誰が為の愛

米子

二話 許せなかった(脚本)

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米子

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〇綺麗な部屋
サヤカ(ダメだ)
サヤカ(凶器に指紋があって)
サヤカ(後頭部殴る、なんてメモが残ってたら)
サヤカ(疑われるのは、どう考えても私)
  週刊スクープ!! OL殺害事件
  容疑者 T堂サヤカ 30代心の闇!!!
サヤカ「絶っっ対嫌!!!」
サヤカ「あの人、私に恨みがあったの!?」
サヤカ「どうしたらいいのよ」
サヤカ「誰!?」
サヤカ「・・・なんだ、お母さんか」
  ピッ
サヤカ「もしもし、どしたの?」
サヤカ「あ」
サヤカ「そっか・・・私、今日誕生日だ」

〇狭い畳部屋
サヤカの母「そっか、ってあんた」
サヤカの母「今日はお祝いだったんでしょ?」
サヤカの母「ん、何?」
サヤカの母「えぇ、直人君と!?」
サヤカの母「・・・そうだったの」

〇綺麗な部屋
サヤカ「うん」
サヤカ「しかもね、今日は」
サヤカ(あ!)
サヤカ(ここで私が事件の話をしたら)
サヤカ(お母さんまで巻き込んじゃう)
サヤカ「何でもない」
サヤカ「大丈夫だよ、ありがと」
サヤカ「そのうち帰るから」
  ピッ
サヤカ(家族や友達は、巻き込ませない)
サヤカ(絶対に!!)
サヤカ(落ち着け)
サヤカ(そもそも私は何もしてないんだから)
サヤカ(怯える必要なんてない)
サヤカ「・・・よし!」
サヤカ「まずは状況整理、そして情報収集」
サヤカ「あんなサイコ女の罠にはまって」
サヤカ「人生棒に振ってたまるか!!!」

〇空
  ──翌日

〇雑誌編集部
サヤカ(眠っ)
サヤカ(昨日は情報集めるはずが)
サヤカ(結局、冤罪と裁判の事調べて終わった)
サヤカ(直人の事も気になって寝れないし)
サヤカ(夜はダメだ、ろくな事考えない)
サヤカ(もうお昼か)
サヤカ(今日は、恩田も内勤)
サヤカ(・・・・・・)
サヤカ(一緒の休憩、嫌だな)

〇屋上の隅
サヤカ「うわ〜眩しい」
サヤカ「でも、いい天気」
サヤカ(恩田に会わないように屋上まで来て)
サヤカ(何やってんだろ私)
サヤカ(別に、なんて事ないはずなのに)
サヤカ(直人と別れたこと伝えて)
サヤカ(恩田の話を聞くだけ)
サヤカ(それだけの事に なんでこんなに抵抗があるの?)
サヤカ(・・・・・・)
サヤカ(これじゃ私)
サヤカ(ただプライドが高くて器の小さい奴じゃん)
サヤカ「はぁ〜」
サヤカ「自分のこんな部分、気づきたくなかった」
  もぐ、もぐ
サヤカ「そうだ、ニュース見なきゃ」
サヤカ(事件の記事、新しいのが出てる)

〇部屋の前
  〇〇区で起きた殺人事件に関して
  死亡したのは
  村田 和(むらた のどか)さん(26)
  廊下でうつ伏せに倒れており
  死因は頭部打撲による急性硬膜下血腫
  現場に争ったような形跡はなく
  いまだ凶器は見つかっていない

〇屋上の隅
サヤカ「・・・ひどい」
サヤカ(正直、憎いとは思ったけど)
サヤカ(こんな事になるなんて)
サヤカ(争った形跡がない以上)
サヤカ(直人に疑いが向くのは、避けられない)
サヤカ(そして凶器が見つかれば)
サヤカ(次は真っ先に私)
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ「私がバーになんて行かなければ」
サヤカ「あの子は死なずにすんだのかな」

〇雑誌編集部
  昼休み後──
事務員「あ、藤堂さーん!」
サヤカ「どしたの?」
事務員「商談のお客様来ましたよ」
事務員「商談室にお通ししました」
サヤカ「え、私?」
サヤカ「今日は商談予定ないはずだけど」
事務員「えぇ?」
事務員「すみません、一度確認してきます」
サヤカ「あ、いいよ! 私行ってみる」

〇綺麗な会議室
サヤカ「失礼します」
サヤカ「あの、本日お約束って」
取引先の人「申し訳ございません」
取引先の人「ご連絡がついていると思ったのですが 社内の手違いで」
取引先の人「カタログをお渡ししてすぐ帰ります!」
サヤカ「いえいえ、お気になさらず」
サヤカ「15分程なら時間とれますので」
取引先の人「ありがとうございます」
取引先の人「では改めて自己紹介を」
取引先の人「私、△株式会社の橘と申します」
サヤカ「営業部の藤堂サヤカで──」
サヤカ(ん?)
サヤカ「ん? あれ!?」
サヤカ「これ、私の名刺ですよね?」
取引先の人「ええ」
取引先の人「鞄から1枚頂いたあなたの名刺です」
サヤカ「へ?」
取引先の人「分かんないかな?」
取引先の人「僕だよ、サヤカ」
サヤカ「・・・あっ!!」
ミタカ「騒がないで」
ミタカ「会社で騒ぎにしたくないでしょ」
サヤカ「あんた、同じ業界だったの?」
ミタカ「違うよ、全部嘘」
ミタカ「こんな会社存在しないし」
ミタカ「この髪もウィッグ」
ミタカ「サヤカに会うために用意したんだよ」
ミタカ「全然会いに来てくれないから」
サヤカ「ふざけないで、この人殺し!」
サヤカ「あんた自分が何したか分かってんの!?」
ミタカ「・・・サヤカこそ」
ミタカ「自分の置かれてる状況分かってる?」
サヤカ「私を、犯人にする気なのね?」
サヤカ「指紋と文字を残させて」
サヤカ「わざわざ誕生日に呼び出して」
サヤカ「一体、私に何の恨みがあるの!?」
サヤカ「あなた、もしかして直人の昔の恋人?」
サヤカ「それとも」
サヤカ「直人とあなたが協力してんの!?」
ミタカ「ん〜」
ミタカ「その推理だと20点かな」
ミタカ「僕に直人との接点はないよ」
ミタカ「それに、今は 凶器とメモを警察に渡す気はない」
ミタカ「だから安心して?」
ミタカ「あくまでも警察に疑われるのは直人」
サヤカ「まさか、あんた」
サヤカ「これ以上直人に何か する気じゃないでしょうね!?」
ミタカ「直人の事、心配なの?」
サヤカ「当たり前でしょ」
ミタカ「・・・ふーん」
ミタカ「ま、いいや」
ミタカ「今後の事は、あとでゆっくり話そう」
サヤカ「あとで、って」
サヤカ「何で私を巻き込むのか答えなさいよ」
ミタカ「失礼します」
サヤカ「ちょっと、ねえ!!」

〇空

〇街中の階段
サヤカ「はぁ・・・」
サヤカ「一体どうなってんのよ」
サヤカ「え、直人」
  ピッ
直人「もしもし、サヤ?」
サヤカ「直人!? 大丈夫なの?」
直人「え・・・あ、あぁ」
直人「俺は、大丈夫」
直人「それで、荷物の件なんだけど」
直人「金曜の夜に取りにいっていい?」
サヤカ「3日後ね」
サヤカ「うん、分かった」
  ピッ
サヤカ(声に元気ない、大丈夫かな)

〇空

〇綺麗な部屋
  ──金曜日 夜
サヤカ「よし、とりあえず片付いたし」
サヤカ「一応、メイクも」
サヤカ「直した」
  ピンポーン
  ピッ
サヤカ「直人? 今開けるね」

〇おしゃれな廊下

〇綺麗な部屋
ミタカ「びっくりするなぁ、急に叫ばないでよ」
サヤカ「な、なんでここが!?」
ミタカ「忘れたの?」
ミタカ「誰が酔っ払いの介抱したか」
サヤカ「あ!」
サヤカ「そうだ、あの時」
ミタカ「開けてよサヤカ」
ミタカ「すぐに帰るから」
ミタカ「早くしないと直人が来ちゃうよ?」
サヤカ「なんで、それも知ってんのよ」

〇綺麗な部屋
ミタカ「お邪魔します」
ミタカ「・・・物騒だな」
サヤカ「変な真似したら許さないから」
ミタカ「そんな事しないって」
ミタカ「今日はアドバイスをしにきただけ」
サヤカ「アドバイス?」
ミタカ「そう」
ミタカ「もしもサヤカが直人と やり直したいと思ってるなら」
ミタカ「チャンスは今だよって」
サヤカ「はぁ!?」
ミタカ「警察は、もう彼に目をつけてる」
サヤカ「え」
ミタカ「明日あたり事情聴取だよ」
ミタカ「直人は不安なはず」
ミタカ「拠り所だった新しい恋人は死んだ」
ミタカ「今なら復縁交渉アリなんじゃない?」
サヤカ「馬鹿なこと言わないで」
サヤカ「直人とはもう終わったの」
サヤカ「今更そんな」
サヤカ「誰かの死を利用するような事 考えてない」
ミタカ「そうかなぁ?」
サヤカ「え?」
ミタカ「そんな簡単に割り切れる?」
サヤカ「何が言いたいのよ」
  ピンポーン
サヤカ「あ!」
サヤカ「直人が来た!」
ミタカ「え、ほんとに今日来る予定だったの?」
ミタカ「まずいなぁ〜」
ミタカ「サヤカ、早く僕を隠した方がいいよ」
サヤカ「はぁ!?」
サヤカ「あんたの事なんて知らないわよ」
ミタカ「僕がここにいてもいいの?」
ミタカ「完全に共犯っぽいけど」
サヤカ(コイツ・・・)
サヤカ「あぁ、もう!!」
サヤカ「出てすぐ左!」
サヤカ「私の部屋に隠れて」
サヤカ「勝手に出てきたら即通報するから」

〇玄関内
サヤカ「久しぶり」
直人「ああ、平日に悪いな」

〇家の廊下
「・・・・・・」
サヤカ「仕事、今忙しいの?」
直人「普通かな」
サヤカ「ご飯、ちゃんと食べれてる?」
直人「あぁ」
「・・・・・・」
直人「じゃあ、俺部屋の荷物まとめるから」
サヤカ「うん」
サヤカ「私、リビングにいるね」

〇綺麗な部屋
サヤカ(荷物の引き取りが終われば)
サヤカ(直人と私の接点はなくなる)
サヤカ(あの子は、死んだ)
サヤカ(直人はこれからどうするんだろう)

〇綺麗な部屋
  今、声を上げて
  直人に全てを話して
  あの女を警察に突き出す
  凶器とメモが明るみに出て
  私は疑われるかもしれない
  でも
  直人が信じてくれるなら
  構わない
直人「自分が捕まるかもしれないのに 俺の事を?」
サヤカ「だって」
サヤカ「ほっとけないよ、直人の事」
直人「サヤ」
サヤカ「ん?」
直人「俺達」
直人「もう一度やり直さ」

〇繁華な通り

〇綺麗な部屋
サヤカ「・・・・・・」
「サヤ」
サヤカ「あ、終わった?」
直人「うん」
直人「遅くに悪かったな」
直人「じゃあ俺、行くから」
サヤカ「・・・うん」

〇家の廊下
サヤカ「・・・・・・」
  直人!
  事件の犯人はここにいるの!
  直人が犯人じゃないことは知ってる!
サヤカ(今なら間に合う)

〇玄関内
サヤカ「直人!」
直人「ん?」
直人「どした?」
サヤカ「その、伝えたい事が」
直人「何?」
サヤカ「あの・・・」
サヤカ(言え!)
サヤカ(今しかない)
直人「サヤ」
直人「今までありがとな」
サヤカ「へ?」
直人「勝手かもしれないけど」
直人「サヤの幸せを願ってる」
直人「じゃあな」
サヤカ「あ・・・」

〇玄関内
サヤカ「直人」
サヤカ(何やってんのよ私)
サヤカ(なんで言わなかったの!?)
サヤカ「──なんで」
サヤカ「なんで・・・」

〇家の廊下
ミタカ「っははは」
ミタカ「泣くくらいなら引き止めたら?」
サヤカ「うるさい」
ミタカ「結局、事件の事も僕の事も 話さなかったんだね」
サヤカ「それはっ」
サヤカ「・・・っう」
ミタカ「分かるよ」
ミタカ「できなかったんだね?」
ミタカ「どうしても許せなかったんでしょ?」
ミタカ「自分じゃない女を選んだ事が」
サヤカ「違う」
ミタカ「違くないよ」

〇モヤモヤ
ミタカ「君は直人を救う事ができたのに」
ミタカ「しなかった」
ミタカ「保身ではないよね」
「きっとサヤカは」
ミタカ「自己犠牲を厭わず人を助けるタイプだ」
ミタカ「あの子と直人が”恋愛関係”でさえなければ」
ミタカ「君は彼を助けたんじゃないかな?」
サヤカ「・・・・・・」
ミタカ「直人を愛していたんだね」
ミタカ「だけどそれは」
ミタカ「利己的で打算的な愛だった」
サヤカ「違うっ」

〇家の廊下
サヤカ「なんなのよっ、あんたは」
サヤカ「何がしたいの!?」
サヤカ「もう嫌・・・」
サヤカ「自分が、どんどん嫌になる」
ミタカ「あはははは!」
ミタカ「あーあ・・・」
ミタカ「僕はよかったよ」
ミタカ「サヤカが」
ミタカ「ここで泣いて縋るような 女じゃなくてよかった」
ミタカ「・・・金槌とメモ、返そうか?」
サヤカ「え?」
ミタカ「ただし条件がひとつある」
ミタカ「僕に協力してほしい」
サヤカ「はぁ?」
サヤカ「ふざけた事言ってんじゃないわよ」
サヤカ「まだ、私を利用する気なの!?」
サヤカ「いいかげんに」
サヤカ「・・・っ」
ミタカ「サヤカ?」

〇家の廊下
  あれ?
  目がチカチカする
  何か
  音が遠い

〇黒
ミタカ「サヤカ!?」

次のエピソード:三話 普通

コメント

  • サヤカさんの不安・恐怖・未練などといった不安定で揺れ動く感情が、ひしひしと伝わってきます。それにしても、ミタカさんの正体って一体??

  • 面白い!一気に読みました。
    サヤカが遊びで考えた復讐が現実になり、逃げ場がなくなる恐怖。
    怖いけど、サヤカがどうなるか読みたいです。
    まさか、彼も…?

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