罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード9 回り出した歯車(脚本)

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〇高級マンションの一室
「駅前のオフィスビルの一室に部屋を借りたって、どういうこと?」
  引っ越したという報告をすると、マネージャーは怪訝そうな顔をしている。
久弥「仕事用に。 最近よく客に言われるんだ。 『高級ホテルに入るところを知り合いに見られるとバツが悪い』って」
久弥「その点、オフィスビルなら入りやすいだろ?」
  この説明で、マネージャーは納得したようだ。
「なるほどね。 いくらセレブの奥様でも頻繁に高級ホテルに入るところを見られるのは、困るわけね」
  なんて、これは表向きの理由。
  佐竹の家から近い駅。
  
  
  何かと都合の良い場所だ。

〇高級マンションの一室
「でも、借りたってどうやって?保証人は?」
久弥「みんなにナイショで佐竹社長がなってくれたんだ。 誰にも言うなって言われてるから、聞いたことを黙っていてね」
  ニッコリ笑って口の前に人差し指を立てると、彼女は表情を緩ませる。
「あなたは稼ぎ頭だものね。分かったわ」
  なんてね、これも嘘。
  客が持ってるオフィスビルの一室を借りただけ。
  事務所の人間を通さずに客と懇意になることを禁じられている。
  妙な詮索をされる前に、こうして報告して予防線を張っておく。
  佐竹の家の近くに移り住み、その息子と同じ名門私立高校に編入する。
  ありがたいことに、編入する金も頭脳も持ち合わせていた。

〇教室
涼太「高校生にまでなると転校生なんて、本当に珍しいよなぁ。 よろしくな、瀬尾」
  そう言って屈託ない笑顔を見せた佐竹の息子、涼太。
  編入し、同じクラスになれたのは偶然じゃない。
  権力のある奴と『仲良く』しておけば、色々と融通が利くものだ。
久弥「ああ、親がどこかでこの学校の評判を聞きつけて来て、ここに編入しろってうるさくて」
  そんなテキトーなことを言って微笑んでみせる。
涼太「まー、うちは一応 『名門私立高校』だもんな」
  アハハと明るく笑う姿には、まったく暗い影がなく、眩しさすら感じる。
  細身でパッチリとした目の『可愛い』タイプの男。
  佐竹には似ていなかった。
  意外だな。
  あの男の息子だから、もっと腹黒そうなタイプかと思っていたのに、こんなにまっすぐな雰囲気の少年だったとは。
  でも、そんな風に無邪気に笑っていられるのも今の内で。
  すぐにベッドの上に引きずり込んで、快楽に歪んだ顔をさせてやる。
  俺なしでは何もできないというくらいに。
  俺に調教されて骨抜きになったお前の姿を、佐竹に見せてやりたい。
  ベッドで喘ぐ息子の姿を見た佐竹がどんな顔するのか、想像するだけでゾクゾクする。

〇空
  今まで、簡単に人を虜にして来た。
  男も、女も。
  だから涼太を虜にするなんて、簡単なことだと思っていた。
  しかしまっすぐで純粋な涼太には、どうやら同性の友人とベッドに入ることなど想像もつかないらしい。
  涼太と親しくはなれたが、虜にすることは思うようにいかなかった。
  その一方で、母親はとても簡単だった。

〇高級一戸建て
  平日、皆が学校で授業を受けている時間に、佐竹の家に訪れた。
「あら、瀬尾くん、どうしたの?今は学校に行ってる時間よね」
  驚きの顔を見せる涼太の母親を前に、
久弥「すみません、涼太の部屋に大事なノートを忘れて、上がらせてもらっていいですか?」
  申し訳なさそうに尋ねると、彼女は納得したように「どうぞどうぞ」と部屋に通してくれた。

〇おしゃれなリビングダイニング
久弥「助かりました。 明日までに提出しなきゃならなくて」
  リビングに顔を出して言うと、
「よ、良かったら、コーヒーでも飲んでいかない?」
  と上ずった声で言う。
  こちらが仕掛ける前に、食いついてきた。
「あ、すぐに学校に戻らなきゃ駄目よね」
  慌てたようにしている彼女を見ながら、いえ、と首を横に振った。
久弥「嬉しいです。いただきます」
  コーヒーも、あなたも。

〇おしゃれなリビングダイニング
「・・・どうぞ」
  コーヒーカップを置いて、彼女は対面に腰を下ろした。
  緊張を隠すように振る舞いつつも、目を泳がせている。
久弥「ありがとうございます」
  コーヒーカップを口に運びながら、彼女の視線が俺の首筋に注がれていることに気付いていた。
  そこには、くっきりとキスマークがついている。
  彼女に見せ付けるために、あえて客につけさせたもの。
久弥「・・・あ、すみません、 お見苦しいものを」
  首筋を押さえてそう言うと、彼女は動揺を隠しきれずにガチャッとカップを落とし、コーヒーを零した。
「やだ、ごめんなさい」
  腰を上げる彼女を無前に、こちらもすぐに立ち上がる。
久弥「大丈夫ですか?火傷してない?」
  と手首をつかんで、身体を引き寄せる。
  彼女は顔を真っ赤にさせて、こちらを見た。
「だ、大丈夫よ」
  視線が、絡み合う。
久弥「良かった」
  強く肩を引き寄せて、顔を近付け、キスをする。
  最初は抵抗する素振りを見せるも、続けるキスに、脱力したように身体が柔らかくなる。
  これで、チェックメイト。
  佐竹の妻は、簡単に落ちた。

〇ダブルベッドの部屋
久弥「ノンケの男のコって、 どーやったら落ちるかな?」
  仕事中、夢中になって俺の足を舐める客を見下ろしながらそう尋ねると、彼は面白くなさそうに顔を上げた。
「好きな男ができたのか?」
  メガネを正しながらそう尋ねるスーツ姿の四十代の男。
  ベンチャー企業の社長で、今回の復讐に色々と力になってもらっている。

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