幸せのハリボテ

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第五話 大衆食堂『漏れ鍋』(脚本)

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〇飾りの多い玄関
栄田 美雪「何だろう、これ お母さんのかな?」
栄田 美雪「お母さーん!」

〇システムキッチン
栄田 駿「なるほど、鶏ガラスープの素か!」
栄田 栞里「シチューはブイヨンだけと 思い込むなかれ!」
栄田 駿「流石達人!」
栄田 栞里「ふっふっふ」
栄田 美雪「お母さーん」
栄田 美雪「玄関にこれ落としてたよ」
栄田 栞里(あっ・・・!!)
栄田 駿「これは・・・」

〇空
栄田 栞里「これ、なんですか?」
栄田 栞里「お店の・・・紹介カード?」

〇応接スペース
堀田 晴臣「ええ。とある食堂の名刺です。 あ、僕の名刺は回収しますね」
栄田 栞里「あっ、困ります 連絡するときとか・・・」
堀田 晴臣「大丈夫。必要があれば 連絡はこちらから致しますよ」
栄田 栞里「で、でも・・・」
堀田 晴臣「進捗状況は来週以降の火曜日から 毎週必ずお伝えするお約束ですし」
堀田 晴臣「『格安で請け負うかわりに2ヶ月  依頼主は調査を中止できない』」
堀田 晴臣「契約書、サインしましたよね?」
栄田 栞里「は、はい・・・」
堀田 晴臣「つまり栄田様から連絡する 必要はほぼありません」
堀田 晴臣「それに、名刺を落として 調査がバレると困りますから」
栄田 栞里「そんなこと・・・」
栄田 栞里(ありえない、とも言い切れない・・・)
堀田 晴臣「ご理解いただけたようですね」
堀田 晴臣「では来週、この食堂へいらしてください 情報をお渡しします」
栄田 栞里「あの・・・」
堀田 晴臣「ああそうだ! 肝心なことを言い忘れてた」
栄田 栞里「な、なんでしょう?」
堀田 晴臣「この食堂は鯖味噌が絶品なんです! 是非ご賞味を」
栄田 栞里「はあ・・・」
栄田 栞里(やっぱり大丈夫なのかしら この人・・・)

〇システムキッチン
栄田 駿「大衆食堂『漏れ鍋』・・・ な、なんか独特な名前だね」
栄田 栞里「あは、ははは・・・ 私もそう思うんだけど」
栄田 栞里「会社の人が『絶対行った方がいい』って オススメのお店なの」
栄田 栞里「来週火曜、成田空港からだから ついでに行ってみようかなって」
栄田 駿「来週火曜か・・・」
栄田 栞里「あ、ごめん。何か用事あった? 私遅めに出ようか?」
栄田 駿「いや、火曜だったら僕も その食堂行こうかなって」

〇黒
栄田 栞里「えっ」

〇システムキッチン
栄田 栞里「だ、大丈夫なの?」
栄田 栞里「し、駿のお仕事って なかなか忙しいのよね?」
栄田 駿「そう、だからまあ行けたら、かな」
栄田 栞里「一緒に行けるといいんだけど、ねぇ」
栄田 美雪「いいなぁ! 美雪も行きたーい!」
栄田 栞里「火曜日は学校でしょ。 美味しかったら今度連れてくから」
栄田 美雪「はーい」
栄田 栞里(どうか駿が来れませんように・・・!)

〇空
堀田 晴臣「──────さて」

〇応接スペース
堀田 晴臣「まずはそのご両親の身辺から洗うかな」
堀田 晴臣「おーい。ハーマイオリー!」
堀田 晴臣「話は聞いてただろ? 何か出たか?」
浜 伊織「ちょっと、所長!  その呼び方、やめてもらえますか?」
堀田 晴臣「何故? いいじゃないか!」
堀田 晴臣「探偵たるもの、外で話すときに 本名を知られては困るだろ?」
浜 伊織「本名だし悪目立ちするんで迷惑です ハラスメントです公然猥褻です」
堀田 晴臣「そんなに?」
浜 伊織「そんなに!」
堀田 晴臣「まっ、それはいいとして。 首尾は?」
浜 伊織(全く懲りないなこの人)
浜 伊織「まずは簡単に調べられそうな ところから始めました」
浜 伊織「航空会社に登録されていた 古村夫妻(仮)の住所ですね」
浜 伊織「該当する住所に住居と思われる 場所はありませんでした」
堀田 晴臣「だろうな」
浜 伊織「ですが代わりに興味深い 事実が出てきました」
浜 伊織「この住所を登録住所としている会社が あったのですが・・・」
浜 伊織「栄田栞里がかつて使っていた 婚活アプリの運営会社の住所なんです」
堀田 晴臣「なるほど。偶然とは考えにくいね」
浜 伊織「どうします?」
堀田 晴臣「そうだな。伊織君はそのまま 婚活会社の調査を頼む」
浜 伊織「了解です」
堀田 晴臣「僕は金沢で古村夫妻を追ってみる 夫の方も調べておきたいが・・・」
堀田 晴臣「・・・あいつに頼むか」
堀田 晴臣「あー、もしもし? ロン・ウイズリー君かい?」
初刷 論(はつずり さとし))「人違いスね。切ります」
堀田 晴臣「ああ、待ちなって。僕だ。 ただの冗談だろう」
初刷 論(はつずり さとし)「手短に用件言ってもらえます? 今、浮気調査が大詰めなんスよ」
堀田 晴臣「ああ、浮気調査か・・・ それは一旦中止してくれ」
初刷 諭(はつずり さとし)「マジで言ってます? 二世議員の大スクープっスよ」
堀田 晴臣「こっちも重大案件でね。 初刷君にはある男を調べて欲しい」
堀田 晴臣「詳細は伊織君からファイルを送らせる」
初刷 諭(はつずり さとし)「・・・マジなんすね、了解っス」
初刷 諭(はつずり さとし)「あ、所長」
堀田 晴臣「ん? 何だい?」
初刷 諭(はつずり さとし)「あの女に入れ込むのは やめといた方がいいスよ」
  ブツッ
浜 伊織「ププ・・・もろバレですね」
浜 伊織「じゃあ、あたしも仕事に戻るんで」
浜 伊織「あ、所長。上がりが悪くても 給料おまけしてあげませんからね」
堀田 晴臣「やれやれ、じゃじゃ馬だらけの職場だな」
堀田 晴臣「さて。じゃあ僕も行きますか」

〇空
  堀田さんに依頼して一週間が過ぎた
  その日私は約束通り、
  例の食堂へ足を運んだ

〇山中のレストラン
栄田 栞里「あ、あった。ここね」
栄田 栞里(名前が独特だから心配してたけど 普通のお店っぽい)
栄田 栞里(今日この場所で、探偵さんが 私に情報をくれるのだけど・・・)
栄田 駿「意外だなあ、こんなところに 食堂があるなんて」
栄田 栞里「そ、そうね あは、あはは・・・」
栄田 栞里(駿、来ちゃったんだけど・・・ これもう無理じゃないかしら)
栄田 栞里「お、お仕事抜けてくるの 大変だったんじゃない?」
栄田 駿「大丈夫。 部下に任せてきたよ」
栄田 駿「妻とご飯に行きたいって言ったら 『それは最重要案件です』だってさ」
栄田 栞里「も、もう! 普段会社の人に どんな説明してるのよ!」
栄田 駿「別に変なことは言ってないよ 『世界で一番大切な人』とだけ」
栄田 栞里「十分恥ずかしいわよっ」
栄田 駿「じゃあ早速入ってみようか」

〇大衆居酒屋
栄田 栞里「すみません、二名なんですが」
食堂のおばちゃん「いらっしゃい! 二名様ね。 あちらの窓際にどうぞ!」
栄田 栞里「うわー、お客さんいっぱい」
栄田 駿「そして食欲をくすぐるこの香り! これは期待大だね!」
栄田 栞里(色んなお客さんがいるのね・・・)
栄田 栞里(確かにここなら、誰と何を話しても 気にする人はいなさそうよね)
栄田 栞里(駿がいなければ、だけど・・・)
栄田 栞里「窓際・・・あ、ここね」
栄田 駿「お腹減ったね。栞里は何にする?」
栄田 栞里「そうねぇ・・・」

〇大衆居酒屋
栄田 栞里(今日はもう探偵さんとは会えないわよね)
栄田 栞里(怪しまれないためにも 一旦探偵さんのことは忘れよう)

〇大衆居酒屋
栄田 栞里「やっぱり鯖味噌でしょ! オススメ食べなきゃ。駿は?」
栄田 駿「他にも魅力的なメニューあるけど やっぱりここは鯖味噌かな」
栄田 栞里「だよね!」
栄田 栞里「すみませーん! 鯖味噌定食二つくださーい!」

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コメント

  • 遅ればせながら、一気読みさせていただきます!
    時間のあるときにちゃんと読みたいと思っていたので…💦
    毎回、さすがのヒキで手が止まりません!
    駿が表向きはニコニコしてるのに、心の中は…と考えると怖い!10年も!😱
    真相はまだまだこれからですね。
    用事済ませて、また読みにきます!😆

  • ハッ、夢中でタップしてました😳
    駿は一体何者...?
    毎度引きの見せ方がさすがです✨

  • 探偵チームの抜かりなさがすごい!
    頭脳戦という感じの緊迫感がとても面白いです。
    これは……推させていただきます。漫画で見たい!

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