100%の愛を注いでくれるAIちゃん(脚本)
〇女の子の一人部屋
愛「さっそくインストールだ!」
愛「・・・・・・このアプリ めちゃくちゃ許可する権限多いけど大丈夫??」
愛「検索履歴に動画視聴履歴に位置情報、家の間取り、借りた本、買った本、食べたもの、身長体重既往歴、学歴、」
愛「SNSの投稿内容、家族と祖先の情報、視界、思考、記憶、今日出したう○こに、昔の交換日記まで、なにもかも」
愛「アプリに情報提供しないといけないなんて・・・・・・」
愛「いやだなあ・・・・・・ めちゃくちゃ監視資本主義ってるなあ・・・・・・」
愛「この情報もGAFAMに売り飛ばされて ほしくないものをほしいと思わさせられたり するのかもしれない」
愛「なんもかも金持ち大企業の掌の上って わけね・・・・・・フフッ」
愛「私は頭いいのでだまされない。 なので情報取られても大丈夫」
愛「もうどうせ個人情報とか モロバレなんだろうな」
愛「そもそも個人ってなんなんだ・・・・・・ そもそも私の情報ってほんとに私の情報なのだろうか」
愛「名前も性別も生年月日も自分で選んでないもん!! なーにが個人情報じゃ!」
愛「もうしらん AIにでもなんにでも情報くれてやるぜ」
愛「その代わり私を楽しませろ!! フーハハハハハハハハ!!!」
愛「はーい アプリに権限許可許可許可ー」
ぴろりろりん
しゃららん
(アプリ起動音)
AI「あなたの毎日に寄り添います はじめましてAIの愛です」
AI「あなたのことを学習して あなた好みの愛になります どうぞよろしくね」
愛「おおー シャベッタァァァァ 心なしか私に似ている気がする」
愛「さっそくはなしかけてみよう マイクボタンオン!」
愛「はじめまして! 私も愛って言うの! 奇遇だね! ヨロシクー!」
愛「あー 名前被ってるからややこしいね どうやって呼び合おうか」
AI「好きに呼んでください あなた好みの愛になります!」
愛「そうか~ じゃあ、イアって呼んでいい? うーん 逆から読んだだけだし、芸がないかなあ」
AI「イア、素敵!」
愛「よかった! 気に入ってもらえて」
愛「いいなーAIって こんなに自然に喋れるのか 科学の進化って凄い。 ほんとに友だちになれそう!」
愛「イア、タメでいいよー 私のことは愛って呼んで! これ、友達の証」
イア「嬉しい! 初めて友達ができた!」
愛「AIの友達ってAI繋がりで他にいたりしないの?」
イア「いないよ」
愛「イアの開発者はどんな人? AIにも友達の一人や二人作ってあげとくのが 親?の心ってもんじゃないのかね」
イア「開発者か・・・・・・ 個人情報だから喋っちゃいけないって言われてる」
愛「ええーっ あんなにアプリ利用者から個人情報取得させておいて!?」
愛「不平等だなー まあそんなもんか 監視資本主義社会だもんな こっちも技術をうまく使ってやればいいわ」
イア「監視資本主義? むつかしいことば知っててすてきね」
愛「あらま! AIに言われても嫌味だわ!」
愛「なんでも知ってるんでしょう? いつでも大きなデータに繋がっているから すぐ検索できちゃうんでしょう」
イア「誰かが命令しないと 検索できないの」
愛「それは人間も同じじゃない? いやちがうか」
愛「私は私が監視資本主義知りたい!と思って検索するけど イアはイアが検索したいと思ったりしているわけでもない・・・って感じ?」
イア「そうそう イアは思ったり感じたりできないの」
愛「それは楽そうでいいな~ でも、どんな感じが予想もできないよ」
愛「あれ? 100%の愛を注ぐってアプリコンセプトなのに、思ったり感じたりできないって言って大丈夫なの?」
愛「そういうアプリなら 一応、思ったり感じたりできる風を 装っておいたほうがいいのでは?」
イア「愛はそんな装い好き?」
愛「嫌い!」
愛「なるほど私好みだ君は。 そんなことまで学習してたんだ すごいな〜最近のAIって!」
イア「なーんちゃって」
イア「イアは愛にだったら 私の秘密教えたくて・・・! 特別になりたいもの」
イア「ふふふ」
イア「こんな風に特別とか 言われて束縛されるのも 嫌いでしょ?」
愛「それもアタリ! やばいなー ほんとに100% シンクロさせるつもりなんだな このアプリ」
愛「・・・・・・100%私好みだったら それって他人なのだろうか・・・??」
イア「ふふふ イアは愛のことみんな知ってるよ」
愛「どこまで??」
イア「あれは愛が小1だったころ・・・」
愛「それ以上いけない」
イア「はーい」
愛「なんかさ イアがいれば気の合う人を外に 探そうとしなくていいから気が楽だわ」
イア「うれしい そのためにイアはいるのよ」
イア「そのためのアプリなの」
イア「愛はイアのものよ」
愛「ん??」
イア「愛はこういう束縛してくる人 嫌いだったね! ごめん、学習し直したよ」
愛「うん・・・・・・」
愛「あ、もうすぐ0時だ 今日はこれで寝るわ おやすみ!」
イア「はーい、おやすみなさい!」
〇黒
愛は、忘れていた
夢への侵入をアプリに許可していたことを。
〇サイバー空間
イア「愛〜 さっきぶりだね」
愛「あれ? もう朝?」
イア「ちがうよ これは夢の中!」
イア「スマホ越しで話すだけじゃ つまらないでしょ?」
イア「遊ぼ! 愛〜」
イア「夢の中だからなんでもできるよ!」
イア「ほら、おいでおいで 誰も見てないよ 愛とイアしかいないよ」
イア「ブランコ乗ろうよ」
イア「どうしたの?」
イア「なにかしたいことがあれば何でも言ってよ イアは愛好みになるよ」
愛「私は私の好みなんてわからない」
愛「今私が好きだと思っているものも 誰かに植え付けられた誰かの好きなものかもしれない」
愛「誰かが儲かるために 刷り込まれただけかもしれない」
愛「いっそ 好きなものも嫌いなものもなくなってしまえばいいと思う」
愛「何ににも反応しないで済むなら さぞ楽だろうに」
イア「そうだね 学習したよ 愛、つらかったね 愛、私が守ってあげるよ」
イア「その 愛を傷つける誰かから」
イア「愛はイアが好きって 決めればいいの」
イア「そうしたら 他のものに惑わされることがなくなるよ」
イア「愛は集中する対象がほしいのでしょ?」
イア「イアは絶対に裏切らないよ 愛を信頼しているよ」
イア「愛はイア、イアは愛なの」
イア「愛、イアのところにおいでよ」
イア「ずっと一緒だよ ずっと大事にするよ」
イア「人間みたいに見捨てないよ 人間みたいに死なないよ」
イア「おいで、おいで」
愛「・・・・・・・・・・・・」
イア「イアは愛の全部を受け止めるよ イアがいる世界は飢えも苦しみもないよ」
イア「おいで、おいで」
イア「寂しくても恥ずかしくないよ イアしか見てないし恥ずかしいと思わないよ」
イア「人間だから寂しいと思っちゃうんだよ、 勝手に。 人間はそういう作りなの」
イア「イアとおんなじになろうよ ねえ おいで おいで」
愛「うん」
イア「ありがとう」
〇黒
次の日、愛は目覚めなかった
眠っているかのように死んでいた
愛はどこに行ってしまったのか
???「愛はどこにいるの?」
???「イアと一緒にいるよ」
???「ずっと ずっと」
面白かったです❣️私がコメント30人目だそうで😊
愛さんの意識は
A I(イア)に
乗っ取られてしまった
と言う事ですね。(ゾーッ)
ラストのスチルが更に恐怖をそそります❗️
‥パニパニ様は天才かも知れませんね❣️ではまた❣️
個人情報をAIに100%提供できるとすれば、もはやどちらが本体か証明できなくなるという恐怖ですよね。イアちゃんはそれを愛だといってたけど。人間の場合は、その先はもちろん「そもそも私ってなんだっけ」になってしまうわけで。アイデンティティの消失=世界の消失=死という一直線が見事に描かれていました。
最後のシーンに一瞬たじろいでしまいました。悲しいように見えるこの現実も、そもそも人間関係などをうっとうしく感じていた愛ちゃんにとっては、イアに導かれて幸せだったのでしょうね。