〇男の子の一人部屋
御手洗　清也(みたらい　せいや)「・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「う・・・」

〇家の廊下
御手洗　清也(みたらい　せいや)「はっ!!はっ!!」

〇清潔なトイレ
御手洗　清也(みたらい　せいや)「アァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
　　うんち地蔵

〇おしゃれなリビングダイニング
清也の母「フンッ!!」
清也の母「フンッ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「おはよう・・・ お母さん・・・」
清也の母「あら!!清也おはよう!!」
清也の母「なんだか浮かない顔ね・・・ どうしたの!?」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「い、いや、なんでもないよ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（下痢で夜中起きちゃったなんて恥ずかしくて言えないよ）
御手洗　清也(みたらい　せいや)「お母さんはまたいつものソレやってんの？」
清也の母「”いつものソレ”ってあんた・・・」
清也の母「『ベン軍曹の美尻フィットネス』よ!!」

〇トレーニングルーム
ベン軍曹「”健全な精神”は”健全な肉体”に宿る──」
ベン軍曹「そして”健全な肉体”は──」
ベン軍曹「”健全な美尻”が作る!!」
ベン軍曹「さぁ!!今日も始めるぞ!!美尻フィットネスの時間だ!!」
ベン軍曹「まずは後ろ回し蹴りを50セット!!」
ベン軍曹「辛くても必死でついてこい!!」
ベン軍曹「君の括約筋は活躍したがっているぞ!!」
　　ベン軍曹!!!!

〇おしゃれなリビングダイニング
清也の母「ベン軍曹❤️」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（朝っぱらから美尻を目指す母親を見なきゃいけないこっちの身にもなってよ・・・）
清也の父「２人ともおはよう」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「あ、おはよう、お父さん」
清也の母「あらアンタ起きるの遅いわよ!! とっととご飯食べちゃって!!」
清也の父「わ、わかったよ・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（お父さんほんとわかりやすく尻にしかれてるなぁ）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（僕もご飯食べて学校行かないと）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（今日は大丈夫だったらいいけど・・・）

〇教室
戸入先生(といれせんせい)「・・・で、ベン・ジョンソンはドーピングが発覚してソウルオリンピックのメダルを剥奪されたんだ」
戸入先生(といれせんせい)「みんなもドーピングしたらダメだからな」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「へっ、当たり前だぜ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（うっ）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（うっ・・・ヤバい!!）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（も、もう限界だ・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)「せ、先生!!」
戸入先生(といれせんせい)「ん!?どうした御手洗？」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「先生!!トイレ!!」
戸入先生(といれせんせい)「先生は戸入だが・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「そ、そうじゃなくて!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（も、もう、無理・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ト、トイレ行ってきます!!」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「ぷっ」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「ははははは!! なんだよ御手洗のやつ!!」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「学校でうんこするだけでも恥ずかしいのに、授業中に行きやがった」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「腹筋崩壊するぅ笑」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「脱糞士清也（ダプントセイヤ）!!」
戸入先生(といれせんせい)「おいおい、家出竹!! 御手洗イジリはやめろ!!」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「はーい」

〇教室の外
御手洗　清也(みたらい　せいや)「はぁ、今日もやっちゃったよ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「どうして僕はこんなに胃腸が弱いんだ・・・」
おじいさん「どうしたんじゃ、御手洗君？」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「あ、用務員のおじいさん」
おじいさん「何か悩み事かね？」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うん、僕胃腸が弱くて・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「学校でうんちしたらダメなのに・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「我慢出来なくて・・・」
おじいさん（そんなことはないんじゃが・・・）
おじいさん（まぁ、小学生はなんでもバカにしてくるからのぅ）
御手洗　清也(みたらい　せいや)「家出竹君にも笑われるし最悪だよ・・・」
おじいさん「うーむ、胃腸の弱さは遺伝だったりするからのぅ」
おじいさん「こういうときは神頼みじゃな」
おじいさん「学校の裏のお地蔵様でも拝んでおきなさい」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うーん、まあ、そうしようかな」

〇体育館の裏
御手洗　清也(みたらい　せいや)（お地蔵様・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（僕、みんなにバカにされたくないんだ・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（なんとかしてください・・・）
地蔵「承知した」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ん!?今声が聞こえたような・・・気のせいかな・・・」
地蔵「・・・」

〇教室
　　翌日──
戸入先生(といれせんせい)「──ブリュッセル市はベルギーの首都なんだが、人口は17万人程度なんだ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（はぁ・・・地蔵にはお祈りしたけど、今日もお腹の調子が良くないよ）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（また、トイレに行きたくなりそう）
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「せ、先生!!」
戸入先生(といれせんせい)「どうした家出竹？」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「先生!!トイレ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（えっ!?）
戸入先生(といれせんせい)「先生は戸入だが・・・ ってこれ昨日もやったな」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「も、漏れるぅ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（あの・・・家出竹君が!?学校で!?）
　　家出竹!!ダッセー!!
　　あんだけ昨日御手洗のことバカにしてたのに
　　学校でうんちするとかあり得ないよねぇ
戸入先生(といれせんせい)「こらこら、お前ら静かにしろ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（これってもしかしてお地蔵様のおかげ？）

〇体育館の裏
御手洗　清也(みたらい　せいや)「お地蔵様!!今日、家出竹君が学校でうんちしたんだ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「だから、僕笑われなかったよ!!ありがとう!!」
地蔵「それは良かった」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ひいっ!!お地蔵様が喋った!!」
うんち地蔵「私はうんち地蔵・・・」
うんち地蔵「うんちを司る者」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「そ、そんな!? じゃあ、家出竹君がトイレに行ったのも」
うんち地蔵「私の力だ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「す、すごい・・・!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ねぇ、僕まだまだ家出竹君にいじられたこと水に流せてないんだ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「明日もお願い出来る？」
うんち地蔵「承知した」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「やったー!!」

〇教室
戸入先生(といれせんせい)「──コピ・ルアクがジャコウネコの糞から採取したコーヒー豆から精製することは有名だが」
戸入先生(といれせんせい)「ジャコウネコはジャコウネコ科でネコ科ではないこともしっかり頭に入れておけよ」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「だ、だめだ!! 先生トイレ!!」
戸入先生(といれせんせい)「家出竹・・・またか」

〇体育館の裏
御手洗　清也(みたらい　せいや)「お地蔵様!!明日もお願い!!」
うんち地蔵「承知した」

〇教室
戸入先生(といれせんせい)「──日本が郵便事業を始めた時には、郵便を垂便と読み違えてポストを便所と勘違いした者がいたそうだ。ここテストに出るぞ」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「せ、先生・・・」
戸入先生(といれせんせい)「・・・行ってこい」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（今まで僕をバカにした罰だよ）

〇教室の外
おじいさん「御手洗君や、最近毎日地蔵の所に行っておるようだが、何をしておるのじゃ？」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「な、なんでもないよ」
おじいさん「なんだか悪い遊びをしている者の眼をしておるぞ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うるさいな、なんでもないったら」

〇体育館の裏
御手洗　清也(みたらい　せいや)「用務員のおじいさんもうっとうしいからやっちゃって」
うんち地蔵「承知した」
おじいさん「ぴぎゃーーーー」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「よし!!」

〇清潔なトイレ
御手洗　清也(みたらい　せいや)「家出竹君が目立つおかげで、僕は平和そのものだ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うっ、僕の胃腸が良くなってるわけじゃないのが辛いとこだね・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「そうだ!!明日うんち地蔵に相談して、僕の胃腸の弱さを治してもらおう」

〇教室
御手洗　清也(みたらい　せいや)「あれ？家出竹君今日お休みなのかな？」
戸入先生(といれせんせい)「みんないるか？ 今日は悲しいお知らせがある」
戸入先生(といれせんせい)「家出竹はしばらく入院することになった・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「えっ!?」
戸入先生(といれせんせい)「詳しい事は分からないが、今は泌尿器科に診てもらっているそうだ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ま、まさか!?」

〇体育館の裏
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うんち地蔵!!家出竹君のお尻を治してよ!!」
うんち地蔵「うんちとは流れ──」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「はいっ!?」
うんち地蔵「便意は我慢するようなものではない」
うんち地蔵「小腸から大腸へ、大腸から肛門へ、そして大地へ」
うんち地蔵「生命活動の神秘なのだ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ワケがわからないよ!!」
うんち地蔵「私の力を受けた者は、内括約筋が常に弛む」
うんち地蔵「それはもはや私でさえどうすることもできない」
うんち地蔵「全ては流れだ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「そ、そんなぁ・・・」

〇シックな玄関
御手洗　清也(みたらい　せいや)「はぁ、一体どうすれば・・・」
清也の父「おう、清也!! ただいま!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「あ、お父さん・・・おかえり・・・」
清也の父「どうした？元気ないな？」
清也の父「腹でも痛いのか？ お前も親に似て胃腸が弱いもんな」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（まったく・・・ 人の気も知らないで・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)「そうだよ!! お父さんに似て胃腸が弱いからね!!」
清也の父「ん!?何を言ってるんだ!?」
清也の父「お前が似てるのは母さんだぞ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「へっ!?」
清也の父「父さんは毎朝快便!! 何を食っても腹なんか壊さない頑丈腹だい!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「で、でも、お母さんが胃腸弱いとこなんて見たことないよ!?」
清也の父「ああ、母さんは胃腸の弱さ対策に”アレ”を始めてからはトイレが我慢できるようになってるからなぁ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ま、まさか!?」

〇トレーニングルーム
清也の父「『ベン軍曹の美尻フィットネス』さ!!」

〇シックな玄関
御手洗　清也(みたらい　せいや)「『ベン軍曹の美尻フィットネス』・・・ そのためにやってたの!?」
清也の父「ああ、アレを始めてから母さんは強靭な括約筋を手にして我慢できるようになったんだ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「ひえー」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（え、だったら・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)「これしかない!!」

〇体育館の裏
　　数日後
うんち地蔵「ん？」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うんち地蔵!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「僕らは克服したよ!! 便意を!!」
うんち地蔵「便意の克服などできない── 全ては流れ、必然なのだ」
「フンッ!!」
うんち地蔵「なっ・・・!?」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「俺たちはベン軍曹と共に過酷なトレーニングを行ったんだ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「僕らの外括約筋が・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「生理現象をはねつけたのさ!!」
うんち地蔵「なんたることだ・・・ これが人の強さか・・・」
うんち地蔵「強き者たちよ・・・感服した・・・」
うんち地蔵「だが、定期的に排便はしてくれ」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「ああ・・・!! 家でだけな!!」

〇教室
御手洗　清也(みたらい　せいや)「家出竹君、ごめんね僕のせいで」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「いや、俺の方こそごめんな・・・」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「うんこを我慢出来ないって事がこんなに辛かったなんて・・・」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「今まで知らなかったから・・・ 許してくれ!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「家出竹君・・・」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「もちろん!! お互い水に流してこれから仲良くしよう!!」
「フンッ!!」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「よっしゃ!! 今日も俺の家でベン軍曹とトレーニングしようぜ」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「うん!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)「まずトイレに行ってからね!!」
家出竹　雲江(いえでだけ　うんこう)「そうだな!!」
御手洗　清也(みたらい　せいや)（そういえば・・・）
御手洗　清也(みたらい　せいや)（何か忘れているような・・・）

〇教室の外
おじいさん「ピギャーーーー!!」
おじいさん「もう嫌じゃーー!!」

〇教室
御手洗　清也(みたらい　せいや)「まいっか!!」