっちゃん「かなりの力がいるのね」
頑じぃ「うん、一度異世界に転生してるからね」
  ひたすら念じる三人
  激しく燃える護摩木
  広がる炎と煙、そして熱風
  遠くから、何か聞こえる・・・

〇城
  WWW
  あれは、ちょっと
  盛りすぎですよねー
  僕たちは、せめて、このくらいで
  ですよねー
  よかった・・・
  ワールド名は『名古屋城の桜』です
  ネーミングが・・・
  一周回って、新しくないですか
  二周回って彷徨ってる感じです
  まぁ、せっかくなんで、登場しましょうか
  はい
ベル(新彼氏のアバター)「はじめまして「ベル」です」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「はじめまして「バーラ」です」
  握手
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「すごーい!」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「握手の感じも、しっかり伝わってくるー」
ベル(新彼氏のアバター)「電気信号です、振動するゲームの進化版」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「本当に会ってるみたい」
ベル(新彼氏のアバター)「上手くできてますよね」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「・・・」
ベル(新彼氏のアバター)「・・・」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「アバターなのに、緊張しますね」
ベル(新彼氏のアバター)「は、はい・・・手の感触がリアルで」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「グータッチ、しときましょうか?」
ベル(新彼氏のアバター)「は、はい」
  グータッチ
「グータッチの感触!」
ベル(新彼氏のアバター)「これは、これで、面白いですね」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「ホント!」
ベル(新彼氏のアバター)「・・・」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「・・・今日のワールドコース、楽しみです」
ベル(新彼氏のアバター)「あー、そうでした」
ベル(新彼氏のアバター)「本日のメニューです」
  ①名古屋城の桜
  ②花見で一杯
  ③店長のおまかせ
  ④店長の出まかせ
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「徐々に雲行きがあやしい・・・ような」
ベル(新彼氏のアバター)「違った時は、ワールドチェンジしましょう」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「そうですね」
ベル(新彼氏のアバター)「それでは、早速」

〇花模様
ベル(新彼氏のアバター)「城には桜が、よく似合う」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「わっ、イケメン的登場!」
ベル(新彼氏のアバター)「すみません、分不相応でした」
ベル(新彼氏のアバター)「一杯どうですか、バーラさんも」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「「花見で一杯」ですね」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「じゃあ、私も」
ベル(新彼氏のアバター)「普段から飲んでますね」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「ふふ、そう、日本酒党です」
ベル(新彼氏のアバター)「そうですか、じゃあ朗報です」
ベル(新彼氏のアバター)「あの幻の『ナーゴヤー・ヌーベー』が」
ベル(新彼氏のアバター)「入荷されたんです、知ってました?」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「嘘でしょ!」
ベル(新彼氏のアバター)「やはり、ご存知でしたか」
ベル(新彼氏のアバター)「店長の、極秘おまかせメニューです」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「一目、会ってみたい!」
ベル(新彼氏のアバター)「えっ・・・」
ベル(新彼氏のアバター)「会うのは、ちょっと・・・」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「えぇ、もう口が「ナーゴヤーヌーベー」に なっちゃってるし」
ベル(新彼氏のアバター)「う、うーん・・・」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「まさか「店長の出まかせ」落ち?」
ベル(新彼氏のアバター)「いや、それは無いんですが・・・」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「えー! じゃあ、なんなんですかー」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「出し惜しみですね、うぅ、悲しい・・・」
ベル(新彼氏のアバター)「いや、その、じ、実は・・・ぼくは」
ベル(新彼氏のアバター)「アバターでしか、女の人に会ったことが」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「じゃあ、幻のお酒を、幻の人と」
バーラ(詩衣ちゃんのアバター)「・・・なーんちゃって」

〇祭祀場
はっちゃん「今、ここ!」
頑じぃ「全集中です!」
「『詩衣ちゃんのことだけが、大好きな人と、出会いますように』」
「『詩衣ちゃんにだけ、誠実な人と出会えますように』」
美井(びい)さん「う、うぁ、あーっ・・・」
はっちゃん「何? どうしたの? ・・・あっ!」
美井(びい)さん「・・・手が、手がちぎれるっ」
頑じぃ「結界が・・・破れるっ」
はっちゃん「だめっ! 詩衣ちゃんのために!」
美井(びい)さん「しっ・・・詩衣ちゃんのために!」
「うォォォォォォォォーっ」

〇雷

〇雲の上
  見た目は、おじさん
  話が面白い訳でもなく
  事業も失敗して、金も無く
  でも、大好き・・・詩衣ちゃんだけが
  誠実なんだ・・・詩衣ちゃんにだけは
「だっ・・・だだ・・・大成功!」
はっちゃん「やったねー」
頑じぃ「ほっとしました」
美井(びい)さん「ありがとう、本当に、ありがとう」
美井(びい)さん「でも、やっぱり、手放しには喜べなくて」
頑じぃ「まぁ、今までのことを考えると・・・」
はっちゃん「もう少し、見守ってみましょうか」
美井(びい)さん「・・・うん」

〇荒れた公園
  あれから、どれくらい経ったのだろう
  やはり桜が舞う日の、とある公園で
通行人1「いやぁぁぁぁぁぁぁ、嘘でしょ!」
通行人2「ママ、あの人あんなとこで、洗濯してるよ」
通行人3「しーっ! だめよ、聞こえるでしょ!」
通行人2「あっ、赤ちゃんも、バケツで洗ってるーW」
通行人1「あり得ないんですけどぉーっ」
通行人1「ちょっ、ここ、公園でしょっ!」
  美井さん、通りかかる
美井(びい)さん「あっ! あ、あぁーっ!」
美井(びい)さん「ちょっと、すみません、ちょっと・・・」
美井(びい)さん「みなさん! ここは、私が対応しますから」
通行人1「あなた、誰?」
美井(びい)さん「はいっ、私、腸内快調ですっ!」
「あぁ、町内会長さんなんですね」
美井(びい)さん「はいーっ!」
はっちゃん「あら、腸内快調さん」
頑じぃ「こんにちは!」
美井(びい)さん「あー、どうも、どうも」
「じゃあ、お任せします、町内会長さん」
美井(びい)さん「はいーっ」
  皆さん、立ち去る
美井(びい)さん「・・・」
ラスト詩衣ちゃん「・・・」
「・・・」
美井(びい)さん「・・・詩衣ちゃん、久しぶり」
ラスト詩衣ちゃん「・・・パパ」
美井(びい)さん「元気だったか?」
ラスト詩衣ちゃん「・・・うん」
美井(びい)さん「急に連絡なくなるから、心配した」
ラスト詩衣ちゃん「ごめん」
美井(びい)さん「子供・・・生まれたんか」
ラスト詩衣ちゃん「・・・うん」
美井(びい)さん「その・・・抱っこ・・・いいか?」
ラスト詩衣ちゃん「・・・うん」
  美井さん号泣
  詩衣ちゃん号泣
  はっちゃん、頑じぃも号泣
美井(びい)さん「・・・ありがとう」
ラスト詩衣ちゃん「うん」
  傍らに、大きな男もんブリーフの山
美井(びい)さん「洗いもんか?」
ラスト詩衣ちゃん「うん」
美井(びい)さん「洗濯機・・・ないんか?」
ラスト詩衣ちゃん「・・・今月、電気止められて」
美井(びい)さん「そうか・・・」
  まとまった金を渡す、美井さん
美井(びい)さん「封筒も何もない、裸でごめんな」
ラスト詩衣ちゃん「・・・ありがとう」
美井(びい)さん「旦那は、優しくしてくれるか?」
ラスト詩衣ちゃん「うん」
美井(びい)さん「そうか・・・手紙頼むわ、安心するから」
ラスト詩衣ちゃん「うん、ありがとね」
美井(びい)さん「・・・」
ラスト詩衣ちゃん「パパ・・・私ね、いま、幸せ」
  美井さん、またも号泣
  はっちゃん、頑じぃも、また号泣
ラスト詩衣ちゃん「手紙、送るねー」
  手を振りながら、号泣する三人

〇祭祀場
はっちゃん「よかったね、安心した?」
美井(びい)さん「うん、ありがと、はっちゃん、頑ちゃんも」
頑じぃ「ほっとしました」
美井(びい)さん「一時はどうなることかと・・・」
頑じぃ「いや、面目ない」
はっちゃん「でも、生活大変そうだけど」
美井(びい)さん「うん、そう、でもね、安心した」
美井(びい)さん「あの頃の顔で・・・幸せって」
美井(びい)さん「あー、生きてるだけで、丸もうけ!」
美井(びい)さん「お陰で、久しぶりに、ぐっすり眠れそう」
「・・・」
  ん? 頑じぃの体が、ボヤけて見える
はっちゃん「ちょっと、頑ちゃん、大丈夫?」
頑じぃ「うん、段々とね、体の輪郭が怪しい」
はっちゃん「う、嘘でしょ!」
頑じぃ「わかってたこと、じゃないか」
はっちゃん「いや! ちょっと待って!」
頑じぃ「美井さんの気持ちの整理がついたら」
頑じぃ「僕たちは、この世にいられない!」
頑じぃ「・・・僕たちは、美井さんの」
  人格のひとつ・・・なんだから
はっちゃん「・・・待って! 会ってほしい人がいるの」
頑じぃ「・・・」
  頑じぃの身体が、眩しく光り出す
はっちゃん「ほら、挨拶して」
子供は風の子「こ、こんにちは・・・」
頑じぃ「・・・」
子供は風の子「風太です」
はっちゃん「私の子供・・・」
頑じぃ「・・・」
はっちゃん「・・・あなたの子供」
頑じぃ「えっ!」
  頑じぃの身体が、光の集合体のように・・・
はっちゃん「風ちゃん、パパよ」
子供は風の子「急すぎて、わからんよー」
はっちゃん「名前はね、風太にしたの」
頑じぃ「・・・ふうた」
頑じぃ「・・・自分の欲望が目に見えたら」
頑じぃ「どうなるかって、思ってたけど」
頑じぃ「・・・意外と静かだ」
頑じぃ「そして・・・なんだろう」
頑じぃ「ありがとう、生まれてきてくれて」
子供は風の子「・・・」
頑じぃ「ありがとう、産んでくれて」
はっちゃん「・・・」
「ぼくは、僕らは、繋がっていくんだね」
はっちゃん「ちょっと、待って、待ちなさいよ」
子供は風の子「・・・パ・・・パパ・・・パパーっ!」
はっちゃん「また? また、おいてけぼり?」
  待ってるよ、ほら、はっちゃんも、薄くなり始めた
はっちゃん「ダメよ、わたしはダメ!」
はっちゃん「ふ、風ちゃん、風太ぁぁぁっ・・・」
子供は風の子「はっちゃん、なんで、なんでだよぅ・・・」
はっちゃん「び、美井さん、風太をお願いっ」
子供は風の子「はっちゃん・・・ママ、ママーっ!」

〇平屋の一戸建て
子供は風の子「・・・」
美井(びい)さん「・・・」
子供は風の子「僕は、なんなのさ」
子供は風の子「人格同士の子供は、人格なの?」
美井(びい)さん「はっちゃんから預かった大切な宝だ・・・」
美井(びい)さん「ただいま」
英(えい)さん「おかえり」
英(えい)さん「新しい三人の生活が始まるんだろう?」
子供は風の子「この人も、また・・・」
  大丈夫、はっちゃんが、ついてるんだから

〇エレベーターの中
  ♫ カーテンコール
  はっちゃん
  頑じぃ
  美井さん
  風太
  スリーアミーゴす
  ご家族
  詩衣ちゃんズ
  お寺の面々
  その他の皆さん
  そして、タップ頂いた皆様
  感謝

コメント

  • 連載お疲れ様です。私は今、幻想と空想の狭間にいるような気持ちです。全ては美井さんの精神世界だったのか…?もしかしたら美井さんとは作者さんで、作者さんの生み出した人格こそがはっちゃんと頑じぃなのかもしれない。語り手だった風の子が満を辞して本編に登場、美しいフィナーレを飾ってくれました。いつのまにかキャラたちに愛着が湧いていて、お別れとなるとちょっぴり悲しい気持ちです。でも、それ以上の余韻があります。

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