《エデン》

草加奈呼

エピソード28 奇跡の子(脚本)

《エデン》

草加奈呼

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〇洞窟の深部
  メイ・・・・・・
  僕の声が、聞こえる・・・?

〇幻想2
メイ「えっ? なに、ここ!?」
ウィル「ここは、メイの意識の中」
ウィル「君だけに、特別伝えたいことがあった」
メイ「特別・・・?」
ウィル「さっき、言ったよね。君には、僕の力を 少しずつ分け与えてたって」
メイ「うん・・・」
ウィル「残りの力も、君にあげる」
メイ「・・・えっ?」
ウィル「僕の力に耐えられるのは、メイだけだよ」
ウィル「この世界は君に任せた」
ウィル「この力には、 全てを生み出す力があるんだ」
メイ「ええと、どういうこと?」
ウィル「つまり、今のメイには、全ての子孫を 生み出す力があるってこと」
ウィル「風の子孫を生み出せば、みんな助かるよ」
メイ「・・・・・・・・・・・・・・・」
メイ「は?」
ウィル「相手は・・・そうだなぁ・・・」
ウィル「時のジェルバーンがいいかな。 時の能力はいろいろと不可能を可能にしてくれるから、」
メイ「・・・・・・(ぱくぱく)」
ウィル「必ず風の子孫ができるはず」
メイ「・・・・・・(ぱくぱく)」
ウィル「メイ、聞いてる?」
メイ「ちょっ・・・!」
メイ「冗談じゃないわよ! あたしだって、相手を選びたいわよ!!」
メイ「あたしが好きなのは、レグルス様〜〜 レグルス様がいいの〜〜」
ウィル「あー、ごめんね、メイ」
ウィル「レグルスは闇の能力だから、相反する 光は相性が悪いんだ・・・」
メイ「やめてよ! あたしの恋心を打ち砕くな!!」
ウィル「まあそれがなくても」
ウィル「レグルスは、僕のお気に入りだから、 妹のメイにはあげられないかな♪」
ウィル「じゃあね、メイ みんなによろしく・・・」
メイ「・・・おい、さらっと爆弾発言残して 逝くな、バカ兄貴!!」

〇洞窟の深部
レグルス「・・・・・・っ!」
影利「・・・・・・っっ!!」
  メイが現実世界に戻ると、レグルスと影利が肩を震わせて笑いを堪えていた。
メイ「えっ? レグルス様、影利さん・・・」
メイ「なんで、笑って・・・・・・」
メイ「も、もしかして、今の話聞いて・・・!?」
レグルス「す、すまない・・・くっ・・・!」
影利「ご、ごめんなさい・・・くくっ・・・!」
メイ(し、しにたいーーーー!!)
ジン「しかし、延命処置って、 いつまでもつんだろうな?」
エクスト「そうね・・・それまでに風の子孫なんて、 できるのかしら・・・?」
ジン「・・・・・・ところで、 さっきからツッコミたかったんだけどよ」
ジン「おまえ、顔変わりすぎじゃねぇか?」
ジェルバーン「いやぁ、自分にかけてた老化を遅らせる 技が解けちゃってね」
エクスト「そ、そんな技があるの!? 詳しく知りたいわ・・・!」
ジン「本当は何歳なんだ?」
ジェルバーン「50歳くらいかな? はっはっは!」
(おっさんだったーー!!)
風華(結局、風の子孫がいないと セ=シルの子孫は生きられない・・・)
風華(今から子孫を・・・? そんな時間的余裕はないはず・・・!)
風華(考えて・・・考えるのよ・・・!)
風華(何か、 何か見落としている事はない・・・!?)

〇洞窟の深部
ウィル「だって考えてもみてよ────」
ウィル「そんなこと、普通ありえる────?」
ウィル「セ=シルの子孫同士は傷つけあえないし────」
ウィル「ましてや、自害なんて無理なんだ────」
ウィル「子孫を作ろうとしなくても、何かしらの 運命が働いてできちゃう────」
ウィル「カートとティサのようにね────」

〇洞窟の深部
風華「”セ=シルの子孫同士は傷つけ合えない”」
風華「”カートとティサ・・・”」
風華「”延命処置・・・”」
風華「まさか・・・・・・」
風華「地季! レスト! 胎児の心音を確認して!!」
「早く!!」
  地季とレストは、横たわっているティサの腹部から、胎児の心音を探り当てた。
レスト「きこえる・・・」
地季「聞こえるよ・・・!!」
地季「でも、母体は助からなかった・・・。 このままじゃ・・・!」
風華「色時! ジェルバーン!」
風華「あなたたちの力で、胎児の成長を 早める事はできますか・・・!?」
色時「やったことないけど・・・」
ジェルバーン「できなくはない・・・けど・・・」
ジェルバーン「急激に成長させると、今度は胎児への 血液や栄養が足りない・・・」
風華「どうしたら・・・」
レグルス「私の血を使ってくれ」
ジェルバーン「レグルス様の・・・?」
レグルス「カートの子だろう。 血縁である私が、一番近い」
風華「では、栄養は・・・?」
メイ「あたしの血を使って!」
風華「メイの・・・!?」
メイ「あたし、今は ”なんでもアリ”なんだって!」
メイ「お兄ちゃんの力を引き継いだから!」
レグルス「しかし、それにしてもこれは賭けだ。 奇跡に近いぞ・・・」
風華「信じましょう! アイ=リーン様と、セ=シルの奇跡を!」
  色時とジェルバーンが、ゆっくりと
  胎児を成長させ、
  ゆっくりとレグルスの血を送り・・・
  メイの血液から必要な栄養素を抽出し、胎児に送った。
紅蓮「それにしても、 よく胎児が生きてるってわかったな」
風華「ウィルが言っていたでしょう? ”セ=シルの子孫同士は傷つけ合えない”」
風華「胎児はセ=シルの子孫。 ウィルはティサしか傷つけていない」
風華「母体が亡くなってしまったから、 胎児もダメかと思ったけれど・・・」
風華「ウィルが最期に延命処置をした」
風華「だから、もしかしてって思ったの」
  数時間後────
  オギャアオギャア!
雷火「か、かわいい・・・」
氷河「ああ、かわいいな・・・」
レスト「抱いて、あげて」
風華「えっ? 私が?」
レスト「風華、気づいた、お手柄!」
風華「じゃあ・・・」
  風華は、赤子をそっと抱いた。
風華(かわいい・・・)
風華(カートは、自分のせいで他のセ=シルの 子孫が消えるのをわかって・・・?)
風華(・・・・・・・・・・・・)
風華(どちらでもいいわ)
風華(みんな助かったし、 この子に罪はないもの)
風華「レグルス」
風華「今度は、あなたが抱いてあげて」
レグルス「わ、私がか・・・?」
風華「だって、あなたはこの子の伯父なのよ!」
レグルス「伯父・・・・・・」
  今度は、レグルスが赤子を抱いた。
レグルス(私が、赤子を抱く日が来るとは・・・)
レグルス(今後、一生ないかもしれんな・・・)
メイ(レグルス様の血液が入って、 私の血液からの栄養素も入って・・・)
メイ(これもう、事実上、 あたしとレグルス様の子じゃない!? ねぇ! 口が裂けても言えないけど!!)
ジェルバーン「しかし、まだまだ油断は禁物だよ」
ジェルバーン「俺たちの技で無理やり成長を早めてる から、今後何が起こるかわからない」
レイノス「そうだね、みんなで見守って行こう」
エクスト「私たち、みんなの子どもね!」
ジン「しかし、これからどうする?」
ジン「みんなで、またあの拠点に戻るのか?」
風華「みなさん、もし良かったら、 モステアに来ませんか?」
「モステアに!?」
風華「本音を言うと、モステア復興の お手伝いをしていただきたいんです」
風華「ダメ・・・でしょうか・・・?」
ジン「まあ、いろいろと 迷惑かけちまったしな・・・」
ジン「俺はいいぜ!」
エクスト「私も!」
影利「もちろん、私たちだって しばらくは復興を手伝うわよ!」
風華「みんな・・・」
風華「ありがとう・・・!!」
  こうして、戦いは幕を閉じた────

〇王宮の広間
  モステア城
  その後、風華をはじめとするアイ=リーンの子孫たちと、セ=シルの子孫たちはモステアへ戻り────
  モステア復興に尽力した。
  数ヶ月後、ようやく復興が落ち着いてきたところで────
  皇子である氷河の帰還を国民に伝え、
  同時に、セ=シルの子孫たちと共闘し、
  魔術の封印に成功した事を伝えた。
  これにより、モステアから少しずつ────
  セ=シルの子孫へのわだかまりが解けていった────

〇巨大な城門
  その後、闇夜に紛れてモステアからこっそりと姿を消そうとしている人物がいた。
「レグルス!」
レグルス「おや、見つかってしまったか」
風華「レグルス、 どうしても行ってしまうのですか・・・?」
風華「あなたは、魔術封印に貢献してくれた」
風華「モステアの参謀総監として、ぜひここに 留まってほしかった・・・」
レグルス「その話は、断ったはずだ」
風華「あの子は、どうするのです?」
レグルス「あの子は、ジンとエクストが引き取ると 言ってくれている」
風華「・・・これから、どこへ?」
レグルス「私は、語り部となる」
レグルス「世界中を廻って、セ=シルとウィルの その後を────」
風華「・・・・・・・・・・・・」
風華「そうでしたね。あなたは、最初から それが目的でしたものね・・・」
レグルス「風華」
風華「はい」
レグルス「最後に、抱きしめても?」
風華「えっ!?」
  レグルスは、返事を待たずに風華を抱きしめた。
  そして数秒の後、離れた。
レグルス「ご無礼をお許しください、王女殿下」
風華「もう、レグルス!」
レグルス「ひとつ言っておきたいのは、私は君を 娘のように思っているという事だ」
レグルス「先程のは、家族愛と思ってもらえばいい」
レグルス「では、他の皆にみつからないうちに、 退散することにしよう」
レグルス「さらばだ・・・」
風華「さようなら、レグルス・・・」

〇城壁
風華「ふう・・・・・・」
  風華は、ひとりバルコニーで夜風に当たっていた。
風華(復興にもようやく目処がたって、 国民たちはそれぞれの生活に戻ったけど・・・)
風華(治安は悪くなってるし、 まだまだやることも山積みだわ・・・)
「風華」
風華「紅蓮」
紅蓮「お疲れ様だな」
風華「ありがとう・・・」
風華「ねぇ、紅蓮・・・」
紅蓮「・・・ん?」
風華「クイクの町に、帰らなくていいの?」
紅蓮「そりゃ、いつかは帰るだろうけど、 なんでだ?」
風華「え・・・だって、 ヴァルさんと約束してるんでしょう?」
紅蓮「約束・・・?」
紅蓮「・・・・・・・・・・・・」
紅蓮「あーーーーーーーーーーっっ!!」
紅蓮「おもっ、思い出した!!!!」
紅蓮「ヤバい!! ヴァルに殺される!!」
風華「ぐ、紅蓮、落ち着いて!!」
紅蓮「ごめん、風華! 俺、一旦クイクに戻るわ!!」
風華「そ、そうね・・・」
紅蓮「絶対、絶対戻ってくるから、 待っててくれよな!!」
風華「は、はい・・・」
紅蓮「じゃ!!」
  紅蓮は、氷河に転移の羽をせがみ・・・
  慌ただしくクイクの町に戻っていった────
風華「紅蓮・・・」
風華「待ってるわ・・・」

次のエピソード:エピソード29 それから。前編

コメント

  • 色々大変なところで、メイの発想に癒されました!!可愛い、、、恋する乙女って強いですよね・・・

    ウィルとメイの軽快なやり取りも、良かったです!!

    最期だけど、悲しくない、今までの関係性が詰まってるシーンでした✨

  • しんみりしていたところで、メイのポジティブ思考に吹きましたw ええんやで、それでww 実質そうなるよね、うんうん!

  • 良かったー!ヴァル忘れられたままにならなくて😂
    地味に気になってたんです💦
    すごい力技だけど赤子が助かって良かった……けどやっぱりティサはダメなんですね😭
    とりあえずイケメン王子に癒されよう……

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