黒いキューピット

平家星

#21 つながる糸(後編)(脚本)

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〇病室(椅子無し)
空野真理「毎日、来なくたっていいのよ。受験勉強だってあるんだから」
天野愛「大丈夫。勉強もお店の手伝いも、ちゃんとやってるよ」
天野愛「お母さんは自分の身体のことだけ、考えてくれればいいの!」
空野真理「あら、頼もしい。高校にあがったら、何かやりたいことはあるの?」
天野愛「う~ん。天文部なんて、どうかなって思ってるんだけど」
空野真理「天文部? そんな部活、どの高校にもないでしょ?」
天野愛「うん。作っちゃおうかと思って」
空野真理「ほー。愛が部長ですか」
天野愛「さすがに、私が部長じゃ頼りないかぁ」
空野真理「そんなことないわ。あなたは、何だってできるんだから」
天野愛「・・・お母さん。また一緒に、星を見に行こうね」
空野真理「もちろん」
空野真理「・・・ねぇ、お父さんは、元気にしてる?」
天野愛「・・・うん。・・・いつもと変わらないよ」
空野真理「そう。それなら良かった」
天野愛「・・・うん。あっ、お花換えるね」
  真理が指輪を見ると、そこにはうっすらと糸が見える。
空野真理「・・・また薄くなった。もう・・・長くないかもしれないな」

〇大きい病院の廊下
天野愛(もともと心臓が弱かったお母さん。入退院を繰り返すようになったのは、私を産んだ後の事らしい)
天野愛(今回の入院はすごく長いけど、大丈夫かな・・・)

〇リサイクルショップの中
天野愛「ただいま」
天野仁「・・・愛、おかえり」
天野愛「・・・お父さん、昨日も寝なかったの?」
天野仁「・・・・・・」
天野愛「夜通し地下室で、何してるのよ? 私に手伝えることがあったら・・・」
天野仁「いいや。大丈夫だ。ありがとう」
天野愛「・・・お父さんまで倒れたら、どうするの」
天野仁「大丈夫。お前は、余計な心配するな」
天野愛「何、その言い方・・・。お母さんは、お父さんのこと心配してたよ!」
天野愛「どうして、お見舞いに行ってあげないの!?」
天野仁「お母さんは、絶対に良くなる。そうしたら3人で、また前みたいに暮らせるようになるんだ。だから・・・」
天野愛「そればっかりじゃん! お母さんが弱っていくのを、見るのが怖いだけでしょ!?」
天野仁「愛・・・」
天野愛「お母さんが、かわいそう!」
  仁は小指の指輪をじっと見る。
天野仁(また、糸が薄くなっている・・・)

〇地下室
天野仁(彼女は、僕と結ばれたせいで、死に向かっている・・・。 この指輪を、信じたせいで・・・)
愛の声「・・・お父さん」
  扉の向こうから愛の声がする。
愛の声「さっきはゴメン。夕飯も、食べてないんでしょ? 夜食作っておいたから」
天野仁「・・・すまない。ありがとう」
天野仁(真理の幸せを取り戻す。そのためだったら、何だってやるぞ・・・)

〇教室
  愛が授業を受けていると、廊下から担任教師が呼び出す。
担任の先生「天海、ちょっといいか?」
天野愛「・・・はい?」

〇病室(椅子無し)
天野愛「お母さん!」
  愛が駆け込んでくると、医師と看護師が真理のベッドを囲むように立っている。
天野愛「お母さん! しっかりして・・・」
空野真理「・・・愛・・・来て・・・くれたの?」
天野愛「何言ってるの!? 当たり前じゃん!」
空野真理「・・・嬉しい。愛の・・・顔が見れた」
天野愛「そ、そんなことで喜ばないでよ。これから、たくさん楽しいことが・・・」
空野真理「愛・・・お母さんは、ずっと見守ってるからね・・・」
天野愛「やだ! まだまだ一緒にいて!」
空野真理「あ・・・りがと・・・私、とっても・・・」
  真理の身体から力が抜けると『ピー』っと無機質な計器の音が鳴り響く。
天野愛「お母さんッ! お母さんッ!」

〇大きい病院の廊下
天野愛「うっ、うっ・・・お母さん・・・」
看護師「愛さん。お母さんは、いつもあなたとお父さんの話をしてたわ。 目をキラキラさせながら」
看護師「もしもの時はって、預かってたの」
  愛、私はもうすぐ旅立つ。だから、あなたに手紙を残します

〇リサイクルショップの中
  私が死んだら、きっとお父さんは、自分を責めると思う。
  自分のせいで私が不幸になることを、一番恐れてたから。
  でも一つだけ、確かなことがあるの。私の人生は、悲劇なんかじゃない。
  仁さんという、素敵な旦那さんに出会えたから。愛という、素敵な娘に会えたから。
  どうか、お父さんを助けてあげて。彼は誰よりも臆病で、優しい人だから
天野愛「お母さん・・・。大好きだよ」
  愛は日記を抱きしめて、地下室の階段を降りていく。

〇地下室
天野愛「・・・お父さん?」
  床には、ランプや地球儀、ハサミや手袋など、あらゆる道具が散乱していた。
仁「・・・・・・」

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コメント

  • 初めまして、コメント書かせていただきます🙇‍♀️
    週刊ストーリーランドみたいで面白いなぁと、いつも楽しく拝見させていただいてます!

    今回は愛ちゃんの苗字が天海なのか天野なのか分からない状態になっていたので、コメント書かせていただきました💦
    こんなコメントで申し訳ございません🙇‍♀️
    次回も楽しみにしております!

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