いとしこいし

甘楽カラ

エピソード9(脚本)

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〇渋谷駅前
「喜一にぃ、哀史にぃ~!」
小石川噴気「で? 誰を見ろって?」
課長「ちょっと・・・押さないでくださいよっ」
小石川楽哉「ああ~。この人か」
課長「って会ったことありましたっけ?」
小石川楽哉「いや、ぼくが勝手に知ってるだけだよ。喜一にぃに言わせると、あなた、部下の一人から最近、脅迫されているらしいじゃん」
小石川噴気「オレたちがその脅迫を止めてあげる、って言ったらどうする?」
課長「それはもう、願ったりかなったり・・・です」
喜一「その人に向かって伸びる喜びの糸は見えたんだけど、その先が見えないんだ」
小石川噴気「う~ん、オレからは見えないな。怒りの感情で支配されているんじゃなさそうだ。その部下に怒っては、いませんよね?」
課長「はあ・・・。元を正せば私が悪いわけですから」
哀史「かといって悲しみを司る中指に、その糸が結びついているんでもないんだ」
小石川楽哉「えっ!?」
小石川噴気「えっ、とは?」
小石川楽哉「この人の薬指からはたしかに楽しみの青い糸が伸びている。だが、その糸の先が・・・ぼくにも見えない」
小石川噴気「つまり・・・」
小石川喜一「部下の親指から伸びた喜びの糸と」
小石川哀史「上司の薬指から伸びた楽しさの糸が」
小石川喜一「途中で結ばれているってことだ!」
小石川哀史「でもそんなことって、あるの? 上司を脅迫するのが部下の喜び・・・あれ?」
小石川喜一「そうだ。部下に脅迫されることは、彼にとって楽しさなんかじゃない。感情が一方通行なんだ!」
課長「あの~、私はどうなっちゃうんでしょうか?」
小石川喜一「とりあえず、部下の指から伸びている喜びの糸! あれは切っちゃいましょう」
小石川喜一「のうまん さんまんだ ばざらだんせんだ かまろしゃだそわたや うんたら かんまん!」
小石川喜一「まあ単なる一時しのぎですけどね」
課長「それでも・・・助かります」
小石川哀史「それにしても・・・。 これって、片思い・・・ってことだよな」
小石川喜一「そうなるんだろうが・・・」
小石川楽哉「じゃあ、おじさんに繋がってる楽しさの糸も一応、切っとくね。のうまん さんまんだ ばざらだんせんだ うんたか かんまん」
小石川噴気「それにしても驚いたな。これまでは、相手に対して怒っているのに、相手はまったく気づいていないってパターンはあったが」
小石川楽哉「ぼくもだよ。その人と居て私は楽しい! でもその相手の方は、そうでもないってのはあったけどさ・・・」
小石川喜一「これはただの一方通行の片思いとはちがう。糸の色が途中で替わるなんてのは、初めてだ」
小石川哀史「そうだね」
小石川喜一「大切なものと引き換えに願いを叶えてやった術師の仕業ならそれは・・・とんでもなく恐ろしいことだぞ!」
小石川哀史「恐ろしい?」
小石川喜一「だってそうだろ? オレたちにはそれぞれ見ることができる糸の色がある。オレは喜びの黄色の糸だし」
小石川哀史「ぼくは哀しみの黒い糸」
小石川喜一「でもこの糸術を使った者は、見える糸が一種類じゃないってことだろ?」
小石川哀史「!!!!」
小石川喜一「喜怒哀楽・・・すべての感情の糸を見る事ができる糸師が、この世界にいるの・・・か?」
小石川哀史「・・・・・・」

〇明るいリビング
「なるほど、話はわかった。だがにわかには信じがたいことだな」
「まさかそんなはずが・・・」
小石川哀史「父さん!! だからいったいどんなはずなんだよ!」
「かつてはな、喜怒哀楽すべての感情の糸を操ることのできる・・・マルチスレッド一族が存在した」
小石川喜一「マルチスレッド?」
小石川哀史「すべての感情にアクセスすることができるから、マルチスレッドか」
「その一族は、絶大な勢力を誇っていた」
小石川哀史「そうだろうね。なにせ人間のすべての感情を思いのままに操ることができるんだから」
「高すぎる能力を持ったことが、彼らの不幸の始まりだった・・・」

〇城下町
「やつら一族はこの江戸を拠点として、日本全土を支配下に置くつもりのようだ」
「なんとかせねばならぬなあ」
「是が非でも全治家の野望を阻止せねば!今こそ祈り紙一族、糸師の小石川家、互いに協力しあって全治家を止めようではないか!」
「そうですなぁ。まずは話し合いの場を設けて・・・」
「なにを生ぬるいことを申しておる!」
「雅楽殿!」
雅楽「元はといえば糸師一族である全治家がこのような大それた企みを持つように至ったのは、同じ糸師の小石川家が腑抜けだからですぞ!」
「いや、めんぼくござらぬ」
雅楽「あなたたちがやらぬと申すのであれば、私ひとりで、全治家を滅ぼすまで!」
雅楽「琴詩酒の友は皆我をすつ 雪月花の時 最も君をおもう」
雅楽「幾度かの鶏を聴いて白日を歌ひ またかつて馬の騎りて こうくんを詠ず」

〇古民家の居間
和夢「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
小石川喜一「どうされましたか?」
和夢「悪い者に追われております。少しの間、かくまってはいただけませんか?」
小石川喜一「それはかまわぬが・・・」
「頼もう! 頼もう~~~!」
和夢「来た!」
小石川喜一「では、こちらへ」
雅楽「こちらに、おなごが逃げてはこなかったか?」
小石川喜一「・・・知らぬな」
雅楽「ん? お主・・・以前どこかで会ったような」
小石川喜一「ん? ああ~雅楽か。久しぶりよの~。元気だったか?」
雅楽「ああ、元気・・・じゃね~わっ! てかお前、なんで会合に来なかった!?」
小石川喜一「だって、だりぃじゃん」
雅楽「だりぃとか言ってんじゃねぇーよっ!これだから小石川家の者は・・・」
小石川喜一「親父が行ったんだからいいだろ? して会合ではなにが話し合われたのじゃ?苦しゅうない申してみよ!」
雅楽「なにが苦しゅうないだ! 議題は謀反を企てている全治家のことに決まっておろうが!」
小石川喜一「それな?」
雅楽「術師の不始末は、術師でカタをつけねば。全治を断絶すべき、と今日の会合で決まったのだ」
小石川喜一「決まった? 親父や、祈り紙も賛同したってことか?」
雅楽「いや、お前の親父たちのやり方はなまぬるい!」
小石川喜一「じゃあ、お前ひとりで・・・」
雅楽「幼馴染のお前も、手を貸せ! ともに全治家を討伐しようではないか!」
小石川喜一「いや~、オレはそういうの、いいよ」
雅楽「いいよとか言ってる場合じゃな~い!」
小石川喜一「・・・・・・」
雅楽「ま、オレひとりの力でも全治家のほとんどの者は討ち取ったんだがな。タチの悪いひとりを取り逃がしてしまったのじゃ」
小石川喜一「タチが悪いとは?」
雅楽「おなごの身でありながら全治家最高の能力者よ。お主もゆめゆめあなどるでないぞ! ごめん!」
小石川喜一「そなた、名をなんと申す?」
和夢「和夢・・・。 全治和夢と申します」

次のエピソード:エピソード10

コメント

  • 江戸時代までさかのぼって…もうすぐクライマックスですね。続きが楽しみです。

  • お〜江戸時代まで遡りましたね!マルチスレッドの全治家、怖いですね〜😱実際にいたらやりたい放題ですもんね。江戸時代の喜一さんは先代の喜び担当糸師さんかしら。そしてあの黒い天使は全治家と関係があるわけですね♪優しそうな和夢ちゃんを見る限りでは、平和に解決できそうなのにぃ〜😰

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