君と桜の樹の下で

ちぇのあ

滅陽の武者と訪れる安息(脚本)

君と桜の樹の下で

ちぇのあ

今すぐ読む

君と桜の樹の下で
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇砂漠の基地
優樹「味方と距離が離れるのはまずい、防衛に徹するぞ!」
  二人と周辺に居る兵が頷き盾を構える
  淡い光が頭上を包む
桜花 「すごい猛撃だね」
  頭上を激しく降り注ぐのは火魔法や闇魔法の雨あられ
  包まれた円の外周の真下では最前線と騎乗兵がぶつかる
優樹「劣勢だな・・・このままじゃ非常に不味い」
麗愛(不死王リッチー)「こちらの攻撃兵と守備兵の分断が狙い」
桜花 「ほんとだ、戦線がいつの間にか自陣の中央に集中しているね」
  桜花の防護は攻勢に出た部隊までは届かない、そこを突かれた
優樹「賭けになるが伝令に伝えられるかな?」
桜花 「何を伝えるの?」
  策を話し指揮官の了承が出る
麗愛(不死王リッチー)「本当に逃げたと思わせる事が肝心」

〇基地の広場(瓦礫あり)
  接戦を繰り返しつつ徐々に後退する
  突如自軍から悲鳴に似た喚声が湧き隊列はなし崩しになる
雪「追え!一人も逃がすな!」
  魔族達は三方に散った内の中央の本体目掛けて追撃する
雪「何だ?何を騒いでいる!?」
雪「同士討ちだと!!」
  麗愛に幻艶を使わせ幻の魔族兵が前と左右から雪達に襲い掛かり、且つ麗愛自身も擬態して裏切り者を演出したのだ
  剝ぎ取った指揮官の服を纏っているので一部隊ごと裏切らせる事に成功し、遠目でも大混乱に陥っているのがわかる
優樹「麗愛がやってくれたね、前と左右から守備隊を攻撃させて俺達は後方から強襲をかける!」
  視界に映る守姫に激励をかける
桜花 「後方は無力化したよ!踏ん張って!」
守姫「任せてくれ!!」
  桜花に脚力を強化してもらい共に本陣の正面を突っ切り駆け、抜け際に叩き刺し、詠唱する者には射抜き発動を止める
優樹「後方に回ってるのを見られてるから奇襲はできないね」
桜花 「動揺が走ってるから有利になっているよ!」
  後方に人員を割かせる事で守姫達の手助けになるはずだ
優樹「あいつだ!」
  誠が敵陣の中を駆けてゆく、何をするつもりだ!?

〇戦場
誠「魔王様の命である、この刀の下に集い魂を捧げよ!」
  そう叫ぶと命に従わず壊走する者を次々と切り伏せる、嬉々とした醜悪に映る成りを晒して
誠「試してみるか」
守姫「下がれ!」
  漆黒よりも濃い、禍々しいそれを振るうと闇が斬撃となり刀の軌道に居た者達は敵味方関係無しに無へと還る
誠「ハハハ!痛快だな、もっと魔王様のお役に立て!!」
  彼を中心に円状に壊走していく、怨嗟が木霊し刀に怨魂が漂いやがて吸い込まれていく
魔王「宝物庫から無くなっていると思えば、まさか幹部に登用された者の仕業だったとは・・・」
麗愛(不死王リッチー)「敵の敵は味方」
魔王「人間に組みするなど・・・!」
  麗愛の前に立ち魔王の攻撃を協力して受けきる
桜花 「このまま戦ってても共倒れで全滅するよ?」
魔王「・・・!目標変更!」
  撤退していた者達を励まし、件の人物を囲む
誠「的がうじゃうじゃしてやがるぜ!」
  踏み込み横に薙げば闇の剣風が迫りくる
桜花 「相性で克剋しているから楽かも」
  こちらを見て笑って見せる
  桜花のおかげで戦力を温存して攻撃を仕掛ける事ができる
誠「くそ、あの小娘!!使えぬ山賊共に任せるんじゃなかったわ!!」
優樹「思った通りだ、闇の力が弱くなってきている」
麗愛(不死王リッチー)「供給を絶つ」
魔王「仕官した時は実力を隠しておったのか・・・やはり人間は侮れぬ」
  死者が出ないように立ち回り徐々に優勢に立っていく
誠「くそが、ここまでか!」
  桜花に向かい突っ切ろうとする男に弾幕を浴びせて無力化する

〇基地の広場(瓦礫あり)
優樹「??なぜ誰も止めを刺さない、俺が代わりにやってやるよ」
  魔王が制する
魔王「真実の眼が過敏に反応している、奴を扇動した者が居ておおよそ検討は付いている」
  魔王が振り向いた先には彼の者を登用した魔王幹部が居る
魔王「仕官した経緯を聞く必要がある」
優樹「事情なんぞどうでもいい、俺はこいつを殺す為にここまで来たんだ」
魔王「処遇は俺が決める」
雪「人間、おまえが考える死よりも苦しい事はいくらでもある」
雪「魔王様は無敗で魔界のほぼ全域を治め、豊富な経験から対象を苦しめる手段の質も工夫も秀でている」
桜花 「きっとこちらの世界の者達への見せしめも兼ねているんだと思うよ」
優樹「その男も内通者も止めは俺が必ず刺す、身柄も俺が預かる」
魔王「それでは示しがつかない」
麗愛(不死王リッチー)「武功は桜花」
  麗愛の一言が大きく響き、いつの間にか誠から回収した剣も交渉材料にする
守姫「魔界の魔法術の技術を桜の樹の国の発展の為に用いてくれるのか?」
魔王「くやしいが我々だけでは剣を回収するどころか全滅も有り得た、魔界の特秀と謡われた呪術を彼の者に施した後に身柄を渡そう」
雪「あ!こちらの魔法術の技術を教えるのだから、代わりにそちらの魔法式の技術も提供してもらう!」
雪「それとこの戦いで人員の損耗が激しく幹部の処分は寛大にみてもらうぞ」
魔王「国交を結ぶのは構わないが魔界へ繋がる門の魔術式は機密事項だ、代わりにこの木箱を鳴らしたら遣いの者を伺わせよう」
雪「そちらも疲労しているかもしれないが、目立つ街道や街に繋げる訳にはいかない」
桜花 「この人数を一斉に転移させるのは難しいから助かったよ」

〇謎の扉
  話がまとまり門を開いてもらいこちらの世界が視界の先から垣間見える
  回復を済ませた兵士達が闇の森へ戻って行く
守姫「商家では捕虜は合わないし収容にも不向きだろう、こちらで預かっても良いか?」
桜花 「3人だけじゃ危ないからそうしよう?」
優樹「確かにこいつを軒下に存在させるだけでも危険だ、とりあえず歩けなくしておくか」
麗愛(不死王リッチー)「預けたほうが良い」
  二人に説得され仕方なく守姫に預ける事になる
  
  座敷牢に置いておくそうだ
優樹「ふぅー・・・」
  お爺ちゃんの仇討ちを果たすまではまだ気を抜いてはならない、だけど一段落が着いた気がする

〇森の中
優樹「あれ・・・」
  何故か涙が滴り落ちる
  復讐を遂げても死者は返らない事を何処かで理解していたのか
  安堵から来る感情なのか
  唯一にも近い目的を失ったからなのか、その答えを彼は知らない
  不意に温もりに包まれる
桜花 「あたし達も帰ろう?」
  そうか・・・俺は一人じゃないんだ、それだけで十分幸せなんだ・・・

〇森の中
麗愛(不死王リッチー)「帰ろう」
  周りの視線も気にせずひとしきり涙を流す
  落ちた雫が見えなくなり荒れた大地を潤そうとするかのように深く沁み込んでゆく
  見守る者達の瞳は優しく、心なしか黒いはずの空が眩しく感じた

ページTOPへ