バックが上手な人が好き

山本律磨

車内にて(脚本)

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山本律磨

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〇雑居ビル
「あらやだ」
「やだやだやだやだやだ」
轟「折りたたみ傘入れ忘れてるし」
轟「駅まで走るか?」
轟「・・・」
轟「う~ん。車かあ・・・」
轟「よし、給料入ったし、リッチに帰ろう」
轟「ヘイヘイタクシ~♪うっふ~ん♪」
轟「飲み過ぎとるな・・・」
轟「お、止まった止まった」
轟「熟女の魅力思い知ったか」
轟「・・・飲み過ぎとるな」

〇タクシーの後部座席
轟「すいませーん」
「どちらまで行かれます?」
轟「井の頭公園と動物園の間のへんで」
「畏まりました。安全運転で参ります」
轟「宜しくどうぞ」
轟「・・・」
  『曼珠沙華旭』
轟「え?うそ。マンちゃん?」
アキラ「え?」
轟「轟。轟響子」
アキラ「・・・」
アキラ「人違いでは?」
轟「そんな名前二人といるか」
アキラ「お客さ~ん。酔ってらっしゃいますね~」
轟「酔ってても漢字くらい読めるわよ。マンちゃんでしょ。曼珠沙華旭(マンジュシャゲアキラ)」
アキラ「ち、違います。私、マンタマサハナキョクと・・・」
轟「どこの国の人間よ」
アキラ「・・・」
轟「・・・」
轟「まあ、違うっていうならいいですけど」
轟「・・・」
アキラ「・・・」
アキラ「・・・30年ぶりくらい?」
轟「・・・もっとじゃない」
アキラ「・・・そうかもな」
轟「・・・」
轟「おばさんになったでしょ」
アキラ「・・・」
アキラ「俺よりゃ全然」
轟「はい。そう言いやすいようにこっちから泥被ってあげました」
轟「本当、無残に変わったわね~」
アキラ「おう、ボロボロよ」
アキラ「一人・・・」
アキラ「・・・なわけないか」
轟「・・・」
アキラ「まだ郵便局に?」
轟「あと10年はね。しっかり年金稼がないと」
轟「バブルは遠くなりにけりよ」
アキラ「ああ、遠くなっちまったな」

〇タクシーの後部座席
  『イケイケねんとるパーティー90!インYOKOHAMA!』

〇大広間
「ちょっと待ったあ!」
司会「おおっと!ちょっと待ったコールだ!」
アキラ「第一印象から決めてました!まずはお友達からお願いします!」
轟「はーい」
司会「まさに大ドンデン返し!カップル成立だ!」
轟「・・・」
アキラ「・・・」

〇セルリアンタワー東急ホテル
アキラ「悪いな轟。どうしてもカップルのサクラが一人足りなくてさ」
アキラ「ただもっと芝居っ気ってかさ。タメみたいなもんが欲しかったよな」
アキラ「『はーい』はないだろ。『はーい』は」
轟「テレビあんまり見ないから」
アキラ「あとなんだその恰好。告白する方の身にもなってくれよな」
轟「ごめん」
アキラ「ま、いいや。ほいギャラ」
轟「いいよこんなに。だいたい私の仕事バイト禁止だし」
アキラ「じゃあタクシー代」
轟「電車で帰るからいい」
アキラ「満員電車か?疲れるぜ~」
轟「慣れてるし」
アキラ「お前、もっと人生楽しもうぜ」
アキラ「今時高校卒業してすぐ公務員なんてありえねーよ」
アキラ「よし。俺が送ってやる。ちょっと待ってろ」
轟「・・・」
アキラ「乗れよ」

〇車内
アキラ「・・・って、何で後部座席に乗るんだ?」
轟「楽だから」
轟「凄いねこの車。マンちゃんまだ学生なのに」
アキラ「先輩から借りたんだよ。ホラ、今日のイベント企画した人」
轟「いいの?」
アキラ「平気だよ。三台くらい持ってるみたいだし。だいたいあの人、社長だし」
轟「学生で社長・・・意味が分かんない」
轟「学生やめりゃいいのに」
アキラ「てか、マンちゃんって言うな。AKIRAって呼べ」
アキラ「A・Kでもいいぜ」
轟「A・Mでしょ。曼珠沙華旭なんだから」
アキラ「相変わらずノリ悪いな~」
アキラ「お前も大学通ってりゃ、もうちょっと流れってもんが分かるはずだぜ」
轟「流れ・・・」
アキラ「よし!この流れで海行ってみようか!」
轟「まあ、11時までに送ってくれれば」
轟「寮の門限あるから」
アキラ「寮って・・・」
アキラ「・・・」
アキラ「あーなんだよ前の軽、チンタラ走りやがってよ!」
アキラ「のけよコラ!」

〇高速道路
轟「ちょ、ちょっと飛ばさないでよ!」
アキラ「え?ビビッてんの?可愛いとこあるじゃん」
アキラ「イエーイ!摩天楼の皆さんこんばんわー!」
アキラ「卒業したらお世話になりまーす!」

〇赤レンガ倉庫
アキラ「オイ、見とけよ俺のドライビングテク!」
轟「・・・ひっ!」
アキラ「どうよ。高速バック駐車」
アキラ「スリルあったろ」
轟「酔った」
轟「外の空気吸いたい」
アキラ「お、おい」

〇遊園地
轟「綺麗~」
アキラ「お前さ~俺が車乗ったままでも見れるようにわざわざバックしてだな」
轟「あ、そういうことだったの?」
轟「ゴメンね~」
アキラ「・・・」

〇広い河川敷
アキラ「う~さむいさむい」
轟「でも景色いいよね~」
轟「なかなかこういう所来る機会ないからさ」
轟「連れて来てくれてありがとね~」
アキラ「・・・」
アキラ「なあ、こんな海よりさ。新しく出来たベイサイドタワー行かない?」
轟「行かない」
「・・・」
アキラ「週の半ばだからさ、フルコースとかも安いんだぜ」
轟「昨日の残りのカレーあるからいい」
「・・・」
アキラ「あー寒い!」
アキラ「何枚も何枚も同じ写真撮るなよ!何が違うんだよ!」
轟「ありがとう。じゃあ帰ろう」
アキラ「はあ?まだ10時だぞ」
轟「明日仕事って言ったじゃん」
アキラ「サボれよそんなの。風邪ひいたとか何とか言ってさ」
轟「どういう意味?」
アキラ「流れっつーもんがあるんだよ」
轟「でた。流れ」
轟「意味わかんない」
アキラ「一度しかない人生、仕事仕事でいいのかって話だよ」
轟「仕事仕事じゃないよ」
轟「仕事カメラ仕事ゲーム仕事マンガ仕事ゲーム仕事カメラ仕事ゲーム仕事マンガ」
アキラ「もういいよ!」
アキラ「お前見てると悲しくなってくるよ」
アキラ「俺達はオッサンオバサンじゃねえ。可能性の中で生きてるんだ」
アキラ「ここに一緒に来たのも可能性のひとつだって思わないか」
轟「マンちゃん・・・」
アキラ「轟・・・いや」
アキラ「響子・・・」
轟「マンちゃん・・・もしかして・・・」
轟「・・・バカ?」
アキラ「へ?」
轟「私、バカ嫌いなの」
轟「今電車で帰れば門限間に合うから」
轟「今日はありがとう」
轟「何のゲーム買おっかなー♪」
アキラ「・・・」

〇広い河川敷
  『わはははは!』

〇タクシーの後部座席
アキラ「いやそっちの言う通りだったよ。ほんと。バカだバカ」
轟「ゴメン言い過ぎた。バカはないよね」
轟「本当はビビってたのよ。流れってものに」
アキラ「じゃあ流れに乗らなくて正解だったよ」
アキラ「流れ流れて、流され続けた結果がこれだ」
アキラ「仕事パチンコ仕事ボート仕事競馬」
アキラ「仕事仕事仕事・・・」
アキラ「でもまあ、それなりに楽しい」
アキラ「わきゃあねーか」
アキラ「・・・」
轟「わきゃあないわ・・・」
アキラ「・・・」

〇高速道路
「流れ・・・か」
「え?」
「何でもない」

〇開けた交差点
アキラ「あ、ちょっと行き過ぎたか」
轟「いいよここで・・・」
アキラ「いえ、メーター下ろしてバックします」
轟「運転、上手くなったね」
アキラ「仕事だから」
アキラ「ご乗車、有難うございました」
アキラ「門限には間に合いそう?」
轟「もう無いわよ、門限なんて」
アキラ「え?」
轟「仕事カメラ仕事ゲーム仕事マンガ」
轟「たまに恋活、かな?」
アキラ「・・・」
轟「じゃあ、また」
アキラ「あ・・・じゃあ、また」
アキラ「・・・また」
  Fin

コメント

  • 昭和は遠くなりにけり。と、しみじみしてしまいますが、轟とアキラのようなちょっとほろ苦い再会も悪くないですね。これからこの二人の関係は過去に上手にバックできるのか…。神のみぞ知るですね。

  • 若き頃を懐かしむことは、ふとした事で私もたまにあります。
    後悔先に立たずではないですが、昔描いていた未来よりしっかりとした大人になれてないなって。悲しい。

  • この二人とは同世代であろう私は、仕事飲み仕事旅仕事恋愛と割と楽しんだんだなあと思います。・・結果、そんなに財力残ってないけど、楽しく振り返れる記憶が財産としています。

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