シンデレラ深夜未明

らいら

第3話 瓦礫の中のマイクロメモリ(脚本)

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〇荒野
  ビストライトはビークルを載せて、バイク型のホバーボードで、現場に足を運んだ。
  昨日、シンデレラS01と会話した場所に。
ビストライト「こりゃあ、ひどい・・・」
ビークル「木端微塵、瓦礫の山ですね」
  残されていたのは、シンデレラS01だった部品の残骸と、彼女の周囲に倒れていた大量の戦闘機械人形たちの部品の残骸だ。
ビストライト「もしかしてと、うっすら希望を抱いてはいたんだけど・・・」
ビストライト「マジであの子、爆発したんだな。原型の跡形も残ってねえや」
ビークル「ショックですか」
ビストライト「・・・そりゃあね」
ビストライト「ミメイ博士につながる確実な手がかりだと思ったからね。1年かけてやっと見つけた結果がこれだよ」
ビークル「やれやれ。またゼロから出直しですね」
ビストライト「・・・いや、そうとも限らんよ」
ビークル「ここになにか手がかりでもあるんですか?」
ビストライト「それを見つけるんだよ今から」
ビークル「え? この瓦礫の中にヒントがあるとでも?」
ビストライト「人型ロボットには、それぞれ個別にマイクロメモリが入ってるだろ? 人間でいうと、脳みたいな・・・」
ビークル「ええ。その個体の基本情報や、記憶データが入ったものですね。私の頭部にもありますよ」
ビークル「12ミリ程度のごく小さなものですが、高機能です。もし本体が故障しても新しい本体を用意し、マイクロメモリをセットすれば、」
ビークル「記憶を引き継いでスムーズに仕事に取りかかれる」
ビークル「え・・・? どういうことですか?」
ビストライト「探すに決まってるだろ。シンデレラS01のマイクロメモリを」
ビストライト「そこにミメイ博士および、ほかのシンデレラS01に関する重要なデータが入ってるはずだよ」
ビークル「めぼしい情報があるとは限りません。それに、データが無事かどうかも・・・」
ビストライト「そんなに小さければ損傷してないって! たぶん」
ビークル「たとえ損傷がなくても、見つけるのに何日かかるんですか、この瓦礫の中から・・・」
ビストライト「やるしかないでしょ」
ビストライト「俺が一体目のシンデレラS01に接触するまでかかった時間を考えてよ」
ビークル「1年・・・」
ビストライト「ま、少なくとも1年以内には見つかるでしょ、マイクロメモリなら」
  『惑星』は広大な土地を持つ。すべての場所を探すとなると、何年かかっても終わらない。
  相手は一箇所にとどまっているわけではない。意志を持って移動しているのだ。
  2体目のシンデレラS01と出会えるのは、果たしていつなのか──
  ビストライトとビークルは、手作業で、瓦礫の発掘を開始した。

〇施設の休憩スペース
  10日後──
ビストライト「まじ無理、死ぬ もう働きたくない」
ビークル「ご主人さま、バイタルは正常。生きてらっしゃいます」
ビストライト「比喩表現だよ! あ、比喩ってわかる? 機械にはむずかしいかな!」
ビークル「たとえ比喩でも、死ぬなどと安易に口にするものではありません」
ビストライト「癒やしてくれよ疲れてるんだよ、ずっと単調な肉体労働して、なんの成果も得られてない」
ビークル「まだ半分も瓦礫の片付けが終わっていません。これくらい最初から予想できたことでしょう」
ビークル「9時です。仕事を開始しましょう。ほら現場に行きますよ」

〇荒野
ビストライト「なんでこんなことしてるんだろう・・・瓦礫の量に対して、いくらなんでも人手が足りてなさすぎる・・・」
ビークル「あなたがやろうと言い出したことですが」
ビストライト「そうですね!部隊に応援要請だしてるのに、誰も来ないね!」
ビークル「こんな不毛の地には誰も来ませんよ。みなさんそれぞれの地区で仕事があって忙しいんです」
ビストライト「そりゃ、この仕事の担当になった俺、クジに外れたようなもんだからな」
  この『惑星』は、すべての地が不毛の荒野ではない。
  町には建物も残っていて、少ない人口が集まり、支え合うように暮らしている。
ビストライト「娯楽もない、話し相手はビークルだけ。食事は毎日同じ、栄養保存食。食べる楽しみもない」
ビストライト「このままだと俺の精神が崩壊するよ。さっさとミメイ博士見つけて、シンデレラS01たちの自爆装置解除して、」
ビストライト「この瓦礫の処理をあいつらに任せよう・・・」
ビークル「・・・」

〇荒野
ビストライト「今日も収穫なしか。しんどい」
ビークル「ご主人さま」
ビークル「これを・・・」
ビストライト「それマイクロメモリ!? あったのか!」
ビストライト「見た感じ破損もしてない。やったなビークル! おまえは優秀な奴だ! さっそく中身を見よう!」

〇殺風景な部屋
  バラックに戻り、二人はコンピュータ室に来た。
  パソコンはマイクロメモリを認識し、フォルダが自動で立ち上がった。
ビストライト「よぉし――これで瓦礫処理の日々とおさらばだ。軍手してても手がボロボロだよ。心はもっとズタボロだよ」
  フォルダには、「メモ」という名前のテキストファイルがひとつだけ。ファイルのサイズは1kだった
ビストライト「ん? これだけ・・・?」
ビークル「予想通りですね。『量産型戦闘人形』・・・」
ビストライト「それって、あのデッカイ奴・・・?」
ビークル「あの場所で、シンデレラS01は一体。それに対して、量産型機械人形は10体以上」
ビークル「先にこちらが見つかるのも道理です」
ビストライト「もう嫌だ、こんな生活!!!」
ビストライト「もう俺はなにもしない 寝る」

〇殺風景な部屋
ビークル「あの、ご主人さま・・・起きてください」
ビストライト「なんだよもう今日は閉店だよ。シャッター閉めたよ」
ビークル「実は見つけていました。おそらくこれが探しているマイクロメモリです」
ビストライト「は?」
ビークル「さっきのはジョークです」
ビストライト「機械がジョーク? なんでそんなことしたの?」
ビークル「・・・」

次のエピソード:第4話 他人が淹れたコーヒーうまい

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