アライブ・ソルジャーズ

十四話 積み上げられる屍(脚本)

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〇崩壊した道
渋屋 杏「・・・」
  今にも飛んでしまいそうな意識の中で、私は思考を巡らせていた。
  鉄柱が頭の上に落ちてきて、無事なわけがない。
  なのに、私の体が致命傷を負った様子はなかった。
  自分に覆いかぶさる、瓦礫や鉄柱ではない何かに、なんとなく察しがついた。
渋屋 杏「母さん・・・」
  泣く気力も、絶望する気力もない。
  頭が何も考えようとしない。
渋屋 杏「母さん、私も母さんと一緒に眠りたい・・・」
渋屋 杏「そしたら、もう何も考えなくていい・・・ そうでしょ・・・?」
  ・・・や、返事を・・・!!
  渋屋、返事をしろ・・・!!
渋屋 杏「黒沼・・・?」
  お前が約束しようって言ってきたんだろ、お前が破ってどうするんだよ・・・!
渋屋 杏「・・・」

〇車内
渋屋 杏「黒沼、約束するわよ。 私たちは絶対に死なない、この戦いを生き抜くんだって」
渋屋 杏「お互いがお互いに、この約束で戦いを生き抜けるように」

〇崩壊した道
渋屋 杏「・・・!!」
  生きたい。
渋屋 杏「黒沼・・・黒沼・・・ッ!」
  生き残りたい。
渋屋 杏「絶対、死んだりなんか、しないから・・・!」
渋屋 杏「だから、お願い・・・! 助けて・・・!」
渋屋 杏「ッ──」
黒沼 晶「今のは装置の光か・・・!?」
黒沼 晶「渋屋、そこにいるんだな! 待ってろ、今助ける!!」
黒沼 晶「いっ・・・!」
黒沼 晶「痛みとか、気にしてる場合じゃねーだろ・・・!」
黒沼 晶「渋屋を、助けないと・・・!」
中井 雛「晶くん!!」
黒沼 晶「雛、先生・・・」
中井 雛「早くリベリオンに帰って治療を受けて!! いくら晶くんでも、その出血は・・・!」
黒沼 晶「ダメです、ここに渋屋がいるんです・・・! 置いて自分だけ行くなんて、俺はしたくない!」
黒沼 晶「だって、あいつは・・・!」
黒沼 晶「俺に、偽善だと思い込んで諦めていた夢を見せてくれた・・・」
黒沼 晶「人の命を見殺しにし続けた俺を、全て知った上で受け入れてくれた奴なんだ・・・!」
中井 雛「晶くん・・・」
黒沼 晶「!?」
中井 雛「え・・・? 杏ちゃんの、お母さん・・・?」
中井 雛「そ、そんな・・・!」
黒沼 晶「渋屋! おい、大丈夫か!?」
中井 雛「杏ちゃんのお母さんは私が車に乗せて、病院に連れて行く!」
中井 雛「晶くんたちには別の車を用意するから、待ってて!」
黒沼 晶「渋屋・・・ クソッ、父親の次は母親まで・・・!」
黒沼 晶「残酷すぎるにも、程があるだろ・・・!」

〇警察署の医務室
渋屋 杏「ん・・・」
渋屋 杏「ここ・・・ 雛先生の医務室・・・」
中井 雛「杏ちゃん、おはよう」
渋屋 杏「・・・二人とも、悲しい顔をしてますね」
中井 雛「そ、それは・・・」
渋屋 杏「母さん、助からなかったんですか・・・?」
黒沼 晶「・・・ああ。 ついさっき、亡くなったという連絡が届いた」
渋屋 杏「・・・そっか」
渋屋 杏「でも、私は大丈夫よ。 リベリオンの任務に支障をきたすようなことはしないわ」
「・・・!」
渋屋 杏「体もそこまで重傷じゃないみたい。 明日からも普通に任務をこなすわ」
渋屋 杏「またね、二人とも」
黒沼 晶「お、おい、渋屋・・・!」
中井 雛「晶くん、ダメだよ。 きっと一人になりたいんだと思う」
中井 雛「心配な気持ちは分かるけど・・・ 今だけは、一人にしてあげよう」
中井 雛「無理してるから、心配だけど・・・ね」
黒沼 晶「そう、ですね・・・」
中井 雛「今回のギャラジー襲撃による死亡者数は1,000人を超えた。 過去最大だよ」
中井 雛「莉呑ちゃんの体を利用しての襲撃だなんて、許せない・・・」
黒沼 晶「先生。 莉呑がギャラジーとなった原因は、俺なんです」
中井 雛「え・・・!?」
黒沼 晶「俺が沙耶さんに頼んだんです。 莉呑を、どんな手を使ってもいいから生き返らせてくれって」
中井 雛「そ、そんな・・・!」
中井 雛「なんてことをしたの!? 沙耶さんには近づかないでってずっと言ってきたよね!?」
中井 雛「あの人はどんな非人道的な実験もやる人だからって・・・!!」
中井 雛「あの人を頼れば、絶対に何かを失くす羽目になるんだよ!? 晶くんが一番分かってるでしょ!?」
中井 雛「” 純粋な人間の体を失ってしまった ”、晶くんなら・・・!」
黒沼 晶「莉呑のことは、体を失う前に頼みました。 自分だけが苦しむなら、いいと思っていました・・・」
黒沼 晶「でもその結果・・・俺は莉呑自身を傷つけてしまった」
中井 雛「・・・」
中井 雛「晶くんも、あの時はいっぱいいっぱいだったもんね。 怒りすぎたよ、ごめんね」
黒沼 晶「いえ・・・」
中井 雛「私はそろそろ仕事に戻らなきゃ」
黒沼 晶「・・・分かりました」
中井 雛「晶くん」
黒沼 晶「なんですか」
中井 雛「今回も・・・よくがんばったね」
黒沼 晶「・・・はい」

〇オフィスの廊下
渋屋 杏「・・・」
渋屋 杏「あれ、あそこにいるのは・・・」
日谷 紗枝「・・・今回の事件ではかなりの死者数が出てしまいました」
日谷 紗枝「申し訳ございません、こちらの落ち度です」
日谷 紗枝「警戒はしていましたが、相手のギャラジーは手強く・・・」
渋屋 杏(誰かと電話してる・・・)
日谷 紗枝「はい、新しいエージェントも期待外れの結果になりました」
日谷 紗枝「唯一の家族である母親も死亡したことにより、メンタル面を考えると・・・」
日谷 紗枝「渋屋さんは解任するべきかもしれません」

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