あやめ祭り

MK38

エピソード1(脚本)

あやめ祭り

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〇病院の入口
事務長「お嬢様が、冴子お嬢様がいらっしゃったぞ! 全員でお出迎えの準備を!」
(ふう~なんとか間に合ったわ)
  キッツー!!
「冴子お嬢様、お疲れ様です!」
森村冴子「事務長、車をいつもの場所に停めておいて」
事務長「は、はい、ただいま!」
森村冴子「第1と第4病棟の主任は?」
第3病棟主任「あ、それはそのー」
第2病棟看護主任「第1病棟の竹田主任は、来週入院予定の患者さんの自宅に行ってます。 第4病棟の原田主任は、緊急のオペが、、、」
森村冴子「分かったわ。「この私」より優先すべきことがあったということね」
第2病棟看護主任「いえ、別にそういうわけじゃ、、、」
森村冴子「2人には、今日で終わりと伝えておいて」
第2病棟看護主任「でも、それじゃあまりにも」
森村冴子「なに?」
第2病棟看護主任「いえ、なんでもありません」
森村冴子「院長の容態は?」
第3病棟主任「今日は、落ちついています。 さきほど、皆さん集まっておいででした」
森村冴子「それと看護師の西村鈴子はあなたの病棟の所属だったかしら?」
第3病棟主任「はい、そうですが!?」
森村冴子「私が院長のところに着くまでに、私のもとに来るように指示を出して」
第3病棟主任「はい!かしこまりました!」

〇大きい病院の廊下
  第5病棟VIPルーム前
西村鈴子「お嬢様、冴子お嬢様!!」
森村冴子「院内では静かに」
西村鈴子「はい。申し訳ございません」
森村冴子「西村さん」
西村鈴子「は、はい」
森村冴子「あなた、また病室で歌ったそうね」
西村鈴子「はい。それは、同じ東北出身の入院感患者さんがいらっしゃって、夜どうしても眠れないっておしゃったもんで」
森村冴子「あら、同じ地方の出身なら歌ってもいいいの? クレームでてるんだけど」
西村鈴子「いえ、そんなことは、、、 でも、場所も移動しましたし、その患者さん末期がんでもうすぐ」
森村冴子「関係ないんじゃない?死ぬのがいつだろうと」
西村鈴子「はい、そうです」
森村冴子「あなた、まったく私の話聞く気がないみたいだから、今度『次期院長』から直接注意してもらうわ。覚悟してなさいね」
西村鈴子「はい。大変申し訳ございませんでした」
森村冴子「そんな後付けの謝罪はいいから、早く持ち場に戻りなさい」
  ガチャ
森村冴子「お父様!」
森村重三「やあ、冴子じゃないか。よく来てくれたね」
森村冴子「もっと早く来ようと思ったんだけど、先方との打ち合わせが長引いてしまって」
森村重三「先方って、2号館の建設の件かい?」
森村冴子「もちろんよ、お父様!お父様の長年の夢であった最先端医療病院よ」
森村重三「すまない。冴子に無理難題を押し付けてしまって・・・」
森村冴子「それは言わない約束でしょ。尊敬する親の夢を、子供が引き継ぐなんてなんてステキなのかしら。むしろ、お礼を言いたいくらいよ」
森村重三「そう言ってもらえるだけで、心が軽くなるよ」
森村冴子「それより、今日は起き上がって平気なの?」
森村重三「ああ、大丈夫!今日は、とっても身体が軽いんだ。みんなのお陰だよ。特に照彦君の腕は素晴らしい」
森村冴子「そりゃそうよ。私が選んだ男性ですもの」
森村重三「同じ医師として嫉妬してしまうよ」
森村冴子「もう。お父様ったら~」
森村照彦「やあ、冴子来てたのかい?」
森村冴子「照彦さん!もっと早く来る予定だったんだけど、打ち合わせが長引いてしまって」
森村照彦「話は、だいぶ進んだのかい?」
森村冴子「ええ、なんとしても年内オープンに間に合わせるわ」
森村照彦「あんまり無理するなよ」
森村冴子「心配ご無用!私には、お父様と照彦さんがついていてくれるんですもの」
森村照彦「僕は、その・・・経営のこととかはあんまり分からないから」
森村冴子「ううん。側にいてくれるだけで十分よ!」
森村重三「おいおい、お2人さん。そこから先は、家に帰ってからやってくれよ」
森村冴子「あ!ごめんなさい」
森村重三「ハハハ。冗談だよ。若いっていいな」
森村重三「ウッ!!」
森村照彦「お父さん!大丈夫ですか!?」
森村重三「ああ、大丈夫だ。体調がよかったので調子に乗りすぎたのかもしれん」
森村冴子「そうよ。すぐ調子に乗るから~。少し横になって」
森村セツ子「あら、2人とも来てたの」
森村照彦「お母さん、こんにちわ。 僕もいま来たところです。冴子も少し前に」
森村セツ子「いまお茶でも淹れるわね」
森村冴子「では、お父様また来るわ」
森村照彦「いまお母さんが、お茶を・・・」
森村セツ子「いいのよ、照彦さん。冴子の側にいてあげて」
森村照彦「はい、では失礼します」
森村重三「セツ子、すまない。私がだらしないせいで、君にイヤな思いをさせて」
森村セツ子「いいんですよ。私も仕事が忙しくて、冴子にかまってあげなかったのが悪いんです」
森村重三「いや、私にも責任はある。現実から逃げてばかりいたから。そして今度もまた逃げようとしている」
森村セツ子「そんなこと言うと身体にさわりますよ」
森村重三「今度3人で話をしよう。場合によっては、照彦君も交えて。私の命があるうちに・・・」
森村重三「ううっ!」
森村セツ子「ほら、あなた横になって」
森村照彦「冴子・・・」
森村冴子「なに?」
森村照彦「なにもあんな態度とらなくたっていいじゃないか」
森村冴子「キライな女が、目の前にあらわれた。無視するなんて当たり前のことじゃない」
森村照彦「でも、母親なんだからさあ」
森村冴子「母親?あの女が?法律的にはそうかもしれないけど、私は絶対認めないわ。いままでも、そしてこれからもね」
森村照彦「まったく・・・」
森村冴子「それより、いつ『やる』のよ?」
森村照彦「え!?」
森村冴子「あの爺さんに、いつ『トドメ』を差すのかって聞いてんのよ!」
森村照彦「『トドメ』って」
森村冴子「余命3カ月とかいいながら、もう半年近くになるじゃない!!」
森村照彦「そりゃ、お父さんには1日でも長く・・・」
森村冴子「バカか。お前は。新しい病院は、お前が院長でスタートするんだ」
森村照彦「お父さんも自分の身体のこと分かってるから、院長をやりたいって言わないんじゃないか」
森村冴子「お前は、なにも分かってないな。世間の目というものを考えろ」
森村照彦「そんなこと言われても」
森村冴子「このあやめ病院は、森村重三が一代で築き上げたものだ。現実はどうあれ、新しい病院の院長も森村重三に決まってるだろう」
森村照彦「でも、そんなこと気にしなければいいんじゃ・・・」
森村冴子「どこまでもおめでたい発想だな、さすが元貧乏人だ。いいか、今後病院が拡大を続けていくためには、政治家や周辺住民の力がいる」
森村冴子「その力を利用するためには、現状どうしても重三の名前が必要だ。でも、我々には重三の名前が邪魔だ」
森村照彦「それは、仕方ないよ」
森村冴子「だが、『弔い』の意味を新病院に持たせれば、最初からお前が院長でもいける」
森村照彦「・・・」
森村冴子「今週中にやれるか?」
森村照彦「そんな急に言われても」
森村冴子「以前から伝えてあったはずだが。今週までにできなかったら、別の方法を考えるからそのつもりで」
森村照彦「さ、冴子~」

〇病院の入口
森村冴子「では、その通りに」
事務長「は、はい・・・」
森村セツ子「冴子!ちょっと冴子!」
森村冴子「なによ。気安く呼ばないで」
森村セツ子「あなたがいくら母親としての私を嫌ってもいいわ」
森村冴子「母親なんて気安く名乗らないでくれる?」
森村セツ子「いまは看護師長として、あなたに話があります」
森村冴子「なにかしら。手短にお願いね」
森村セツ子「第1病棟と第4病棟と主任の解雇を撤回してください」
森村冴子「なんで?あの2人は、私の出迎えに来なかったのよ」
森村セツ子「現場は、患者様第1優先で動いているんです。アナタの出迎えなんかより大切なことがあるのよ」
森村冴子「なんかですって!?」
森村セツ子「それと、西村鈴子の歌についても問い詰めたそうね」
森村冴子「ええ、他の『患者様』からクレームが来たからね。それに、耳障りなのよ、あの声」
森村セツ子「それも院長の許可を得ているわ。アナタに咎められる筋合いはないわ」
森村冴子「・・・」
森村セツ子「院長と私を敵に回す気?」
森村冴子「分かったわ。その件に関して、アナタに預けるわ」
森村セツ子「ありがとう」
森村冴子「看護師長」
森村セツ子「なに?」
森村冴子「新しい病院ができる前に、アナタとも決着をつけるわ。必ず」
森村セツ子「え?」
  ピリリーピリリー
森村セツ子「もしもし。え?はい、すぐいくわ」
森村セツ子「重三さんの容態が急変したらしいわ」
森村冴子「え?」

〇大きい病院の廊下
森村冴子「お父様ー!!」
森村照彦「急に胸を押さえて苦しみだしてね。人工呼吸器をつけて、眠っている状態だよ」
森村冴子「大丈夫なの!?」
森村照彦「いまは落ち着いているよ。人工呼吸器をつけていれば、急変するようなことはないと思う」
森村冴子「ほっ良かったー」
森村照彦「冴子は、家に帰って大丈夫。僕も、もう少ししたら帰るから。最近夜勤続きだからね」
森村冴子「それを聞いて安心したわ」
森村セツ子「照彦さんも上がっていいわよ。今夜は、私がここに泊まるから。なにかあったら連絡するから、携帯の電源はいれておいて」
森村冴子「そんなこと当たりまえでしょ。『仮』にも妻なんだから」
森村照彦「冴子!」

〇病院の入口
森村冴子「分かってるわね」
事務長「は、はい」
森村冴子「失いたくないでしょ?」
事務長「ええ」

〇豪華なベッドルーム
  プルルルル♪プルルルル♪
森村冴子「はい。分かった。すぐ行くわ」
森村照彦「う~ん、どうした?」
森村冴子「アナタすぐ支度して。病院にいくわよ」
森村照彦「なんだって!まさか」
森村冴子「そのまさかよ!」
  エピソード2につづく

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • こんばんは!傍若無人なあやめが病院でどのように変わっていくのかドキドキします!これは皆から逆襲されるのか、我を押し通し周りを淘汰するか、白黒はっきりつきそうで楽しみです!

  • 冴子の態度が急変する描写にリアルっぽさを感じて、恐ろしくなりました...😱
    この先どうなるのか、気になってます🧐

  • 病院経営、第二の母・・このキーワードだけでもすでにドロドロとした印象をうけるけど、このやり手の娘が牛耳っている状態から、大どんでん返しを期待したいと思います。

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