わたしのトナカイ

咲良綾

【後編】サンタクロースの小さな奇跡(脚本)

わたしのトナカイ

咲良綾

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〇英国風の部屋
カイ「・・・ニナ?」
ニナ「カイの声、好き」
カイ「ありがと・・・」
ニナ「カイの手も、好き」
カイ「ありがとう」
ニナ「知らなければ、こんなに淋しくなかったのに」
ニナ「ねえ、カイ。やめちゃおうか」
カイ「・・・え?」
ニナ「サンタのお仕事、やめちゃおうか。 それでこのまま、ふたりで暮らすの」
カイ「・・・・・・」
ニナ「願いの粉を作って、年に一度だけふりまいて、ほんの少し人を幸せにして・・・」
ニナ「それが世の中でどれだけ役立つのかな」
ニナ「わたしがサンタじゃなくなって 本当に困る人なんて、いないよ」
カイ「・・・本気でそう思うのなら、やめたら?」
ニナ「・・・・・・」
カイ「ニコラウスさんの人生を否定できるなら、 やめたらいいよ」
ニナ「あ・・・」

〇英国風の部屋
  与えるのが小さな喜びであっても、
  感謝などされなくとも、
  私はこの仕事を、荒んだ世界の中の良心であり、凍える冬に灯る温かみだと誇り続ける。

〇英国風の部屋
  ニコラウスおじいちゃん・・・!
ニナ「ごめんなさい。わたし、どうかしてた」
ニナ「子供たちの夢とか、恋人たちの幸せとか、」
ニナ「小さな喜びのために、感謝されなくても与えることをやめないサンタクロース」
ニナ「それがわたしの職業で、わたしの誇りで、」
ニナ「大好きなニコラウスおじいちゃんの 遺してくれた遺産」
ニナ「荒んだ世界の中の良心であり、 凍える冬に灯る温かみ・・・なのよね」
ニナ「そしてカイ、 あなたはわたしに欠かせない助け手」
ニナ「わたし、もう迷わないわ」
カイ「それでこそ、僕の大好きなニナだ」
カイ「僕はずっとニナと一緒にいるよ。 絶対にひとりにしない」
ニナ「ありがとう、カイ。 ・・・賢者様のところに行きましょう」
カイ「うん」

〇小さい滝
ニナ「賢者様」
賢者「待っておったぞ。準備はできておる」
ニナ「よろしくお願いします」
賢者「カイ、本当に良いのだな?」
カイ「はい」
賢者「では、こちらへ来て、服を脱ぎなさい。 結晶を摘出する」
カイ「・・・ニナ」
ニナ「何?」
カイ「覚えてて。僕はトナカイに戻って喋れなくても、ニナに話しかけてる」
カイ「ずっと毎日、ニナを愛してるって言ってるから」
ニナ「カイ・・・」
賢者「・・・本当に良いのか、ニナ?」
ニナ「はい」
賢者「そうか。では、ゆくぞ」
カイ「・・・」
賢者「無事トナカイに戻ったようだの」
ニナ「ありがとうございました」
ニナ「じゃあカイ、お仕事の準備しようか」
ニナ「では賢者様、失礼します!」
賢者「うむ。存分に励むが良い」
賢者「あれがまことの絆というものか。 うらやましいことだ」

〇街の全景
  その夜わたしとカイは、例年以上に張り切って、世界を巡り、願いの粉を振りまきました。
  サンタが届けるのは、誰かを喜ばせる願い。
  それが、小さな魔法になる。

〇西洋風の部屋
  プレゼントを枕元に置く前に
  うっかり眠ったお父さんの目を覚まさせて。

〇イルミネーションのある通り
  キスをしたくなった瞬間、
  目の前の恋人を振り向かせて。

〇街の全景
  それは取るに足りない奇跡。
  けれどわたしは誇りに思う。
  サンタのお仕事は、わたしの良心。
  わたしが灯す温かみ。
  そしてわたしに欠かせないのは、
  わたしの助け手。わたしのトナカイ。
  クリスマスの夜。
  わたしたちは、少しだけみんなを幸せにする。

〇雪山の山荘
  毎年、毎年、
  一年かけて作った願いの粉を
  あなたと一緒に。

〇英国風の部屋
???「ニナ」
ニナ「・・・?」
???「ニナ、おはよう」
ニナ「・・・カイ!?」
カイ「うん」
ニナ「やだ、わたしまた夢を見てるの・・・」
カイ「ううん、夢じゃないよ。 僕、また人間になったんだ」
ニナ「ええ!? じゃあ、また賢者様のところに・・・」
カイ「今度は、行かなくていいでしょ」
ニナ「え?・・・あ、そっか」
トミィ「♪♪」
ニナ「今はもう後継のトナカイが・・・ トミィがいるんだっけ」
カイ「そう。だから僕が元に戻らなくても、 お仕事できるよね」
ニナ「・・・カイ、ちょっと大人っぽくなった?」
カイ「そりゃ、8年も経てばね」
ニナ「そんなに経つんだっけ・・・」
カイ「でも、前にかかった時間の半分だよ」
カイ「今度ははっきりと強く、 毎日ニナのことばかり願ってたから」
ニナ「カイ・・・」
カイ「ニナはどんどんきれいになって、聖地にも人が増えて、正直ハラハラしたこともあったけど」
カイ「誰のものにもならないでいてくれて、 ありがとう」
ニナ「・・・それ、ちょっと違う」
カイ「え?」
ニナ「わたしの心はずっと、カイのものだったよ」
カイ「ニナ・・・」
ニナ「カイ、ま、待って」
カイ「ん?」
ニナ「トミィが見てる」
カイ「あ。忘れてた」
トミィ「・・・!・・・!」
ニナ「ほら、トミィ怒ってる!」
カイ「ごめんごめん、 トミィがどうでもいいわけじゃないよ」
カイ「この姿でできるお仕事、なんでも言って」
ニナ「ええと・・・ええと、」
ニナ「ごめんねトミィ、あっち向いてて・・・」
トミィ「♥️」
カイ「あはは、お許しが出たみたいだね」
カイ「ニナ、こっちにおいで」

〇街の全景
  今年のクリスマスも、あなたに
  サンタクロースから、小さな奇跡を──
  HAPPY END.

コメント

  • とても懐かしく、そしてほっこりしました(^^* スチルがやっぱりいいですね~。温かく優しいクリスマスプレゼントをもらった気分です。

  • 聖夜に起る軌跡って、彼らが起こしてくれてたのかな、とほっこりしました☺️切ない終わり方になるかと思ってたのでハッピーエンドで良かった!今年のクリスマスは私にもハッピーが訪れそうな気がします😌

  • スチルが素敵~!😆
    いいなぁ、絵が描ける方…尊敬します✨
    カイも一緒にサンタの仕事をすることになったんですね😊
    楽しく読ませていただきました!
    クリスマスにぴったり!🎅

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