【第8話】女帝・翠玉(3)(脚本)
〇花模様3
舞い上がる花びらが落ち着く頃、その場に呆然と座り込む女性の姿が見えた。
トオル「アベンチュリ・・・あの人、動かないが・・・」
アベンチュリ「大丈夫です。ああ、良いものを見付けた。今のうちに頂いちゃいましょう」
アベンチュリがそう言うと、女性のカバンに巻かれていた綺麗な翡翠色をしたスカーフがふわりと舞い上がり
トオルたちの元へヒラヒラと飛んできた。女性は気付いていない。
アベンチュリ「これを報酬として頂きます」
トオル「え、勝手に!?」
アベンチュリ「大丈夫、大丈夫」
その時、女性のスマホが大きな音を立てた。
〇大きな木のある校舎
女性「・・・はい。ああ、お世話になっています。え?はい、ウチの子が!?あの、今ちょうど門の前にいます、すぐ伺います!」
女性は慌てた様子で小学校に入っていった。
トオル「何かあったんだろうか?」
アベンチュリ「さぁ・・・少し様子を見ましょうか」
トオル「あの女性・・・何か変わったんだろうか」
アベンチュリ「翠玉の花のカッカラは、母性や慈悲の心を呼び覚まし、知恵と深い安らぎを授けるアイテムです。あの人は確実に変わりました」
トオル「そうか。じゃあ、あの子も安心だな」
アベンチュリ「・・・いいえ。子供の問題は母親だけが解決するものではありません。あの女性が宿す母性や慈悲の心、そして知恵を」
アベンチュリ「子供の為だけに使うのか、それとも父親を含め共に考えるのか。その選択がまた、運命を大きく変えるでしょう」
しばらくすると、女性と子供が一緒に出てきた。後ろには怪我をしている様子の女の子と、その母親と思われる人が側にいた。
〇大きな木のある校舎
トオル「あれ?あの女性の息子さん・・・もう学校に来ていたのか?」
アベンチュリ「そのようですね?」
アベンチュリ「あ、そういえば鈴子さんが言っていましたよね」
アベンチュリ「毎週土曜日は早朝からテストがあるけれど、遅くても午前中には帰れるって」
トオル「そっか、今日は土曜日か」
女性「改めてこの度は・・・息子が大変なことをして本当に申し訳御座いませんでした。また後日、ご自宅にもお詫びに伺います」
お母さん「いえいえ、そんな何度も謝らないで下さい。かすり傷でしたから。でも二度と本を投げたりしたらダメよ?」
女性の息子「ごめんなさい・・・」
〇黒
あの未来だ、とトオルは気付いた。
アベンチュリが見せた、未来。
今日起こる出来事だったのか、と驚いたが、深々と子供と一緒に頭を下げる女性は、先程までの印象とは随分違った。
トオル「あの未来・・・回避出来たのか・・・?」