エピソード3(脚本)
〇電車の座席
あぁ、消えたい。
このまま会社とは逆方向に電車が進めばいいのに...
通勤時の朝の電車ほど憂鬱な時間はない。
優子「あ、おはようございます。盛岡さん。 ふふっ、今日も朝から会っちゃいましたね」
盛岡(28歳)「ん? あぁ小嶋か。おはよう」
いつの間にか、俺の隣には同じ会社の後輩。小嶋優子がいる。
運がいいのか、悪いのか。
最近はよく彼女と同じ電車になるな.......。
あと、朝からテンションが高い。眩しい...
社内の人気者である彼女に話しかけられるこの光景。他の奴らならガッツポーズで喜ぶのかもしれないが...
申し訳ないが朝の俺からすれば、ちょっと体力的に....。
優子「あっ、盛岡さん。ここ、この前に友達が教えてくれた美味しい居酒屋さんみたいなんですけど知ってます?」
盛岡(28歳)「ん? 居酒屋?」
とりあえず、そう言って自分のスマホの画面を俺に見せてくる隣の彼女。
盛岡(28歳)「あぁ、ちょうどこの前にここ行った気がするな」
彼女のスマホの画面に映るここ。
確かちょうど数日前に美桜と行った場所だろう。
優子「え? 本当ですか?」
盛岡(28歳)「まぁ、本当だと思う...」
かなりお洒落な居酒屋だった記憶がある。
やっぱり一流の女たちは張っているアンテナも同じというわけか...。ついていけない
優子「どうでした? って、そうだ。なら私も連れて行ってくれませんか? なかなか友達とも都合が合わなくて困ってたんですよ」
連れていく? いや、俺も連れていかれただけなんだが..。それに小嶋なら連れて行ってくれる男なんて山ほどいるだろうに..。
以前に彼女とは同じ部署だったことがあるが、それはもう色んな男達から食事の誘い等を受けまくっていたのを目にしたからな..
優子「ねぇ、お願いしますよ。盛岡さん」
盛岡(28歳)「んー」
優子「お願いします。連れて行ってくれるなら私、何でもしますから。ふふっ、本当に何でもです」
何でも.....?
小嶋ってこんなに押しが強い奴だったか?
いや、そうか。彼女と別れた俺を飯を奢らせるためのカモとしてとうとうロックオンしたということか...
確か、昔に同期のあいつも小嶋に結構な額奢らされてた気がするな。まぁあいつの場合はデレデレとATMに喜んでなっていたが
まぁ、さすがは若くして営業成績1位になっただけはある。
抜け目がないな.....。
でも、あれ?
そういえば会社ではまだ彼女と別れたことは仲の良い同期にしか言ってないんだが....
もしかして誰かもうバラしやがった?
あぁ、ならもう祝儀も早く返していかないといけないな.....。恥ずかしすぎる。
優子「ねぇ盛岡さん。どうなんですか。 やっぱり駄目....ですか?」
盛岡(28歳)「いや、そっちがいいなら別に俺は問題ない」
本当に別れたことが既に小嶋にバレているのかも確かめたいしな。もちろん、バラした犯人も......。
優子「やった!ありがとうございます。 本当に超嬉しいです。絶対ですよ。 絶対!」
盛岡(28歳)「あ、あぁ」
何だ。ものすごい喜んでいるな。
さすが徹底している。大女優と言っても過言ではない演技力。
ただ、大げさすぎて逆に...
って、そうこう考えていると着いてしまったな。会社。
はぁ...。憂鬱だ。